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1、見栄え

魔王の討伐が佳境に差し掛かり、その報告を兼ねて首都を訪れていた。


陛下や貴族様方にそれを報告した当日、


大切な話があるということで、


メンバーの中で僕だけが応接間に呼び出された。



いたのは呼び出した本人である国王ともう一人。


陛下は申し訳なさそうな顔、


そしてもう一人はひどく愉快そうに笑っていた。


入った瞬間にわかった。


これは歓迎されていない。



男の表情には嘲りが多分に含まれている。


きっとここにいて得るものはないし、


いい気分にもなれない。


けれども、まさかここまで不愉快になるとは思わなかった。



「君では見栄えが悪いのだよ。豚くん♪


そうでしょう、陛下?」


若い男は陛下に促す。


「クランツ・・・。」


・・・ああ、わかった。


陛下もそう思っているんだね。


少し悲しかったけれど、


彼は国民が喜ぶことを最善に考えている。


仕方のないことだ。


「はっきり言ってあげたらどうですか?


戦勝の凱旋のとき、君では映えない。」


・・・確かに・・・


この体型だもんね。


僕は自分のお腹をさする。


僕もみっともないとは思うけれど、


中々引っ込んでくれるものではない。


ダイエットには魔王の討伐よりも苦しい苦難がある。


「だから私がこれから彼女たちに同行する。


これには彼女たちも同意してくれた。」


・・・少し残念だけど、


・・・まあ、こっちの方がカッコいいから仕方ないかな・・・。


男の実力派見た限りではそれなり、


陛下が口を出さないのもわかる程度ではある。



それに今はかなり彼女たちも力をつけた。


おそらく魔王も問題ない。



・・・僕は邪魔なんだね。



彼らの顔をも一度確認し、


事実を再確認した僕は、


仕方ない、仕方ない


といった感じで出て行こうとする。



すると、


「ん?


何をしている?


荷物を置いていかないか。」


こう声を掛けられた。


僕は思いもよらない言葉に振り向く。


「・・・は?」


「だから荷物。


これは私が有効活用してくれよう。」


男はさも当然と言った表情だ。


「・・・・・・。」


さすがの僕もこれには驚きを隠せなかった。


王に視線を送るも、


頷くのみ。


「・・・僕がここでお借りしたものは一切ないはずですが?」


僕は王の考えを再び確認する。


「・・・はあ・・・旅で手に入れたものがあるだろう。


それを置いて行けと言っているんだ。」


王は僕から視線を逸らす。


・・・ははは・・・


・・・戦利品まで寄越せというなんて・・・。


・・・随分と馬鹿にしてくれますね・・・



怒りをぶつけてしまおうか、


一瞬そんな考えが頭をよぎるが、考えなおすことにする。



・・・まあ、彼女たちの今後の旅路に必要なものもあるだろうからね・・・


・・・これは彼女たちへの餞別ということにしようかな・・・。



「・・・それでは、これを彼女たちにお渡しください。」


「あ・・・ああ・・・。」


ここを離れることにした。


・・・応接間の扉を破壊して。



後ろから何か怒りを孕んだ声が聞こえた気がしたけど、


気にすることはない。


きっとハイエナの鳴き声さ。




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