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第二十話『彼の独白』(注意)

※今回の話は人によって著しく気分を害される恐れがありますのでご注意ください。

 血の気の引いた肌が好きだった。

 普段は太陽の下で健康的に見える発色の良い肌よりも、月の光に照らされた青白く血管が浮き出て見えるような肌に心が躍った。

 石膏像のようにしっとりした質感とか。

 マネキンの冷たく硬い手触りとか。

 そういうのが好きだ。


 その片鱗を自覚したのは、昔に見た海外のホラー映画。

 殺人鬼に遭遇して、喉が潰れるような悲鳴を上げて泣き叫ぶ女性の姿が、脳裏に貼り付いた。

 血の気が引いて、恐怖に蒼白した女性の顔に、うっとりとした。

 はじめは、色白の女性が好みなのかと思っていた。

 でもそういう女性と親しくなって、どうにも何かがおかしいように感じた。

 指の腹で相手の皮膚をなぞるが、柔らかく暖かい感触に首を傾げた。そこに自分の求めた感触はなかったからだ。


 血色の良い肌は駄目だ。

 夏の暑さに汗ばんだ肌なんて以ての外。

 冬の寒さに冷たくなった肌が良い。

 冷たく乾燥して少し硬くなった感触が手に馴染む。

 女性の顔は、化粧で明るい肌を見せているより、寝不足で血色が悪くなり隈が浮かんでいるような『今にも死にそうな顔』が好きだ。


 女性は、生きている人よりも、死んでいる人の方が好きだ。


 その結論に至ったのはいつだったか。

 友達に話したら、ひどく驚かれ、それは普通じゃあない、と泣きながら言われた。その言葉に、とても不思議な気分だった。


 異性の好みは、食べ物の好みに似ていると常々思う。

 甘い味が好き、辛い味が好き、臭みのある食べ物が好き、粘っこい食べ物が好き。

 背の低い人が好き、笑顔の人が好き、人間として駄目な人が好き、頼りない人が好き、死んでいる人が好き。

 好みの味があり、自身の性癖をくすぐる好みの異性がいる。

 どれでも美味しく食べれる人がいて、どれでも美味しく食べれない人がいる。

 食事も、性交も同じ。

 自分を満たす行為だ。

 なのに。

 異性の好みは、どうにも、常識の範疇から離れれば離れるほど糾弾されてしまう。

 自分よりも小さい子供が好き、人形が好き、眠っている人が好き。

 ただ人とは好みが違うだけなのに。


 人と違うものを味わいたいと思うのが悪なのか。


 たまには満足する『食事』をしたいだけなのに。

 ただそれだけなのに。

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