悩みは幸せ会
「……なんで俺たちこの街に戻ってきてんの?」
「え?スマホが呼んでたからー?」
「スマホはこの街に来いとは言わないよ?ってか、なんでスマホこの世界にあるん」
「そりゃ、作った人がいるからじゃないの?」
「そっか……。で、澪」
「何?」
「ちょっとだけ久しぶり」
「そうね。ちょっと……久しぶり」
俺達は澪の村へ戻ってきた。
依頼が混雑しており、色々な人に助けを求めているけれどまだ足りないらしい。
人助け。そういう役目だから仕方ない。
取り敢えず澪の所に厄介になりつつ、依頼をこなす、という形を取った。
そのためのここだ。
「……依頼」
「そうだな」
結構焦って電話かかって来てたみたいだから俺たちも少しだけ落ち着いてから掲示板のある場所へと足を運ぶ。
「ああ!待ってましたよ!」
と、人がゴロゴロいるなかフロントでブンブンと手を振るお姉さん。
「……多い」
「だねー!この中にこの人の量はやばいね!」
愛の言う通り人の多さが目立つ。
どっかの賑わう祭りみたいに人混みが出来ている。
掲示板も見えない……。
「これでもまだ依頼が増えるんです」
「そんな凄いんですか?」
「ええ、この間の一件を終えて以来、澪ちゃんが村の事情を察知しながら、上手いこともの事を運んでいるんです」
おお、澪頑張ってるんだな。でも。
「それとなんの関係が?」
「上手くいっている反面で逆に小さい物事で依頼を受けよることが多くなりまして……。他の街からの殺到も……」
上手く物事を運べてるから、ちっちゃい所で上手くいってないことが気になり始めてるのか……。
裕福になった故の障害か……?いいことなのか、悪いことなのか……。
「まあ、とりあえずはこっちも出来るだけ対処しますよ」
「本当に助かるわー。そんな大変な仕事はないと思うから……」
「でも人多すぎで掲示板見れないよねぇ」
「私の口からでも?」
「ああ……。それだったらじゃんじゃん」
「では……。水道工事。家事のお手伝い。赤ちゃんの子守り。名探偵。土木作業。床の洗浄、ワックス。剥離。アルカリ洗浄。エロ本のバイト。自分がエロ本になる(笑)。牛乳配達。犯人は君に決めた。アンノウン退治。殺害予告犯からの防衛。SP。私を支えて。私を助けてくだ……。じっちゃんの名は。移動手段がどこかへ行ってしまった。もの探し。喧嘩を止めて欲しい。私の居場所を探して。人生の袋小路脱出大作戦。コミュ障を直したい(笑)。人になりたい。人であるために。エッセイ描きたいんだけど。俺小説家目指してるんだよね。呪っていい?あ、俺はセック……etc」
「……ろくなのねぇな!!半分以上ボケじゃん!?何でいっつも掃除はガチなの!?最後の何!勝手になればいいだろ!」
「まあまあ!落ち着いて!」
「……あげみざわ」
なんでテンション上がってんだ。
「最新の若者言葉も取り入れてんだな。……じゃなくて!解決方法が見当たらないのが半数……」
「私も頭おかしいなって思うんですよ。依頼された時の名前と依頼表書いた時の名前が違うんです」
「あんたか!変にしたの!」
焦りすぎて色んな依頼が混じったのか?にしてもおかしいだろ。
「おつかれ!道行くん」
「俺のツッコミを労わないで?」
「……結局、どれやるの?」
「いや、逆に悩むよね。これ……」
殆ど覚えてねえし。
「まあ……これ」
「あ、あの……」
??
ザワザワとしてほかの音が人の声で掻き消されている中で、か弱い女の子声がどこからか聞こえた。
「どしたの?道行くん?」
「いや、今女の子の声が」
「ん?私ならここにいるけど?」
「どこまで馬鹿なの?女の子全般君じゃないからね?」
「んん?」
「……この部屋?」
「多分。めちゃめちゃ小さかったから空耳の可能性はあるけど……」
「欲求不満?」
「お前ら居て幸せしてるよ!」
「へへ。幸せ!」
なんなんだこのノリは。
「凄い、耳に残るいい声だった」
「……見当たらない」
「だよな」
周りみてもいない?やっぱり、空耳か。
「助けてください……」
!?
「いや、また聞こえた。助けてって読んでる。可愛い声が俺を呼んでいる」
「あはは!何そのどこかしらの漫画のような台詞ー!」
こいつのツボが分からんわ。
「……??」
「なんなんだ?こんな人の中じゃ掻き消される……」
「……」
「うーん」
おっ!
