ヲタッカーズ16 爆弾魔ボマ・マー
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
時空海賊、ギャング、宇宙人の聖都侵略が始まった!
聖都の危機にアキバのCharlie's angels
"ヲタッカーズ"が立ち上がる!
オトナのジュブナイル第16話です。
今回は、重警備刑務所を脱獄した爆弾魔の目的は商売敵への復讐と溺愛する息子に一目会うコトとわかります。
ところが、再会を果たした息子を復讐の駒に使う狂気から計画に歪みが…さらに人類改造計画を狙う狂気が加わって…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 爆弾魔、脱走
蔵前橋通り重警備刑務所。
「先月、あの女に3回爆破された。ま、せいぜい頑張れょ」
「え?脅かすなょ…ホラ、朝食だ。10分で食え。食わないなら下げるぞ…あれ、足だょ?誰かが倒れてるゾ?」
「馬鹿野郎、よせっ!」
その看守は、小窓から覗いた房内に、ドアにもたれるように倒れた囚人の足を見つける。
動転した看守は、同僚が止める間もなく、勢いよく鋼鉄製ドアを蹴り開けようとしたら…
どっかーん!
脚が触れるやドアが爆発、火炎の大噴流が噴き出して看守達を瞬時に骨まで焼き尽くす。
床に倒れたフリで爆風を避けた"女"は、立ち上がって深呼吸しクンクンと臭いを嗅ぐ。
「…朝嗅ぐ成形炸薬の臭いは、格別ね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
厳冬の淡い陽の光を浴びながら、アキバ上空を飛ぶふたりのスーパーヒロイン。
ヲタッカーズの飛ぶ系ヒロイン、妖精担当のエアリとロケット兵装備のマリレ。
ふたりの(空中)ガールズトーク。
「気持ち良いわー。自由だし本当の自分に戻れる感じ。飛行訓練って最高ね!」
「あのね。遊びじゃないの。コレは、編隊飛行の訓練ょ。フォーメーションを崩さないで」
「わかってるって。実は…下で私のTOも見てるし」
見下ろすと、万世橋の上で双眼鏡を目に当てふたりの飛行を見守る男がいる。
マリレが、傍らを飛ぶエアリにウィンクするとエアリは少し驚いた顔をスルw
ところが…
「あら?タイヘンょマリレ!」
「え?何?」
「貴女のTO、包囲されてるわ?何やらかしたの?万引き?」
ふたりのスーパーヒロインが目を凝らすと、万世橋の上で芥子粒が芥子粒を包囲してる。
さらにゴキブリみたいな黒SUVが交通法規ガン無視で何台も突っ込み…こりゃ大捕物だw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ワラッタ・ワールドワイド・メディアのアキバタワー最上階にあるサリアCEOのルーム。
「お父様はお元気?宇宙作戦群のマイン将軍には、佐官の頃からインタビューをさせてもらっているのょ?」
「余り父とは話しません。実は、仲が良くなくて」
「そうナンだ?将軍が自叙伝に書いてた内容とは違うのね」
「あんなの。売名目当てのクズ本ですわ」
「なるほど…貴女は、賢くて美人ね。さすがは、テリィたんの元カノ。士官学校の御出身?」
「あとハーバードのロースクールも」
「なぜ宇宙作戦群に?大手の法律事務所でも入れたでしょうに」
「詐欺や脅迫に加担するより、世の中の役に立ちたくて」
「まさに理想の人材だわ!貴女、自分は5年後に何をしていたいと思う?」
「あら?コレは採用面接ですか?」
「そうしても良いのょ?」
「光栄ですが、今は宇宙作戦群の法務官なので、特に仕事は探していません」
「ヒカリさん。確かに貴女は、群のエリート法務官だけど…今は、ヨガパンツで私に会える御身分なのょ?」
「え?コレ、ブランドですけど…」
「ソレがヨガパンツっぽいと言っているの。確かに、テリィたんの優柔不断には、私もクラッと来るコトがアル。ソレは素直に認めるわ。でも、今の彼にはミユリさんがいる」
「でも、ラッツは彼女に満足してるのかしら?」
「うわ!大胆…とにかく!頭の良い女性は、愛に生きても虚しさを感じるモノょ。ソレは、男や赤ん坊では埋め切れない。知的な女性は働くべきょ。さもないと、自分も自分らしさも失ってしまう。人生の勝機すらも」
「私に…ビジネスパースンになれと?」
「貴女に、ワラッタの法律顧問になってもらいたい。今のお給料の3倍出すわ」
「3倍?」
「額は問題じゃないの。良く考えて。コレ、ヘッドハンティングだから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、万世橋の上では大捕物が展開されており、トンでもない大騒ぎが起こっているw
「ダマヤ!お前を完全に包囲した!両手を見えるトコロに出せ!」
「な、何ゴトだょ!双眼鏡で見てたのはヲタッカーズの推しメンで、俺はそのTOだ。ノゾキやストーカーじゃナイぞ!」
