総集
な、なんだここは……。
頭がふわふわとしている。夢の中?でも意識が……。
はっ、たまにあるあの夢の中で思い通りに行くあの現象か!
「ぶるぁああ!」
え?何これ?周りの人達が何かから逃げてる。
!?
なんか見た事あるぞあれ!あれだ!完全体だ!
作品が違うよね?
いや!今はそんなこと言ってる場合じゃないのか!逃げなきゃ吸収されちゃう!
「ぶるぁああ」
何?鳴き声なの?
やべっ!俺の方来る!
昔居た校舎を駆け相手から逃げている最中ふと思う。あれ?吸収された方が楽なんじゃね?
と。
よし……。
俺は完全体へと向かって自らを肥やしに……、あれ?吸収されたのに生きてら……。あいつも襲ってこない?
俺は悪側に回ったのか?
どういうこっちゃ。
相変わらず他の人は襲ってるし!やった!やりたい放題なんじゃね!俺!
女の子ぺろぺろ出来んじゃね!夢の中なら犯罪じゃないよね!
可愛い女の子発見だ!ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ。
べろを舐め回す自分がキモいと思うことは無い。
欲望に忠実なのだ。
!
ふとそこで俺は見てしまった。
あれは、リヨンさんと、アーサー……!
アーサー……、あの野郎かっ!
はっ!ここは夢の中、ぶっ潰せるんじゃねえ!
「アーサー○ねぇええええええ!何回怖い思いしたと思っとんじゃ!アナルに聖剣ぶち込んだろうか!それだけ怖かったんだからなぁああああ!1発殴らせろこの下賎!正義がなんじゃい!人を守るのがマナーじゃボケェ!○ね!こらぁ!タンクローリーにペシャンコにされてから炎で焼かれて消し炭になれボケがァ!」
ーーーーーー
「はっ!夢か!人、一人殺してたな、俺……」
ふと殺す瞬間にパチリと現実世界で開いた。
「うん、思いっきりね。全部口にでてて、正直怖かった。ぺろぺろ」
「ま、マジですか……」
ってなんだこの状況。ってかどこ?
「ここは、君たちの依頼主の家だよ」
「依頼主って言うと……、澪か」
「うん。ここまで来て館で休ませてくれてんだよ」
「そう、ですか。澪達は?」
「仕事中らしいよ。僕もすぐ行かなきゃならないしね。アーサーは暇のない人なんだ」
「そうですか」
お礼言っとかないとな。
「はは、モテモテだな」
「?」
「なんでもないよ。ごめんね。じゃあ僕は行くからね。色々なことはそこの二人に聞いてね」
「あ、はい」
「ありがとう。君がいなかったらアーサーは間に合わなかったろうし、僕じゃ歯が立たなかったよ」
「あ、はい」
あれはまぐれというかなんというか、勝ったことには変わりないのかな?
「じゃあね」
「さようなら」
そうしてリヨンさんはすぐに去っていった。
あ。あの後の事とか、今がいつというのも……。
まあ、いっか。思い出したくない記憶でもあるし……。
桜、愛、二人とも俺の至近距離で寝ている。
襲いたいけどそんな気力なしいし、癒されながらそのまま寝よう……。
疲れはまだ残ってる。
そのあと起きたのは空が暗闇に包まれた刻。
桜はまだまだ眠そうにしている。一番頑張ったから当然だろう。
愛は俺が目を覚ますと同時にパチリと目を開ける。
そこであの後どうなったか。事情を聞いた。
まあ、そんな大変なことにはならなかったようで。
本物のアーサーが現れ、光を撃ち悪は滅んだとか。
滅んだ、という言葉で濁しているが、死んだの、かな……。
やりすぎだとも思うけど……、この世界じゃあ、当たり前?よく分からない。
俺は気絶で大会を降りてそのまま本物のアーサーが一位に登り詰めたらしい。
正直なところ俺はただの数合わせであった。ま、これも救援者の役目ってやつかな?
そう言えば偽アーサーの側近はどうなったんだろうな?
