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序章2 ……私の役目は『剣』~出会い~

「道……迷ってね?」

歩いて十分程過ぎた頃だった。

「えー!あってるよー!」

「目の前に道ないけど?木が通行止めしてるんだけど?」

「えー、あれれー?おかしいなあー!」

何度も何度も方向転換、今ここどこだよ。

「言ってる場合か!」

「うーん。なんでだろー。私が方向音痴だからかな?」

「それ以外理由ないなー」

「あははは!そっかー」

何を考えて生きてんだ?

「うーん。一旦休むか」

「そだね!ちょっと疲れてきたし!」

ふう、と朽木に腰を下ろし一息。

「そう言えば愛の特技ってなんなんだ?」

「ん?それはねー。……今はナイショだよ!というか見せた方が早いから、その機会にね」

「そうか……」

「うんっ!」

「……」

「……」

き、気まずいな……。

意外にも愛は口をあまり動かさない。

「んー、どうかしたの?私の顔になにか……、っは!私の顔に鹿が刺さってるとか!?」

「どうやったらそうなるんだよ。逆に見てみたいわ」

頭の方はアレなほうにフル回転してるみたいだけど。

「さてこっからどうしたもんかな……」

「うーん。森を抜ける!」

「バカは黙ってろ」

「えーん、冷たーい」

誰のせいで……。

「にゃ!?道行くん!伏せてっ!」

「えっ!」

咄嗟に愛は俺を押し倒した。

チクチクと木の枝が刺さってるが、痛みはあんま感じない。アドレナリンでも出ているのかな。そんなことより……、

……顔が、近い……。

咄嗟の判断で押し倒した愛の顔は俺の顔面の数センチほど先にある。

「……可愛いな。やっぱり」

「……っ!」

やべ!思ったことが。

「あ!ご、ごめん!」

「う、ううん!大丈夫だよ!」

あれ、なんか思ってた対応と違った……。照れてる、のか?

顔を赤く染めあげて俺の体から離れていく愛。

「嬉しい!……よ。私は本当に道行くんを守りたいから、その言葉が力になる……」

「……」

「うん!好きじゃけぇ!」

「なんで広島弁?」

照れ隠し?

「って何かあったのか?」

「あ、えっと人の気配、というか殺気を感じたから……」

「物騒だな」

「うん……、警戒は怠らない方がいいかも」

「わかった」

とは言ったものの心臓バクバクで頭がぐわんぐわん、なんにも考えられない。

「……助けて…………!」

ザッザッと茂みを蹴る音が聞こえた刹那、小さくか弱い声が俺に助けを求めた。

ぎゅっと腹部に抱きつく百四十センチもないであろう女の子。

桜色の長い髪に枝や葉っぱがチラホラと見える。

「ど、どうしたんだよ」

動揺の中そう聞く俺に少女は俺の顔を見た。

綺麗な赤い垂れ目……、小さな鼻、紡いだ口。

白地に散りばめられた桜の花びら、下は暗めの赤色に裾の方にうっすらプリントされている白い花びら達。

そんな袴を来ている可愛らしい少女だった。

「えー、ロリまで範疇だったとは!」

「変な誤解招かないで?」

「結局その子はー?」

「……追われてる」

「追われてる?」

「……うん」

「なんでまた……、っと理由を聞いてる暇はないかな!」

「愛?」

「静かに……、人が近づいてきてるよ……」

追ってる奴らか?

こんな経験ない……。一気に緊張感が身体を巡る。

震えてる……。

少女は身体を震わせている。怖いんだ。

俺は少女をそっと握りしめ、頭の葉っぱを取りながら撫でた。

「そこだねっ!」

神経を研ぎ澄ましていた愛、何かの気配を感じ取り、少し先にある大木を……、け、蹴り倒した?

「なんつー力……」

一気に気が抜ける。

「道行くん!私の特技はね!」

「うん?」

「戦闘だよっ!」

「せ。戦闘!?」

支える役目と一体どう結びつけるんだよ?

「誰にも負けない力を持ってるから安心して!他もあるけど、まあ、今はいっか!」

大木を蹴り倒しエッヘンとする。

もしかしたらこいつは凄い奴なんじゃないだろうか。

「さて!敵さんだね?」

愛の目線の先に二人の男がいる。

何か化け物と遭遇したかのように目を見開いて硬直している。

「ほらほら!何固まってんのー!そんなんじゃこっちから……一瞬だよ?」

少しあった距離が一瞬にして縮まる。

敵が気づいた時には既に懐にはいっていた。

「ほら、がら空き」

「っ!」

相手も少しは手練なのだろう。

身体を後ろに逸らしダメージを減らした。

と言っても大分食らってるみたいで……。

二人同時に茂みに倒れ、苦しそうな顔を見せる。

「は、白銀の……、スレイヤー……。まさか……、最強の討伐者、か……」

なんだろう、この厨二病の茶番劇みたいな……。これ、現実なんだよね?

