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妖精とワイルドな王子様  作者: 爽健茶美
11/35

11 談話室事件






 ある日、剣の鍛錬を終えてシャワーを浴びたルカは、部屋にいなかったレイを探していた。

 そして、見覚えのあるマリーの異世界人専用護衛騎士ランドルフが、談話室の前でビシッと立っているのをみかけたので声をかけた。


「よう、お疲れさん。レイいるか?」


「レイ様ですか?いいえ」


「どこ行ったんだアイツ。てっきりここにいると思ったんだけどよ」


 ルカが顎で談話室をさしたのでランドルフはピッタリと閉じられたドアに一瞬だけ目を泳がせた。

 その瞬間をルカは見逃さなかった。


「何だよ、中にマリーと誰がいるんだ?」


「レイ様ではございません。マリー様は、その」


 ランドルフが言い淀んだのでルカが怪しんだ。


「へー?マリーはいるんだよな。じゃ、知り合いなんで別に開けてもかまわねぇよな」


「お待ちください!」と立ちはだかるランドルフを制してルカが強引に扉を開くと、そこにはマリーと名も知らぬ騎士が真っ最中だった。


「キャア!」


 マリーは服をかき集めると胸を隠し、お相手の騎士は慌てて下の制服を着ようとして失敗し、派手に転んでいた。


「うっわ、スゲェな。あ、ごゆっくり」


 ルカはサッと扉を閉めると、恨めしそうに溜め息をつくランドルフに頭を下げて謝った。


「今のは俺が悪かった。まぁ後始末は俺が何とかすっから、気にすんなよ」


 そしてランドルフの方をポンポン叩くと


「にしてもよ、アンタもマリーに付いて大変だよな」


 と呑気に同情した。


 そうこうしているうちに顔を伏せた騎士が挨拶もなく飛び出して行き、閉まる扉から瞬間見えた談話室内には、乱れた服は着直してはいたものの、お顔がかなりブーたれたマリーだけが残っていた。


 異様に気まずい雰囲気のまま、談話室からマリーが出てくるのを大人しく待ち、自分の部屋へ移動しようとしていたマリーに近寄った。


「マリーは準備早えーのな」


 何となく気を利かせたセリフで声をかけたルカは、マリーから清々しいくらいに無視されていた。


 無言で前を向きスタスタと歩くマリーの横で


「さっきは悪かったな。けどよ、俺はレイを探してたんだよ。なんで、これからアユミの部屋も寄ってっていーか?」


 「通り道だし、いいだろ?」とマイペースにもほどがあるだろ発言をするルカを、後ろを歩いていたマリーの護衛ランドルフは、信じられないといった表情で見ていた。


 話しかけられていたマリーは、ルカを無視してそのまま自分の部屋へ入っていってしまった。


 ルカは肩をすくめると「また後で来る」とランドルフに言うと、アユミの部屋へと向かって行った。 

 扉の外から声をかけるとアユミはすぐ出てきたが、部屋の中を見るとレイがキョトンとした顔でソファーに座っていた。


 「まぁなんつーか色々複雑なんで、とにかく俺についてきてくれよ」と言われた二人は、ルカと一緒にマリーの部屋へと移動した。

 そして、??なアユミとレイに、歩きながらルカが簡単に、本当に簡単にサクッと説明した。

 それを聞いてアユミは青くなったが、レイは真顔のままアレコレ考えていた。

 

 談話室で致しちゃうなんて

 そんなに我慢できなかったのかしら

 それに衛生的にもどうなのかしら

 これから座る時に確認事項が増えちゃうじゃない




「あー、マジでさっきのやつは悪かった」


 レイとアユミが来たことで仕方なく扉を開けたマリーは、珍しく浅めにソファーに座りながら頭をかいて謝るルカをジロリと睨んだ。


 レイは、いきなりドアを開けるところがまたルカらしいのよねーと心の中で思ったが、すぐ横で何故かやたらとレイの足をつついてくるアユミのお顔が怖すぎて、口を開けなかった。



