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謙虚な助言者




「お!おかえり」

フラフラとしながら館へと帰ってきた桜。

「どうかしたか?体調悪い?」

俺がそう聞くと、バフッとホコリが舞う勢いで俺の胸元にぎゅっと抱きついた。

「……私は役目だけしてればいいの?」

「ん??どうしたんだ?」

「……教祖がそうやって言ってて。剣になって戦えばそれだけで幸せだって。こうやって悩むことも必要だって……」

「うーん。それだけやっててお前は幸せなのか?誰かに言われたからじゃなくてお前の気持ちはどうなんだよ」

「……桜は、ますたーの力になれることが幸せ」

「うん。それだけか?」

「……ううん。傍に入れるだけで幸せ。愛といても違う幸せ。今が幸せだ」

「そうだよな。俺もお前がいて、それが嬉しくてたまらない。人の幸せはそれぞれだし、役目だけして幸せな人もいるかもしれないけど、小さな幸せだってそこらじゅうに落ちてるし、それだけじゃあ、ないよな」

「……うん。それだけなんてありえない。それをしてればいいわけじゃない」

「そそ。幸せなんて人が決めるものじゃないよ。確定なんてない」

「……ごめん」

「なんで謝るんだよ?頼ってくれてありがとな」

「……いてくれて、ありがと……!」

「どういたしまして。悩みの方は?」

「……うん。なんでも悩むことが大切って」

「悩むこと、か」

「……うん。大切なのかな、って」

「一括りには言えないけど、悩みを持つことはいいことなんじゃない?」

「……なんでそう言えるの?」

「成長していく上で、なんで?って考えて、ああ、そうか、って解決する時に思ってさ。……疑問を浮かべて解決してってやってけば、自分の中でいろんな考えがまとまるし、自分ってものが出来てくるんじゃない?」

「……そういう悩み」

「俺はね?なんでも悩むことが大事って意味じゃあないと思うよ。まあ、その教祖の言い方だとそう捉えても仕方ないし、そう思ってるかもしれないけど」

「……そだね。悩むことはそういう意味で大事なのかもしれない」

「今何が大切?って、地に足つけて考えることも悩みというか疑問だし、……大事だろ?」

「……うん。そうかも。……一概に悩みって言ってもいっぱいあるもんね」

「そうだな……。もう、大丈夫か?」

「……うん。ますたーにあえたし、幸せ」

「そっか。良かった」

「……もうちょっとこうする」

「わかった」

「……落ち着いたらあそこの状況を話す」

「うん。気長に待ってるよ」

そのまま俺は目を瞑って安心するのを待っていた。

「あ、あの……」

そこに一人の女の子がキョドりながら訪ねてくる。

「どうしたんだ?」

「う、うん……」

「どうするか決めた?」

「まだ……、でも、私のせいでもある、から!何とかする方法を教えて欲しい!」

そう力強く言葉を発する少女は曇りない眼でこちらをしっかりと見つめていた。

「わかった。和子……」

桜がいない間に和子と何があったのか説明していこうか。





「さて、館着いたねー!」

「おう。桜帰ってくるまではソワソワしそうだけど……」

「心配?」

「うーん。変に手とか出されてないといいけどと思って」

「確かにあの教祖見かけによらずやり手そう!」

「だろー?」

「道行くんいなくて力も出せないだろうしね」

「そうなんだよな。犯される前に犯すか」

「その発言は本当に危ないよ?」

「えと、あの……、これからどうするんですか?」

「どーするもこーするも桜が帰って原因とか状況把握しないと……」

「あ、そ、そうですよね……」

「そういえば、お母さんが可笑しくなった理由って何も分からないんだっけー?」

「あ、はい……。でも私がそうしたのかも知れません」

「えー。なんでー?」

「私が……こんな性格で、役目は全然こなせないし……、周りから、見方が違って……」

「あー、そりゃ貴方が悪いねー」

「……え?」

「ん?何?同情すると思った?あはは。悲劇のヒロインは私は嫌いなの!自分が悪いならそれを認めないと始まんないし」

「愛。ちょっと言い方きつくないか?」

「えー?そう?」

「いえ、でも、本当のことですし」

「……」

愛は黙って和子を見つめる。

「でも、一概に言えないのも確かだろ?」

「そりゃー、まあ……」

愛の過去になんかあったか?