それのことはさすがに知ってはおらず。
あと、俺が寝ていたのはたったの半日くらいだった。よかった、かな。色んな人に迷惑をかけ過ぎずに済んで。
それから一週間ほどが経過した。
館に戻ってベッドから降りた瞬間に俺達は澪達の世話係を続行した。
まだ腹痛が治らないようで。重い病気かな?何人揃ってだよ。
「……掃除完了」
「私もー!」
俺も一応、か。
皆の仕事もどんどん早くなってきて遊ぶ時間が多く増えてきた。
「おーい。澪?」
「ん?」
「お茶おいておくぞ」
「ありがとう。もう少しで終わりそうだわ。今日この後少し付き合ってくれない?」
「ん?外にでも?」
「ちょっと村の様子をね」
澪も大分柔らかくなったようで胸の方は鉄板ですけどね。
「おっけー。ってか、一人で行けるようになれよ?俺達は多分そろそろ時効だろうし」
「そう、ね……。一人で行ってみようかしら……」
少し悲しそうにする澪。
「ま、俺が勝手についてく分には問題ないよな」
「う、うん!じゃあまた後で!」
「おう。夕方くらいには待ってるよ」
俺は澪の世話係をして、話し相手になっているため、今はこいつとの時間が一番多いのか……。
とりあえず澪の部屋から出て、掃除を終えて一息ついている二人の元へ向かった。
「お疲れさん」
「おーつかれー!」
「……乙」
「桜」
「……何?」
「遊ぶか?」
「……遊ぶ!」
「よっしゃ、庭行くか」
「……うん」
「明日は私だからね!」
「分かってるよ」
2人との約束だ。桜は俺と二人で遊びたい、愛のやつは、まあなんだ、デートってやつかな。
俺と桜は館の裏手にある広がった空き地のよう場所へと足を運んだ。
「何するんだ?」
「……この間の、救援者ごっこ」
「へ?」
「……いくよ」
「え?」
理解できないけど。
「俺が今……本気を「まてまてまてまて」」
めちゃくちゃ理解したわ。
一瞬で血の気が引いたわ。
「……何?間違ってた?……俺が今……本気を出さなくちゃいけない……」
は、はははっ!恥ずかしいね。
「……どっか違う?」
行動言動全てを完コピしているようで、凄い。
いや、そうじゃない!
「いや、そうじゃない!」
「……?……わけわかめ」
「俺も意味わからん。なんでその遊びなの?」
「……かっこよかったから」
「他のにしない?」
「……えー」
「俺多分役に入り込めないよ」
「……仕方ない。じゃあ、最初に桜と出会った「ごっこ遊びをやめようか!」」
身が持たない。
「……わがまま」
「うーん、どうしよっか」
「……特徴」
「ん?」
「……ますたーの、特徴って何?」
「えっと、……いつか本気出す」
「………………どゆこと?」
心做しかいつもより沈黙が長かったような。
「俺にもわからないけど、とりあえず本気出すタイミングがいつか、なんだってさ」
「…………?……要は自分からは出せない?」
「そうなるなぁ。全く不器用な……」
「……でも、凄い、強かった」
「……確かに」
自分で言うのもなんだが強かったもん。
「……特訓、だ!」
「と、特訓?」
「……うん。いつでも敵が来ていいように……。自分で出せるように……!」
「どうやってやるんだ?」
「……うーん。……どう出したの?」
「どう、か。そうだなぁ。本気でお前らを守りたいって願ってたら……本気でたな」
「……窮地に立たされた時……、そうか」
「桜ちゃん、何を閃いたの?怖いんだけど」
「……私が剣になって、ますたーを」
「何!?殺すの!?」
「……ふりをする」
「シャレにならん!」
「……大丈夫」
桜は剣モードへと姿を変え、俺の言葉など耳に届かず、言葉通り窮地に立たされる。
「うえええん!」
薄皮1枚ずつ剥がれていく。怖い怖い!