「大体アナタね、あんなにピッチリと閉められてる扉、フツー開けるかしら?」


 マリーが、ルカって常識あるの?的な目で睨んだ。


「しっかし談話室でヤるとか、お前もスゲーよな」


 ルカは割と人の話を聞かないヤツだった。

 マリーはムッとした。


「ルカに言われたくないわ。大体レイと同じ部屋なのよね?だったら毎晩何してるのよ」


 腕を前に組んだマリーがイラっとしながら言ったので、アユミが焦った。


「マリー!それは失礼だよ。確かにレイ達は少し大人っぽいところもあるけど、さすがにまだ十六才なんだし、年齢的にもそんなことしないよ!」


「あらぁ?そうかしらねぇ?」


 マリーがニヤつくルカをジト目で見てきたので、レイがルカの肩にもたれて可愛いらしく言った。


「そうよ?私達は清い関係ですもの」


 ルカが吹き出した。


「ほら、やっぱり……えっ!?エーッ!!」


 アユミはルカとレイの顔を素早く交互に見ると、頭を抱えた。


「うるさいわよアユミ」


「そんなバカな……」


 それを見たルカが「はーん」と言った。


「さてはアユミお前、闇だな」


「え……」


 途端にアユミが落ちた。


「嘘!アユミって闇なの!?」


 興奮したレイが食いついたが、アユミは自分の闇属性がバレてしまったことがショックで、下を向いたままだった。


 マリーが気を利かせた。


「まぁ、何でもいいじゃない。そんなことより……」


「羨ましいっ!!」


「「は?」」


 マリーとアユミがポカンとした。


「ねぇ、まさかマリーもじゃないわよね?違うわよね?きっと、超つまらない光とかよね?」


 レイはマリーににじり寄り、腕を掴んでガクガクと揺さぶった。

 アユミはレイが闇スキルを嫌がるどころか憧れていることを知って驚いていた。


「私は超使えない土だけど、それが何?」


 呆気にとられたマリーが答えるとレイが


「あら!そんなこと言って失礼しちゃうわ!」


 とプリプリしだした。


「マリー、貴方ちょっと贅沢すぎるんじゃないかしら。土なんてあんなことやこんなことも出来るじゃないの。私とルカなんて、ピカーッとか馬鹿みたいに光ることしか出来ないんだから!」


 ルカは爆笑していたが、レイは「何がそんなにおかしいの?」と眉間に皺を寄せていた。

 そして意図せず羨ましい二人の属性を知ってしまったレイは元気がなくなってしまい、笑いを堪えるルカに支えながらヨロヨロと部屋を後にしたのだった。



 それから数日後、レイはまたもやアユミの部屋に遊びに来ていた。

 マリーはあれからも全く懲りることなく、やたら騎士達とデートばかりしていて、あまり遊んでもらえなかったし、ルカはルカで冒険者専門店に行くか鍛錬場で剣の練習ばかりをしていて興味のないレイにとっては退屈だった。


「ねぇアユミ、図書室で属性交換の仕方とか調べてきてくれないかしら?それで方法がわかったら、私と交換しましょうよ」


 ソファーに腰掛けながら可愛らしい口でクッキーをサクリと食べるレイにアユミがため息をついた。


「何で私だけ?レイも調べなよ」


「私はこの先デートやら何やらで忙しいのよ」


「何それ!人を暇人扱いして」


「あら違うの?あの地味顔のゴツい彼に告白もしないのだから暇じゃない。それにスキルを嫌がっているのはアユミでしょう?」


「レイもじゃない」


「まぁ、それはそれ、これはこれよ」


「意味わかんないんだけど」


 アユミはジャイア◯的なレイに疲れた。

 結局二人で図書室へ行くことになったが、閲覧禁止の怪しげな本など無かったし、そもそも属性は精霊様からの贈り物なので、交換など罰当たりなことは誰も考えたりしないようで、それらしき本は全く見つからなかった。

 レイはガッカリした。


「ねぇアユミ、私一生この超つまらない光で生きていくのかしら」


「不謹慎だよレイ。折角精霊様からいただいたスキルなのに」


 自身も闇属性を嫌悪しているアユミがのたまった。


「だって見てくれる?これ」


 レイは指先をポウッと明るくして見せた。


「これね、光属性の超初級なの」


「わぁ綺麗ね。私は素敵だと思うよ」


 アユミが光ネイルをしているようなレイの指先を、キラキラした目で見て言った。


 レイは暗い目つきでアユミを見た。


「そうかしら?私はあのお顔が凄すぎるE.T◯になった気分ですけど」


「……」


 それから二人は何かを話しても話が弾むことがなく、黙ったまま図書室から出ると、何となく解散したのだった。






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