必要性、支え合い
「ふうー!やっと着いたねー」
新しい街へと一日かけて着いた俺達は体が勝手に背伸びをしていた。
ここは先程居た街とは違い、下はコンクリートで固められ、車も通っている。日本でよくみるアパートや一軒家なども建ってるな。
街一つでこんだけ変わるのか。
「にしても、アンノウン調査なんてどうすりゃいいんだよ」
「まあまあ!あの人も気楽にやって!って言ってたしさー」
「まあそうだけど」
「……落ち着き」
「そうだけど……」
アンノウンの調査。
澪の街での二個目の依頼だった。
これは俺の仕事なんだろうか?なんて考えるけど誰かが困ってたら俺の仕事で間違いないんだろうなあ。
澪と別れてから一度依頼主さんのところへと戻って報告すると最後の依頼、ということでこの依頼を貰った。わけだが、どうすりゃいいか全く分からず次の街へと到着したわけだ。
ここにも困っている人がいるみたいで……。
「まずは宿だよ!」
愛は元気よく足を前に運ぶ。
「そうだなあ」
「……決まり」
俺たちとのテンションとの差よ。
街へ着いてブラブラと周りを気にしながら歩いているが、特にそれらしき物体は見受けられない。
「んー、どこだろーねー」
キョロキョロ見渡して分かるのは少し暗い顔をした人々の顔だけ。
「……皆元気ない」
「だな。どうしたんだろ」
「ちょっと聞いてみるよー」
ザ、コミュ力。ありがたや。
愛はたたたと人へと駆け寄り宿屋の場所を聞いてきた?
そして、たたたと駆け足で帰ってくる。
「どうだった?」
「んー。村の資源が足りなくて皆活気がないんだってさー」
「宿屋は?」
「聞いてないよ!」
「……自信満々」
「えへへ」
「……褒めてない」
「あ!でも困ってる人はこの奥にいるみたいだね!」
「ん?掲示板とかじゃなくて?」
「ううん。そういうのはないんだってさ。ただその人を助けてくれたら村は助かるらしいよー」
「なるほどな。困ってる、か」
「そうそう」
「じゃあそれをやればいいわけか」
「……休みは?」
「もうちょっと我慢出来るか?」
「…………うん」
「よし、休もうか」
「じゃあ宿屋のこと聞いてくる!」
「あれ?デジャブかな?」
「聞いてくるー」
「同じ人に行くのかよ」
ササッと聞いてササッと戻ってきた。
「宿屋目の前にあんじゃん、だって!」
「え?」
「ん?」
「……ただの民家」
「だねー」
後ろを振り向き目をぱちくりさせながら確認した結果。
桜の言う通りただの民家だ。ただ、左の方にある小さな看板に『やどやだよ』って平仮名で書いてある。
「分かりにくっ」
「あはは」
「……ウケる」
……桜からちょくちょく出てくる若い女の子は何なんだ、いっつも引っかかるなあ。
「まあ、分かったことだし入ろー?」
「そうだな」
先陣を切ってステンレス製のドアを開ける愛に続いて恐る恐るドアを引いた。
「おじゃましまーす」
その挨拶あってる?
「……よっ」
どの距離感なの?
「あ!いらっしゃいました!まちがえた!いらっしゃいませ!」
と、ドアを開けてお出迎えしてくれたのは小さな男の子だった。
「お、おへやごあんないいたたまれます!」
「あらあら、遊?ダメよ。すみませんね。お客様の接客を頑張るって張り切っちゃって」
それを追うように出てきたのはその子の母。まず俺の目線は巨大は二つの膨らみだった。
「三名様、お泊まりでよろしいですか?」
「あ、はい。お願いします」
俺は動くメロn……店員さん?について行く。
「かしこまりました。ではお部屋へのご案内をさせていただきます」
そう言われ、階段をあがり突き当たりの部屋を割り当てられた。
「何日間ほどになりますか?」
「えーと、少し読めないのですが……」
「何か用事を終えるまでは……という感じでしょうか?」
「そうですね」
「わかりました。ではそのようにさせていただきます。お風呂は下にありますのでお使いください。料理の方は必要であれば朝昼夜、フロントの方へと赴いていただければ用意させていただきますので……」
いたれりつくせりとはこの事だな。
「はい。ありがとうございます」
「いえいえ、これがお役目ゆえ……」
「ママ、つかれてるから」
そこへテトテトと左右に揺れながら歩く、悲しそうにする子供。
「こら、遊。お客様の前でダメよ」
少しキツめの口調で言う母の言葉にショボンとする。
「だって!みんなつらそうだもん!」
……皆。街の様子がおかしいことを知ってたりするのか?