「何の話だ?今朝方、蔵前橋通りの重警備刑務所から脱走した爆弾魔、通称ボマ・マーは、お前のマ・マーだな?」
「ソレがどうした…ってか、ホントにマ・マースパゲティ、じゃなかった、マ・マーが脱獄したのか?」
「看守2名を爆殺して姿をくらました。ボマ・マーから電話は?」
「ないょ」
「自宅には?」
「昨夜から帰宅してないから、わからない」
「何らかの接触があったろう?」
「マ・マーには俺の連絡先は教えてない」
「ボマ・マーは情緒不安定で危険な人物だ」
「知ってるょ。昔からだ」
「ボマ・マーに友人は?」
「いるかょソンなモン」
「おい!息子なら…」
「マ・マーが爆弾で2人も殺したのなら、もう僕はマ・マーの息子じゃない!」
ソコへヲタッカーズのふたりが舞い降りる。
「あ、エアリにマリレ。今回は警察のヤマだ。助けが必要な時は呼ぶから口を挟まないでくれ」
「あら、鮫の旦那。いえ、ちょっち通りかかって…じゃなかった、飛びかかったモノだから」
「マリレ。全部聞かれちゃったみたいだね」
現場の指揮は新橋鮫だ。
万世橋警察署の敏腕警部ナンだがヲタッカーズは彼には色々と貸しがアル。
うなだれるダマヤを見かねて、マリレは新橋鮫に目配せして彼を連れ出す。
「確かに、お母さんが服役してるとは聞いてたけど…」
「そういう目で見られたくなくて余り話さなかった。でも、マ・マーだって昔はマトモだったンだ。普通の優しい母親。よく手作りの花火で遊んでくれた」
「何か怪しい兆候は?ってか、その手作りの花火って時点でもうイっちゃってるけど」
「マ・マーの実家は、代々続く花火師だった。お兄さんが継いだンだけど、商才がなくて潰れた。そのコトを、マ・マーは怒ってたんだ。その怒りをため込んであんなコトを…しかも、ライバル社に花火の設計を盗まれた挙句、先に特許を取られた」
「花火の特許?で、仕返しを?」
「いや。マ・マーは意外に臆病だ。直接文句も言えズ、小包に花火を押し込み送りつけた。で、秘書さんが包みを開けて…」
「どんな言葉も慰めにならないけど…ウチも
身内に悪人がいるからよくわかる。でも、お母さんから連絡は無いんでしょ?」
「実は…今朝、差出人不明のメールが来た。昔よく遊んだ場所に来いって」
「ダマヤ…」
「いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ万世橋に囲まれて、混乱しちゃって…」
「なぜ万世橋にウソを?」
「わからない。僕は、怒りに飲み込まれないように、いつも全部忘れようとしてルンだ。でも、水に流そうと思えば思うホド、マ・マーのコトが憎くなって…どうしよう、マリレ。僕はどーしたら良い?」
「ダマヤ。貴方に出来るコトは1つだけ。鮫の旦那!ダマヤが警部にお話しがあるそーです!」
第2章 爆弾魔ボマ・マーを追え
神田川岸にあるヨットハーバー。
陸上げしたクルーザーの列の中。
「チェックメイトキング3!コチラはホワイトルークスカイウォーカー。目的地に接近中。気のせいか魚臭い」
「漁港じゃないから100%気のせいだ…ソレから余りマイクを意識するな」
「了解」
いちいち袖口のマイクに口を近づけ、律儀に応えるダマヤに頭を抱える新橋鮫…と僕達w
ボマ・マーは実の母、と万世橋警察署に打ち明けて、ダマヤは自ら囮調査を買って出る。
「全チーム。配置につけ」
「了解」
「お願い!ダマヤを守って!」
自分のTOであるダマヤを気遣うマリレ。
しかし、指揮官の新橋鮫は素っ気ない。
「万全は期すが、彼の母親に看守が殺されてる。本人の要望で、お前達も連れてきたが、作戦には口出しするな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、僕は厄介な呼び出しを受けて、マチガイダサンドウィッチズにいる…元カノとw
「ねぇラッツ。サリアさんのワラッタ・ワールドワイド・メディアでは、グループ企業の9割が女性の社長なのょ。知ってた?」
「スゴいょな。で、仕事は引き受けるの?」
「ラッツと一緒にアキバで働けたら最高ょね」
「全然。でも、君が望むならそうしたら?」
「答えになってない」
「おいおい。ヒカリのキャリアだろ?僕には決められない」
「大きなチャンスだわ。やっと掴んだ。パワフルな女性の下で働いてみたかったの」
「なら、もう答えは出てる」
「もしかして、私に嫉妬してる?私って可愛くないかな?」
「全然。でも、ヒカリが満足ならソレで良いさ」
「ラッツと私の立場が逆だったら、きっと私は心から喜んでるょ?」
「なら、受ければ良いと思うょ」
「貴方の許可は求めてナイ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、ヨットハーバーでは何もなかったが、さらにメールの指示で、ダマヤはパーツ通りへと向かい新橋鮫達もゾロゾロと移動スルw
向かう先は…ややっ?あのゲーセンは?!
