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村を支える少女。その人の立場になって色々考えてみ?

プラプラと談笑しながら歩いて一時間ほど経っただろうか。

隙間がなく隣接したレンガ造りの家がちらほらと見えてきた。

やはりここは俺の住んでる世界じゃないんだ、と実感する。

「うーん、あそこかな?」

「……どこ向かってるの?」

「あれ、言ってなかったか?」

「……聞いてない」

「依頼を受けられる街に来たんだよ!」

「……ますたーの役割を?」

「そう、果たしにな」

使えるかマジで心配だけど。

んー、と背伸びをして疲れを飛ばす。

着いた町は周りを低い塀で囲っており、入口はひとつしかなかった。

ウェルカムと書かれた門を潜って中へと入っていく。

「賑わってるねぇ!」

「そうだなあ」

キョロキョロと周りを見渡せば人、人、人。居すぎ、と思うほどに賑わっている。

入ってすぐは市場なのか?

家の前にテントを貼って果物やアクセサリー、その他諸々が置いてある。

金は本当にいらないんだろうか?

「人が多いから離れちゃ……、いない!」

早すぎだろ。人混みやばすき、一度抜けたい。

前へ前へと進もうとすると後ろ後ろへと下がっていく。

なんだこれ、これが本当の人の波ってやつかな。

「……ますたー」

ふと俺を見つけた桜は脇に俺を抱え、人の上を飛んだ。

「ええ?」

「……掴まってて」

やだかっこいい……。

照れながらに人気ない所へと下ろしてもらう。

「あ、ありがとう……」

「……なんで、オカマ風?」

「いや、気にしないでくれ。それより愛の奴は?」

「ここだよー!」

と、後ろから抱きついてくる。

「お、おい!!乳が重てぇ!鉛でも入ってんの?」

「なあ!失礼な!道行くんへの愛で重たいんだよ!ってか嬉しくないの?」

「純粋に嬉しいです」

「素直でよろしい!」

俺と愛の会話を横目にクイクイっと袖を引っ張る桜。

「……目的の場所は?」

ムスッとしながらそう聞く桜。

「なんか拗ねてる?」

「……別に」

「胸ないもんね!」

「……む……!なくても……良い所いっぱいあるもん……。あるもん……」

「あーあ、隅っこで落ち込んじゃったよ」

「禁句だったかー」

「大丈夫だよ。俺はお前が好きだぞ」

「……うん!」

瞬時に立ち直り俺の手を握る。

「にしても依頼ってどこで受けるんだろー」

キョロキョロと周りを見渡す愛。

「ねえあれ……」

何かを見つけたのか?

