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若葉マークの姫君  作者: May Packman
3/7

ξはクサイと読むのです

 私の教室は一階の突き当りにあるようです。

 ――その前に大事件です。

 そこに辿り着く前に、なぜか二階に上り二年生の教室に行ってしまいました。理由を問われれば、中学の時の教室が二階にあったからとしか言いようがありません。こんな純粋無垢で天真爛漫な間違いを誰が責めることができましょうか。

 私は教室の入り口に掲げられた、《二年ξ組》と書かれたプレートに目もくれず、ずんずんと教室を横断しました。すれ違う方々に「一年間よろしくおねがいします」と礼儀正しい挨拶も欠かしません。皆さんは驚きと戸惑いと憐みを同居させたような、複雑な表情を浮かべながらもご返事をしてくれました。私は少々の違和感を覚えながらも、皆さん私と同じように緊張しているのだわ、と暢気な結論を導き出し、鳩のように頭を下げ続けました。

 一通りご挨拶が済んだので、さあ私の席はどこかしらん、と黒板を見上げたところ、私の名前がありません。はて、先生のうっかりでしょうか。打って変わって呆然としている私を見かねて、今考えると『先輩』の女生徒が話しかけてくれました。黒髪がとても綺麗な美人さんです。

「二年生の教室よ」

 そう言われたので私は答えました。

「いいえ、私は一年生です」

 先輩は微笑むと、胸のタイを優しく触りながら、

「じゃあ来年、またここに来てね」

 その瞬間どっと教室が湧きました。

 そこでやっと私は自分の勘違いに気付きました。顔が火照っていくのが分かります。彼女のタイの色は錆鉄御納戸色。つまり一学年上のお姉さまだったのです。ああ、美人なお姉さま。親切にどうも有り難う御座います。あなたの後輩になれたことを幸せに思います。他の皆様も私を誹ることなく迎えて下さいました。きっと素晴らしいクラスになること明々白々です。二年ξ組に幸あれ。合掌。

 さて、私はまたも頭を下げながら、そそくさと教室を後にしました。


宜しければ短編、あるいは他の長編も御座いますのでご清覧下さいませ。お気軽に感想、評価をお願い致します。

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