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妖精とワイルドな王子様  作者: 爽健茶美
10/35

10 王都デート






「ルカー、ここ入りたい」


「わかったわかった」


 レイは可愛らしい外観の、しかし一目で高級店とわかるカフェを指さした。


 お城の馬車から突然降り立った超美形の異世界人二人に驚きと共に憧れながら遠巻きにしていた王都の異世界人ファンの人々は、文◯の記者バリに


「おい、あの店に入ったぞ!」

「今持ち合わせはあるかしら?」


 などと揉みくちゃになりながらレイ達を追って後から入店してきた。


 カフェの店長は、今話題の異世界人二人の来店に目を丸くしながらも、一番奥の落ち着くテーブル席に案内してくれた。

 お店は、みるみるうちに満席となった。

 人々の熱い視線をものともせず、レイはルカが好きそうなレモンババロアのケーキセットと自分が好きな紅茶シフォンケーキセットを注文した。


 程なくしてケーキと紅茶のセットが運ばれてきた。

 運んできたのは先程迎え入れてくれた店長で、紅茶をテーブルに置く際に緊張のあまり震えてしまい、ソーサーがカチャカチャと鳴っていた。


「何かございましたら飛んで参りますので、どうぞごゆっくりなさってください」


 店長は優雅に頭を下げた。

 ルカは「ありがとな」と言い、レイは微笑みながら軽く頭を下げた。

 戻ってきた店長に店員がワッと群がり


「今お二人と何を話されたのですか?」


 と、にわか人気者になっていた。

 今巷で話題の異世界人カップルの初来店に緊張と興奮で震えが止まらない店長は、オロオロと焦って店員達に尋ねた。


「私はどうしたらいいのだ?他所(よそ)の店では異世界人の方が来店された記念に、画家志望の店員に肖像画を描かせてもらったと聞くが」


「うちには画家はいなかったよな」と残念そうにグルリと皆の顔を見渡した。

 皆は申し訳なさそうに沈黙していたが、そのうち青髪の男性店員が、何かを思いついたようにパッと顔を上げた。


「そうだ!店長、お手形はどうです?」


「お手形?」


「はい。色紙はこちらですぐご用意できますから、水性インクをスポンジに染み込ませて、お二人のお手形をいただくのです」


「ほう!それはいい考えだ。色紙ならお店の一番目立つ箇所に簡単に飾れるし、お手軽だものな」


 青髪店員は頷いた。


「ちなみに私は水属性ですので、お二人の手に付いたインクを取り除けます。そのあとは、店長の風で乾かしてさしあげてください」


 女の子店員が手を上げた。


「それなら私だって火ですよ!店長の風を温めれば早く乾かせます!」


「ズルいわ!それなら私だって火よ!」


「まぁ待て待て。公平に決めようじゃないか」


 ちゃっかり自分がレイ達とお近づきになろうとする店員達が裏でワチャワチャしているうちに、レイ達はいつものイチャイチャが始まっていた。


「はいルカ、あーん」


 ルカが口を開けた。

 それを見ていた店の客も釣られて少し口が開いた。


 パク、モグモグゴクリ。


「アッマ。そっちくれよ」


 ルカは顔を顰めて紅茶を一口飲むと、レモンババロアを見た。


「いいわよ。はい、アーン」


 パク、モグモグゴクン。


「あ、やっぱこっちの方がサッパリしてうまいな」


 レイは笑って「じゃ全部あげる」とケーキを差し出した。


 客は

 

 さっきから何をされているのかな

 ココ、一応公共の場なのですが


 と思っていた。


 そんな雰囲気など全く気にしないレイは、食べていたケーキのフォークの手を止め、ルカを見た。


「ルカったら、子供みたい」


「は?」


 客も


 今度は何ですか?