指をさして淡々とした声でそう言葉を発した。

その方向に目線を合わせる。

「……襲われてる」

桜の言葉通り、そんな光景が目に投写されている。

五人の男に囲まれ、困り、辛そうな顔をしている女の人。

……。

「助けないとな」

「まあ、そう言うと思ったよ!」

愛は直ぐにその場へ向かい、着いた。

いつも通りの爆速も爆速。

そして、一秒で敵が五人とも吹っ飛んだ。

ボーリングかよ、あはは。



「あ、ありがとうございます」

助けた愛の元へ俺達も駆け寄り、そこにスタンと頽れている女の人を見た。

黒いフリルのスカートに白いノースリーブのシャツをインしている美人な人だ。

「大丈夫ですか?」

「はい……」

「ええと、こんな時になんですけど」

「はい?」

「依頼掲示板みたいなのってどこにあるんですか?」

「貴方達……」

「僕が一応、本当に一応、救援者の役割を持ってまして」

「なるほど!すぐ案内致します!」

「……元気になった」

「だな」

急に元気を取り戻し。さあ、こちらへ!と快く案内してくれる。

愛は倒した敵に説教を垂れている。

「置いてくぞー」

「あ!待ってー!」




「えっと、そちらの御二方は?」

「こっちの子が桜です。俺の剣、でいいのかな?」

「……うん。……一生一緒のパートナー」

「で、さっきの倒したやつが愛です。俺の支え役、だそうです」

「へえ!凄いですね」

「え?」

「支え役がつくのはそれだけ重要な人ってことですよ。……さて、着きました」

そうなのか?ってきり誰にでもいるものかと……。

「ここが我が宿屋であり、掲示板を発足させて頂いている、ミゼラ、です!」

ふと立ち止まり、こちらを向くお姉さん。

「わ、我がって……」

「私がオーナーです」

「なんてこった。運良すぎだろ」

ってか。

「入り組みすぎだろ。全然わかんなかったよ?順路」

「まあ、それもありまして……。人がいないのです」

「あー」

「なるほど!」

家の裏を通り、入り組んだ道を通って着いたここは秘境みたいな場所だ。木造の建物で周りは木で覆われている。

「……納得」

「だな」

「で、依頼をしに来た様ですが、私から先に依頼をさせて貰ってもよろしいですか?」

「ん?何かあるんですか?」

「はい……。この依頼ボードの一番右下なんですが」

木造のドアを開け、心地よい鈴音を耳で感じて即右側にボードはあった。

「ん?」

「これー?」

「昨日から来てるものなんです。とても偉い方からの依頼なんです。なんとも急ぎの用みたいで、もう壊滅寸前だそうです」

何言ってるのか全然理解できないな。

「何がなんなのか……。最初から聞きましょう」

「えーと、この村は一人の兄妹によって成り立っているんです」

「……ほう」

「その兄妹はこの村の足りない役目や、改善点を纏めて、解決を計っているのです」

「……村の情勢を。うん。それで何が壊滅的なんですか?」

「流石に村の事情をずっと見ている者の為、食事や、掃除などと世話係が沢山いるわけです。しかし昨日突然、皆様がお腹を壊してしまい、世話係が全滅とのこと」

「みんな一緒のもの食べた?」

「御二方とも村のこと以外は真平で、何もできません。住んでいる舘は混乱し、ぐちゃぐちゃで、兄妹、共に力が出ず、村の情勢がこのまま止まってしまうと、村は足りないものを足りないままとし、何を改善して良いのかと模索するも分からず、混乱し、死に至るでしょう」

「……重たすぎるな。まあ、とりあえず、その二人の世話をすれば良いわけですね?」

「はい……」

「分かりました」

「本当ですか!」

「まあ、そういう役目ですし……。この村がなくなったら悲しむ人どころか生きる理由を失う人が多く出てきてしまう。俺たちにできることであれば……」

「助かります!ではここに行ってください!」

地図を渡されそちらへと向かうことになった。

二人とも何も言わず着いてきてくれている。





案内の地図通りだとここら辺か……。

いや、真逆っ!