「すみません。俺の役目は救援者なんです」
「え!じゃあたすけてくれるの?」
「できる限り善処するよ。ただ何がどうなってるかだけ教えて頂けますか?」
子供の頭を同じ目線で撫でてやりながらお母さんの方の顔を見上げた。下からお山が出てて顔が見えない。素晴らしき絶乳、間違えた、絶景かな。
「……いいんですか?」
「それが俺の役目ですから。皆笑ってないとこっちもあんまり笑えないですからね」
「……ありがとうございます。では、少しお話しましょうか。ここで大丈夫ですか?」
「はい。お願いします」
和やかだった空気がシンとした空気へと変わっていくのが分かる。
「三日前の事なんですが……」
「はい」
「この街は山が周囲を覆っているのです」
確かにさっき周りを見てたら山の頭がチラホラと見えてたな。
「豪雨がこの街を襲ったのです。そしてその雨のおかげで土砂崩れが起きてしまいまして」
「あららー」
「幸いにも村の方に土砂崩れは起きませんでした」
「なら良かったのでは?」
「はい。皆は無事だったのですが、収入資源となる鉱石の洞窟がその土砂で埋まってしまいまして……」
収入資源?
「その資源がないとダメなんですか?」
「はい。その鉱石と食料をいつも交換で受け渡ししているのです。今月の期日は三日後」
なるほど。
「街の食料全てをそこと交換しているわけですか?」
「そういうことです」
そりゃあんだけ暗くもなるわな。
「その土砂を動かそうにも山ひとつ崩れたレベルの土砂崩れだったので三日では……」
「そういうことか……。要は土砂をどかして採掘場を復興させなければという話ですね」
「そういうことになりますね」
「ん、あと三日、ってことは一日くらいでやらないと重要な鉱石が交換できないのでは?」
「それもまさしくです」
「……どゆこと?」
「要は鉱石が足りなくて交換できないから困ってるんだろ?」
「……そっか」
「土砂崩れを治してさっさと鉱石を手に入れないとダメだってことだね!」
「そうそう」
「でも、やはり人手不足でして……」
「なるほど……。とりあえず出来る限りはやらせて頂きます」
この二人なら何とかなりそうな気がするし。俺も頑張ろう。
「行けるか?二人とも」
「……もち」
「余裕余裕!」
「おけ。じゃあとりあえず案内して貰えますか?」
「え?本当におやりになるのですか?」
「まあ、やってみないことには、って言いますしね」
「は、はあ」
少し不安な店員さんだが、俺らは自信満々にそう受け答えをした。
そんな話をしてから二時間ほどの休息を摂ることになった。
一日歩きっぱなしだったんだ。疲れるのは当然だろうな。
桜はもうベッドの中で夢の中へとレッツゴーだ。
愛の方は、と言うとどこかへと出かけてしまってなんにも分からない。一応、二時間後様子見に行くって言ってあるから大丈夫だと思うけど。
まあ問題はそこじゃなくて、扉の前にジーッと俺を覗いている男の子なんだよね。
ど、どうしたんだろう。俺が立ち上がればめっちゃ嬉しそうにするし、座れば悲しそうな顔をする。どういうことなの?
何か言いたいことでもあんのかな?
近づくと逃げられる。
「どうかした?」
「……」
聞いても無視だよ。
どうしたものか……。
いっか、無視しよ。
「あのぉー……ねた?」
ふと俺が布団の中へと潜り込んで男の子を気にしないようにしていると、ひそひそと独り言を言いながら部屋に潜入してきた。
「すみませーん」
とりあえず無視してみよう。
「よしっ」
何かを決意した?