「マ・マー?」
「ダマヤ、立派になったのね」
「自首して」
「お前のために脱獄したのょ。ダマヤ、寂しかったでしょ?」
「マ・マーは病気なんだ」
「私のダマヤ。愛しい息子。貴方は、私の最高傑作ょ」
「マ・マーの最高傑作は爆弾だろ?」
「私達はソックリなの。2人で何でも出来るわ」
「僕は、マ・マーとは違う」
「同じ血を引く天才ょ。凡人が恐れるこの才能をお前も受け継いでいるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋警察署 現地本部。
「ホワイトルークスカイウォーカーはパーツ通りのゲーセンに入った!現場に爆弾魔ボマ・マーを確認。出動だ!行くぞ!」
「ALRIGHT!GO GO GO!」
「私達も行く?」
「ヲタッカーズは待機しててくれ。作戦開始!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
舞台裏はムチャクチャ慌しくなるが、ゲーセンでは母子の感激の再会シーンが継続中だ。
「面会に来てくれなかったわね?元気な顔を見たかったわ」
「元気なワケない。マ・マーが殺人犯として逮捕されるのを見たンだ。僕は未だ11歳だったのに。平気でいられると思う?」
息子の余りの塩対応に、ボマ・マーが反論しかけて口を半開きにした矢先…警官隊が突入!
「アキバポリス!アキバポリスだ!動くな!爆弾魔ボマ・マー!」
「マ・マー、従ってよ!」
「両手を頭の後ろで組んで跪け!早く!」
ところが、突然の警官隊の突入にボマ・マーは一向に驚いた様子も見せズひたすら悲しげ。
「ダマヤ、なぜこんな真似を?」
「大人しく刑務所に帰ルンだ、マ・マー」
「投降の意思ナシ。撃て!」
取り囲んだ警官隊がボマ・マーを全力射撃!
すると…まるでガラスが割れるかの如く…
ボマ・マーの像が粉々に割れて崩れ落ちるw
「何?3次元ホログラムだと?」
「マ・マーは…最初からいなかったのか?」
「だから、1人で来なさいと言ったの。逃げなさい、ダマヤ。早く!」
細工されたスプリンクラーから真っ白いガスが噴き出し、ソレを吸い込んだ新橋鮫以下の警官隊員が一斉に咳き込み、喉を掻き毟るw
毒ガスか?!
