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知る


一瞬のことだった。

ロボットが目の前から消え去ったと思えば、愛の首元を掴んで持ち上げる。

「こ、……んのっ!」

苦しそうにする愛は、足を振り上げてロボットの腕に衝撃を与える。

『テイコウ。ムダ』

微動だにしないロボット。

俺はそれに向かって考え無しに突っ込んだ。

『グミン。シスベシ』

「うあっ!」

真っ向から桜とミズキを振るが腕に弾かれ、俺の腹部へと拳が入る。

呼吸が苦し……。

俺はその一発で塔の壁に勢いよくぶち当たる。

「かはっ……」

口から出る滲む血が気持ち悪い。

「くっ!愛を離せっ!」

「だい、じょうぶ……」

「愛!」

「大丈夫だから……っ!私には道行くんがいる……。その力は私の何よりも……力になって最強になって……、絶対にそばに居るんだからっ!」

愛は意気込むと同時に首を掴んでいる手を強く握る。

「最強……舐めんなっ!」

どんどんと力を込めて、ロボットの手は凹み出す。

『ヨソクフノウ。ミノキケンヲカンジル』

「ぐっ!」

そう言うとロボットはより手に力をかける。

「愛っ!」

「負けないよっ!こんなんには!」

一度手を弱めまた一度1層強く手に圧力をかける。そうしながら何発も胴体へと蹴りを加える。

野生だな……。

「う、ああああっ!」

愛は、全身全霊の力を込め、やっと、やっとの思いで手をもぎとった。

攻撃が不可能だった。無敵だったロボットの手を握り潰したのである。

これが最強か……。

「うっ……」

「まなっ!」

「大丈夫……。少し疲れただけ」

前の戦闘のダメージも相当受けているはず。

愛はヨレヨレと立っているのが精一杯。

……。

「愛……。好きだ」

「え?」

「だから休んでろ。お前は死んじゃダメだ。お前の明るさが素直さが俺にとって大切なもの。後は俺がやる」

「ふふ……。良かった。道行くんはやっぱり誰よりも強くて、かっこよくて……、私は知ってる。道行君なら安心だ……。じゃあ、任せる。桜ちゃんも、もう一人の子ももうひと踏ん張りだよ」

「……任せとけ……!」

ーー見えてたの?主の大切な人。……請け負った。

「さて、気合い入れ直して行くか……」

ロボットは故障した左手にエラーを起こしてフリーズしている。

今のうちか!

俺は二人の技を何度も使い交戦する。

が、やはり傷は入らない。

そして……暴走する。

『システム……エラーエラー.ガガガガがギガ……ハタ』

故障によっておかしくなったか……。

ロボットは急に攻撃を食らわせにくる。

『イッセン』

!?

「「一閃!」」

俺たちの技をコピーした?

何とか相殺したが驚いて咄嗟に身を引いてしまった。

『ハザン』

バァアアアアアン!

ロボットは自らの右手を投げつけ、言葉ともに爆破する。

「うおっ!」

何とか、回避……。出来なかったか……。

右目が鮮血に染る。

「……ますたー、頭から血が……」

ドグドグと出てくる血は俺の頭を朦朧とさせる。

でも、こんな所でやられる訳にはいかないんだよ。

「桜……。ミズキ。最後の技だ」

「……でもあれは。負担が大きすぎる」

「やらなきゃ倒せない」

「……反対……」

「桜……!今何も出来ずに死ぬか、後で幸せに死ぬか……。どっちがいい?」

「……死ぬのは、まだ早いよ……」

「道行っ、くんっ!」

「愛は休んでなきゃ」

「私は道行君を支える役目……。ほんの少しだけど……」

愛は俺の背中へとくっついて何か小言をボヤいている。

すると、頭が……軽い?