 となって、それぞれフォークやカップを持っていた手が止まった。


 レイはテーブルに手をつき、ルカの方に体を伸ばすと、ルカの口元についたクリームをペロッと舐めてから体を戻して何事も無かったように椅子に座り直した。


 あちこちから人が倒れる音や物を落とす音が聞こえてきたが、ルカはレイとの濃厚過ぎるスキンシップに慣れていたので「ついてたか?」と涼しい顔をしているだけだった。


 そして、妹のように思っている副神官のマーガレットに「一緒に来て欲しい」と誘われ、偶然レイ達と同じカフェにいたエル神官長は、ペロリ事件を目の当たりにしてしまい、その衝撃でケーキを喉に詰まらせていた。


 なななな

 何をされているのですかっ

 ひひひ人前でっっ!!


 彼の顔は真っ赤だった。

 エル神官長は急いで紅茶を飲み、喉に詰まったケーキを流し込んだ。


「ぐっ……ゴクリ」


 ちなみにマーガレット副神官は、レイ達の席に背中を向けて座っていた為、店内が入店してきた異世界人達でドヨめいた時に振り返って目をやったくらいで、後は密かに憧れているエル神官長とのお茶タイムに夢中になっていた為、ペロリ事件は見ていなかった。


 幸せってこういうことを言うのね

 でも、どうしたのかしら

 エル兄様ったら、お顔が真っ赤だわ

 やっぱりこういうお店は恥ずかしいのかしら


 マーガレットは自分から誘っておいて後悔した。


 エル兄様は女の人が苦手なんだし

 カップルばかりじゃなくて

 もっと男性が多いお店が良かったのかも


 

 そんな中レイは、近くに座っているカップルの男性がチラチラと自分のことを見ていることに気がついた。

 相手の彼女らしき女性も、彼の視線の先が気になるのか、さり気なく何回もレイの方を振り返っている。


 可哀想に

 私のことをあんなに見つめたりしたら

 彼女として立つ瀬がないわね

 でも安心して?

 貴方の彼、私のタイプからかけ離れてるから

 何なら、店員さんの方がまだマシだから


 レイは失礼だった。

 そしてレイはそんな彼女に向かって渾身の「貴方の彼だけど取らないから。いえ、むしろ取りたくないから」スマイルを向けた。

 彼女は超美人の異世界人レイのスマイルを至近距離でモロにくらい、額に手を当て貧血を起こした。

 驚いた男性が彼女が倒れないようサッと支え、必死になって声をかけたが、女性は返事をせず、青いような赤いような顔をしていた。

 男性は店の者に頼んで店の前まで馬車を回させた。

 店内は「何だ?どうした?」とザワつき始めた。

 女性は男性によってお姫様抱っこで店を出て行ったが、最後まで首がおかしくなるほど、笑顔で自分に向かって手を振るレイを熱い眼差しで見つめていた。

 一部の女性にとっては、異世界人はアイドルのような憧れの存在だったりするのだ。


 お店が一旦落ち着きを取り戻してから


「あの、失礼いたします。私どものケーキはお口に合いましたでしょうか」


 と恐縮しながら店長が現れた。

 その後ろには男女二名の店員がこちらも緊張した様子で上目遣いにレイ達をチラチラと見ていた。

 手にはそれぞれ色紙と青いインクの染みたスポンジを持っている。


「うまかったよな」

「ええ。美味しくいただきました」


 ルカとレイが笑顔で返すと、店長がモゴモゴと話ししだした。


「それは……よかったです。あの、それでもし、よろしければ……お二人のご来店記念にこちらにお手形をいただきたいのですが。もちろん、御手のインクはこちらで落とさせていただきますので、ご心配なく!」