第2章 "秘密の部屋"作戦
「ウフフ。このゲームセンターをボマ・マーが指定してきた理由は?」
「さぁ。あっはっは」
「オホホ。ボマ・マーは貴方のために脱獄したとか何とか?」
「わからない。エヘヘ」
結局スプリンクラーから噴き出たのは毒ガスではなくて笑気ガス、つまり笑いガスで、現場は爆笑、失笑、大笑いの坩堝と化してるw
もちろん、ボマ・マーは影も形もない…
「ギャハハ。ボマ・マーが貴方を最高傑作と呼ンでたょね、確か?」
「戯言だょクスクス。イカれた人だから、意味nothing。あれ?マリレ、いたの?ニヤニヤ」
「もぉ。ちょっち顔貸してょテヘペロ」
笑いながらの事情聴取からダマヤを連れ出すマリレ…もまた笑気ガスを吸ってるw
でも、一々面倒臭いので、それぞれのセリフから笑い声は省きマス。悪しからズ←
「ダマヤったらママさん、ヤバいょ。警察は見つけ次第殺す気ょ?」
「やっぱし?でも、殺されても仕方ないや」
「え?警察より先に見つけて匿わなきゃでしょ?でも、ダマヤは関わってはダメ。貴方が捜査妨害で検挙されちゃう」
「でも、コレは俺とマ・マーの問題だ」
「私にも関係がある。だって、いつもダマヤは私を支えてくれてるじゃない?私がスーパーヒロインで居られるのは、ダマヤのおかげなのょ?」
「そんなコトない。マリレにはスーパーヒロインとしてのパワーもアレば、心もある。ヲタクの助けなんか不要だょ」
「いいえ。スーパーヒロインにはヲタクの助けが不可欠なの。ミユリ姉様とテリィたんを見ればわかるでしょ?」
「うーん。確かに、スーパーヒロインである以前に、アキバのレジェンドメイドがあんなヲタクと…」
「私も一人ぼっちの辛さは知ってる。今でも孤独を感じる時はあるわ。でも、TOと一緒なら寂しくない。私は、ダマヤがいないと心が折れちゃうの」
「ダマヤ…」
「あ、キスはno thank you!でも、力になりたいの。私のTOになってくれた御礼に…あら?ちょっち待って。ミユリさんに呼ばれたわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻、ボマ・マーがトリックに使ったゲーセンの地下深くで秘密の会話が交わされる。
実は、例のゲーセンの地下には秘密裡につくられた防衛組織ジャドーの司令部があるw
レイカ司令官が腕組みして溜め息をつく。
「やれやれ。上の大捕物もやっと終わったみたいね。最後は、みんなでガス吸って、大笑いして大団円?で、爆弾魔ボマ・マーは結局、何処に隠れてるの?」
「ソレが…衛星軌道上のコンピューター衛星"シドレ"に追跡させたトコロ、秋葉原のスタートアップ"ゼロリ"のHQに匿われてる模様です」
「"ゼロリ"って、あのラズゥ博士の…」
その名を聞きレイカ司令官は顔をしかめる。
「熱線追尾で部屋までわかってます。ゼロリ社の52号室。確か、この部屋は…」
「通称"腹ポッターの秘密の部屋"ね。前回は確か電気怪人のエレギャーナが…やれやれ、怪人専用の応接間でもあるのかしら」
「今回逃げ込んだのは人間だけど、あの部屋には何かアリそうですね」
「OK。潜入してみましょう」
「え?司令官が?」
「は?私は行かないわょ。ミユリさんを呼んで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「えっ?私が?!何で?」
勤務中に呼ばれたミユリさんは、メイド服のママ、司令部に駆けつける。
あ、ミユリさんは(一応僕のw)御屋敷でメイド長をやってもらっている。
「でも、ゼロリ社に潜入するなら、先ずビル地下にある電源を落としてから…」
「すぐ非常用電源が作動し、警備員が来る。無理ょ」
「他に名案があるのね?また、私達に変身させてスーパーパワーで潜入させるつもり?」
「スーパーパワー?うーん今回は通常パワーで十分だわ…コスプレだから」
「えっ?!」
「だって、ホラ、ミユリさんって池袋にいた頃は(コスプ)レイヤーだったンでしょ?」←
「…確かに私達ヲタッカーズは、民間軍事会社としてジャドーと契約してるけど…コスプレは契約外じゃない?」
「ソレが、前回の変そ…じゃなかったコスプレ作戦が大当りだったので今回も是非お願いしたいの。ゼロリ社のラズゥ博士に化けて"秘密の部屋"に潜入して」
「…わかりました。でも、潜入してる間ラズゥ博士を遠ざけて欲しいわ。その陽動作戦を司令官にお願い出来る?ソレこそ貴女にしか出来ないわ。このメイド服、貸してあげるから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
