表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

村を支える少女2。周りを見てみろ!

さて、鳥も囀るこの時間になりました。真っ暗だった部屋も光を浴びて鮮明に見えるようになり、隣には桜が添い寝をしている。

部屋を追い出したはずだが?

ドアが壊れている……、まあ、考えないでおこう。

朝は少し冷えるなぁ。

「おはよう……」

そう言ったのは桜ではなく、練だった。

「どうかしたか?」

「お姉ちゃんがお風呂入るから世話係を寄越せって」

「おーけー。俺が行く」

「え!?」

「二人とも寝てるし。俺がやるしかないだろぉ?」

ニタリとキモイ笑みを浮かべる俺。

「いやいやいやいや!男の人じゃん」

「小さい女の子を襲う予定は無いよ。その場に行ったらわかんないけど」

「じゃあダメじゃん!」

「冗談だって。少し悪戯するだけだ」

「…………不安だ」

「よし、じゃあ案内してくれ」

「うん」

嫌々案内してくれた風呂はホテルの大浴場かと思うくらいに脱衣所が広い。

これは風呂の方も楽しみだな………。ぐへへ。

「どうしよう。ごめんお姉ちゃん。嫌な笑みを浮かべてる……」

俺はガラガラと戸を開けて目の前にある風呂に目を取られた。

脇にはいくつかシャワーがあり、その一つに綺麗な素肌が見える。

「ようやくきたの……、遅かったわ……ね!?」

「おう。すまんな」

「な、ななななな、なんであんたなのよっ!」

「いや二人寝てるし」

「起こせばいいじゃない!」

「俺でいい事だろ?」

「良くない!私は乙女なの!」

「ふっ……、幼児体型が」

「な!まじまじ見るな!変態!」

「膨らみかけてもない胸を見ても変態しか喜ばねえんだ」

「じゃあめちゃめちゃ喜んでるあんたは相当よ!」

「まあ、落ち着けって洗いに来ただけだから!」

「ほ、本当かしら?変なことしない?」

「ああ。役目だし、役割果たすだけだ」

「わ、わかったわ……。じゃあ、早くしなさいよね」

……結構直ぐに受け入れるんだな。

「よし、じゃあ頭から洗ってくな」

「……」

俺は傍にあるシャンプーを手に取り泡立てる。そして、泡立てた泡で頭をわしゃわしゃと洗う。

「何よ下手くそね」

「上手い下手ってあるのか?」

「そりゃそうよ。普通もっと優しく、爪を立てずに地肌に揉み込む感じでやるのよ」

「普通ってなんだよ。もう自分でやれよ」

「な!普通は……普通よ……」

「まあ、頑張りますよ」

「わ、分かればいいのよ。分かれば」

「そういや、お前の役目も相当なんだな」

「相当……、そうかもしれないわね……。私が頑張らなきゃ……、私がその役目を絶対に成功させなきゃ……、誰も出来ないから……、……ってなんであなたに話してるんだろう」

「……なんでだろうな?だから、周りの人間も役目をするのが当然ってことか?」

「そんな!違うわ!……皆は頑張って働いてくれてる。…………いえ、そう思っても仕方ないわよね。あんな態度じゃあ……」

なんだ、自分で気付いてんのか。

「頑張りすぎなんだよ」

「でも、私がやらなきゃ……!」

「周りも助けてくれるよ……。……そうだな。一回外出てみるか?」

「……え?」

「気分転換だよ。ずっと同じことしてて滅入ってんじゃないか?」

「…………それもそうかもね。ふっ、あなたは他の人と違って対等に話してくれる。だから話したのかも。いえ……思い出したのかも……」

「そうなのか?」

「うん……。すっかり忘れてた。みんなが私に従うからそれを当然のようにしてたのかもしれない。でもあなたは違った。嫌、って言ってくれた。私はそれを普通じゃないって思ってた。当然は当然じゃないのよね。みんな私のために働いてくれてる……。私を支えてくれてる……。ありがとう、その一言くらい、言えたならな……」