村の反対から反対まで来たわ……。ということはさっきの所が最南、こっちが最北、ということか……。

大きな建物は宿屋と、この目の前にそびえ立つ大きな、館というか、古びた洋風の屋敷、のみらしい。

そのためこんな奥地にあるんだとか、適当だけど。

「いやあー、にしても大っきいねぇ!」

「……バカでかい」

「そうだなあ。ここに兄妹二人がいるみたいだけど……」

上ばかりを見上げていたせいで下に目線を合わせるのを忘れていた。

バカでかい門を潜るとバカでかい木と両開きの板チョコのような扉があった。

そして、その扉の前に小さな人が立っていた。

迷子か?と思うくらいビクビクと怯え震えている。

とりあえず入らないと依頼も受けられないため、前へと進んでいく。

「……!」

進んでいく旅に怯える小さな子。

なんか犯罪でもしている気分だ……。

「私達なんか犯罪者っぽくない?性犯罪かな?」

「なんでその罪とった?てか、この世界に犯罪とかないだろ?」

「いや、そうとも言えなくてねー。さっきも襲われてた人見たでしょ?」

「あ、確かに」

「結局はみんな人でねー。自分の役目に納得出来ないものもいるものさあ。それを納得させる役目とか、悪を脅かす役目とかもあるんだけど、レアケースでねぇ」

「なるほど、な」

「まあ、道行くんの世界より断然少ないけどね。みんな繋がってるし、やることはやってるからね」

「ふーん」

繋がってるってどういう意味だろうか。

ふと、目の前まで来た。

ブルブルと震えて失神しそうだ。

「……大丈夫?」

と、桜が小さい子の目の前へ急に現れ、小さな子は気を失った。

「やりすぎだ!」

「……何もしてない」

「……確かに」

「さて、どーしよっかー」

「とりあえず屋敷に入れてもらおうか」

「……入る」

小さな子、小人をおぶって屋敷の扉を開ける。

「真っ暗だな」

電灯一つついておらずホラーな雰囲気を醸し出す。

入ってすぐ大広間があり、シャンデリアが光に反射する。上へと続く階段が両端に着いており、いくつもの扉が等間隔に着いている。

とりあえず一番左にあった近い扉に小人を運んだ。

「なんだここ?」

「……物置……部屋?」

「ぽいな」

「スイッチスイッチ、と!」

愛は壁を摩って突起物を押した。

パチッと、心地の良い音を奏でオレンジ色の暖かい光がこの部屋を照らした。

「ちょうど客間みたいだねぇ」

学校にある様な木の机と硬そうナイス。隙間を挟んでベッドという簡素な部屋だ。

「とりあえず寝かしとくか」

「……それがいい」

俺はそっと小人を下ろしてベッドへと寝かせた。

「……はっ!ここはどこ!」

すぐの事だった、小人は起きた。

「お前の屋敷だよ」

「あわわわわ!」

あれ震えてる?わなわなと震えている。

「ふ……」

「ふ?」

「不法侵入だぁああああああ!」

小人は危機回避レベルMAXで俺たちから距離をとる。

部屋を離れどんどん知らない館の中へと……。

「待て待て待て待て!」

「追ってくる!ストーカーか!」

「変な誤解の罪に罪被せんな!」

「じゃ、じゃあ何!」

「俺達は依頼を受けてきたんだよ。世話係だ!」

「……嘘だっ!だって!不法侵入して……こうやって襲ってる!」

「襲わなければ止まるのか?」

「止まらない!」

「解決しようがないっ!」

「……止まって」

ふと桜が先回りして小人に腹パンをやった。

「ぼ、暴行罪……」

「ちょっとカバーできない」

「……ますたー……っ!」

「あははは!罪に罪が重なってくねぇ!」

「笑ってる場合じゃないな」

「万事、休す……」

「襲わないって!」

「嘘だ!飴ちゃんくれるからって攫う気だ!」

「それ違う犯罪だから」

「はい、これでいいんだろ?」

何もせず棒立ちし、目を瞑った。

「……本当に何もしないの?」

小人も止まった。

「そう言ってるだろ?これで信じてくれた?」

「……きんたま蹴らしてくれたら信じる」

「ほかの信じ方にしない?」

「……じゃあ、飴ちゃんちょうだい」

「それでいいのか……。愛。持ってる?」

「持ってるよー」

なんで持ってんだよ。

「ほい!」

小人の顔がぱあっと明るくなった。無邪気な子供だな。

「あ、ありがとう……。ゆ、許した!」

マジか。将来が心配でたまんないよ。

「今日から世話係することになった。多分他の人達が腹痛から治るまでの間だが」