天才ナンだけど、敵か味方かイマイチ良くわからないラズゥ博士は…実はレズビアン。
しかも、相手がメイドのコスプレだと良く萌え…特にレイカ司令官だと最強に萌える←
「あら?レイカさん、久しぶりね!貴女からお電話をもらえるなんて!ウレし過ぐるわ!」
「実はね。ふたりだけで、お茶会をしたいの。最近忙しくて、タマにはメイドのコスプレでもしないと心が折れてしまうわ」
「ええっ?!まるで神様からのデートのお誘いだわ!大胆なのね」
「レンタルカフェを借りておくから、ラズゥお嬢様。じゃあ今夜」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
レンタルカフェとは、短期間のイベントなどに貸し出される、設備一式揃ったカフェだ。
まぁ大体潰れた御屋敷の後を居抜きで使い回すのが通例で、今回の現場は妻恋坂にある。
「見とれてるの?」
「えぇ。余りにステキなメイド服だわ!ソレに…何処に隠しマイクをつけてるのかなって」
「調べて…みたい?」
メイド風俗もそこのけの媚態でラズゥ博士、じゃなかった、御嬢様に迫るレイカ司令官。
「さぁ。お茶を召し上がれ。ふぅふぅあーん」
「あぁ!もう死んでしまいそー!萌え萌えよっ!自分で食べるけど…美味しい!」
「ソレはトンボの卵。一口100万円ょ」
因みに"ふぅふぅあーん"はメイドが口で吹いて冷ましアーンをしてくれるサービスだ←
「ごめんなさい。ところで…ラズゥお嬢様の会社は、よく"リアルの裂け目"からの来客があるそうね。何か狙われるモノでも隠してるの?」
「"異次元からの来客"も、最近巷をお騒がせのヲタッカーズも、私にとっては、大して変わらないわ」
「でも、ヲタッカーズは人を救ってるわ!」
「あら?何をムキになってるの?彼女達に何か借りでも?ソレとも嫉妬?密かに恋してるとか。レイカさんも…レズビアン?」
「私は正常位…じゃなかった、正統派です!ヲタッカーズは、政権と直結した秘密機関と業務上の協力関係を結んでいるらしいわ。ゼロリ社はどーなの?」
「ウチは、全くの無関係ょ。さ、民間活力に乾杯しましょ。価値の創造者たる自由な企業に」
その時、メイド服の裾が微かに明滅スルw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。真夜中のザロリ社、通称"腹ポッターの秘密の部屋"の前の廊下では…
「ラズゥCEO!リフレッシュで御屋敷に御帰宅と伺いましたが、もうお出掛けされたのですか?」
「早めに切り上げたの。残念なメイドさんばかりで萌えなくて」
「最近の秋葉原メイドは、地下アイドル未満が多いですからね」
「え!素敵なメイドさんだっているわ!」
「え?あ、モチロンです!何でソンなムキになるのかしら…」
「あ、いや。貴方の逝うコトももっともょ。人生に迷いが生じたわ。ちょっち外してくれる?」
「かしこまりました、ラズゥCEO」
深夜まで残業してた秘書を追い払い、ミユリさんはユルくポーズをとって指紋認証システムに微電撃を食らわす…が、アクセス拒否w
「まぁ。コスプレイヤーは入室お断り?」
ところが、途方に暮れる間もなく、完全武装の傭兵が短機関銃を構えて駆けつけて来るw
「動くな!…あ、すみません。CEOでしたか。警報が鳴動したモノで」
「心配ないわ。見に来ただけょ」
「では、失礼します」
「あ、ちょっち室内の状態が気になるわ。開けてくれる?ココ」
「え?コードサラマンダーですが…」
「あら、承知の上ょ?」
「まさか、コードサラマンダーの意味をお忘れですか?」
傭兵が一斉に短機関銃を構える。
全員が引き金に指をかけている。
「え?やだぁ、もぉ、まさかぁ!もちろんコードサラマンダーなワケょ…って、口止めしても無理そうね」
「え?何を…」
「ごめんね」
瞬時に全員が電撃を浴びて黒焦げに…
「随分と騒々しいのね。何事?」
「あっ!貴女はボマ・マー…さん?」
「あら。この人達、真っ黒けじゃない」
その時、アッサリ"秘密の部屋"の鉄扉が開き、爆弾魔ボマ・マーがひょっこり顔を出すw
「私は、息子さんのダマヤさんの友人です」
「まぁ。もしかして彼女サンなの?私に内緒で!」
「違います!でも、息子さんが大切でしょ?ダマヤさんの将来を良く考えて…」
ボマ・マーは、聞く耳持たズ無表情なママ、掌の中のリモコンボタンを押す←
すると、天井から黒い粉塵がドサリと落ちて来て、タチマチ周囲は真っ黒けw