「討伐者?」

それよりそんなことが引っかかる。支える役目とは別にもう一個?

「昔の話だよ、今は道行の愛人、愛、さ!」

「あんま良くない表現の仕方だな……」

「え!そうなの!じゃあ、婚約者です!」

否定も肯定もしない。

「な、何故私たちの邪魔をする!」

這いつくばりながらも怒気をこちらへ向ける。

「えー、別に邪魔なんてしてないよ?身の危険を感じたらぶっ潰す。これって間違いかな?」

「……」

考え方、物騒過ぎないか。

「……で、何してたの?」

先に聞いとけ。

「そこにいる剣が逃げたから追って連れ戻しに来ただけだっ!」

「ふーん」

「分かったならどいてくれ!」

剣?確実にこの子のことだ。

この子が剣?俄には信じ難いが、ここはなんでもありだろうし……。役目に剣も入るのならそれはある、でも。

「……なんで震えて、怖がって、逃げてきてんだよ。何してきたんだよ?」

「……お前らには関係の無いことだっ!」

「……関係ない?そんなことは無い」

「何?」

「この子は俺が引き取る……」

「な!そんなことが許されるわけないだろうっ!」

「許されるよ。私がそばに居るからね!道行くんが望むなら、私は貴方達だって殺すよ?さてどうする?まずは事情を聞くことがお利口な判断だと思うけどー?」

「くっ……。事情を話すだけだからな……」



なるほど。

こいつらはアンノウンの討伐者達。

その討伐者達が通っている学校があって、そこで武器になるのがこの桜色の髪をした女の子。他にも武器として使われている子がいるんだろう。

そんな中逃げてきた理由は分からないが、扱いが酷いのは間違いないよな。

「……こわかった」

ふと、少女は口を開き俺の体に顔を埋める。

撫でることしかやってやれることは無い。

「……無理矢理使役させて、折れたり壊れたら次の剣。私達は道具でしかない……」

無理矢理、か……。

「全員が全員そうではないだろうっ!」

「……九割そうだったら信用なんか出来ない!」

小さな声に怒りの感情を混じえて相手を気圧す。

「くっ!この!」

少し動けるようになった男はとっ捕まえ様とこちらへと向かってくる。

「はいはい、そんなこと許すとでも?」

愛、ありがとう。

首根っこを掴んでベースボールのように投げ飛ばした。

「くっ!なんで邪魔をする!」

「悲しい顔は見たくないんだよなあ」

「お前には関係ないだろうっ!」

「この子が悲しくて俺が悲しくなるのに関係ないことないだろ?俺は俺のためにこの子を守りたいだけだ。笑って欲しい。俺が笑いたいから」

「……無茶苦茶だっ!」

「これが俺の欲だよ」

「やっぱり道行くんは最高だよ!そう、結局自分が良ければいい。そんな考えだから好き!」

「それ、褒められてんのか?」

「褒めてるよっ!自分のために人を助けるなんて最高じゃない?」

そうかなぁ?

「まあ、その話は置いておきましてー。これからどうするのー?」

「そうだなー」

「!?待って!避けてっ!」

「え?」

咄嗟に愛が出した焦燥の声は俺に届くのが遅かった。

上から光?

キュイイイイイン、と何かが起動する機械音の様な音が聞こえる。

瞬間、目の前が光で包まれる。

一瞬のこと過ぎて目を見開く時間しかなかった。

一歩先だったら死んでたな……。

目の前の草木は消滅……。なんてこった。

「アンノウン、だね……」

少し落ち着いた声の愛。そちらへと目を向けた。

「私の道行くんに……、何を……、殺すところだった……」

プルプルと震えている。

「ははは、意味の分からないことを言うから神の使いが怒ってきたんだ!お前らはその道具を渡せばよかったものを……!」

「……私を離して」

「ん……?」

「もう、いいから……。あなた達が苦しむ必要は……ない」

「なんだそれ。嫌だね」

「……え?」

「さっきも言っただろ?お前がいなくなった方が俺は悲しいんだよ。俺のために笑顔を見せて欲しい。俺が死んだとしてもお前を守りたい……」

「……なんでそこまで……」

「お前は可愛いし俺を頼ってくれたんだろ?そんな幸せなことないだろ?それに応えられるのは今、俺だけだ」

「…………」

「道行くん!もう一発来るよ!避けてっ!」

愛は相手を腹パンで気絶させている途中だ、こちらへの応援はない。

どうする……。って言ったって何もできないけど。

「……私に名前をちょうだい?」

「……?」

「……お願い……」

名付けるってなんだ?何かあるのか?

