存在削除
「……」
桜は三十秒を数える。
「……あ、その前にマスター起こさないと。えっと殴れば起きるかな?」
桜は俺の至る所を殴る。
「……あれ?ダメだった?」
「っは!まだ駄目だよ行っちゃ!そこは尿道だよ!」
「……体内の人?」
「あれ!俺!いってぇ!」
「……どうしたの?」
「か、体が痛みを感じてる」
「……殴ったから」
「どうして!?そんなに恨み持たれてたっけ!?」
「……ううん、気絶してたから」
「荒療治にもほどがある!!」
「……あ、三十秒経った」
「ん?なんかあるのか?」
「……早く捕まえないと桜たちの命ないって」
「まじかよっ!早く捕まえないと!起こしてくれてありがとな!」
「……ん」
俺たちは部屋を出て二手に分かれて探すことに。
つっても見えないんじゃあ手掛かりは……、音だけか。
いくつも部屋を開けて確認するが、肉眼では見えん!わからん!
見つけたとしても。
――きゃはは!こっちこっち!
どこだよ!
部屋から出られてしまう。
くっそ、どうすれば。
存在はそこにあるはずなのに見えない。
見えない?そこにいるのに。俺がちゃんと見てないだけ?存在を確認してないだけ?
そういう特徴なのか?
幽霊でも、妖怪でもなく……、あれは人か。
――――ほらほらこっちだよ!
一つ、客間で女の子を追い詰めた。
ドアを塞ぎ逃げ場を失わせる。
ただこっからどうすんだ……。いない部屋を隈なく探しても絶対逃げられるだけ……。いや、そこに存在してるんだ。捕まえられるはず。
どこにいる。なぜ見えないんだ。
俺が認識できないだけだとしたら、存在を確定させることか。
妄想でもなんでもいい、そこにいる何かに器を与えろ。存在してる。女の子が、小さい、桜と同じくらいの女の子だ。
俺は目を瞑ってそこに存在を作り出す。音がしているところに、声がしているところに人がいる。
――ほら!逃げちゃうよ!
動いた。まっすぐドアへ向かってくる。
目を開く。
「いた!」
初めて目を合わせる。
そこにいる小さい女の子は、桜とは真反対と言おうか、白いフリフリのついたゴッシクな服と紺色のフリルスカートを履いていた。
容姿端麗。白い肌に、クリクリの元気な透き通った茶色の目。ちっちゃい鼻、紡ぐんだかわいらしい口。白銀のミディアムショートカット。
まるでフランス人形のようだ。
「こ、こんにちは」
――こんにち、は?
挨拶しちゃったよ。
――みえ、てる。
「うん……。捕まえた」
勢いよく飛び出す女の子の体を、俺の体全体で受け止める。
――あらら、捕まっちゃった。
少女は顔を俯けどこかに消えてしまいそうなほど儚げだった。
――遊びは終わりかあ……。楽しかった、見える人に初めて会えたし。屋敷から出ていいからね。
寂しそうだ。
……そうだよな。今まで存在がないものとしてしか見られてないはずだ。誰にも認知されずに、そこにいて、幽霊だのと、見えない何か、何されてしまう。一人で孤独で、ずっとここにいたんだよな。
人は一人でも生きれるけど、何かの刺激がないと、周りを見れないと成長しない。ただ生きてるだけなのは辛いよな。
「一緒に、来るか?」
――え?
「俺たちはやることをやらなきゃならない。だからここは出る。でもお前がここに縛られてる理由はないだろ?俺はお前が見える。お前の存在が分かるよ。寂しいんなら俺のところへ来い。俺はお前の心を辛くさせたくない」
――……ほんと?ほんと?
疑心暗鬼な女の子、でも嬉しそうで。そわそわしてる。
――名前を。
「ん?」
――名前を頂戴?一緒にいるために。
「え?ないのか?」
――私の役目は武器だから。そして特徴は自由自在の存在。周りが私をそう認識したらそうなるようにできている。
桜と一緒か。
「あ、じゃあ俺は女の子と認識したから」
――そう、本当の、元の私が現れたの。でもこれからは主の武器。思い描いたとおりに武器になる。そして相手は存在を知らない。
「すげえ!」
――え?こんな私でも使えるの?
「当然!強いやつがいてな。俺らはそいつらを倒さなきゃならん。遊んでやる代償に戦う、ってのじゃ釣り合わないか?」
――ううん、そんなことないよ。一緒にいてくれる。私の世界をちっぽけだけど大きく変えてくれた主……。充分。
「そっか、ありがとな」
名前。名前か。
「ミズキ……」
ふと浮かんだその言葉。意味を強いて言うのなら寂しい、から……。同情してしまったのかな。
――私の名前。
「そう、どう?」
――うん。ありがたく、貰う、その言葉。主についてくよ。
可愛いんだよな、ミズキって。
「じゃあ、行こうか。俺たちはこれから一緒だ」
――うん!
「……あれ知らないところでなんか進展してる。桜だよ」
――あ、ミズキ。よろしくね。
「……よろしく」
「何その今知り合ったみたいな、挨拶、てか見えてる!?」
「……、え、最初から、見えてたよ?」
「ええええ。言ってよ!」
「……ますたーが先走るから」
「それは、正論だなあ」
――見えてたの!
「この子も俺の力になってくれるみたいだ」
「……ん。心強い。よろ」
――うん!
あれ、もっと嫉妬するかと思ったのに。
桜は右手をぎゅっと握る。
ミズキは逆の手を恐る恐る握った。
保育園の先生かな?俺は。
あ!ちょっと怒ってる。
桜は俺の手をいつも以上に強く握っていた。折れてると思う。
さて、神の所へとあと少しだといいけど。
なんて思いながら足を進めた。
もうすぐ本当にもうすぐ終わりです。
誰が見てるか定かではありませんが少々お付き合いを。
ってか絶対にこの間あげたやつと今回の話分けて出す意味なかったですね。
とても短くなっちゃった。
まあ、いいや。次に負担が来るだけだ。
では、また!