なんか入口付近でオタオタしている愛と桜の身長の中間みたいな女の子を発見。
黒の肩に乗っかかった髪はキューティクル抜群だ。顔はよく見えないが、どうやら困っている様子。
少しずつ人ごみをかき分けてその方向へ向かっていくと、八の字に曲がった困ったちゃん眉毛が見えた。
また近づいて鼻と鼻がくっつきそうだ。
うわ、またかよ、可愛い。
大きなパッチリとした蒼いタレ目。日焼けを知らないその白い肌は穢れも何も知らなそうだ。
はい、可愛い、やったね。
「あ、あの……」
「あ、ああ!ごめん……。こっち来て!」
「え?」
俺は先程の場所まで手を握り移動させる。
「えっと……、あの……」
……やっぱこの声だ。
「俺が助けるよ」
「え?」
「助けて、って言ってたろ?」
「聞こえてたんですか……?」
「まあ、心にくる可愛い声だったから」
「か、可愛い……」
「た、他意は無いよ」
「……ありがとうございます」
「どういたしまして……」
二人で照れながら愛達の元へ戻ってきた。
「……ナンパ?」
「まーた、新しい女の子だー!」
むうっとした顔の二人はおいておいて、話を聞こう。
「何か困り事?」
「はい……。でも私なんかが先でいいんでしょうか……。ほかの皆さんも困ってるのに……」
「俺は君を助けたいと思ったから助けるだけだよ」
「でも……ほかの人も……」
「俺自身のやりたいようにやるのが幸せだ。って、助かりたいんじゃなかったっけ?」
「そ、そうですが……」
「じゃあ問題は無いだろ。俺との意見は合致してるし」
「道行くんらしーなぁー」
「……ますたーだ」
「そ、そうなんですか?」
「道行くんは凄いから安心してよ!あなたの事が可愛くて好きだから助けるの!」
「ちょっと女たらしみたいな言い方嫌だな!まあ、一理ある」
「……あるのかよ」
桜に突っ込まれた。
「ま、まあおいておいて。俺は助けたいけど……、どうする?」
「お願い……します……。心強い芯を持ってる人だ……」
「ん?」
「お願い……します……!」
「おっけ。じゃあ決まりだな」
「この人ならきっと……」
「何か言った?」
「……あわわ!、いえ何も!」
「そっか?」
「……はい!えっと……自己紹介が遅れました……。神下 和子……です」
「和子……で大丈夫?」
「は、はい」
「俺は平崎 道行。道行でいいよ 」
「愛!」「……桜」
と、続けて自己紹介。
「よ、よろしくです。道行さん。愛さん。桜さん……」
萎縮しながらもよろしくと挨拶を交わした。
「じゃあ、ということで行ってきます」
「気をつけてね。また帰ってきたらこっちのお仕事も手伝ってね」
「はい!」
まあ、こういう子だからな。と諦めみたいな感じを出す宿主は、息を吐いた後笑顔で俺たちを送り出した。
「それで何をどうして欲しいんだ?」
そういえば聞いてなかった。
街を出て案内している途中ふと思った俺は不意に聞いた。
「え、えっとですね……。宗教に入った母を止めて欲しいんです……」
「ほ、ほお……」
何か複雑そうな依頼が……。
「……困りましたか?」
「でででで、でぇじょうぶ」
「……これダメ」
「まあ、話は聞いておこー?」
「は、はい。えっと……この先に幸安会、という宗教団体がありまして……」
「うんうん」
「そこの団体に過去に迷っていた母が入会しまして……」
「迷ってた?」
「は、はい……。私は全然気づけませんでした…。ただ、あそこの集会は人生に迷っている人じゃないと入れないとか……。教祖の教えをやらないと悪だとか……。そんなことばかりを言っているんです……」
「それで、お母さんはそれにどっぷりつかった、と……」
「はい……。呪文のように聖書を唱えて……、催眠にかかったように同じ行動、それ以外をすると地獄に落ちるとか、なんとか……」
「な、なるほどね……」
結構凄まじいことになってるみたい。冷や汗でちゃう。
「それをどうにかして、って、母の所からの離脱はダメなのか?」
「……私には必要な存在なんです。昔は優しく色々教えてくれました。ご飯だって貰ってきて食べさせて貰いました。そんな母があんなふうになる姿を私は見たくないんです……」
「……」
母がしてくれた……、か……。
俺にその言葉の意味は理解できなかった。いや、したくなかったのかもしれない。
「じゃあ、とりあえず母を戻すことが先決だな」
「できるん……、ですか?」
「さあ、どうだろう。現状見ないとどう対処すればいいかも分からんし」
「……案内続行」
「そういうことだな」
「もう……着きました…」
「あらー、大っきいねえー!」
立ち止まる和子と一緒に足を止め、建物の全景をみた。
チャーチル。まさに教会だった。
一番最初に来たあそこほどは大きくないとはいえど普通にでかい。
「おお!」
普通に驚いちゃったよ。
「今は……、礼拝の途中なので……、待ってもらってもいいですか?」
「わかった」
と言っても何も助けるビジョンが浮かばない……。俺が母親に説教を垂れればいいのか?根本的な理由と、何故そうなったのか……、調べなきゃな。
それから十五分ほど待たされてひとが少しずつ出てくる。
ちょくちょくこちらを警戒して睨まれるのは何でだ?