「何コレ?」
「粉末火薬。火花ひとつでフロア全体が吹っ飛ぶわ。貴女は…あの黒焦げな人達を見ると電撃使いナンでしょ?火の用心でヨロシクね?私も死にたくないし」
「ねぇボマ・マー…さん?貴女は、息子さんとやり直すチャンスがあるの。ソレを無駄にしないで」
「モチロンょ。そのために脱獄したンだから。コレから息子に逢いに行くの。誰だか知らないけど、貴女のおかげで、変な手術も受けズに済んだコトだし」
「変な手術?」
ミユリさんが覗き込むと"秘密の部屋"の中は手術室のようになっている。
中央に手術台があり、周囲に様々な医療機器が散乱し警報ブザーが鳴動中w
見ると、ボマ・マーもアチコチに引き抜かれた計測機器のコードやパッチが付いたママ。
さらに、点滴台をガラガラと引いて、有無を言わせズにミユリさんの横を素通りスル。
「ココで、貴女が電撃を放てば全てアウトでゲームセット。だから、大人しく私を息子に逢いに行かせてね」
「…こんなコトして、誰が喜ぶの?」
「どいて頂戴」
第3章 襲撃!クラウドファンディーナ
ジャドー司令部。
"秘密の部屋"作戦から戻ったレイカ司令官が、メイド服のママで深々と溜め息をつく。
「ヒールって宇宙人に殴られたみたいに足が痛くなるわ。で、ミユリさん。成果は?」
「ボマ・マーにはマンマと逃げられました。でも"秘密の部屋"の画像を何枚か」
「ボマ・マーは人間だからウチの管轄外ょ気にしないで。そんなコトより"秘密の部屋"の中が手術室だったンだって?」
「点滴のラベルを読み込んだら亜硫酸ナトリウムとヨウ素酸ナトリウムでした。混ぜたら塩酸が出来るけど…何で彼女は溶けないのかしら」
「しかも、バイタルは安定、脳も正常に働いてたのね?ボマ・マーは…もはや人間じゃないのカモ」
「というコトは…"秘密の部屋"は、人体改造の実験手術室だったってコトでしょうか?」
「何のために?ってかミユリさん、ホントにコスプレで侵入したの?」
「あ、スーパーパワーも少し使ったカモ。誰も傷ついてないと良いのですが」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方"秘密の部屋"では…
「警備の傭兵は全員、記憶を失ってます。誰の顔も覚えてないし、何も覚えてません。前頭葉と側頭葉に損傷があって…恐らく記憶は戻らないかと」
ゼロリ社の産業医が報告スル。
腕組みをして聞くラズゥCEO。
「仕方ないわ。全員、サイボーグ戦闘員に改造して頂戴。で、監視カメラの画像は?」
「消されてました」
「そう。でも大丈夫ょ。最重要エリアには、予備のカメラを仕掛けてあるの」
で、画像を再生したら…自分が映ってるw
「あらあら。画像のtime:2017なら私は御帰宅中ょ」
「え?もう帰られてたのですか?」
「いえ、御屋敷に御帰宅してたの」
「あ、ソッチ?私は、この数分後にCEOにお会いしてお話ししたのですが…じゃコレは誰?アレは誰だったのかしら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ジャドー司令部に近いパーツ通りの街灯の下でマリレとダマヤが言い争ってるw
「誰に電話してるの?」
「万世橋」
「お母さんが殺されるわょ?」
「別にあんなマ・マー、いない方が良い」
「私達が見つけて刑務所に連れ戻さなきゃ」
「一体何のために?あの人は心が腐ってる。救いようがない」
「病気だから仕方ナイのよ」
「そんなワケない」
「あり得るの!」
「じゃあ僕もそうなるのか?そうだろう?マ・マーと僕は昔からよく似てると言われてた。見た目や話し方がさ。もし僕がマ・マーの同類なら…」
「待って。ソレ違うから」
「マ・マーの遺伝子は時限爆弾ナンだ。いつか爆発して、僕も爆弾魔に変わる」
「ダマヤ。貴方は良い人ょ」
「マ・マーもそう言われてた。でも、壊れた。嫌なコトがあって腹が立つ度に徐々におかしくなって、いつか僕もマ・マーみたいに壊れるのか?」
「誰もが、その日を境に人生が一変するコトってある。でも、ダマヤはお母さんみたいにはならないの。自分の世界が壊れても、貴方は人に怒りをぶつけない。ソレに、ダマヤと繋がってる人はお母さんだけじゃない。私も1度は…この絆は誰にも…」
ダマヤを勇気づけようと懸命に話すマリレ。
その唇を塞ぐようにダマヤがキス!するが…
マリレに避けられる←
「あ、ごめん」
「いいの。気にしないで」
「帰るょ」
「私も行かなきゃ」