「……ダメだ」
「そ、そそそそうだよね。もうやめよっか。二十分もやってて無理なら、むむむ無理だよねねねね」
「……?もっと、やれって?」
「思考回路イカれてるの?」
「……でも、なんで。出せないんだろ……」
「そうだなぁ。桜は信用してるから?」
「……信用?」
「うん、まあ。攻撃して殺さないだろうし……。後はお前を攻撃するのは絶対に嫌だからな」
「……絶対。……ふふ」
「あの時は本気でお前らを守りたくて……、それが役目だし……全うしなきゃってな」
「……じゃあ、救援者、の力が本気で発揮される時、と、思いの力?」
「そうかな」
「……ありがとう」
「?なんでお前がお礼なんて」
「……本気で私を思ってるから」
「確かに」
「……素直だもん。でも行動もないと心配、……わがまま?」
「まあ、わがままだな。でも自分の欲に忠実でありながら他人に気を使えるお前は凄いと思うよ」
「……欲望を庇うのは理性。……欲望をそのまま出せるのは愛情?」
「どーだろ。よくわかんないなぁ。何が嫌いで何が好きかを分かってくれて、俺の欲望も渇望も全部知ってくれてて、女の子とイチャコラしたいけどお前らが悲しい思いをするなら理性で止める。ワガママも、気遣いも必要だな」
「……よくわかんない」
「な、俺にもよくわからん。そんなことうだうだ考えるよりか、俺はお前に必要にされてて、俺はお前を必要にできる、それがとても……、好きだな」
「……好き。うん、好き、私も。そのままのますたーが。必要としてくれる貴方が好き……」
「お前も素直なのな」
「……マスターのおかげ」
「そうなのか?」
「……うん」
「そっか、それなら良かった」
「……良かった良かった」
ふと気づけば桜は俺の隣へと近寄ってきて手を握る。
それに応えるように俺は優しく手を握り返した。
「……何しよっか」
「どうしような」
「……鬼ごっこ?」
「お前の足には適わなすぎる」
「……あるぴーじー、やろ?」
「おっけ、のった」
「……協力」
「一旦夕方までで……、澪の世話が終わったら徹夜だ!」
「……うん!」
桜と俺は繋いだ手を離さず館の一部屋へと楽しいをしに行く。
「ふーんふーん」
鼻歌を聴きながら木々のさざめきにも耳を傾けていると、奥の方からザワザワと楽しそうな声が耳に入ってくる。
「最近ご機嫌だな?」
「そう?」
澪もだいぶ丸くなり、子供っぽさが増したような。良いのか悪いのかはさておいて。
「いい事でもあった?」
「いい事、ねぇ……。皆が楽しそうだから、かしらね?」
「みんなの幸せがお前の幸せ?」
「そゆことかもねー」
「今日は村の人に挨拶か?」
「んー。それもあるけど……」
「他にも?」
「そうね。あなたにお礼をしなくちゃって」
「へ?何かしたっけ?」
「私を一人の人として見てくれて、周りの人のことを教えてくれて、現実に引き戻してくれて、ありがとう」
……このありがとうにはいろんな意味が詰まってるんだなぁ。
深く深く心にくる。
「どういたしまして」
「ふふ。それでね?私はあなたに見せたい景色があって……」
「景色、か……。街の夜景を見てもただの電球じゃん?って言う人だけど大丈夫?」
「う、それは少し心配ね……」
「でも自信あるんだろ?」
「も、もちろん!」
「じゃあ期待してるよ」
人々の雑踏を抜け、閑散とした急勾配の坂を登る。
「見えたわ」
と、そういった次の瞬間に俺は景色を見た。
「これが俺に見せたかった?」
「そうよ……。ありがちでしょ?」
ありがちと言えばありがちなのかもしれない。
アリがちというか普通にどこにでもありふれた景色。
高い展望台から見える壮大な海に夕日の明かりが映り込み俺の目に反射する。
綺麗……。確かに綺麗だなぁ。でもなんだろう。怖い。
「私はいっつも調子に乗ってる時はここに来るの?」
「……」
「私はちっぽけな存在なんだよ、って自分に教えるために、ね?」
「なんで俺をここに?」
「道行……、あなたは凄い、自分の凄さがわかってないところ、弱いくせして人を助ける謎精神、役目だからと知りもしない人間を助けてくれる所……。みんな凄い。それが役目だから、なんて思うかもしれない、でもあなたは役目じゃなくても助けてくれるはずよね……」
「……?何が言いたいんだ?」
「ありがとう、そしてサヨウナラを言いに来たの」
「……悲しいヤツ?」
ブンブンと首を振る澪は笑顔の裏に涙が見える。
「私は役目だ役目だ、と考えてそれに必死になってた。周りが見えてなかったの。この海を見ていつもちっぽけだと思ってた私は役目を果たさなきゃこの海のような大きな存在にはなれないと思ってた……。いつもそう思って励まして頑張ってた。でも……、少し、違ったのかもしれないわ。ちっぽけな存在だって構わない……、だって!こんな大きいものには勝てないもの。自然に人は適わないのよ……。でも悲観することはなかった。私は私のやるべき事をするだけだって思ったから。周りと比べて劣ってるのは確かよ……。年齢だって若い……。でもそんな自分にでも出来ることがあって方法があって……」