「……わかった。怖いことはしないでよ?」

「…………出来るだけな」

「怖いっ!」

「で?兄妹ってどこにいるんだ?」

「え?」

「ここの家主、兄妹で、村の活性化とか、何とかしてるんだよね?」

「ん?お姉ちゃんはやってるけど僕はまだ役目もらってないからまだだよ?」

「ん?」

「ん?」

「……十一歳」

「ん?」

「十二歳からじゃないと役目は貰えないからねー」

「えっ?お姉ちゃん何歳?」

「十三歳!三日後に一年経つかな?」

「まじか!」

それで村守ってるとか、どれだけの苦労を。

ほろりと涙が……。

「いやー、すごい役目だねぇ」

「そうなんだよ!」

お姉ちゃんを褒められて嬉しそうな小人。

「僕も早く役目欲しいなぁ」

ワクワクと期待が止まらないと言った感じだろう。目を輝かせている。

「それで俺らは何すればいいんだ?」

「えっと……、館の掃除と、六時になったらご飯が食べたいな。あと、洗濯が二日分溜まってるはず……。それくらい?」

「なるほど。まずは掃除からか……」

「いやぁ!手がかかりそうだー」

「……大変」

「頑張ろー!」

「おー、ってやる気なのな。二人とも」

「……当たり前。ますたーの初仕事。顔にドロはダメ」

「そゆこと!」

「ありがとうな」

「えへへー」

いい笑顔だ。

「あ!」

「どうした?」

「衣装準備するね!」

「了解」

そして、着替えて館の掃除が始まった。




「にしてもなぜにメイド服、あ、いや、おかしくないのか、現実の方が可笑しいんだ」

「どうしたの?似合ってるー?」

「ああ。二人ともグッジョブだ」

「……わーい。でも……ますたー」

「なんですか、その悲しそうな声は」

「……道行くん」

「お前もですか」

いや、分かるよ。なんで俺だけ体操着のジャージ姿みたいな恰好なんですか。しかも、子供用。ピチピチで……、もう、これこそ犯罪者なんじゃないかって疑うわ。

「ごめんね。これしかなくて……」

「いや、流石にきつい」

「元に戻してくれたら喜ぶよ」

「誰のせいでっ!」

結局元の服に戻してやっと作業開始。

桜は館の窓の埃をパタパタと上から払って下に落とす。窓のホコリが取れたら洗剤をつけて上からガラスに塗っていく。そして、窓拭きワイパーで水を綺麗に下へと送る。

テキパキと一生懸命やる姿が愛らしい。そして早すぎる。一瞬で綺麗になってるわ。

「手際がいいなー」

「早いよね」

「いや、お前もな。ってか何その機械」

掃除道具?もうなんか、専門的じゃね?

「えー、これ掃除道具入れに入ってたー。ポリッシャー!」

「なにそれ。すごそう」

持ち手のところはバイクのような形になっておりブレーキの様なものが着いている。その下は洗剤タンク。その下は銀色の円盤のようなものが鉄の棒で接合されている。

ブレーキ部分は水タンクの水出しの機能なんだろうか。

よく見ると下にパッドが着いておりそれがクルクルと激しく右に旋回している。

上下で左右に動かすのか。なんでこんな詳しく説明してんだよ。

「床のシミがみるみる綺麗に削れて綺麗になってくな」

洗剤も入ってるみたいだ。

俺はそれをモップで拭き取りピカピカにしていく作業。これ俺大変過ぎないかな?一日じゃ終わらなさそう。俺だけ。

「ちょ、ちょっとその機械使うのやめようか。ガチすぎる。そして俺大変だから」

「はーい!」

良い返事をしながらあった場所へと戻していく。よし、良かった。


「さっきから音うるさいんだけど!?」


!?

「何事!誰!」

「それはこっちのセリフよ!」

びっくりするぐらいドアを思い切り開ける、こいつも小人だな。女バージョン。

「って、これ」

「そうだよ。僕のお姉ちゃん」

「何よ?あなたが依頼受けてくれた人?全く綺麗になってないじゃない!」

「まあ、やり途中だし」

「口答えしない!私はお腹すいたわ!何か作って!」

「掃除は?」

「夜中にでもやればいいじゃない。そういう役目なんでしょう?」

「んー、やだなー」

「は!?」

「まあ、まずはご飯作ればいいんだな、おっけー」

「なんなのよあんた!役目をやるのが当然でしょ!」

「……その役目をして過労になったら世話ねぇだろ。一人で生きていけるとでも思ってんのか?」

なるほど。腹痛ってか、ボイコットみたいなものなのではないだろうか。

人が居なくなるのも当然の態度だな。厨二病早期発見!