パーツ通りの街灯の下で、キスが不発のママ、気マズく別れるふたり←
ところが、ダマヤは角を曲がったトコロで出会頭にボマ・マーと激突w
「ビックリしたぁ…あれ?マ・マー?」
そのママ、誘拐される…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そうとは知らズに呼び出された僕は、またもマチガイダサンドウィッチズだ…元カノとw
「ラッツ!何で隠してたの?!」
「な、何をだょ?」
「ヲタッカーズのマリレちゃんのTOが爆弾魔ボマ・マーの息子だって?」
「え?良く知ってるなwでも、ダマヤはソレを余り知られたくないンだょ」
「なら顔を変えるべきね。で、インタビューはいつにしたら良い?彼は繊細そうだけど、カメラの前で泣けるかしら?」
「おいおい。インタビューなんか無理だょ」
「止めないで!他局で応じる前に、必ず私が口説き落として独占インタビューするわ!ソレを手土産に私はワラッタに転職よっ!ラッツも手伝って!だって、私は貴方の元カノだから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そのまた同時刻。
佐久間河岸の廃ビルで、爆弾魔ボマ・マーは愛する息子を椅子にキツく縛りつけているw
「ダマヤ。ママを怖がらないで」
「無理だょマ・マー」
「ママはね。貴方とお話しがしたかっただけなの」
「何が望みなの?マ・マー」
「10年以上なりたいと思ってたコト。貴方の母親に戻る」
「もう遅いょ」
「悪いのはジスタなの。償わせなきゃ」
「ライバル花火会社のジスタ社長?神田川大花火大会の花火打ち上げ契約を取られたから復讐するために脱獄したの?」
「いいえ。花火だけじゃない。お前の貴重な子供時代も盗まれた。私は刑務所に入れられて、お前の成長を見守れなかった。お前との絆すら失いかけてた。でも、今から全てを取り戻すわ」
「ジスタ社長を殺す気?」
「いいえ。私は殺さない。お前が殺るのょ」
「えっ?!」
思わズ、絶句するダマヤ。
母の瞳の中に狂気を見る。
「今宵、ワラッタ・ワールドワイド・メディアが、コロナの影響でリモート開催になった"神田川大花火大会クラウドファンディーナ"を生配信するコトになってる。そのオープニングスピーチをスルのは誰だと思う?」
「ジスタ社長?ソレを襲うの?僕が?」
「金属探知機に引っかからナイ特殊火薬を仕込んだプラスチック銃を作った。配信が始まったら、関係者に紛れて近づき、この銃でスピーチ中の奴の目と目の間を狙うの!後は撃つだけ。簡単ょ。出来る?」
「絶対無理だょマ・マー」
「わかった。でも、お前が辛い決断をせずに済むよう、既にスタジオには爆弾を仕掛けてあるの」
「何だって?」
「合計10ヶ所。お前が奴を射殺しなければ、ソレを爆発させるまで」
「ねぇねぇねぇ。ワラッタでは何百人もの人が働いてるょ?皆殺しにスルの?」
「いいえ。死なせないわ。お前がそうはさせないモノ。お前が奴を殺せば、みんなが救われるわ」
「でも、僕は刑務所行きだ」
「ソレが、この作戦の賢いトコロょ。逃げようが刑務所に送られようが、私とお前は一緒になるの」←
「ど、どうしてそんなコトを…」
「私は、優れた花火をつくってきたけど、お前が1番の傑作なの。私に似てる」
「ドコも似てないよ!」
「卑下しないで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜。
"神田川大花火大会クラウドファンディーナ"を生配信中のワラッタ・ワールドワイド・メディア、HQスタジオでは…
「…子供の物の見方は独特です。とても純粋で愛がある。大人は忘れがちだ。わが社は、お客様が童心に帰れる花火を打ち上げる。玉屋であれ鍵屋であれ…ん?君は?」
オンエア中のスタジオで、キーノートスピーチを続けるジスタ社長。
温和そうでトテモ悪人には見えない…と思いつつも飛び出すダマヤ!
「ごめんなさい!」
驚く社長の眉間にプラスチック銃の銃口をピタリと当てる!
しかし、最後の瞬間、その銃口を天井に向けて引鉄を引く!
天井に向けて撃たれた銃弾は、見事スプリンクラーに命中してタチマチ全員ビショ濡れw
って話は後にして、実は、飛び出したダマヤには、赤いピンスポットがいくつも当たり…
狙撃手がいるのか?
事前に情報を得て、配置についていたジャドーの特殊部隊がダマヤを一斉に狙撃スルw
その時、窓を割り飛び込んで来たのは…マリレ!ロケット兵装備の翼でダマヤを守る!
