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プロローグ

少し古いけど、おとぎ話に出てきそうな可愛いアパート。

けれど、男女関係なく住むこともできるデザインになっていて、男の人も少なからずいる。


必要最低限の荷物を詰めた鞄と、これから住むことになっている部屋の鍵を片手に持って「頑張ろう」と呟いた。


カツカツと音を鳴らしながら階段を上がって、自分の部屋の前にたつ。


初めて自分でカチャ、と鍵を入れていざドアノブを握ると…ガチャ、ガチャ、ガチャ


あ、あれ?開かないんだけどコレ。

右に回すの!?左に回すの!?


どっちにも回らないんだけど!


あせる私の頭の中はパニックが起こっている。




ニューヨークでの新生活。


なにもかもが不安だった。


今まで通じて当たり前だった日本語が当たり前に通じない。

英語は得意だと強気で思っていてアメリカに来たのに。


それなのに、別にこれくらい良いじゃない!と言いたくなる程度の発音の違いで首を傾げられたり。



「あー!!もう!」



汚したくないと思っていたお気に入りの鞄も、バンッと地面に落とす程イラついてきた。



「You make me sick.(お前むかつく。)」



鍵に向かって、恥なんどなくって、ただの独り言でボソッと呟く。

きっと私の英語、英語圏の人たちからしたら発音が悪くて通じないんだ。



「Im sick and tirred of it.(うんざりです。)」



半ばあきらめ口調でとどめに言うと、隣の部屋の玄関がガチャっと開いて



「…あの〜、大丈夫ですか…?」



とメガネを掛けた年の近そうな男の人が日本語で聞いてきた。

やばい恥ずかしい…。下手くそな英語を全部聞かれていたのだろうか…。ああああ。



「か、鍵の開け方がわからなくって!」



隣にこしてきたとか、そんな説明も全く無しなのに慌てた言葉で言った私に



「あ、それなら。」



そう言って彼は、スニーカーを軽く履いた姿で玄関から出てきて



「ちょっと貸して。」



私の手からそっと鍵を取って慣れた手つきで鍵穴に入れた。



「こうやって、強めに、右に回すんだ。」



ガチャンと気持ちの良い音をたてて鍵が開く。

ベタだけど、笑顔が素敵だと思った。



「…あ、ありがとうございます。」



長旅で疲れた体に魔がさしたのかな。


はい。とこぶしに渡された鍵から伝わる彼の体温。

気づかれないようにそっと、背中に隠して握り締めた。

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