「…………さくらちゃん、けっこんしてください」
!?
桜に結婚を申し込んでいる!桜寝てるのに!
薄目を開けてちっちゃい子の様子を伺う。
!?
なんとチューをほっぺにしようとしている。子供ながらになんと大胆な。
「……ますたー。愛を……」
ふと動き始める桜は俺の布団に潜り込んでぎゅっと俺を抱きしめたー!
なんでこんな実況風になってんだ。
「はっ!」
振られた男は目をかっぴらいて俺に怒りを剥き出しにする。
なんという理不尽。
男の子は俺に向かって拳を構える。
いや、ダメだからね?
「……ますたー。ふふ」
桜、それ以上何も言うな。俺がどうなるかわからん。
「うわーん!」
泣き出す男の子はぽこぽこと俺の背中を叩き始めた。
「うえっ!」
その行為が起こる瞬間ドアがダンっと空き、誰かが男の子の首根っこを掴んで拾い上げる。
「何事!道行くんが危なそうなのを嗅ぎつけて帰ってきたよ!」
「え。いや。危なくはないけど……」
ってかその俺を察知する力怖いんだけど。
「どこいってたんだ?」
「街の探索!どこに何があるか把握しなきゃ迷っちゃうからね!」
うん、最初の迷子を見るといい心掛けだね。
「あと一時間くらいは暇だからゆっくりしよー」
「ありがとうな。色んなところ見てきてくれて」
「えっへん!もっと褒めてもいいのよ!」
「すぐ調子に乗るからまた今度な」
「えー」
撫でろ、と言わんばかりに差し出された頭をポンっと叩いてやる。
「で、この子どーする?」
「あー、忘れてた」
「はなせはなせ」と、じたばたしているが愛は頑固として離さない。
「というか何があったの?」
「まあ、桜へと正式なプロポーズが断られただけだ」
「そっかー。でも、諦めちゃダメだよ!好きな子には猛アタックだ!」
「適当なこと教えんな」
「わかったよ!」
「分かっちゃったじゃん!」
桜への配慮はないのかよ。
とりあえず子供は母親の元へと愛が送り届け、眠ることにした。
※
「……たー……ますたー」
「ん……」
「……起きて。……五時間すぎてる……!」
「馬鹿野郎!そのみかんゼリーには妖精さんが住んるから食べちゃダメって!……はっ!」
「……ファンタジー?」
桜のその声に俺は勢いよく目を覚ます。
「ま、愛!」
「んー。あと十分」
「遅刻するわよ!早く起きなさい!」
「えー」
「言ってる場合じゃねぇ!今何時?」
「……四時半」
日が暮れた頃合い。
「ま、まあ大丈夫か。でも早めに行った方がいいな」
「……うん」
愛は寝てるからとりあえず置いておいて。
「行くか」
「……二人?」
「うん」
「……やる気出る」
愛邪魔なのか?とりあえず愛に置き手紙をしておいて、と。
街を出て店員さんの言っていた言葉を頼りに採掘場へ向かう。
最中。
「……ますたー」
「どうした?」
隣で手を繋ぐ桜がぽつりと発した声に耳を傾ける。
「……ますたーは親とかはいるの?」
「……」
ふと出たであろう小さなその疑問に俺は黙りになった。
「ま、昔はな」
「……訳あり?」
「ん……そうだな」
別に隠すことなんてない、でもなんかこの子達に不安になって欲しくなかった。
「……じゃあ、一緒」
「え?」