……まあ、言ってる場合じゃなさそうだな……。

最初に思ったのは綺麗な桜色の髪……。安直だけど。

「桜、っていうのは?」

「……それが私の名前」

「そうだな、しっくりくる」

「……うん。気に入った。やっぱり……、ますたー、だ」

何が起きるっていうんだ?

「私は……桜は……、貴方の剣になる……!」

俺に抱きついていた少女……、どこへ行った?

何事もなく忽として消える少女。ふと、右手に重みを感じる。

「……こっち」

「え?」

右手から声が聞こえる。そちらに目線を合わせる。

「綺麗だな……」

「……ありがとう」

刀剣だ。桜色の刀身に桜の絵柄が縫ってある柄の部分。美しいその一言に尽きる。

「……私を振って……!」

この子があの少女……。やはり剣。でもなんで剣になったんだ?

とりあえず閃光が飛んできそう。

俺はなりふり構わず剣を空に向かって振るった。

「うらっ!」

刹那、閃光が剣から放たれる。

「……一閃」

「まじかっ!!!!!」

赤紫色に染まる雷の様に放たれた一撃は相手の閃光を容易く打ち破り、そのまま勢い衰えずアンノウンを消滅させた。

僅かに一秒。

「なっ……んてこった」

唖然。みんな口をあんぐりさせる。

「……えへん」

覇気のないえへんがとても嬉しそうに見えてくる。

いつの間にか人型に戻って俺と手を繋いでいた。

「……ますたー」

「ま、マスターって!?」

「……私と契約したから……」

「な、何が何だか?」

状況が全く理解できない。

「……剣の力を引き出すには契約、名前を与えること。要するに私はあなたの武器で、あなたのもの……。一生」

「えっ、そんな深い意味が!」

「……これでずっと一緒」

「いや、え?嬉しいけどお前は良かったのか?」

「……何が?」

「酷い扱いされるのが怖くてここへ来たんだろ?じゃあ俺がひどい扱いをしたら?」

「……するの?」

「いや!しないけど。例えばだよ!」

「……体を張って守ろうとしてくれて、何も知らない私の笑顔を見たいって、そう言ってくれた。嬉しかった。私をちゃんと私として見てくれた。…… でも体を張ったら誰がますたーを守るの?悲しむ人もいるよ?……私はあなたの剣になって役目を果たしたい……。私を守ろうとしてくれたますたーの力になりたい……。だから……」

「…………そうか、すげぇ嬉しいよ。お前がお前自身がそうしたいと思ったんだな」

「……うん……!」

「じゃあ着いてきてくれ……。俺にお前は必要みたいだ」

「うん!」

「ちょっと私は!」

いい感じのムードの所に割り込む愛。あっちはもう良いのかな。

「いや、お前も本当に助かったよ。ありがとうな。お前がいてくれなかったら一瞬で死んでたかもしれない。俺を支えて守ってくれるお前もいてくれてありがとう」

「ど、どうしたしましてー!!!」

舞い上がる愛。

やっぱりこういうド直球は苦手なんだな。

「お前ら!」

「!?」

誰かが俺たちに声を放った。荒らげた声だ。

「……誰?」

「道行くん」

愛は俺の隣で拳を構えた。

「周り囲まれてる……」

「えっ?」

「数は三十くらい……。私一人なら何とかなるけど……」

「ご、ごめん。俺がいたから」

「い、いや!君がいてくれたら力出るから!」

「一旦、大人しくしてくれ。交戦する気はない。先程は生徒が手荒な真似をして済まなかったな」

ガサガサと草むらをかき分け俺達の前に一人の男が出てきた。

「私は討伐学校の理事長だ。少しわけと話を聞かせてくれないか?」

「……危ないよ」

「!?……今は気にしてる場合じゃない。どうするー?」

二人とも不安そうに俺を見つめる。

愛の方は何か違った警戒心の様なものも感じる。

「わかった」

俺は考えもせずそう言葉を発した。

「……えっ?」

より一層不安にさせてしまったか?