「さ。行くぞ、小人」

「僕の名前は(れん)だよぉ!」

さー、立ち去ろ立ち去ろ。

「……ますたー?」

「掃除続けててくれ。俺が料理作るから」

「……出来るの?」

「そこそこな」

とりあえず厨房で料理を作ることになった。

具材や、料理道具はなんでも揃っていた。

うわー、すげー。何作ろ。迷えるって幸せだな。

唐揚げと……、混ぜご飯と……、味噌汁と。

普通にみんな好きであろう、王道を選択し、料理を行い、終わった。

「……終わったよー!」

ナイスタイミングで二人とも掃除を終えて厨房へと入ってきた。

「うわー!美味しそー」

「よし、食堂に持ってくぞー」

「練、お姉ちゃん呼んでこい」

「うん」

「……手伝う、持ってくの」

「ありがとうな」

「……うん」

無表情にみえて口角が上がってる。嬉しいと感じてるのがよく分かる。

食堂へ向かうともう既に小人(女)は座って待っていた。

「お腹すいたわ!早く!」

「はいはい」

俺は呆れながら料理を小人へと運ぶ。

ぐぅうううう。

「小人ちゃんのお腹もなってるし先に食べな」

「誰がこびとちゃんかっ!美味しくなかったら許さないからね!……いただきます」

怒りながら食べ始める小人ちゃん。手が止まらない。

「……ふう、ご馳走様」

「早すぎだろ!」

「うっさい!お腹すいてたからよ!……にしてもまあまあね。本当の料理人になったらどう?私が本気で雇ってあげるわよ?」

「結構だ。というか、嫌だなー」

「は!この私が頼んであげてるのよ!?」

「お前の凄さは俺には分からねえよ。さ、皿片付けるぞ。三人とも食べていいぞ。俺はあとから食べるから」

後から桜、愛が続いて入ってきた。

「な、何よあんた!」

小人は、ドアをバンッとしめ、怒りを抱えたままどこかへ行ってしまった。

「さ、食べてくれ」

「……ますたーのぶん」

「俺は後」

「ダメだよ!みんな一緒にが良んだからー。一人にさせないよ!待ってるから、ね?」

「……そうそう」

「二人とも……。分かったよ」

俺は小人(女)の食べ終わった皿を片付けて、自分の分を用意した。

「さて、じゃあ、いただきます」

「「「いただきます」」」

三人が同時に復唱し、ご飯タイムだ。

「おいしー!」

「……うん」

「すごいね!」

「あ、ありがとう」

人のために作ったこと無かったけど、こんな反応してくれるのか……。嬉しいもんだな。

「お礼を言うのはこっちさ!」

「本当にね。僕……、こんな美味しい料理初めて!」

「そっか、良かったな」

「うん」

とは言いつつも顔はどんよりとしている練。

「……何か悩み事か?」

「……ううん。大丈夫だから」

「そうか……。じゃあ、お前から依頼はあるか?」

「え?」

「俺は救援者。依頼して欲しけりゃ言ってくれ。手伝ってやるからさ」

「……流石」

「う、うん……」

「お姉ちゃんを元に戻して欲しい、か?」

「え!なんで分かるの?何も言ってないのに!」

「あの歳で村全部背負ってんだ。おかしくなっても仕方ないだろ。いただきます、ごちそうさまって、感謝できるんだ。変なプライドとか、役目の忙しさとか、色々重なって自分でああいう像を作ったんだろうな。自分はそんなんじゃないのに。そうじゃなきゃいけない。無理してるんだろうな」

「……うん。昔はすごく優しくて、周りのみんなに感謝して。役目を持ってから半年くらいかな。少しずつやる事が増えて、責任を持つようになってね。私がこれをやってるんだから、とか。やって当たり前だとか……」

「責任を重く捉えすぎちゃってんのかな。自分は凄いんだって言いたいのかもしれないな」

「そうかも。後は弱い姿を見せられない、とか……。そんな様子も見える。昔は泣いてばっかりだったけど今じゃああだし……。でもなんで分かるの?」

「うーん。分かる、ってか、自分がアイツだったらどう考えるか、って思ってな。合ってるかどうかはさておいて、客観視、それもその人自身の目になって、色んな考えをすると少しずつ見えてくるものがあるかな?」

「へえ。そんな事どうやって」

「色んな人見てきたからな。周りと同じようにならないように生きてきたからね。要は客観視だよ。誰がどう俺の事を見て、周りの人達がどんな考えの可能性を持ってるかとか考えてたら必然的にな」

「道行くんみたいな人が増えると世界は幸せだね!」

「ん?何でだ?」

「だって、これは周りから見たら嫌な感じに見える、これは楽しく見える、こういう言い方をすれば良く見えるって考えれるじゃん?そうすれば自然とストレスとか無くなりそうじゃん!」