「うん」
「そんな凄いことを教えてくれた道行。そして、この大きな海にお礼を言いたかったの……。私にくれたものは人生で光るものしかない。本当にありがとう。そしてまたどこかで会いましょう?つ、次は必ず大人になって待ってるから……」
「そっか……。少しだけ期待してるよ。お前のちっぽけがどこまでこの世界に幸せを届けるかを、見てる。頑張れよ」
「ええ、もちろん。あなたも」
「うん。ちっぽけなもの同士力合わせないとな」
「そうね……」
「じゃ、帰るか」
「待って!」
「ん?」
帰ろうという気持ちができた俺の腕をグイッと引っ張る澪。
澪の目は少しキラキラと儚げに見える。
「本当に行っちゃうの?」
「ん、まあ、そういう役目だし」
「寂しくは……」
「そりゃ、お前と会えなくなるのは寂しいけどね」
「え?」
「話し相手減るし、楽しさ半減だしな」
「……ああ。そういう……。私も一緒!」
「お、おお?」
「だから、ずっと一緒にいてくれないかしら……」
「……そ、それはどう言う」
「意味までは教えてあげない」
「…………ごめんな。俺には他の役目があるんだ」
「私独り占めは……できない、か」
「ただお前が望むなら」
「?」
「何日かに一度帰って来て遊んでやっても構わないよ」
「……ふふ、何その上から目線」
「お前がお願いしたんだろ?俺が上からで何が悪い」
「そうね。……私のわがままであなたの人生を棒に降らせることはできないわ。だからこれは救援者のあなたへの依頼」
「おう」
「寂しいからまた会いに来て」
「……そりゃあ、こんな可愛いお嬢様の頼みだからな。会いに行くよ。助けて欲しい時も呼んでくれれば絶対助けに行く。それが俺の役目だからな」
「ええ……。ありがとう。なんか、スッキリしたわ。かえりましょう?」
そう行って手を差し伸べる澪の手を掴む。
澪は鼻歌を歌いながら楽しそうに家へと帰る。
そして、時間は一日経過し朝を迎えた。
「すみません!お待たせしました!」
館のお手伝いさん達が全員帰ってきた。
本当に腹痛だったみたいで、牡蠣に当たって、みんなダウンらしい。まあ、腹痛治すの遅すぎだし帰ってくるタイミング皆完璧すぎて訳分からんが。
後で聞いた話によると、医者もダウンしており回復させるのに時間がかかったそうな。同じもの食いすぎだろ。
「今日の夕方までゆっくりしていくといいわ」
「おう」
「では皆さんよろしくお願いします」
「おお……」
そういったのは澪だった。
お手伝いさん達全員にお礼をしてお願いをしている。
「ええ?そんなこと気にしないでくださいな!私達はあなたの下僕。当然のことをするだけです」
「でも」
「大丈夫です。主様の感謝の気持ちだけで私達は永遠に働けます!」
すごい、現実に行ったら最強の社畜が出来そう。
「あ、ありがとう」
「良かったな」
「うん!」
「じゃ!昼間は私の番だね!」
俺は澪を館へと戻っていくのを見送って、こいつが来るのを待っていた。
「さあ!デートのお時間だよ!道行くんっ!」
名称を言えば愛。
特徴は甘く可愛らしい元気な声。
「今日もいつも通りだな」
「ん?なにそれどゆこと?」
「特に意味なし」
「そか。じゃあ行こう!」
「……似合ってる」
「ん?何か?」
俺のボソッとした声を拾い上げる愛は、くるっと服を見せびらかしながらそう言った。
分かってんだろ。
いつもより綺麗で可愛い……。見とれてしまう。
白と黒のチェック柄のワンピースに大きめの黒いハット。高めのヒール。
なんだろう何着ても似合うんだろうけど……、ドキドキする。
「えへへー」
嬉しそうにしてる姿がまた……。あれ?俺こいつのこと好きになってない?
「すげえ可愛いな」
「えっ!……う、嬉しい…………」
いつも通りド直球な言葉に弱く、恥ずかしそうにしながら小さな声を出した。
「今日どこいくんだ?」
「んー、映画とか?」
「え?そういうのあるの?」
「ん?あるよー。楽しませるための一貫だしね」
「ずっと役目果たしてるからそういう娯楽ってのはないと思ってた」
「あはは。みんな休み無しで働いてたら死んじゃうよー。同じ役目の人もこの世に何千人もいるだろうし、交代交代でやってるよー」
「なるほどな」
休める日休めない日人それぞれか。
「まあ、重要な人の代わりがいなかったりすると……」
「……そうか」
出来るやつが本当に得なのかどうかは定かじゃないな。
「あ、そう言えば役目を果たさないやつっている?」
「んー、まあいるんじゃない?みんな好きな役を貰えるわけじゃないしねぇー」
「そ、そういう役目を果たさない奴らってどうなるんだ?」
「さー、よく分からないなー。でも、あんまりいい気はしないよねー」
目を、逸らした?