一方、ワラッタ本社ビルの地下電気室で10ヶ所の爆弾に起爆信号を送るボマ・マーの肩を叩くのは…僕とムーンライトセレナーダーw
「私の電撃で電波妨害をかけた。貴女の起爆信号は無効ょ」
「ボマ・マー、息子さんは必ず面会に逝かせる。ヲタクはウソつかない」
「ヲタッカーズ。先ず貴方達を始末すべきだったわね」
爆弾魔ボマ・マーはガックリと肩を落とす。
第4章 はじまりの終わり
またまた僕は、厄介な呼び出しを受けて、マチガイダサンドウィッチズだょ…元カノとw
「私、ワラッタのヘッドハンティングに乗るコトにしたわ!」
「契約おめでとう。嬉しいょ」
「全てラッツのおかげ。ラッツの情報で、爆弾魔ボマ・マーの息子のインタビューが出来た。しかも、狙撃事件の直後、ビショ濡れになりながらのインタビューなんて…でも、元カノが秋葉原にいるとヤリ辛い?」
「そんなコトないけど…喜ぶヒカリの姿を見て気づいたんだ。僕は…仕事を楽しめてないのカモ」
「てっきり、私との関係に悩んでいるのかと思ったわ」
「違うょ。サラリーマンとの二足の草鞋がソロソロ限界なのカモなぁ」
「ラッツ。どーでもいーけどサラリーマンはヤメて。今はビジネスパーソンって言うのょ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
またまたマリレとダマヤ、ジャドー司令部に近いパーツ通りの街灯の下で険悪な雰囲気w
「お疲れ、ダマヤ。タイ料理でも食べに行こ?餃子にピーナツヌードル…」
「お腹すいてないし、忙しいンだ」
「でも…ゲームしてるしwお母さんも刑務所に戻った。私たちも元通り…ょね?」
「マリレ、ごめん!俺、キスなんてして…」
「いいのよ。気にしないで」
「そうはいかない。マ・マーは、何年も感情を押し殺してて一気に爆発したんだ。臆病者だったからね。俺もだ。堪えてた思いが爆発して、キスして、君とギクシャクしてしまった。先に、チャンと気持ちを打ち明けるべきだった。でも、怖くて言えなかったンだ。でも、正直に言うよ。君が好きだ。ずいぶん前から、君に片思いしてる。君が…ヲタッカーズになる前から」
ダマヤに告られて泣き出すマリレ。
「でも、私は…このママでいたいの」
「マ・マーに再会してなければ、また、マリレのTOに戻れた。キスしたのを忘れたフリして…でも、今は恋してないフリで仲良く笑うのナンてムリだ。自分の気持ちを抑えて、マ・マーみたいになるのが怖い」
「私達は…どうなるの?」
「わからない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そして、最後は御屋敷だ。
コロナ宣言で閉店した後w
「しかし、8時で閉店とはなー」
「今宵は、リアルご帰宅して海外ドラマでも見ましょ」
「そだね。ミユリさんもメイド服を脱いでユッタリしよーょ。あ、脱いだママでも良いけど」
「バカ…でも、マリレのコトが気になります」
「ダマヤにキスされてパニくったンだって?TOの立ち位置って、割と難しいンだょな。僕もムーンライトセレナーダーのTOとして人知れない苦労を…」
「実は、私もやっちゃいました。レイカ司令官にこのメイド服を着せて、ラズゥ博士のトコロへ逝かせて…」
「え?あのスタートアップCEOのラズゥ博士?あの人、ヲタクだょねぇ」
「ソレも自分が世界1賢いと誤解してる元ヲタクです。私の元カレ達と同じだわ…」
トリトメの無い話をダラダラ続けるミユリさんのメイド服の裾で微かに明滅するモノがw
ソレは…メイド服の繊維に織り込まれた盗聴器だ。そして、その音声に耳をすますのは…
「あらぁ。ムーンライトセレナーダーって、思いがけない人だったのね。そして、ヲタッカーズを率いる黒幕が、まさか…私も人類改造計画を急がなくちゃ!」
ラズゥ博士が不気味な笑みを浮かべ、またしても、聖都アキバで次のショーの幕が開く。
おしまい
今回はアメコミでよくモチーフになる"感情を押し殺す臆病者が怪人化する"を軸に、怪人に改造されかける爆弾魔、その溺愛する息子、その息子がTOを務めるスーパーヒロイン、スタートアップCEOが推し進める人類改造計画などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、2度目のコロナ宣言が発出した秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。