「まだ、いなくなった訳じゃないさ。間に合うよ」

「……うん。そうね。私は自分のことで精一杯で……」

なんだ、よく分かってんな。命令無視とか、ご飯抜きとかは要らなさそうだ。

「プライドも高いしな」

「な!そんなこと!……あるかも」

「ははは。だろ?」

「ふふ、少し上せたわ……」

「体は洗わないのか?」

「む……、それだけ頼もうかしら」

「微妙な凸も?」

「変態っ!」

「ははは。先出てるよ。また……」

「…………うん。……ありがとう」

「え?」

「ありがとう!」

「何もしてないけどね」

行動に出来る前に気づけるなんて凄いよなぁ。

プライドとは言えど、取り繕われたものを取り払うのは簡単か……。

難しいのは、元々私が偉いのだ、と、無駄なプライドを周りに振りまいて、それに周りが従うことを普通だと思ってる、上からしか見下ろせない、人の意見も聞けない、どうでもいい優位性を気にして、周りの恨みにも気づけない社会のクズだ。いや、周りも……。

っと……、辞めておこうかな。現実の話は反吐が出る。

ただそれがこの世の現実だ。




「ねえ、あれどう思う!」

その時二人は起きて俺の様子を伺っていた。

「……どう?」

「幼女の体まさぐってさ!」

「……ギリ犯罪」

「だよね!めちゃくちゃあうとだよねっ!」

何か楽しんでた。




「さ、着替えたわよ」

小人は俺の部屋へと来て自分の服がへんじゃないか、と確認していた。

「あ、ちょっと待ってな。似合ってるぞ、服」

「あ、ありがとう」

素直になったもんだな、少し癖が残ってるけど。

「……ますたー、お出かけ?」

俺達の会話を聞きつけ桜が来た。

少し眠そうにしており、いつもより声が小さい。

「少しな」

「……私も行……「私達は留守番してるねっ!」」

と、そこに愛も現れた。桜を二人羽織のような形で後ろから抱きしめ、ニコニコと笑ってる。

「……愛?なんで?」

少し不愉快そうな桜だ。

「いいの!私達はお留守番!ここの仕事もあるでしょー?」

「……確かに」

「ありがとうな、愛」

「いえいえ!いってらっしゃい!」

空気を読んでくれたのだろう。

俺と小人は玄関へと進み二人で外へと出かけた。

「あの二人は……」

「ん?」

「あの二人は、あなたのことを信用してるのね」

「信用?別にされてないよ。愛は知ってるだけだよ。俺がどういう人間か。桜は……ちょっと分からないけど。一回助けただけだしな」

「ふふ、なにそれ。何はともあれあなたが好かれてる理由がわかる気がする」

「なんだそれは?」

「自分で考えるべきよ。この鈍感」

鈍感?

「小豆め、言うようになったな」

「そんな小さくない!……そう言えば名前」

「ああ、言ってなかったな。平崎 道行、だ」

「道行……、ね」

「お前は」

「また今度ね」

「なんだそれ。じゃあ小人って呼び続けるぞ」

「呼び続けるって……、心の中でずっと」

「まあ、小人だし」

「私でも135センチはあるの!」

「はい、小人小人、小人の中のでかい方だな」

「まだ十二なの!発展途上なの!」

「真っ平らですけどね」

「う、うるさい!」

あいたっ!