そんなことを思っていると。
「なんで愚鈍で聞き分けのないあんたがここにいるの!」
という怒号と、萎縮する和子の姿を見た。
多分和子の親だろう。
「ご、ごめんなさい……」
こっからどーするか。
「あ、急にすみません。僕達ここの宗教団体に興味がありまして……。和子さんが知っているということで連れてきてもらったんです」
「あ、そうなんですかー。では牧師様はあちらにいらっしゃいますので……」
「はい、わかりました」
あれ?意外と普通か?
「何よ、あんた。信徒を連れてこれるなんてお役目ご苦労じゃない。神は私たちのことを見ているわ。どうか、あなたに幸多からんことを……。役目のために死になさい」
「……」
やっぱダメだ。
俺達は言われるがまま牧師の元へと向かった。
中は宣教師の教卓が一番奥に置いてあり、その手前には何十人もの人が入れ座れるように長机と長椅子が等間隔で陳列されていた。机の上には聖書と思わしき物や、何かのアイテム的な小物が置いてあった。
「おや、迷える子羊ですか?」
ふと聞こえてくる男の優しそうな声。
いつからか俺たちの目の前に立ち、優しく微笑みかけてくる。
「俺達ここに入りたk「ダメですね」」
事情を説明するにも何をするにも即答で断られた。
「え?」
「あなたには悩みはない。そこの和服の方、許可します。それが神が望んだ回答です」
な、何でだ?
いや、悩みがないとか、なんとか……。
「申し訳ありませんが、悩みを持たない人など興味はありません。上を目指せない。何も成した達成感がない。そのような人達とは私は噛み合いません。ご退室お願いします」
「は、はあ?」
入ってくるなり何を言い出すんだこいつは。
「抑えて、道行くん」
こんな時に冷静な愛は、状況を見つめる。
「必要なのはどうすれば幸福になるのかを悩むこと。悩み自分の役目を全うし、見つけ出した先の真理を自分自身にするために!自分が良ければそれでよし!なのです!さあ早く出て言ってください」
「……わかった。二人とも退室」
え?桜?
「あ、あの!それじゃあ!」
「なんですか?和子さん」
「いえ、あの……」
言葉がどもって出ないようだ。
「わかった。じゃあ、いこう!道行くん!」
「お、おい、愛」
「桜ちゃんの決意を無下にしちゃだめだよ」
ボソッという愛のその言葉。
「桜の決意……」
……ああ、そういうこと。
桜がここの様子を見てきてくれる。一人で頑張ってくれる、そういうことだ。
俺はまた……、こいつらに委ねるしかやることがない。
※
……桜が、悩み?
桜は今現状悩みは無い。なのに、なんで?
ますたーと幸せで、愛と幸せで。
……感情が無いのはあの時から一緒。……でも、今は楽しいも、嬉しいも、好きも、ある。
順風満帆の桜に何か不安?
「さて、話し合いましょうか。君の悩みは役目によるものでしょう?」
ズバリと鋭い眼力を光らせる教祖。
全然違う。鈍すぎ、どこ見てるんだろ。
……あ、悩みある。
……私がヒロインすぎる位置取りにいること。
これが悩み。
愛の方がヒロインなのに、私のがヒロインっぽい。いいのかな?
……これ以上なく不安。これだ。
「……うん」
でもここは話に乗っておこう。
「ははは!でしょうね」
……違うけど。
「……悩みを解決?」
「違いますよ。その悩みを持ちながら人生を役目と共に歩んでいくのです!」
……意味わかんない。
「……どゆこと?」
「ははは!分からなくても仕方がないでしょう。いいですか?私達は常に何か考え悩み疑問を抱きながら生き続けているのです。しかし、その悩みは疑問はどうしていますか?大抵の人は考えずに諦め、些細なことはどうでもいいとしているはずだ!だから成長しないのです!小さな悩みも解決すれば何か思い、気づくきっかけになる!モヤモヤが晴天のように晴れるかもしれません!幸せに近づくことができるのです!だからこそ!悩みが重要だと!私は言っているのです」
…… 上からだけど、一理ある。
ふむふむと聞く桜は少しずつ真剣に話を聞くようになった。
「役目に疑問を持つのであれば、それでいいでしょう。一歩ずつ一歩ずつ悩みを解決するために目の前の課題を疑問をこなしていくのです!さすれば道は開けて!また新たな疑問が生まれるでしょう」
「……おお」
……感心した。
「しかしながらそこで怠っては行けないことなどがございます!」
「……?……何?」
「役目は毎日必ず全うすべきであります!この聖書に書いてある通り、役目を行わないものはこの世で生きる価値はないのです!役目を行えない、役目を軽視するものに幸せになる資格はありません!」
……言い過ぎだろ。
「他にも天国に通ずる道の前には役目がある!全うしないものは地獄へと落ちる!しかしそれだけすれば全て報われる!役目をこなすこと。死後にこの世にさ迷いたくなくば自分を敬い、自分の思った通りに行動することだ。周りに流されるな、そう書いてあります。私はその教えの通りに生きてきました。だからあなたも、そう……。役目を……こなすのです!」
……天国?……役目をこなす。こなす……。役目だけを……!