「……私の母は優しかった。……でも恨みを持たれて殺された」
「……」
そっか……、剣が役目っていうだけで人の子なんだよな。
「……何があったかは聞いてないよ。……今はますたーいるから辛くない」
急にギュッと抱きしめてくる手は少し震えている。
俺はギュッと抱きしめ返す。
「……ほら、優しいから。……でもさっきの人のを見て。……思い出しちゃった」
「……辛いよな。お前の頼りでしかない人間だもんな」
「…………少し寂しい」
「俺は親から見放されて捨てられたんだ」
あれ。ぽつりと言葉が出てしまった。
「……ますたーも辛い」
「そうだな。でもそれのお陰であの世界がなんか歪だったことに気づいたし、多分お前に会えたのもそれがきっかけかもしれない、そう思うと良い経験なんだな、って思えたりするよ」
「……そか」
「ああ。親が勝手に産んどいて捨てて、でもそんなこと言ったって話は進まないからな」
「……そだね。桜もママがいないからがんばった」
「だよな。失敗してもやり方変えて前に進まなきゃ行けないし、それだけのせいで恨んで殺しても結局こっちが悪人扱いだ。どうしようもないさ」
「……ますたー」
「大丈夫だよ。今はお前たちがいるし俺は幸せだ。悲しいのは仕方ない、でもそれのおかげって考えると悪くないから」
「……うん」
「俺達で色々試して頑張っていこうな」
「…もちろん!」
今はそう言える。こういう結果になってるから。
「じゃあ行くか」
「……うん!」
と、そんな話をしている間に目的の場所まで足を運んでいた。
「……地下?」
「そんな感じだな」
地下鉱山。その言葉が一番相応しい表現だろう。
一応入れる人工的な入口を発見したが、その周囲には壊れた扉や大木、釘などの鋭利なものも落ちている。
人工的に作られたものが土砂崩れによって全部壊されたのだろう。
大分掘り進んではいるみたいだ。
入口周囲を何度も見渡して安全に中へと入っていく。
中は暗く、下へ続く階段は木造。今にも壊れそうでギシギシと鳴っている。
これは、仮設置みたいなものなんだろうか?
「……中で土砂処理?」
「なのかな?」
どんどんと下へ下へと降りていくとやっと地面に降りた感覚がした。
「……ついた」
周りは仄暗い明かりに照らされ桜の顔が見えるようになった。
「ん、どうしてこんな所にいるんだ?」
少し周りを確認していると後ろから声をかけられた。
俺達は声のする方へと体を向けた。
「あ、俺達救援者ということで助っ人に来たんです」
「ほう!それは助かる!だが、力仕事だぞ?大丈夫か!?」
「……大丈夫」
「だ、大丈夫です」
愛がこれば自信満々に答えられるが……。ってなんで頼ってんだ!まずは自分でやらないと。
「自信があるのはいい事だな!」
がーはっはっ!と大きく笑うその人は頭に白い布をまいて灰色の繋ぎを着ていた。
こんな仕事をしているだけあってガタイが良い。
彫りの深い顔で一層厳つさを増加させているが、ずっと元気に笑っているところを見ると親しみやすさを感じる。
「よし!じゃあ色々と教えなくちゃな!」
「は、はい!よろしくお願いします!」
バイトに入ったらこんな感じなのかな?
