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第6話 宿屋にて



 扉の先には、賑やかな街があった。

 よし、じゃあ入ろ……あ、そうだ。



「一つ聞いてもいいですか?」

「はい、なんでしょう」

「身分証ってどこで発行できるんですか?」

「あ、はい。旅をしているのなら冒険者ギルドですよね? 商人にも見えませんし」

「えー、まぁ、はい」



 あー、今の失敗したな。

 身分証はなくしたことにしたんだった。

 なら、一度は作ったことがあるわけで、どんなところで作れるかは知っているはず。

 聞くのは不自然だろう。

 でも兵士さんがうまく勘違いしてくれたようで助かった。


 冒険者ってゴブリンさんが言っていたやつだよな。

 冒険者“ギルド”ってのはわからないけど。

 何で旅をしてると冒険者ギルドなのかわからないけど、怪しまれないようにうなずく。



「それなら門をくぐってすぐ右にあります」

「ありがとうございます。お時間を取らせてしまってすいません」

「いえ、これも仕事のうちですから。では」

「はい」



 兵士さんに会釈をし、僕は街へ出た。



◇◇◇



 それにしても本当に賑やかだな。

 人がいっぱいだ。

 あの人は魔法使いかな?

 おぉ、あっちの人は頭に動物の耳が生えてる!

 職業も種族もいろんな人がいるんだなぁ。

 

 それに興味を惹かれる店もたくさん。

 屋台からは美味しそうな匂いが漂ってくるし、魔道具屋なんておもしろそうなものもある。


 だが今は、残念ながら他にやることがある。

 宿の確保と身分証の発行、それと……お金だ。

 お金──つまりは仕事。

 そう仕事(強調)。

 正直に言うとやりたくない。


 そんな事を言っても仕事をしなきゃいけないのは変わらない。

 さすがに生前より劣悪な環境じゃないと思うし……じゃない、よな? じゃないなら大丈夫だろう。

 精神力にもステータス補正が1598もかかるからな。

 まだ、何になるかも決まってないけど。


 仕事の事は後に回すとして、残るは宿と身分証。

 はじめに宿をとろう、お金もないしなるべく安い所がいいんだけど。









「…………」

「あのー、その……とりあえず、1泊させてほしいのですが……」



 宿に着いた。

 ここは“宿屋オルド”。

 オルドは店主の名前らしい。

 街の人に安いおすすめの宿屋を聞いたら、ここを勧められたのだ。

 僕は正直ボロ宿を覚悟していたけど、思いの外綺麗だった。

 隅々まで掃除が行き届いていて、カウンターの上には可愛らしい花が2輪飾ってある。

 この宿は二階立てで、一階は食堂になっているようだ。



「…………」



 渋い、頑固そうな店主さんは無言、無表情で、カウンターの上にある木製の板を指さす。

 そこには紙が貼られていて、


─────────────────


☆宿屋オルド☆


 一泊小銀貨1枚と銅貨5枚です!

 ゆっくり休んでいってくださいね!


─────────────────


 これまた可愛らしい丸文字でそう書いてあった。

 ……店主が書いたのか?

 あ、ちなみに言語理解は文字にも適用されるらしいね。

 これが閻魔様の言ってたご都合主義ってヤツか。


 ゴブリンさんの話しを聞くかぎり、小銀貨1枚は1000円くらい、銅貨1枚は100円くらいだと思う。


・小銅貨×10=銅貨=約100円


・銅貨×10=小銀貨=約1000円


・小銀貨×10=銀貨=約1万円


・銀貨×10=小金貨=約10万円


・小金貨×10=金貨=約100万円


・金貨×10=白金貨=約1000万円


 と、こんな感じだろう。



「え、えーと、小銀貨1枚、銅貨5枚ですね?」

「…………」



 無言でうなずく店主。

 銀貨を手渡す。



「部屋は……」


──────────────────────

二階へ上がって一番奥、右側の部屋になります。

──────────────────────


「あ、はい」



 店主はカウンターの下から紙を取り出し、見事に会話を成立させる。

 これも丸文字だ。


───

それと

───

───────────────────────

食事は朝、昼、晩と三回出しますので必要なら声を

かけてください。

おかわりは追加料金が必要になります。

あまりに遅い場合はなくなってしまうかもしれませ

んので、注意してくださいね?

───────────────────────


「……はい」


────────

ではごゆっくり。

────────


 会話ができるようにいろんなバリエーションがあるのか、紙を取り出す手際もいいしベテランなのだろう。

 なんて考えながら部屋に向かう。


 二階の一番奥の右側……。

 ここだな。


 部屋にはベッド、小さな机、クローゼットがひとつずつあり、あまり広くはないが大きめの窓があるおかげか不思議と窮屈さは感じない。

 うん、いい部屋だな。

 これに三食ついてくるんだ、(約)1500円は安過ぎじゃないか?


 僕はベッドに腰かけ、道具袋の中から硬貨を取り出す。

 銀貨2枚、小銀貨6枚、銅貨22枚。

 後18泊はできる。

 それまでに仕事探さないと。

 あ、その前に身分証……結構やること多いな。


 …………これからどうしようか。

 これからというのは身分証がどうとか、仕事がどうとかじゃなくて、もっと先の話だ。

 生前やってみたかったのはゲームくらいしかないしなぁ。

 せっかく自由なんだからいろんな事をやってみたいとは思うけど……



『……旅の途中で食料を切らしてしまいまして、近かったこの街に──』



 ……旅、か。

 あのときとっさについた嘘なんだが、案外いいかもしれない。

 僕が一番やりたかったゲームジャンル……RPGも旅をする系の話が多かった気がする。

 ゲームで出来なかったことを現実でやるのも、いいんじゃないだろうか?

 幸い、ゲームみたいな世界なんだし。


 …………。


 …………。


 …………。


 …………。


 …………よし決めた。


 せっかく異世界に来たんだし、いろんなものを見てみよう。

 旅、と言えるような本格的なことはしない。

 つまらなかったらやめるし、途中で飽きてもやめる。

 いい街があったらそこに住むのもいいかもな。


 あくまでも自由に。

 やりたいように。

 自分の気持ちにしたがって。

 見たいものを見て、やりたい事をやって、食べたいものを食べて、行きたい所に行って。

 自由に。

 自由に過ごしていこう。


 あぁ──








 ────とっても、ワクワクする。


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