「和子」

「は、はい」

「お前が悪い部分もあるかもしれないけど、原因はそれだけじゃ無いかもしれないだろ?」

「はい……、でも……」

「根本はお前が悪い、か?」

「はい。多分……」

「じゃあ、それだけ治してこーぜ」

「え?」

「要はお前が悪いって思ってる部分を直せばいい話だ。解決できようが出来まいがそれでお前の重荷は取れるだろうし、少しは楽になるんじゃない?」

「で、でも」

「なんか問題か?自分を変えたいって思ってんだろ?」

「……そ、そうです。私は、自分は変わりたいです!何も言えない自分が嫌で、オドオドとして他人が悪いと思ってる自分がいやで!」

「じゃあ、変えようよ。それを手助けするのが俺の仕事だしさ」

「道行さん……」

「愛?」

「いいよー。変わってくれるなら本望だねー」

「よし」

「お願いしてもいいです、か?」

「いいですか?じゃないだろ?」

「お願いします……!」

「そう来なきゃ」

とは言ったものの。

「まず、役目って何持ってんの?」

何も知らないや。この子のこと。

「えっと、私の役目は……、言伝者。ことづて、と書いてげんでん、と言います」

「言伝、か……。って!」

「多分、お察しの通りで……、あの、さっきの教祖様とかと、同じ類かと……」

「ええ……。じゃあなんでお前は言葉で対抗しないんだ?性格上か?」

「いえ……、えと、私には人の不安とか、悩みとかが、よく分かるんです。どうやって悩んでるのか、って……」

「それが何か問題なの?」

「その……、やっぱりそれって人それぞれで言葉をかけたとして……、その人にその言葉があってるのか、って思ったり、感情が逆撫でされたりしないか、と、不安で……」

「……なるほどな。分かるからこそ。考えるのか」

「多分、そうなんです。皆さんそれぞれ考えを持っているので、それを否定するようなことは……、とか、考えてしまうと、上手く言葉が出ませんし、その人が良ければそれで良い、って考えてしまうんです……。私の言葉は必要なくて……、何も言えなくなります」

「そっか……」

困った。なんて言ったらいいんだろう?

「道行くん」

「どうした?」

「少し私には任せてほしい。気持ちは凄くわかるし、素直で謙虚なのは伝わったから嫌味な言い方はしないよ」

愛は、声を淡々と発しそういった。

「……わかった」

「ありがとう」

いつもの元気はどこか身体のうちにしまったのか、真剣な顔をしている。

「和子ちゃん」

「は、はい!」

「自分はどうしたいの?」

「わ、私ですか……?」

「そう。誰かにこうなって欲しい!って気持ちだったり、こんな世界にしたい!って気持ち」

「誰かに、とか、世界に、は……ありません」

「そか」

「でも」

「うん?」

「でも、私は、一人一人の気持ちを汲み取って、少しでも楽な気持ちで役目をして、生活していて欲しい、そんな気持ちは、持ってます……」

「うん!いいじゃん!」

「え?」

どゆこと?と動揺する様子を見せる和子。

俺もよく分からん。

「別に誰かを変えようとか、思ってるわけじゃないんでしょ?」

「は、はい……」

「だったらただのアドバイスをすればいいじゃん!人の話を聞いて気持ちを考えて、こうしたら楽しくなるんじゃない?とか!楽しく生きれない?とか、そんな助言でいいんだよ!民衆になになにしなさい!なんて、嫌!って言う人はうんといるよ!重く捉えすぎなんだよ。言葉を会話程度にかければいいんだよ」

「……アドバイス、ですか」

「そーだよ!一対一なら、会話ができるんだよ!」

「……でも、上手く言葉をかけられるか……」

「単純な言葉でいいんだよ!難しい言葉なんて理解に苦しむだけ!自分が分かりやすくて、相手にも伝わる子供向けの言葉でやっていこうよ!やらなきゃ始まらないのは確かだよ?」

「そ、うですよね。私は考えて行動はしてませんし……、誰かをどうにかしようと、考えてました。人を変える、と言うよりも、この方が幸せになれそうっていう提案をすれば……」

「そだね!それがいいよ!どう?少しは変われた?」

愛は本当に一体何もんだ?人をよく見てる。いや、中身まで見えすぎてる。

「はい……!まずは行動に移さないと」

「うんうん!じゃあ、練習だね!それが終われば本番!」

「ほ、本番ですか……?」

「そだよ!伝えなきゃ、お母さんに!自分の気持ちも!提案として!」

「は、はい!頑張ってみます!」

少し意欲的に、なったろうか?