などとふざけた感覚で思いつつ仕事に打ち込む。
「俺の名前は鬼人。よろしくな。で、早速だがまずは今進んでいるところまで行くか」
「は、はい!俺の名前は道行です……」
「……桜」
「おう!よろしくな!」
鬼人さんが歩いたあとを俺達は進んでいく。
※
「よし、着いたぞ」
歩いて十分ほどした所に行き止まりがあった。
ここまで土砂崩れが影響を及ぼしているのか……。
「鉱石の取れる場所があとちょっとなんだがな……。上手くいってないみたいだな」
「何か問題があるんですか?」
「いや、ただ単にみんなの疲労がな。この他にも道はあるし、手を休めてる暇なんてなくてな」
「……大変」
「だな。俺らも手伝えるだけ、全力で手伝おうか」
「……うん!」
「この土砂って一気に崩しても良いんですか?」
「ん?まあ、ここは問題ないが進むにつれ鉱石が出てくるわけだ。そこを破壊されちゃ困る訳だが」
「ここからどのくらいか距離はわかってるんですか?」
「まあ、大凡の目処は、と言ったところだな」
うーん、ちょっと怖いな。
「一閃て威力抑えれるのか?」
「……できる。……でも」
「でも?」
「……この場合普通に剣モードで降ってけばいい」
「あ、そう言えばお前の特徴ってなんなんだ?なんも聞いてないけど」
「……史上最強火力&速度」
「嘘でしょ!?」
「……マジ」
俺は今やばいのを手に持ってんのか。急に手汗出てきた。ごめん桜、臭いわ。
「……だから余裕。岩くらい」
何よりも強くて何よりも早くて……、他に勝るものがない、まさに最強。こ、怖いよ。でも……
「頼っていいか」
「……もち」
これは『俺』の最高の剣だ。誇ることしかない。
「任せてもらっていい場所とかってありますか?」
「……いや、一人で土砂を取り除いたとして、その後の処理をしなきゃいけなくてな」
「あ、そっか。土砂で崩れてるんですもんね。土砂取り除いたら上から土やらなんやらが落ちてきて……」
「ぺしゃんこって訳だな!がーはっはっ!」
笑ってる場合か。
「だが、安心してくれ、その補強は俺達がこなしてみせる!」
「だ、大丈夫ですか?」
「舐めてもらっちゃ困る!これでも俺たちはこの炭鉱を、役目を背負ってやってんだ!どうせあと三日しかないしな!」
「そうですか……。じゃあ、崩すのは僕たちがやりますから……」
「じゃあ、任せるぞ!」
「はい!」
「よし!いい返事だ!ここにいる人数で今日中に炭鉱にたどり着くぞ!」
「はい!」
じゃあ、やるか……。本気出して……。
桜は剣モードへと。俺は手に桜を持つだけ。
あとは自動でした。桜が俺の手を意味わからん動きさせるだけ。
迅速にどんどんと土砂を後ろに掻き出していく。
それを拾い集めすぐさま上に転送する特徴の者。掻き出した後にできた空間に上から土が降ってくるのを防ぐ特徴の持ち主。防いでいる間にそこを補強する者。
皆なくては成し遂げられないものだった。誰かが誰かのために……、少しだけ意味がわかったような……。
そして一時間ほどやり進めると……、俺の手は止まった。
「一度休憩だ!」
「……は、はい」
腕もげそう。本当にスポーンってどっか飛んでく勢いで桜は剣を振るっていた。
俺の体力の限界。結局俺はこんなもんなんだろう。平凡だから。いつか出す本気を待っても仕方ないし。
俺は……役に立ってるのか?
疲れた時に出たふとしたネガティブな疑問が自分を不安に追い込む。
目の前でみんなが苦しんでる中俺は体を使われるだけ。それだけで何もしてない。
「……おつかれ」
「おう」
「……悩み?」
「うーん。俺が必要かどうかって話」
「……いる。ますたーいないと桜はどうなっちゃうの?」
「他の人の方が上手く扱えてたりしない?」
「……しない!」
そう断言する人型に戻った桜は真剣な眼差しでこちらを見る。
「……だって一番安心するから。……役目ができるから必要なんじゃない。……誰かのために動けるから必要なんじゃない。……桜が必要だから、必要なの」
「ど、どういうこった」
分かるような分からないような……?まあ、でも、この間の戦いの時もそうだったけどなんでこうも自信が無いんだろう俺には。今全力出すしかないのに。特徴に縋っても仕方ない。