殴られた。

小人に案内されて街へと出てきた。あ、間違えた。

にしても周りの視線が気になる。

「やっぱ私間違ってたのかな……」

などとくらい空気を醸し出す。しかしそんなこと知ったことかと周りはザワザワ騒ぎ出す。

悲しそうな顔……、でも多分そうじゃない。

ふと一人の中年の男性が目の前に姿を現した。

「なあ、……あんた側近?」

「まあ、そうだけど……」

「その子って……」

「ああ。村の情勢を担ってる子だ」

「やっぱり!……礼を言わせてくれ」

「ほらな?」

「え?なにそれ?」

キョトンとした顔でその男の人をみる小人。

「澪……。いつも感謝してるぞ。お前のおかげで豊かになった……。すごい頑張ってるって館の連中からも聞いている……」

それを大声で言う男の元に村の人達がぞろぞろと集まり、礼をする。

「な、私皆に酷いことを!」

「何もしてない……。一生懸命頑張った!若気の至りというやつだろ?」

「そうよねえ」

ぞろぞろと集まってくる。

「むしろ心配してたのよ?あなたがいつか体調を崩すんじゃないかって……。顔を見せてくれないんじゃないかって……」

「私のことをなんで知ってるの?」

「この村を救ってくれてるからな!そりゃみんな知ってるよな?」

「そうだそうだ!」と周りの人は一致する。

「……」

「どうした?澪?」

俺は名前を言った。

「ううん。なんでもない」

「あ、そうだ!これ持ってって!私の役目は豊富な作物を育てること!あなたの力になれると嬉しいわ!」

「あ、これも」と、どんどん供物が捧げられていく。

「う、」

「う?」

「うわーん!」

急に泣き出す澪にみんなはキョトンとしてる。

俺はそっと胸を貸して頭を撫でてやった。

「皆さん、嬉し泣きなんです……。分かってやってください」

ははは、と周りはみんな笑顔を振りまく。

「おんぶして?」

「え?」

「おんぶよ……」

「しゃあねーなー」

俺はオブってやって。とりあえず人気のない所へときた。

「以外だったか?」

「ええ、そうね……、誰からも嫌われてると思ってたから……」

「周りの人がいい人でよかったな」

「……うん。道之?」

「どうした?」

「これを見せるために……、連れ出してくれたの?」

「まあ、ここまでとは思わなかったけどな」

「そう……」

「まあ、いい気分転換にもなっただろうしな」

「うん」

澪は少し惚けているのか、上の空だ。

「みんなの笑顔、お前は見たこと無かったろ?」

「うん」

「言わずもがなかもしれないけどお前は周りに支えられて生きている。反対にあの人たちを支えている……」

「……うん」

「お前のおかげがみんなを笑顔にする。お前の笑顔がみんなを笑顔にするんだよ」

「うん」

「……頑張りすぎだ。必死になって周りが見えてないと、周りも心配するだろ?お前の仕事は村の活気づけなのに、お前が元気ないで周りの元気なくさせてどーするよ?」

「そうね」

「お前が必死にやらなくてもみんな手を差し伸べてくれる。分からないことは教えてくれる。今日わかったろ?」

「うん」

「支えあってるんだよ。お前達は……。繋がってるんだよ。お前のためがみんなのため。みんなのためがお前のためだ」

「うん、もう分かったよ」

「……頑張りすぎるな、周りを頼れ」

「うん!」

目に生気が戻ったようだ。

目の先は未来に向かっている。




!?


何事だこれ!

「あれー?何かあったー?」

「……おかえり」

「ってお前ら何してん?」

「見てわかるでしょー?アンノウン退治だよ!」

「いや、余裕だな」

俺らが帰って来て扉を開けた瞬間だった。

俺の頬を桜の剣がカスった。

怖すぎる。

「……あ、やっぱり近づいてた」

「?」

「……私の力は握っている時が最高潮に強い……、……近づけば近づくほど力を使える」

「なるほど。近くなって剣にまでなれたと」

「う、ん」

「俺が持てばいいか?」

「……もち」

ちょっとした若者言葉は何なんだろう。

などと思いながらも剣を手に取った。

「……しっくり」

「よかった、なっ!」

アンノウンの攻撃が俺に届く前に一度冗談に構えた剣を振り下ろした。

よし、一撃か。

「……後ろ……!」

「え?うおっ!」

油断していた。後ろの敵の交わす余裕さえなく、桜に引っ張られ何とか難を逃れた。

あぶね、そうだった。俺の力が強くなったんじゃなかった。

「助かった」

「……油断大敵」

「だな。澪は後ろに下がってろ」

「うん」

「にしても尋常じゃない数だな……」

目に見えるだけでも十はいる。

「まあまあ!気長に戦おー!」

「元気でいいなぁ、お前は」

「あったりまえ!」

元気を振る舞いながらに敵を一撃で潰していく。

「俺も!」

件を振るうことしか出来ないけど、何とか倒せてはいる。いや、桜が誘導してくれてるお陰だ。

「!?」

後ろだっ!