前のめりに言葉を発する。

「私は道行くんを支えるために色々学んだのさ!道行くんを愛する一人の女だよ!私は!」

「俺の心を読むな」

「……えと、練習は何をするんですか?」

「えっとねー!じゃあ!道行くんが抱えてる不安と、それを改善するための言葉を一つ!」

「え!俺!?」

「じゃ、じゃあ行きますよ!」

「まじか!」

急に俺に来た!準備体操してないけど大丈夫かな、心臓ビックリして飛び出ないかな。

和子は俺の眼をしっかりと見つめた。

やばい、照れる。

「み、道行さん……、は、不安というか、心残りが多いんですね」

「心残り?」

「現状じゃないのー?」

「現状は幸せでしか、ないようです」

「おー!すご!じゃあ、過去に囚われてる、ってことなのかな?」

「そ、そうなるんですかね?」

過去に囚われてる?俺が?今満足してるのに?

……、いや、満足してるからこそ、過去と比較をしてしまうのかもしれない。

「こ、この話は辞めておこうか」

少し昔を思い出すだけで反吐が出る。

忘れたい記憶、消し去りたい記憶。そんな記憶ばかりで俺は不安定になる。

「は、はい……。道行さんがそう仰るなら」

「あら?うーん。いつもと雰囲気違うし、これは辞めた方がいいのかもね」

「ああ。助かる。ちょっと上で寝かせてもらうわ」

「地雷踏んだかなあ?」

「わかりません。でも、とても悲しく、辛くて、必死な感じでした……」

「和子ちゃん、不安っていうか、いろんな感情が汲み取れるの?」

「あ、えと……。人によりけりなんですが、まず、悩みがあって、その周りに感情や渦巻いていて、それが私の心と同調するんです」

「要は同じ気持ちになっちゃう、ってこと?」

「そ、そうなんです」

「へー。結構辛いんだねえ。さっきはごめんね!嫌な言葉発して」

「いえ、大丈夫です。間違いない言葉でしたし……」

「ありがとう。とりあえず練習はやめだね。また、明日かな」

「は、はい!」

「館の主にここに居れるように言っておくから、道行くんの部屋に入っていいよ!二階の奥部屋!」

「は、はい、ありがとうございます」

「いえいえー」

そして、先に上がった俺を追いかけるように和子は部屋に入ってきた。

「ね、寝ていますか?」

俺は横になって目を瞑っていた。

何も考えたくなくて何も思い出したくなかった。

「道行さん、も、大変な思いをしていたんですね」

和子はひとりでに話をし始めた。

「私ばっかり辛い思い、と思っていましたが、そんなことはありませんよね。みんな気持ちをもって努力しているんですね」

……。

「道行さんの過去に何があったかまでは読めませんけど……、それのお陰で今ここにいれる、それだけは言えることかもしれません。過去に辛い思いがあって、一人で生きてきたからこそ、今ここに自分がいれる。過去との向き合い方は嫌な思い出としてでは無く、経験として向き合う、そういった方がいいんじゃないでしょうか。どれだけ後悔しても、どれだけ悔やんでも過去をバネに生きるしかないんです。そうしないように変化を加えていけばいいんです」

……そうだよな。過去のおかげで今ここに入れる、幸せを手に入れれているのは事実かもしれない。それには感謝しないといけないよな。そして、過去のようにならないように過去と向き合わないといけない。