一瞬、桜の頭の中がそれでいっぱいになる。
……違う。周りの人の気持ちも大事。自分がしたいことが一番大事なのは確か。でも、その人の気持ちは?ますたーだったら……、その人の幸せまで考える。そんなますたーが私の……、一番。……役目は役目でしかない。
「……そだね」
とりあえず相槌。
……というか、今のは。催眠のような。なんだろ。気持ち悪い。
「まあいいでしょう。このあと休憩を挟んで一時間後にまた説教をします。来てください」
「…………ドMじゃないよ?」
「いや、説教と言っても怒るわけじゃないですよ……?」
「……そなの?」
……ツッコミがつまらない。
「ふう……。後ほど呼びますので、ほかの方々の思想も聞いてみたらどうです?」
「……わかった」
桜は一度外へ出て休憩をしているという人達の話を聞くことにした。
……どういう経緯とか、気になる。
キョロキョロとして、優しそうな人から話をかける。
「……あの」
「ん?どうかしたのかね?」
おじいさんがそこに座っていた。桜は警戒しながらその人に話を聞く。
……アイム、コミュ障。
「……悩みがある?」
「む、まあな。しかしその悩みが大切と教えてくれている。あの人には感謝しかないのお」
「……そなんだ。なんでこの宗教に?」
「そうじゃなあ。なんでじゃろ?」
「……え?」
「まあ、悩みがあってそれを解決できると知って……。いやしかし、その悩みが大切であって。……………何故儂はここにいるのだ。私は神のお告げでここにいる。教祖様は絶対の言葉をくださる。それ以外は悪なのだ。悪悪悪。役目をやるだけ……。そう、それをやればいいのだ……」
……!
桜は怖くなった。爺さんの目に生気が宿っていなくて、どこを見つめているのか分からなかったから。
……やっぱりおかしい。
「……ありがと……!」
感謝をしてサッとそこから離脱する。
……何か。
「……あの」
桜はますたーの顔を思い浮かべてもう一度勇気を振り絞って声をかけた。
「あら、さっきの……。どうかしたんですかー?」
後ろからだったから見えなかったけど……、桜は和子のお母さんに話しかけてしまったみたい。
「……えっと、あの」
急すぎて言うことが定まらない。
「……和子のことは。……悩みとか。なんでここに?」
しどろもどろになりながら聞いた。
「そうね。もっと優しくしてあげられればいいけど……。この宗教の教えがそうは問屋が卸さないのよ。いえ、強制的にそうさせられてるのかも……」
「……強制的?」
「ええ、まあ、よく分からないけれど……。あの子の前に立って弱音や、教えの違いを聞くと、どうしても……、上手くいかないの……。本当に申し訳ないと思ってる」
「……やめないの?」
「ここを?」
「……うん」
「それも難しいわ。操られているというか。もう、私はこれが生き道なの。申し訳ないけど、辞められない」
「……頼りなの?」
「そうなのかもしれないわね。そうやって縋ってるからこんなふうになってるかも。…………正直もう頭の中がぐちゃぐちゃよ」
「……そっか。わかった」
「わかったの?」
「……うん。そろそろ、説教の時間」
「そ、そうね」
「……いこう?」
「ありがとう」
「……なんでお礼?」
「分からないわ。口から出てた」
ふふふ、とお淑やかなマダム風に微笑んだ。
「……そう」
桜も口角をほんの少しだけ上げた。
そして、それから説教を聞いて少しだけわかったことは、やっぱりこれは催眠の一種のようなもので……。
桜も頭に抱えるものが多く出来た。
「……役目をこなす?ますたーは?私はどうしたら……。こういう悩みも必要なの?……苦しい」
あと、2ヶ月くらいで1度終わるはずの小説です。
新しい小説を一ヶ月後くらいに出しますのでよろしくお願いします!誰に言ってんだろ。
また来週!




