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02.10 「ところで、そろそろ本題に入りたいのですが」

 「ところで、そろそろ本題に入りたいのですが」


 僕が一頻り泣きじゃくってスッキリしたところで、水無(みな)がこう切り出した。


 「本……題?」


 えっと、今までのは……


 「ええ。流石の私も絶望の縁にいる人をあれこれ問い詰めるような真似は出来ませんから」

 「あれこれ? 問い詰める?」

 「そうですねぇ、単刀直入に言うと、私、伊織(いおり)さんの事が気になって仕方ありませんの。ですから、(とおる)さんがあの方にとってどのような存在なのか確かめないではいられません。教えていただけますかしら?」


 なんだ、そんなことか。


 「伊織(いおり)は義理の弟……だよ」

 「それだけですの? 血の繋がりは無いわけですよね? ひとつ屋根の下に暮らしていたら他の感情が湧き上がってきたり、間違いが起こってしまったりしないのでしょうかしら?」


 こんな体になっちゃったし、凜愛姫(りあら)も男の子になっちゃったからそれはないかな。そもそも……


 「間違いどころか、口も利いてくれないから」

 「伊織(いおり)さんも同じことを言っていましたけれど、どうしてですの? お互い意識しすぎて、とか?」


 どうしてって言われても、それは伊織(いおり)に聞いて欲しい。僕も理由を知りたいぐらいだ。それに……


 「前は普通に話してたんだけどね。一緒に暮らすようになったら話しかけても無視されちゃって」

 「そうでしたか。いずれにしても(とおる)さんの方には彼を拒絶する理由は無いと」

 「まあ、そうだけど」


 拒絶というより、寧ろ仲良くしたいぐらいだ。


 「伊織(いおり)さんとは以前からお知り合いだったのですか?」

 「再婚する前の両親が同じ会社だったからね。イベントとかで何度か会う機会があったんだ」

 「ご両親と貴女方、どちらが先に惹かれ合ったのでしょうね?」

 「それは……」


 実際どうなんだろう。僕が凜愛姫(りあら)に惹かれたのは出会った瞬間だった。父さんが義母(かあ)さんに惹かれたのは何時なんだろう……


 「否定しませんのね」

 「えっ、いや、惹かれ合ったわけじゃないというか、()伊織(いおり)の気持ちがどうだったのかは訊いたことがないから……」

 「つまり、(とおる)さんは伊織(いおり)さんに恋していると」

 「どうなんだろう。今の伊織(いおり)には何も思わない……かな」


 だって、僕が好きになったのは伊織(いおり)じゃなくて凜愛姫(りあら)なんだから。性格だって全然違う。凜愛姫(りあら)伊織(いおり)は別人だよ。


 「そうでしたか。先程も申した通り、私は伊織(いおり)さんにとても興味があります。ライバルなのではと思っていましたが(とおる)さんの話をきいて安心しましたわ」

 「ライバル……」

 「ええ。ひとつ屋根の下に暮らす血の繋がらない妹なんて、ライバル以外の何者でもないではありませんか」


 血の繋がらない妹か……

 まあ、実際そんな展開を僕も期待してたわけなんだけど。でも、実際には……


 「妹じゃなくて姉だから」

 「あら、そうでしたわね。でもまあ、そういうことですので、私、告白しようかと思いますの」

 「告白?」

 「何か問題ありまして?」


 本当は女の子だって教えてあげたいんだけど……

 それに人の恋路を邪魔する筋合いもないし、どうするかは伊織(いおり)自身が決めることだよね。


 「ううん、問題は無いと、思う」

 「ふふ。素直じゃありませんわね。仕方ありません、貴方が元に戻るまで待つことにしますわ」


 いや、素直に教えちゃったら逮捕されちゃうもん。でも、優しいんだな、水無(みな)。元に戻るまで、か。


    グググー


 と、ここで僕のお腹が盛大に訴えかけてきた。今日は朝から殆ど食べてなかったからなぁ。


 「えへへ」

 「あらあら。少しは元気になったみたいですわね」


 湯を上がり、こっそり持ってきたというおやつを分けてもらい、何とか空腹を凌いで自分の部屋へと向かう。


 「はぁ、やっぱ気が重いなぁ」


 部屋からはわいわいと楽しそうな声が漏れてきてたんだけど、僕が入った瞬間に冷たい視線が向けられ、凍りついたかのように静まりかえってしまった。でも、それもほんの一瞬で、僕なんか見なかったかのように会話が再開されんだよね。そうそう、僕なんか見えないよね。だから僕の布団は荷物と一緒に押入れの中なんだ。でもいいか。青い猫型ロボットも押入れで寝てるし、一度やってみたかったんだ。


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