「大丈夫。お前を手放す気は無いよ。今迷ってるからちょうど道に出られるしね」

「……わかった」

桜がぎゅっと強く握った手を俺は強く握り返した。

「じゃあ一度着いてきてくれ。学校で話し合おう」

「周囲の奴ら邪魔だなー……」

「すまんな。早急に立ち去るよう命令しておく」

愛は少し緊張を解してくれたようだ。

俺が周りの人間に襲われたらとか、裏切られたらとか色々考えていたのがバレてたみたいだな。





「ふむ。なるほどな」

俺達は十五分くらいして討伐者の学校へと着いた。

理事長室に入り、ふかふかのソファに腰をかけた。

「剣達を使い捨ての道具のように扱う、それを恐れたその子が森の中へと逃げ込んで道行君、君へ助けを求めたわけだな?」

「そういう事です」

「……すみませんでした」

「………、へ?か、顔を上げてください」

びっくりした。

頭を限界まで下げて謝罪をする。

「いや、こちらの監督不行届だ……。幾人かの輩がそんなことをしていたとは……。私が留守の間、か……。本当に済まない」

「あ、えっと……、じゃあ、そんな教育はしてない、ってことで大丈夫ですか」

「ああ。当然だ!剣、いや武器は私達にとって本当に大切なものだ。一人の命を道具として扱う。一生大切にする覚悟、信じ合う気持ちが途轍もなく大事だ」

「……気持ちは伝わってきます」

「今回の件のことを踏まえてもう一度全てやり直す。スカウト、教え全てを。これで許して頂けないだろうか?」

「充分ですよ。そこまで言って頂けてこちらとしても嬉しい限りです」

「ありがとう。……さてじゃあ取り組もうか」

「こ、この子は……」

俺は桜の頭を撫でながらそう聞いた。

「君の子だろう?その子が心を許し、契約を結んだんだ。ずっと一緒にいてやってくれ」

「……ありがとう」

そう言ったのは桜。

「当然だ」

微笑んでいる。

なんか大人しいな愛……。

「じゃ、行こうか」

「あ、そうだ君の役目はなんだ?」

「俺?えっと……、救援者、ってやつらしいです」

「らしい?」

「さっき役目貰ったばっかなんです」

「そうか……。救援者、か……。その役目、生かさせてもらってもいいか?」

「え?」


「ダメ!!!!!」


「!?……お、おい。愛」

ふと顔つきが変わり、焦って俺を抱きしめて引き留めようとする。

なんで物理的?

「だって!」

「……お前は変わってないんだな」

「……」

知り合い、か?

「まあ、今はお前には何も望んでないし聞いていない。どうだ?道行君?」

「……」

事情はわからないが、とても辛くて、悲しそうな顔……。

「辞めておきます」

「む?何故だい?」

「こいつが今悲しんでるから。過去のことも今の事も何も知らないけど、今現在のこいつは辛そうだ。俺がそこに入って死にでもしたら俺は後悔する。だから辞めておきます」

「死ぬって大袈裟だな」

「大袈裟じゃありませんよ。こいつの本気は知ってます。見てますから」

「一度心を捨てた女だぞ?裏切られる可能性だってある」

「……ちょっとしつこいな。……過去に縋ってんじゃねえよ。俺は今のこいつを見てる。助けられてる。それだけで価値がある。いなくなった時は、その時考える。その時連れ戻す。俺に必要ならな」

「……道行くん」

「また、色々お前のこと教えてくれよ?」

「……うん!絶対!」

「すみません。そろそろ行きますんで」

「そうか……。愛」

「何?」

愛は汚物でも見るかのような目で睨む。

「道行君に尽くせよ」

「言われなくても」

俺達はそうして学校の外へと出た。




「良かったんですかい?」

「何がだ?」

俺達が去った後一人の男、隊長が理事長と会話をしていた。

「娘さんにあんな言い方して」

「ふっ……。どれだけ本気か見てみただけさ。道行君は本気だ。私は、嫌われてる。それは私の罪の証。まあ……、なんだ……道行君に任せる、さ」

「悲しいでしょうに……」

「そうも言っとれんさ。さ、やり直すぞ……」

「イエス、サー」

討伐隊の復興に取り掛かる。


次回からやっと目的に向かって走り出す感じですかね。

なんかさっぱりした文とストーリーになってしまったので序章2という形を取らせていただきました。


ストーリー三つ分出来上がってるんですが完成したら上げる、って形にするか、定期的に一本上げる形にするか悩んでいます。


取り敢えず、次は二週間空いて5/31(金)に上げる予定でございますm(__)m


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