スっと痛みは消え、血は止まる。

「私は道行君の痛みを請け負うから。支えれる。今必要なことができる」

「そんな!愛に痛みが!」

「大丈夫。今までの幸せでカバー出来てる!これを無駄にしないで!やっちゃって!」

「……ああ。ありがとうな」

「えへへ。どういたしまして!」

「桜……」

「……覚悟は決まってるはずだったんだけどな。やっぱり悲しいな」

「やるしかないんだよ」

「……でも負担が大きすぎる」

「既に俺の救援者の力で死ぬことはほぼ避けられない」

「……」

「でも、俺はずっとこの世界を救うって決めてるから。死なないよ。絶対」

「……絶対?」

「ああ」

「……絶対に……絶対?」

幾度となく聞く不安な桜に安心を与える。

「絶対だ。お前の傍に居るから」

「…………わかった」

涙を飲んで桜は三つの技を出す覚悟を決めた。

「ミズキも……」

ーー………………うん。

「アンジスト」

ミズキの力を借りる。

ロボットは構わずに攻撃を仕掛けに来る。

蹴りパンチ、剣戟、全てを俺に……。

『リカイ……フノウ』

しかし、それは当たらない。

曖昧でいるかいないか分からず、そこに存在しているようないないような、幽霊のような存在は認識は朦朧としている。

そこにいるけれど、見えなければいない。曖昧という。

そこにいないような、でもそこに存在がある。曖昧という。

その技は。

現か幻か。

攻撃をのらりくらりと交わすことなくロボットの元へと近づく。

「「八焉」」

そしてその言葉を発する。

桜を手に持ち高速に切り刻む剣戟。相手が攻撃する間を与えない。死ぬまで相手が途絶えるまで永遠に切り刻む。

「「九念」」

また、発する。

「脆く」

その一言でロボットは鉄壁の防具はいとも容易く粉砕される。

ロボットは動けないほど散り散りに。

しかし、まだロボットはこちらへと攻撃を仕掛けに来る。

が、永遠に切り刻む剣戟は休むことを知らない。

粉々になって跡形も無くなるまで……、剣はロボットを破壊した。

「…………終わり」

「呆気ないな」

「……代償がデカすぎる」

「命の代償は命でしか支払えない。ロボットの歩みを、誰かの助けの手立てを壊してしまったその罪は何よりも重たく苦しい」

俺の体から黒い闇が溢れ出す。

アーサーを倒した時の感覚に近い。

自分がやらかしてきた責任感。思い……。相手の苦しみ、憎しみ。どれだけ善良なことをやったとてその人への思いやりがなければ、自分の感情が湧き経てば……、それは罪となる。

「くっ……」

「……ますたー」

「離れてろ」

俺はみずきと桜を手放した。

人型になって心配そうに見守る二人を横目に、俺は苦しみに耐える。

「う、っ、あっ……ああああっ」

想像を絶する激痛、精神攻撃……。頭がおかしくなりそうだ。

小さな事でも罪には変わらない。

過ちを後悔しても、もう遅い。

受け入れよう。それだけのことをしてきたんだ。

だから、それ以上にやるしかないんだ……。

「……っ!」

頭を抱え、地面に這い蹲る。何やってんだ俺……!

まだやることが残ってるだろ!

「道行君っ!」

「だ、大丈夫だ」

ーー頑張って!

「あ、ありがとな!」

俺は苦しみを乗り越えなきゃ、戦わなきゃそれと向き合わなきゃ……。

繰り返さないように、次に生かすために……。

感謝しよう。痛みも何かのきっかけだ。罪という責任の重さを実感出来たことに。経験出来たことに。

「……よし」

どんどんと心が鎮まって穏やかになっていく。

「……あれ?平気?」

「言ったろ?大丈夫だって」

この間のアーサーを見て本当に怖かったんだろう。俺が消さなければ精神攻撃はずっと続いたし。

それ程のものなんだよな。

「しっかし、ちょっと……疲れたな……」

「……一休み」

ーー最強倒したし、休憩できる?

「ああ」

もう何階か上に上がれば頂上のようだ。

体がもう……重たくて上がらない。

俺はそこに倒れ込んだ。

「……ますたーっ!」

「大丈夫……。疲れただけ」

「……よかった」


お次でラストとなりました!

これを終えたら掲載するものが三つほどに増えると思います!

一週間に一度以上はあげたいと!

最後まで頑張りましょう

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