この子の特徴って言うのはそんな不安を取り除く、もやもやを取り払う力。

「ありがとう。元気でたよ」

「お、起きてたんですか!」

びっくりしたように慌てて大声を出す和子。

「耳に入ってきただけだ。和子の言ってることは確かだし、そうしたら楽だよね、って思う。お前は凄いよ。自分の言葉に自信を持っていい。本当に助かる言葉だよ」

「ほ、本当ですか……?」

「ああ。お前のただのアドバイスのおかげで俺はまた、過去を踏みしめて生きていけそうだよ」

まだ色々な過去を思い出さなきゃ行けない、それは辛いけど、今は幸せだから少しずつやっていこう。

「よ、よかった、です。私……、初めて価値が自分に、あったって、気がします」

「はは、大袈裟だな」

「いえ、本当に、これが私の……、第一歩なんです……」

「そっか。じゃあ俺もお前を救えたわけだな」

「は、はい!本当にもう!」

「じゃあ、明日も頑張らないとな」

「そ、それの決心はまだ着いていないんです。まだ、やっぱり怖くて……」

「そか。じゃあ一つ言っておこう。俺たちも付いてるから安心しろ」

「……道行さん。わかりました!」

いい返事だな。




ということがあり、また明日に備えることとなった。

「頑張るんだな」

「はい!」

「ちゃんと助けるから」

「助かります。わかりました」

「……二人の間に絆が。何かあった?」

「少し会話しただけだよ」

「……でもなんか、通じあってる。……やなかんじー」

「嫌な女風な奴出さないで?まあ、明日あそこにいるお母さんをどうにかすれば終わりだ、明日も桜は頑張ってくれるか?」

「……もち!」

「よし、じゃあ、今日はご飯食べて寝よう」

にしても、愛のやつがまたいないけど……。まあいっか。







その頃愛は館の裏の木陰で電話をしていた。

相手の声は女性、歳も何も分からない。

「その後の調子はいいよ!道行くんとも上手くいってる!もっと好きになってくれるように頑張るし!支えるよ!え?その事じゃない?アンノウン?ああ、アンノウンの存在は伝えてないよ。多分、皆が、傷ついちゃうから。ううん。殺してないよ。人殺しになっちゃうし、そんなことしたら道行くんが怒っちゃうよ。アンノウンが消えるのは多分危機を感じてるから。違う世界に戻っていくんだと思う。私も寸止めで追い返してるよ。うん。大丈夫。あの子にもバレてない。あの子のこの世界は間違いじゃないと思うけど、それだけじゃないのも確かだしね。こっちは裏方作業して周りを変えてあの子も変えていかなきゃ。……分かってるよ。私は道行くんを支えるのが嗜好で、至高だから。うん、ありがと。またね。そっちこそ元気で。早く会えることを祈って………………。え?迷いがあるかって?私はヒロインだよね?ええ!最近の話にはヒロインっていっぱいいるの?頑張ろ……」

愛はピッと、電話を消して俺の元へと帰ってくる。

このままじゃ桜ちゃんに負ける……!







日にちが変わって俺たちは既に教会の方へと足を運んでいた。

昨日のその後は、愛が部屋に戻り、桜も落ち着いた所で教会の状況、催眠などで騙しているような気がする、ということ、だったり、悩みに悩まされ、苦しんだり。桜の感情なども聞いた。

催眠、か。

まあ、それを聞いて和子がどんな言葉を教祖に与えるのか見ものだな。

教会の扉は開かれる。

和子、桜は濁った強い意志を持ちながら言葉を発する。

正直不安だ。他人任せにしか出来ないから。

「おや、桜さんと和子さんも……。どうしたんです……??悩みがおありではないようですね。あなたたちの入会はお断りします。早急に退散してください」

周りの和やかな目が一風、突き刺すような鋭く怖い目になる。

しかし和子は怖気付くことなく自分の言葉を発する。

「話をさせてください」

「いえ、それも許されません」

「わ、わかりました。では勝手に話します」

「……」

教祖の顔つきがどんどんと冷ややかに。

「私はこの教会のやり方が間違ってるとは言いません。しかし、それだけじゃないとも思います……」

「そうですか。馬が合わないのであれば去ってもらって結構ですよ?別に強制もしません」

「わ、私は信徒の皆さんに向けて話します。昨日話を聞いた所によると、悩みについて悩む人や、何かおかしい、ほかのことを考えられない人の話も聞きました」

「……」

また顔つきが変わる。悪を見る目。

「なにかに付け込まれて催眠されて、そんな、ことを……!」

「それでなんなのです?皆様が幸せでなにか不満でも?」

「つ、作り上げた幸せがそこにはあって……!他にも色々見るべきところもあって……!」

「あなたの言葉が誰かに届くとお思いで?誰も聞いてませんよ。私とあなたの言葉は重みが違います」

「……っう」

「……大丈夫。私は和子が間違ってるとは思わない」

「桜さん」

しゃんとしろ、と背中を押す桜に勇気を貰う。

「私はあなたたちの生き方にとやかく言える自信はありません。でも少しだけ言わせてください。あなた達は大衆では無く個人なんです……!皆同じ決まりで同じやり方で……!皆さんの自分の感情は無視ですか!それをやっていればいい!やらなきゃダメだ!そんな規律は誰が決めました……?いつ?勝手に人が作った規律を頼ってすがって!それを上手くやれば救われる、そんな根拠がどこにあるんですか……!!……皆様は一人一人生きています、一人一人に感情があり、やり方があります。……だから、皆さん正気に戻ってください……!それが私の願いです!」

