1-4-1.相談
ボードゲーム部には、いくつかの班がある。
一つは捕獲ゲーム班。主に将棋、チェス、象棋などが嗜まれる。
一つは包囲ゲーム班。主に囲碁、リバーシ、五目並べなどが嗜まれる。
一つは競争ゲーム班。主に双六、バッグギャモンなどが嗜まれる。
そして俺が入っている班はボードゲーム制作班。ボードゲームを制作し、作ったボードゲームを嗜む。
その班の班長であり、ボードゲーム部自体の部長である美友紀先輩は過去にボードゲームコンテストで自身のボードゲームを製品化させた実績を持つ。
その他にも何人かこの部活にはそういう人がいるそうだ。
要するにこの部活は実績を持っている。
――さて、今は放課後。
俺はボードゲーム部の部室に辿り着いた。
「やぁ」
部室にはもう美友紀先輩、そしてその他高学年の先輩がいらっしゃっていた。
「こ、こんにちは」
美友紀先輩はそう言う俺を見て優しく微笑む。
そして
「どうしたのかな?」
と言葉をかけてくる。
何となく彼女に大柳さんのことを相談するのは許せないが、仕方ない。俺では間違いなく解決できないのだから。
彼女が超能力者なのか否か俺は分からないし、もしストーカーでないのならば「俺と二度と関わるな」という言葉で生まれた溝も埋めなければいけない。
ただ彼女が超能力者でないかと思った理由は一つあった。
それは俺の行動を分単位で、何も見ずに言えたことだ。
そう、何も見ずに。
だから俺は一つ結論を出していた。
『まあ魅力的な人だよ? 気配りも出来て、話しても楽しくて、成績優秀で……そう、それこそまさに非の打ち所がない人かな』
美和の言葉を思い出す。
俺のことを知っているだけでは、そんな人にはなれない。努力の結晶を言えばそこまでだが、そんな人いるのだろうか。
それはつまり……。
「彼女は、色々なことを知っていると思います」
美友紀先輩は興味深そうに俺を見やる。
そして「なるほど、ちょっと待ってくれたまえ」と言って奥から何かを取ってくる。
「ここにいる者は全員超能力に理解がある。まあボードゲーム部らしく、ボードゲームでもやりながら話そうじゃ無いか」
そう言って彼女が広げるのは11マスの半円上の盤。
端のマスそれぞれに駒を置き、彼女はサラッと説明する。
「ルールは簡単。ここにある4つのトウモロコシを投げて、黒が出た数だけそれぞれの対するマスに目がけて駒を進める。相手の駒があるところに止まったら捕虜にし、その状態で自分から見た11マス目に辿り着けば捕虜を殺すことが出来、1マス目に戻る。それを繰り返して相手を全滅させることを目標とするゲームだよ」
まあこれはオリジナルゲームではなく、メキシコのマヤ文明で行なわれていたとされるプルックというボードゲームなんだけどね。頭はさほど使わなさそうだから、話し合いに最適かななんて。
彼女はそう言って、トウモロコシの種を木の皿の上にばらまく。
それでは……。
「詳しく話を聞かせてくれないかい?」
彼女のその言葉を聞いて。
俺は今日あったこと、全てを話した。