……なんだ今の、気配を感じた。

「……どした……?」

「澪が危ない!」

「……敵」

「ああ!……でもここじゃ桜を降ったらあいつに当たる」

「……小人を全力で支えて、……私を強く握って」

「わかった!」

俺は言われた通り、全力で澪の元へ駆け寄り、澪を胸元へと引き寄せ背中を的に見せた。

……大丈夫か、これ!

「私の……ますたーに、手出しは……だめ!……一閃」

桜は俺の右手が勝手に動かし、後ろの体制から振り向きざまに横一線、敵を切った。

遠心力も力に加え、凄まじく早い一撃を放った。

「助かった」

「……当然……!」

ふんす!と、堂々と胸を張ってる姿が剣のうちでもよく分かる。

「次は前だよっ!」

油断大敵正しく。一瞬気を緩めた瞬間に襲ってきやがった。

今は愛が守ってくれたがずっとそうはいかないだろう。気を引きしめて……、っておいおい。

「……何体いるんだよ!」

「……倒しても湧いてくる。……キリない」

「んー、流石にめんどくさくなりそうだねぇー」

量がドンドコと増えていく様子に少しずつ疲れが見えてくる。

「めんどくさいなぁっ!」

「……だめ!……横!」

ふと、愛が少し感情的になった瞬間、敵は隙を見つけ脇腹に攻撃を仕掛けてくる。

「くそっ!」

何とか俺と桜が攻撃線上に入って受け止めたが、どんどん攻撃も重たくなってきており、三人とも吹っ飛ばされてしまった。

その隙も見逃さない、アンノウン。頭良過ぎないか……、こいつら!なんなんだよ!

どんどん間合いを詰めてとうとう逃げ場が亡くなった時、一寸の光が俺たちを照らした。

「なるほど、ここがアンノウンの大発生地か。まあしかし、私が、アーサーが来たからには安心して欲しい。光で闇を砕くっ!」

その言葉を誰かが放った瞬間、二度目の閃光が俺たちを包み込む。

眩しくて目を瞑ると、直ぐに光は消え去った。

消えた瞬間、目をもう一度開けると。

「全滅……」

だった。

「……何者」

「おっと失礼。私はアーサー。異世界からの闇を討つ者」

白い騎士の様なごつい鎧を纏い、キラキラと光る聖銀の鋭い剣を見せつける。

サラサラとした長めの金髪と、キリッとした切れ長の二重の目。

騎士だ。よく絵本とかでみるかっこいい騎士だ。なんか腹立つな。

「……痛っ!」

「……どした?」

「怪我?」

「いや、なんか頬に切り傷みたいなのが……」

「!?貴様まさか敵のものか!」

「は?何言ってんの?」

「私の剣は悪以外の者を切らない!貴様が切れるということは悪だということ!」

「は!?ふざけんな!こっちも頑張ってアンノウン倒してだろうが!」

「言い訳無用。しかし、言葉は通じるようだ。一度街の城について来いっ!」

「何勝手に話進めてー?……許さないよ?」

「む!あなたは、なんと美しい……、私の嫁に相応しい……」

「えー、キモイなぁ」

手を掴んで離すことをしないアーサー。ブンブンと愛が手を振って振り払おうとしても離れない力。相当だぞ。

「私に愛を誓え!」

「やっ!」

執拗。

「うむ、愛の裏返しだろう?にしても君も疲れているようだ。よし、連れて帰ろう。さあ眠れ」

「なっ!勝手……、ってあれ?体が……力が……、なんで?」

「道行っ!」

澪の声が届かない。

……くそ、俺までなんだ……?何かされたか?



俺達はそのまま意識を失った。





少し短めになってしまいました!

この後の話を長めに書いてしまいました。

暇があれば是非!



6月14日(金曜日)投稿致します!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