和、考
少し休憩している間に俺は聞きたいことを聞くことにした。
「そういえば愛」
「うん?」
「そんな引っ付かれると体が痛いんだが」
「あららごめんね」
「いや、謝るならやめろよ」
「てへ」
「やめろやっ!」
「あうっ!」
俺はチョップして体に抱き着いている不純物をどかした。
「どうやってお前ここまで来たんだよ」
「え?神に頼んでー。そしたら反対されて、アーサー来て武力行使に出て倒した?」
「アーサー散々だな……」
「道行君もそんな感じ?」
「そうそう。でもなんでそんなことをしようって?」
「一回最強を取りに行こうとそれがいる場所に戻ったんだけど結局見つからずに戻ってきたら道行君が大変つらそうな顔をしてアンノウン倒してるから。気分悪くなって、根本から叩き潰そう、って理由でさ」
「ふーん。でも結局和解を求めたんだな?」
「道行君ならそうするかなって。人生やすやすと奪っていいわけじゃない。みんなを助ける道行君ならそうするかなって」
「愛」
「まあ、どうしようもないやつはちょっと攻撃加えたけど」
「ああ……。まあ仕方ないよな」
「道行君は私を助けに?」
「それもあるけど、本当に愛と一緒だよ。この世界もあっちの世界も少しずつおかしいから変な人はいるし。ぶつかり合ってるから何も変わらない。正しいのがどっちかなんて人それぞれだから裁くなんて無理だ。でもこうしたら、なんて二人の正しい意見を出し合えて改善ができるのであれば物事もっとうまくいくのかなってさ」
「あはは、道行君らしいや」
「なんで笑うんだよ。結構本気だぞ?」
「うん。すごいと思ってるよ。はい、か、いいえ、なんて決めてしまったら対立するのなんて当たり前だもんね。価値観を決めてしまったら否定するのは当たり前。でもその価値観をみんなが共有して、いろんな価値観を持てるのならいろんなケースにやさしく対応できるもんね」
「もっともこの世の神の話だから、うまくいくかわかんないけど」
「大丈夫だよ。道行君なら」
「どっから湧いてくるんだよ、その自信」
「知ってるもん。多くの人を助けられるのは道行君なんだって」
「……そか」
「そうだよ!」
「じゃあ、期待に応えないとな」
「うん!……私、ちゃんと道行君を支えられてる?」
「え?そりゃもちろん。なんでだよ」
「私はただの脳筋だからさ。道行君を言葉で落ち着かせて、元気にさせてなんてさ……。それよりも元気すぎて鬱陶しいんじゃないかって」
「そりゃ鬱陶しいよ」
「ええ!?」
「でもさ。それが愛だ。一緒にいてくれて俺のことを知ってくれてるだけ。いや、だけなんて失礼だな。知ってくれてる大きな存在だ。いつも大丈夫って言葉がどれだけ励みになるか。ほしい言葉があるから一緒にいるんじゃない。俺が必要だと思うから。些細なことでも幸せを感じれるし、大切だから一緒にいるんだよ。いるだけで支えれているんだよ」
「道行君!!」
「おい抱き着くな!」
いい感じの言葉が台無しじゃないか。
「私ね。本当に一目惚れで、ずっとあの世界から道行君を見ていたの。いじめられて屈しない姿も。他の人なんかとは違う考えで、いろいろな方法で人を助けてて、良い風に解釈をして、この世の中の人とは違いながらもずっと逞しくて、楽しそうに生きていた」
「え?そんなところまで見られてたの?本当に素っ裸だね、俺」
「あはは、そうだね。でもそんな生き方が、枠に捕らわれない生き方が私に勇気をくれたし、幸せにしてくれた」
「生きてるだけで?」
「そう。道行君が生きているだけで私に影響を与えてくれた。ずっと敵を倒すしかない、役目を全うしなきゃっていう、使命感の中、否定する自分もいて。もう少し、周りを見て考えて生きていきたいと思った。役目をこなすだけが人生じゃない。ルートをたどれば幸せってわけじゃない。自分がやりたいことをして、楽しいって思える瞬間が幸せなんだって思った」
「そう、なんだ……」
「うん!だから役目を放棄して、最強の称号をくれた神に脅し入れて道行君を支える役目にしてもらったんだー!」
普通に犯罪じゃん。
「特徴も違うし。ただの肩書だけど。それでも幸せで楽しいから良いよね、って思える。道行君で本当に良かったな!」
なんだか照れ臭い。言葉だけでありがとう。それでもすごい良い気分になるし嬉しいけど、そうじゃなくて俺という姿を見て、変わって救われた人がいる。
でもそんな人がいたから俺はここまで成長できたのかな、なんて思う。だから。
「ありがとう」
「え?なんで道行君が?」
ぽつりと出たその言葉に真意をもって。
「なんとなくだよ。さあ、休憩もできたし行くか。……二人とも起きて」
疲れ果てて眠っていた二人は眼をこすりながらむにゃむにゃしてまだ眠たいようだ。
「ま、ここにいてもいいけど。どうする?」
「……ついてく」
――主のしたいように!。
「じゃあ行こう」
さて、どれだけわかってくれる?神との会話を少しワクワクしながら上へと昇る。
「ここが神のいる?」
「うん。気を引き締めてね」
愛はもう一方の神から場所まで聞き出したのか妙に詳しかった。
「おけ」
目の前に聳え立つ自分よりも重厚感のある巨大な両開きのドアを押して中へと入っていく。
「ん……。やっと来たか!」
「?」
俺たちを待っていた?