「くっ、くくく」

腹を抱えて笑う教祖に唖然とする信徒たち。

信徒たちはなんとも言えない顔をしており、悩んでるものもいれば耳を塞いでる者もいる。

母親は怒りの矛先を和子に向けながら黙って聞く。

「何を戯言ばかりほざいて!正気に戻る?何を馬鹿なことを!幸せになれる仮定があるならば乗っかるだけ!人それぞれ?皆同じ人だろう!だから幸せへの目的は一緒なんですよ!ははは。本当に笑えますね!和子さん。あなたはおかしなことを言っていることに気づいていませんか?この信徒達は皆、私の信徒。あなたの言葉に耳を傾けるなn「私は和子ちゃんの言葉を信じるわ!なんで私は忘れていたんだろう。私達が幸せになれる保証はない。そして、リスクを追うこと。結局動かなくちゃ何も生きがいがない世界でこの現代で、縋っても仕方ないわよね」」

「な!」

「わしも同感じゃ。昨日のちっこいの」

「……ちっこいのじゃない。桜」

「ほほ、そうか。桜。昨日のお前さんがワシにかけてくれた言葉がきっかけになった。ありがとうな。わしはこの他にある色々な世界を学びたい。老いぼれたもう死んだも同然のワシじゃからこそ、最後の命くらい自分の自由に使わせてくれんか」

それに順応するように「私も!私も!」と立ち上がる信徒たち。

「しょ、正気ですか、あなた達は!」

幾人も立ち上がる中、反対派も、何も言えない人もいた。

「……ここは、現代です……!理想ばかりに縋ってても……話は進みません!」

「くっ!狂った言葉ばかり発しおってからに!」

怒りを露呈する教祖と共に信徒も怒りを露に体で表した。

一人の男が一人の頭を強く殴打した。

それが戦いのゴングだった。

反発派、信徒派に分かれる。

「幸せは願えば叶うんだよ!」

「何言ってんだ!自分から掴み取るもんだろ!やって!好き勝手やって!間違えて!最後に良かった!って思える人生でいいんだ!」

こ、こんなことになるなんて……。

「……だ、ダメです!」

そんな予想外の光景に弱々しい和子の声は届かない。

逆に教祖は喜んでその様子を見守る。

「あなたの一言が信徒たちを暴動に誘ったんですよ!何をやってくれるんですか、全く……」

「……!!」

かかった!としたり顔の教祖は怯んだところに漬け込むようにその言葉を発した。

弱く怯んで、自責の念に狩られる和子。

あああ、と頭を抱え込ませる。

「大丈夫だよ。この暴動を抑えりゃいいだけだ。一個問題を解決したら一個解決するだけだ。……よくやったな」

「……道行、さん……」

「っちぃ。邪魔がァ」

俺は庇うようにその言葉を和子に投げ掛けてやった。

「いったろ?危なくなったら助けてやるって。俺の番だ。桜!愛!」

「……待ってた。ますたー……!」

「あーい!って私やることなくね!攻撃がぶつかりあわない様に両者のパンチ受け止めとくね!」

俺は桜を握って教祖に向かってモーションなく一閃を放った。

な、なんだ!今の!

技は教祖の真横を通過しそのまま壁をぶち破った。

どぉぉぉぉん!という轟音と共に教会内に沈黙が生まれた。

「……信頼関係のなせる技」

「信頼?」

「……そう、上手く意思が合致した」

要は同じ気持ちになったってことか。

「コンビネーションだな」

「……うむ。当然」

ヘタっ、と座り込む教祖。

「ひ、卑怯だぞ!武器なんて使いやがって!」

「何焦ってんの?暴走した信徒も武器の一種じゃん?」

「あ、あれはアイツらが勝手に!」

「まあ、いいや、お前を変えるつもりもないし、変わるつもりもない。和子、シーンとした今なら言葉発せれるな?大丈夫、お前は間違ってないって俺は思ってるよ」

「……はい!」

どれだけ励みになっただろう。どれだけ支えられただろう。救えただろう。そんな不安を残しながらも自信満々に俺はそう話した。

「聞いている人、私の言葉を聞いてくれた人だけで、大丈夫です……!分かってくれた人はこの場から立ち去ってください!わからない人といる意味はありません。逆にここが大切な人が居ることも分かっています。すぐ出ていくので安心してください。……言葉を発してわかった人は分かったように自分の道に進めばいいんです。『相手側が分からないから教えてやるんだ!』なんて突っかかっても水掛け論になるだけなんです。大人な皆様なら分かるでしょう……?早急に立ち去ります」