役目は自分ができる範囲で楽しく。疲れてるけど、この場合は俺がいなくちゃ周りがどれだけ大変になるのか……。自分の役目を重く捉えてたのかな。
「ごめんな。こんなしょうもないことで不安になるマスターで。……俺はやれるだけやるよ。俺がいないとお前は辛いだろうしな」
「……その通り。ますたー。……それだけでいい」
「そうだな」
「助かってるんだぜ!あんちゃん!」
ふと後ろから大きな声が俺の背中を押した。
「そうだ!君たちが来てくれたから一時間で死ぬほど進んだよ!」
「本当にありがたい」
「……ほら。ますたー必要」
「そだな」
みんなのお礼なんていらないって思ってた。役目をこなすのが当然で、それが自分の満足だから。
でもこうやって現実になって成果出てるよ、って言われるのってめちゃめちゃ嬉しいんだな。
そんな気持ちも持てるのか。
もう一時間は頑張れそうだ。
休憩は終わって次の一時間は始まった。
桜はどんどこ土を削っていく。
俺には何が出来る?場を和ませるか……。
「タラバガニってヤドカリの仲間らしいよ」
「……ますたー…………今真剣」
「あ、はいすみませんでした」
普通に怒られた。
俺なんか間違ったみたい。
俺は腕が飛んでいかないように願いながら無言で一時間を過ごした。
「はあはあ……」
なんもしてないのに息が上がる。多分吊ってもおかしくない状況なんだろう。腕上がらんし、みしみし言ってる。
「……大丈夫?」
「ああ。まだいける」
「……無理は禁物」
「本気の俺はまだやってるはずだ。今の俺もまだ」
「……違うよ。自分の力量は把握しないと」
「お前も見通しか……。すみません。長く休憩とって大丈夫ですか?」
「おお!とれとれ!休みは大事だ!」
とここで……。
「やっほー!道行くん愛しの愛ちゃんだよ!」
「違う」
「その否定のされ方桜ちゃんみたい!つら!」
「ってかやっと起きたのか」
「うん!ばしばし働くよ!」
正直マジでありがたい。
「ま、ありがとな」
「ありがとうのキスを!」
「帰ったらな」
「マジで!元気百倍!アンパンマンなんだけど!」
こいつ元気すぎてうるさっ。
「よし!その調子で!ん?」
俺が愛と盛り上がっているとクイッと手を引っ張る桜。
そして俺が桜の方を向くと触れる唇の感触。
「!?」
「にゃっ!!」
俺も愛も驚いた。
「私もご褒美」
「お、おう……」
なんか……、なんも言えねぇ……。言えるのは幸せです。
「わー!浮気だー!」
ぷいっとそっぽを向く桜。恥ずかしがってんのか?
「やだ……う、奪われちゃった……/////」
「きゃー!道行くんの顔がメスの顔になってる!」
「トゥンク」
「ときめいてるー!まあいいけど!もっと熱いのしちゃうもんね!」
「……桜がさき」
「子供はまだ早いの!」
「あー、はいはい。そろそろ始めるぞ!」
「え?何このおっさん!」
「普通に気づくおっさんという言葉……。まだ二十後半……」
「嘘でしょ!」
「傷つくって!」
「すみません!」
つい本音が。キスの照れ隠しも忘れずに。
「……どうだった?」
「ど、どうって?」
「……ちゅーは?」
「幸せでした」
「……よかった」
「ちぇー。道行くんのファーストキスがー。ちぇー、やる気出ないなー。桜ちゃんだったらいいけど……。まあ、一生の子だし?でもこれ以上はないよ?」
「き、肝に銘じておきます」
目がまじだった。病んでね?あれ。
「にゃはは!冗談!じゃあやろうか!」
ほんとに冗談だろうか……。
「ああ……。鬼人さんの元気が吸い取られてる……」
そして、そこからの愛は素晴らしく仕事ができる人で一応鉱石の採取可能な場所までたどり着いた。
「いやー!助かったよ!」
「えへへ!どういたしまして!」
「今日はここまでだな!また明日、来てくれるか?」
「まだあるんですか?」
「道は一本じゃないからな」
あー、言ってたな。
「わかりました。では明日に……」
「おう!待ってるぜ!」
※
俺達は一度やどやに戻ってベットへとダイブした。
「はー、疲れたー!」
「……疲労困憊」
「腕が上がらん……。二人ともおつかれ」
「うん!道行くんもね!」
「……おつ」
コンコン、と扉を叩く音が聞こえる。
ゆっくりさせてくれ、と思いながらも扉を開ける、が、あれ?いない?