何かを隠しているのか、ぷいっとそっぽを向く愛。
まあ話したくないなら言及はしないけど。
会話を嗜みつつ違う街にある大きなショッピングモールのようなところへと着いた。
「ここにあるのか?」
「うん!ここの3階の一番奥だよ」
「おけ」
階段を登って映画館へと到着。
「何見るんだ?」
「えっとー、このトカゲの生態系ってやつ!」
「楽しめる気がしない」
「えー、じゃあ道行くん決めて!」
「そうだな、華麗なる純血、って映画は?」
「んー。意味はかんないから却下」
確かに内容がさっぱりだわ。
「は!これは!」
「どうかしたか!」
「本当の目的は映画なんて二の次で暗闇でイチャコラでしたい!」
「何どうしたの、急なカミングアウト。俺はストレートですきだけどさ」
「いや!映画どうでもよくて!」
「言いすぎだろ。あ、これみたい。伝えてますか?最近のこと」
「あはは。どっかで聞いたことあるような」
「嘘だろ?」
CM映画化ってあるんだなあ。
これに決定した。
暗い映画館には人はチラホラと疎らに座っていた。
「なんかドキドキするね」
「……エッチするか?」
「あはは。大胆!」
「冗談だよ」
「……そか」
「どうかしたか?」
あからさまに声も小さいし無理に楽しんでいるように見える。
「ううん。道行くんはさ……」
「ん?」
「この世界に来れて本当によかったと思ってる?私に会えて本当によかったと思ってる?」
「なんだ?支えるとか言っておいて心配になってんのか?」
「……うん。言葉だけじゃ、どうしても煮え切らない場所もあって。道行くんの言葉はストレートだし、行動も見てきた。でも、でもね」
「まあ、言いたいことは分かる」
「……」
「……」
居心地の悪い沈黙は続く。
「結局は何もかも私のエゴなんじゃないかって……。勝手に心配してるのも、そう。好きで引き止めてるのも私のエゴ……」
「……俺、この世界に来れてよかったと思ってるよ」
「……」
「あの世界での居場所は俺にはなくて、この世界では俺の居場所を作ってくれててさ。多分俺はお前がいなかったら人生を棒に振るってたかもしれない。だからお前のエゴはさ、俺にとって最高の供物だったわけだよ」
「……道行くん」
「好きで引き止めてる、そう言ったけどさ。俺は好きでここに居るんだよ。心配は勝手にしてくれていい、そうならないように努力するからさ」
「……」
「お前が支えてくれてるからこの世での俺は存在する一つの理由だし、お前の元気が俺の心を満たしてくれる。お前の場合はわがままでいいんだよ」
「……」
「ああ、そっか、言葉では分からないんだよな。……お、俺もちょっとはずいから……」
「!?」
「これで勘弁してくれ……」
俺はそっと胸の方に愛を寄せ、強く抱きしめた。
「俺はお前のことが好きだよ」
「……道行くんっ!私も!」
それに応えるように愛も俺をぎゅっと抱きしめた。
「ごめんね!勝手でごめんね!」
愛らしくもなく、少し涙ぐむ。
「謝るのは、違うだろ?」
「……そだね。この世に来てくれてそう言ってくれてありがとう!」
「うん。こちらこそありがとう」
髪を撫でてやる。
「キスはまた今度にな」
「今が……」
「人目を気にすんだよ俺は」
「ふふ……知ってる……」
「そろそろ始まるぞ」
「うん」
俺達はそっと手を絡めてスクリーンを眺めた。
「もう行くの?」
「まあ、ここの依頼はお前のやつしかなかったらしいしな。とりあえずまた困ってる人のところへと向かうよ」
「そう。じゃあ待ってるわ」
映画館をあとにした俺達は恥ずかしがりながらも館へと戻ってきた。
桜は何か勘づいたようで、ムッとした顔で俺の左手を握った。
「練」
「何?」
「お前ならいい役目を持てるはずだ」
「うん、頑張るよ。話の途中から忘れられてたみたいだけど」
「メタ発言はやめとけ!」
「あはは。最高の人にそう言って貰えるのは嬉しいよ。僕も頑張る」
「おう」
「……お姉ちゃん、言うことは無いの?」
「ええ、私の言葉はもう道行に届けてあるから」
「……それって」
「言及しないの。じゃ、また待ってるわよ」
「ああ。今までありがとうな」
「こちらこそ!」
「ばいばーい」
「……さよなら」
二人も最期の挨拶をして、次の依頼が待ってる街へと向かった。
ひと段落です。
また来週!