中へはいると巨大な空間にひとつのふかふかの赤いソファがポツリと居座っている。
そしてその中に神?がいる。
「まあ座れよ!」
とても男らしい口調のそれは、金髪のショートツインテールと乳を揺らし、猫のような大きな目と、余裕の笑みを浮かべる少女だった。
「座れって……」
「そこら辺にさ!」
なんでこいつこんなにウェルカムなん?
疑問に思うがまあ良しとしよう。
「俺たちに用でもあったのか?」
「ああ。君達に用があったんだ。君達もそのつもりできたんだろ?」
「……話し合いに」
「うんうん!じゃあ私も君たちの敵じゃないし、逆も然りだ」
「どういうこった?」
神は俺らを望んでいる?
「私は戦争をやめたいんだ」
「……え?」
「動揺しているかい?まあ、よく分かるけどね。でも私たちの息子達が死んでいく様を見るのは悲しすぎる。勝手な兄弟喧嘩で争う駒じゃない」
「??全然話が見えないんだが……」
「まずこの世界を作った所から話を始めようか」
「う、うん?」
理解が追いつかないままに話を聞くことに。
「私達は地球の創世神の姉妹。所謂神だ。二人で協力して世界を作っていた最中、意見がどんどん割れて言ったんだ。私はやりたいことは自由に。でも悪いことは駄目だからルールを設ける世界に。姉の方は、生きる意味として自分のやるべき事を使命としてやらせる。人との繋がりを大事にする世界に」
「……なるほど」
「その確執から私達の世界は別れていった。そして結局は世界として上手く行って幸せな方がより良い世界だ、勝ちだ、ってことで分裂し戦いが始まった」
「でもなんで武力行使なんかに?」
「結局なにを見せつけても何かは悪くて何かは良くて、結論なんて出なかった。主張のぶつかり合いだ。そして、一致団結して戦って強い方が世界として正しいって結論に至ったんだ」
「なるほど。それも今は佳境で倒されそうってこった」
「うん。でも私は途中から武力行使を辞めている」
「?じゃあこっちの世界に来たアンノウン達は?」
「あれは、私の意見を聞かない奴らだ。結局私の主張を受け継いだ者。間違っているものは間違っていると主張し向こうの世界に戦争を仕掛ける。そして、あちらからの刺客も一緒だ」
「そういう事か……。でも、神様は戦争がしたくないのか?」
「ああ。さっきも言った通り私はもう傷つけるのはゴメンだ。でも結局私の言うことは聞いてくれないんだ」
「……結局それって自分の意見を押し付けてるからなんじゃ?」
「え?」
「あー!そうだよねー!結局正しいって主張は変わらないわけでしょ?だったら押し付けて言うことを聞くわけないじゃん?」
「そう。かもしれないな。手立てがないのは確かだ。どうしていいのか分からないのは確かだ」
少し寂しそうな顔をする神だ。
「それでなんで俺達を待ってた?」
「君らなら何かやり方が分かるんじゃないかって。救援者だから世界を救おうとしているから」
「……」
なるほど。神と神の主張のぶつかり合いか。
そんなことに俺らは巻き込まれて……。でもまあ、こいつらがいなかったら俺らは生まれて来れなかったわけだし。
「じゃあ、尻拭いするか」
「やってくれるのか!?」
「やる、って言っても神がどうしたいかによるだろ?戦争を辞めさせたい。でも結局二つの世界は分裂したまま、下のやつらは言うこと聞かずに戦争をまたおっぱじめてしまう。じゃあ、どうしたら収まると思う?」
「どうしたら……って」
「何が正しい?正解?あっちの世界は全部が間違ったことなのか?」
「……いや。やはり姉は尊敬出来るところはあった、しかし、もうちょっとやり方があるかと……」
「逆も然りなんじゃないか?」
「というと?」
「こっちの世界も間違ってることはあるんじゃないのか?って。間違ってなかったら悪人は生まれない、ルールを作ってるのに犯罪は生まれない、だろ?」
「何かを間違えている」
「そう」
「……そうか。私はいっつも自分が正しいと主張していた。自分の世界、自分の考えが周りにどんな影響を与えてどうなるかも知らずに。全部が全部、あってる訳じゃない。自分の主張が全員の意見じゃない」
「そうだ。だったら何となくどうすればいいか分かるか?」
「二人の意見を取り合わなきゃ行けない。間違ってる合ってるじゃない。より善い世界を作るために何が幸せで何が人を不幸にするか。二人で話し合わなきゃ」