「……下」
「した?」
桜がそういった通りに顔を下へと向けた。
「あ…。どうかしたか?」
桜のことが好きなちっちゃい男の子だ。
「ままがご飯だって」
「え、気を使わなくてよかったのに」
「おれいだって……。ぱぱも」
パパ?会ったことないけど……。
「二人ともどーする?」
「……お腹はぺこり」
「私もー」
「じゃあ、ご馳走になるよ。下へ行けばいい?」
コクっとひとつ頭を下げる。
……ずっと視線が桜なのは気にしないでおこう。
「桜ちゃん!」
決意をした子供の顔。二度目だろう。愛のせいで……。
「……なに?」
「好き「ごめん」」
早い。
ガックしと腰を落としてから、うわぁーんと泣きじゃくりダッシュで下へと。ママの胸を借りに行ったのだろう。
青春だな。
「にしても冷たくないか?」
「……私は、ますたー一筋」
「素晴らしい。俺も好き」
「……でしょ」
「私も!」
「うん。嬉しい」
「うぇーい!」
「……うぇーい」
ノリが鬱陶しいな。
俺達は子供が去って少ししてから下へと向かった。
たったったと階段を降りていくとなんだかガヤガヤと、笑い声やら話し声やらが聞こえる。
「人がいっぱいいるのかなー?」
「どうだろ?」
俺は扉を開けてみた。
「おう!やっと来たか!まあ座れや!」
「え?」
部屋間違えた?
そこでは鬼人さん初め、炭鉱の従業員達が机を囲んで宴の様なものをしていた。
酒場かなんか?
「今日は助かったぜ!」
あれ?お礼されてる。
取り敢えず中へと進み、鬼人さんの隣へと座らされた。
何事?
「あ、どうも」
首を降って周りを見るが状況把握が全くだ。
「何故ここに?」
「ん?何故ってここ俺の家だからな!がーはっはっ!」
「え?」
ええええ?
「じゃあ、おふたりは……」
「家族だぜ!」
「おおおおお!ええええ?」
「なんだ?変か?」
「いや、お母様の方は支える役目じゃないんだなって……」
「役目のひとつですよ。それと、この宿屋の経営。それが私の役目です」
キッチンからでてきた母と子は笑顔で鬼人さんを見つめる。
ああ、仲良いんだな……。なんかほっこりする。
いくつも担ってるってわけ、か。
別に羨ましいとは思わないけど歪な感情が心に残る。
「お前の役目も救世主だからって安心しちゃダメだぜ?この世の中それだけじゃあ回っていかないからな!」
……?
「は、はあ」
賑わうここの雰囲気は悪くなかった。でもよくもなく、桜と愛はあんまり乗り気じゃない。
「どうかした?」
「……疲労が」
「私もちょっとね」
二人とも、そうだよな。こうやって酒飲んで疲れをとばせる人もいれば寝て疲れを取る人だっているよな。
「疲れたんなら先寝てていいぞ?」
「……ますたーが」
「うん。道行くん残るんなら私もここにいなきゃ」
「……そんな気にしなくてもいいのに」
「……そうしたいだけ」
「そか。じゃあ俺も寝るか」
「……え?」
「居たいんじゃないの?」
いつもの覇気が無い様子のふたりをみて方っておけるわけなく。
「いや、ご飯食べに来ただけだしな。腹は膨れてるし何よりもお前らが大事だよ」
「ますたー!」
「本当に完璧だわー!」
二人とも俺に抱きついてくるが、ここではやめて欲しい。恥ずかしい。
「すみません。俺達は先に寝かせていただきます」
「なんでい!楽しんできゃいいだろ!」
「二人とも寝たいみたいで」
「ほーん。じゃあしょうがねえなぁ!また明日よろしく頼むぜー!」
「はい。うおっ」
グタッと倒れる桜。何事かと思って支えたら寝ているだけだった。
背中にオブって愛と二階へ上がってベットインだ。やましい事なんて決してないので。
疲れが相当溜まってたんだろう。俺も愛も一瞬で寝てしまった。
調子よくかけているのでは無いでしょうか?
最近サボってたけど何か頑張れそう。
何があったんだろ。気持ちの持ちよう?
えろいことばっか考えてたら上手く行きましたね。皆真似しよう。
また来週……!