「まあ、そんな上手くいくとは思わんけど…。出来たら幸せかもな」

「……皆笑顔」

「それがいいよな。この世を生きて楽しむなら。っと話がそれてるな。で、結局練、どうしたいの?」

「僕は……お姉ちゃんの手助けをしたい!昔のように笑って優しいお姉ちゃんが欲しいよ!」

「よし、じゃあ依頼はそれでいいか?」

「……うん。でも!出来るの?」

「どうだろうな。結局は改善するなんてその人の生きてきた全ての考えを知らなきゃ無理なことだろうな」

「……」

あからさまにしょぼんとする練。

「でもさ、やれることが無いわけじゃないだろ?どう思ってるのか、どう考えてるのか、予測して動けばいい。間違ったら違う考えを考えて実行すればいい。結局やり方は幾通りもある。なんにしても第一歩からだ。まず手始めは何を改善すべきか。何が根底にあるのか」

「……うん!やらなきゃ始まらないよね!」

「そういう事だ」

「……で、一歩目は何する?」

「とりあえず全ての命令は無視。料理もだめだ。後は無駄に失敗を繰り返したり、楽しませること」

「それじゃ死んじゃわないのー?」

「明日だけだ。周りの重要性を知らせてみよう、言葉じゃなく行動で。死ぬ前には気づくだろう」

いや、憶測だが気づいてるはずだ。プライドを捨てて本音を履かせること、か。

……上手くいけば一発で解決できるかもしれないな。

自分には自身がある、人を見てきたから。考えてきたから。それだけは俺のものとさせてくれ。

「……なる(ほど)」

「とりあえず明日はそれで」

「わかった」

練の目には暑い熱意のようなものが見える。

今日は寝ることにしよう。

ご飯を食べみんなで片付け、最後まで掃除を終わらせ客間を貸してもらった。

「ふう、おやすみ……」

「うん!おやすみー!」

「何故お前がっ!」

「……おやすみ」

「お前もかっ!」

「なにか文句でもあるのー?」

「いや、正直嬉しいけど!狭いし、お前らの部屋分け与えられてたじゃん」

「嬉しいんならいいじゃんか!初夜よ!初夜!」

「ごめん、待って心の準備まだ……、ってか俺はまだ認めてねぇ!」

「えええー!道行くんからプロポーズしといて!そりゃないぜー!」

「すまん、記憶にない」

「都合いいなぁ」

「……なんの話?」

「ああ。こいつの役目俺を支える役目でな?要は」

「結婚だよ!結婚!そばにいて私が支えるの!」

「……む。支えるのに結婚は別。……全然知らない人と結婚なんてした、ら……。どうせ、三日で喧嘩……」

「ふふーん。残念!それも役目に入ってるのー!あと、私はずっと見てたから知ってるもんねー」

「……くっ」

「おいっ!いつからだよ」

「十歳のときくらい?」

「めちゃめちゃ前だ!何もかも知られてる!怖い!」

「あははは。本当だよ!」

「冗談であって欲しかったよ……!」

「……私、ずっと一緒」

「でも、結婚は私のモノ!」

「……そんなもの肩書き。……どっちが大切になれるか」

「勝負するー?」

「……うん……!」

バチバチと火花を飛び散らかす二人……。

うるさくなってきたな……。

「もーそろそろ、寝かせてくれ」

今日は色々あって、疲れてる……し。まあ、もう一つの理由もあるけど。

「はーい!おつかれだろーしね!」

「……」

「……」

隣でスースーと音が聞こえる。

「あー!出てけっ!」

「えー!なんで!」

「興奮して寝られない!」

「普通に危険なやつか!」

「お前もだっ!」

まだ俺のベッドで寝っ転がってる桜。

「……一緒にいないと、死ぬ」

「お前……適当言ってない?」

「ぎくっ。……言ってない」

「嘘こけ」

とりあえず出ていかせて俺の理性を保たせる。

危ない危ない。襲うところだった。

すみません。知らないうちに3週間空いてました。

予定立てた自分が一番驚いていたと思います。

少し言いたいことは言えたかな?伝わったかどうか、わかりませんが、また違う形で分かりやすく言えたらいいな!


次回は来週です。(2019/6/7)

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