 後ろの店員二人も力強く頷いた。


「マジでスター扱いなんだな。別に俺はいいぜー」


 ルカが「それか?」と手を出すと髪の毛と同じような真っ赤な顔をした女の子の店員が皿に乗ったスポンジを差し出した。

 ルカは皿をテーブルの上に置くと、手をスポンジに押し付け、水色の髪の男性店員が色紙を渡してきたので、テーブルの上に置き、ポンと手形をつけた。


「ほらよ」

「はい!ありがとうございます!では私達で御手を」


 水髪店員がルカの手を包み込むように回転する水を出すと、インクが綺麗に取れた。

 すかさず今度は赤髪店員が手をかざしながら店長がまた手を包み込むようにすると、今度は温風が回転した。

 それを見たルカとレイは大興奮した。


「アンタらスゲーな!」

「本当、素敵だわ!!」


 店長達はこんな初級の魔法で褒められたのは子供の頃以来だったので、何だか感動して泣きそうになってしまった。


「今度は私の番ね」


 レイが嬉しそうにバッグから何かを取り出した。

 そして鏡を見ながらリップを塗り直すと、ポカンとしている青髪店員に手を出して色紙をもらうと、色紙のど真ん中にチュッとキスマークをつけた。

 店長達は目を見開いて固まった。

 店内のあちこちでガシャンとかバターンという音が聞こえたが、レイは少し悲しそうな顔になって、固まったままの青髪店員を見つめた。


「ねぇ、私にはしてくださらないの?」


 青髪店長は意味がわからずレイにジッと見つめられ、余計に頭が回らなくなって真っ赤な顔でパクパクしていた。


「さっきルカにしてたアレ。私にもしてくださらない?」


 三人はポケッとしていたが「ハッ」と一人だけ我にかえった青髪店員が恐る恐る聞いた。


「もしかしてみ、水でべ、紅を落としてから乾かす、アレ、でよろしいですか」


「そうよーいい?してして?」


 ルカは「頼み方がエロくね?」と笑った。

 店長達はレイに頼られている感じがして、嬉しくて心臓が飛び出しそうだった。

 レイは目を閉じて「はい、んー」と、キスをするように唇をほんの少しだけ突き出した。

 店内はもう自分達の属性の暴走を止めようとする客達が、オリジナルの自分戒めルーティーンをやり始めたので色々な声や音が入り乱れ、カオス状態だった。


 何とお可愛らしい!!

 今日は素敵な事が起きた記念日にしよう!!!


 客と店員の心が一つになった瞬間だった。

 そして、ブルブル震える手でレイの唇から適温な温水で紅を落とし、優しい温風で乾かした三人は、二枚の色紙を大事そうに抱えながら何度も頭を下げ店の奥へと消えて行った。

 

 レイ達がお店を出る頃には「サービスでございます!」とお城の皆んなに、可愛らしい大量のマカロン詰め合わせをお土産にいただいたので、お礼を言い、仲良く腕を組みながら店を後にした。



 レイ達が出た後の店は、信じられないほどガラガラになってしまったのだが、店長はホクホク顔で店の正面玄関の一番目立つ所に金ピカに派手な額縁の中に入れたレイ達二人の色紙を飾った。


 青髪店員が記念にコッソリ手の中に残しておいたレイの紅を落とした水を持ち帰ろうとしていたのを目敏く見つけた赤髪店員は、一生に一度使うか使わないかの高度な火の上級魔法で、彼の手の中にある水を素早く蒸発させてしまった。

 青髪店員は暫く(しかばね)のようになっていたという。



 護衛のライリーとニールには「お家で食べてね」と箱でお土産を渡した。

 ライリーは「私どものような者の為に、お気遣いいただいて申し訳ございません」と何度も頭を下げ恐縮していたが、ニールは無言で一度だけ軽く頭を下げて受け取った。


 それからお城に戻ると、いつもお世話になっている侍女さん達やら護衛達にお土産を何箱か渡した。


「私達のために!?」

「ここのマカロン有名ですよね!」

「勿体無さ過ぎて食べれませんっ!!」


 などと皆が大興奮して大騒ぎになってしまったが、騎士団長と侍女頭がそれぞれの風魔法で飛んでくると、途端に水を打ったように静かになったので、ちょっと笑えた。


 そして夜。


「今日という今日はお前と片時も離れなねーからな」


 という謎の闘志に燃えたルカは、レイがお風呂上がりに使うドライヤーや化粧水などをベッドサイドテーブルの上にせっせと準備し始め、執事ですか?というくらいにテキパキと世話を焼いてくれた。

 お風呂から出たレイは、なぜか先にお風呂を済ませていたルカによって、速攻でベッドルームへと連行されたのだった。







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