「そうだよ。結局争いで生まれるのは死だけだ。主張のぶつかり合いなんてやるだけ無駄だ。じゃあどうする?」
「姉に会う、話をする。いい世界になるように!」
「そうだな。じゃあ、早速行こう」
「え?もう?」
「戦争でどんどん人が死んでくぞ」
「わかった。皆も着いてきてくれ」
「ああ」
「私の手を握れ」
俺達は神の手を繋ぎ瞬間移動を行った。
「また来たのですか?妹!」
場所が変わり姉の方の神殿。
妹を見るなり顔をギョッとさせる姉。
「まさか、和解に!」
「むしろ、お前と和解をしたいみたいだぞ」
「え?」
「姉!すまなかった……。自分の主張ばかり押し付けて、人を傷つけ、滅ぼし、なにが幸せか!辛いだけだ!一緒にまた世界を作ってくれないか!」
「な、何を今更。私たちの意見は全くの別物一緒になるわけ……」
「いい所を取り合っていきたい!改善すべき点が姉の世界、私の世界にもあるはずだ!皆が決められた役目に賛同していたか!?悪を制する正義が悪人に染まっていなかったか!傷つけていなかったか!」
「それは……」
「私の世界でも。ルールを決めてそれを阻むものが出てきて、ルールを守っているヤツらが嫉妬して、どんどん廃れて人が傷つけあっている……。自由にしたおかげで生きる意味を探している。でも姉の世界なら生きる意味はあった!正義、悪と決めない姉の世の中は皆がおおらかで人と人が助け合っていた!」
「……私だって分かってます。役割を嫌うもの、ルールがないからと何でもかんでもやりたい放題、それによって生まれる役割、裁くという役割、それのお陰で正義も悪に染まる。しかし、貴方の妹の世界は……、自由な役目のおかげで生き生きと、生きることに意味をなし、楽しいことに意味があるとし、ダメなものはダメと言える皆が生きたいように、したいようにできる良い世の中なんですよ……」
「姉上」
「間違っていました……」
「私も違ってた」
「道行さん……。私は自分の間違いを逸らしていました。自分があくまでも正しいと言い続けたくて。でも、周りはそんなことを持っている訳もなく……。こう反乱をしてくる者もいる。何が間違っていたのか、目を逸らし、塞いで逃げて……。道行さんに辛い思いをさせて……。申し訳ありませんでした」
「親が間違ったら子供を見てみろ。何が違うか良く見えてくるだろ?子供は親の尻拭いなんだよ。大切に扱いたいならちゃんと目を向けてくれ。みんなの意見を……」
「はい、すみませんでした……」
「もう大丈夫かな!」
「ええ……。愛もごめんなさいね」
「ああ、これで世界を救え……た、……かな」
「……ます、たー」
急に体が重く……、瞼が重く、体が動かな……。
※
世界は二つに別れたままだ。
でも、意見を取り合って成長をし続けている様だ。
何が正しい間違ってる?違う。こうした方がちょっと良くなるんじゃない?意見の出し合い、否定しないこと。世界は明るくなっていく。
どう変わったんだろう。それを見れれば俺も良かったんだけど。
俺はもうこの時間にはいない。
もっと未来の話だからね。
幸せで楽しく過ごせる世界になることを祈ってるよ。
努力して、努力すらも楽しんで。この世界は生きている。
※
「……ますたー!」
そう呼ぶ声が聞こえる。
「うおおおっ!あれ?死んでない?」
「……よかった!」
「世界を救ったろ?」
「まだ困ってる人はいるし、役目を終えるまでは死なないよ!まだまだ神も試行錯誤してるみたいだし、私達は私達で人を助けないとね!」
「そう、だな」
寧ろ健康になってね?
ーー二人の神が感謝してたよ。相当。
「それはいいことしたな、俺」
「そりゃもう!世界が変わっていくターニングポイントだからね!皆楽しく幸せに!道行君みたいになればいいのにね!」
「そう、かな?」
人それぞれで正しいことなんて自分の価値観や社会の価値観でしかなくて。
まだまだ分からないことだらけな世界だけど、俺達は生きていて、考えれる生き物だ。
頭使って生きていこう、って何も勉強だけに、じゃないよね。
みんなの意見を、価値観を分かち合えたなら皆がみんなを知っている。
楽しいことも辛いことも知っている。
なら、楽しいことをずっと続けられるのかな?
最後の世界を楽しんで。
以上でした!