その言葉を聞くや否やすぐに立ち去るわかった人達。幸せを信じ残る人達。

争いは一瞬にしてなくなった。

俺たちも外へと出る。

と、そこに追いかけてきた一人の女の人がいた。

「和子……!」

「お、お母さん。……どうかした?」

「私は今でも迷ってる。幸せになりたいから。迷いが私を救ってくれると思ってるから。ほかは全て要らないってそう」

「……」

「思ってた」

「うん」

「でも、私は見れた。あなたの成長を。役目を使って自分の意志を貫くあなたをみれた。……それは何より私の幸せだった。意志を凄く汲み取れた。和子は和子なんだね。オドオドして、謙虚で、優しいのが和子。そんな和子を許さなかった私は……、」

「……泣かないで。お母さんがいてくれたからここまで強くなれたんだよ。だから怒ってもないし、辛くもないよ……。でも、今から幸せが欲しいな?」

「和子。本当にごめんね!辛いことばっか言って!あんな状況じゃ喋るにも喋れなだろうに……!」

「ううん。大丈夫だよ。今喋れてるから。意思が伝わったなら万事OKだよ……」

「ありがとね。ありがとね」

そう泣きながら強く抱きしめる母親の姿を俺は初めて見て、どんな顔をしていいのか分からなかった。

「道行さん、でしたっけ?」

「あ、はい!」

「ありがとうございました!あなたが救ってくれたんですね」

「全員は救えませんでしたけどね。まあ、何が救いか、なんてこの場合は分かりませんでしたし、これが一番の策なんでしょうね」

納得いかない表情の俺を見て微笑む母。

「とても向上心の高い方ですね。やはり色々見てるんですね」

「?」

「いえ、なんでもありません。私はこれからどうしたらいいか分かりませんが、娘の話を聞いてこれから考えていこうと思います」

「そうですね。娘さんはすごい子ですからね」

「す、すごい人って……」

「そうですね。こんな凄い子を私が潰すわけにはいきませんね。一番身近に私のことを見ている和子に色々聞いてこれから頑張っていきます」

「はい。わかりました。ここにいるのはあんまり良くないと思うので早く離れましょうか」

「わかりました」

「……ますたー?」

「俺はちょっと用があるから。先帰ってな」

「…………わかった」

俺はみんなを帰らせて、少し用を足す。

「教祖」

「な、なんだ!関わらないって言っただろう!」

「お前も可哀想なやつだな」

「なぜお前に憐れまれなならんのだ!」

「卑下してるやつにそう思われてるってこと、考えた方がいいぞ。ここは現実だ。理想は理想でしかないんだよ」

「う、うるさい!」

だめ、か……。

やっぱりどうしても敵意と悪口しか出てこない。

人、いや、俺はどうも敵対してる人間を救うことが難しいみたいだ。

どうも……、ダメだ……。

俺はそこを去って、道端で黄昏れる。

「どったの?」

そこに来るは愛。

「あれ?帰ったはずじゃあ?」

「あなたのことしか見てないのに、悩んでるのが分からないわけないよ!」

「そうか」

「大丈夫だよ。これから頑張っていこう?救えるよ。道行くんだもん。これから色々思って学べばいいさ!」

愛は座ってる俺を後ろから抱きしめ安心を連れてきた。

「そっかな?」

「そうだよ!私が見てるよ!支えてるよ!」

「これから、救わなきゃいけない人が沢山だ。全員は無理だ」

「だから同じ役目で他に支える人がいるんだよ!頼ってばっかりでもいいんだよ!」

「背負いすぎ?」

「うん!一人じゃどうも上手くいかないよ!道行くんについて行くのはそれだけ魅力があるから!それだけはわからなきゃいけないよ!」

「お前にそう言われると、自信つくなあ」

「でしょー?」

「ああ。自分のできる限りで頑張るよ。全力はつくす」

「それでこそ!」

本気出さなきゃな。

俺達がそれから帰ってのは五分ほど後だった。

次回の話が最終章への入り口になるかと思われます!

またよろしくお願いします!!

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