第5話 街
日曜更新って言ってあったので遅れたわけじゃないですよね、はい。
「エー、魔族と言うのハ、簡単に言えば人類に友好的な魔物の総称でス」
「友好的?」
「はイ。と言ってモ、単純に人が好きな者、人との敵対を避けようとする者なド、理由は様々ですガ」
そうなのか。
ちゃんと覚えておかないと。
「そうだったんですか。……教えてくださりありがとうございます」
「いえいエ。……本当に知らなかったんですカ?」
「はい。お恥ずかしながら。世間知らずでして」
閻魔様からはゲームのような世界だという事、転生する小屋の事、……後ラノベの事くらいしか聞いていない。
閻魔様にもっと聞いておけば良かった。
あの時はなんか遠慮しちゃったんだよな。
「街へ行くには時間かかりますか?」
「いエ、もといた場所が浅い所ですシ、浅い所は魔物もほとんど出ないうえ二、出ても弱いのであまりかかりませんヨ」
「へぇ、街ってどんなところですか?」
「街の名前はアンタート。別名、始まりの街と呼ばれていテ、多くの冒険者がアンタートから始めていまス。
先ほども行ったように弱い魔物が多いですかラ」
……えーっと?
「冒険者……?」
確か、閻魔様が(あの3時間中に)そんな事を言っていたような気がするが……なんだっけ。
「…………冒険者というのハ、人々の依頼を受けテ、それをこなす仕事でス。他にも魔物の討伐ヤ、素材を売って生計を立てていまス。なので弱い魔物が多いこのあたりハ、新人冒険者にはもってこいの場所なんですヨ」
「あ、あぁ、そうなんですか」
最初の沈黙はなんだろう、僕にはちっともわからない。
世間知らず過ぎて呆れてるとか、そんな事は決してない。
……あるだろ。
いや違うんだ。しょうがないじゃん。
この世界で生まれ育ったわけじゃないんだし。
知っとけと言う方がおかしい。
▽▽▽
そのあとも少しすると森を抜けた。
30分くらいだろう。
その間ゴブリンさんに常識を教えてもらっていた。
晴れて僕も常識人だ。
「ほラ、見てくださイ、あれが街でス」
ゴブリンさんが指を指した方には、壁に囲まれた大きな街があった。
「立派な街ですね」
「はイ、では行きましょうカ」
少し歩き、何事もなく門に着いた。
遠くから見ても思ったけど、壁高いな。
こんな高い壁作るのは大変だろうに。いや、魔法で作ったのかな? 見てみたい。
門は3つ。左の門は綺麗な装飾が施されていて、真ん中が一番大きい、右は特に特徴がない。
真ん中には十数人並んでいた。
「ここが入り口でス。左から貴族用、一般人用、冒険者用でス」
「僕は一般人用に並べばいいですか?」
「そうですネ。冒険者ではないようですシ、貴族でモ……ないですよネ?」
「はい」
「ではそれでいいと思いまス。
俺はここデ。……一人で大丈夫ですカ?」
「は、はは。ダイジョウブデスヨ?」
「何で疑問系なんですカ……」
大丈夫じゃない気がするからです。
「まぁ、本当に大丈夫だと思います(希望的観測)」
「そうですカ。……この度はすいませんでしタ」
「いえいえ、あなたのおかげで本当に助かりました。またどこかで会いましょう」
「──はイ。またどこかデ」
そうしてゴブリンさんは冒険者用の門へ歩いて行った。
冒険者だったのか。
ゴブリンさん、いい人だったな……。
お世話になったし、今度会ったらご飯でも奢ろう。
……あ、名前聞いてないや。
「次!」
鎧を着た兵士が大きな声で言う。
僕の番だ。
「身分証を出せ」
……身分証。
「……無くしました」
「そうか。ではそこの部屋に入り、中の兵士になくした経緯を説明しろ」
「はい……」
大丈夫だよな?
身分証がないから街には入らせない!
とかならないよな?
言われた通りに部屋に入る。
入ってきた扉の他に(おそらく)奥に続く扉と、(おそらく)街の中に続く扉があった。
部屋の真ん中にテーブルがあり、向かい合うように椅子が2つ、その片方に外の人と同じ鎧を着た兵士が座っていた。
兵士が話しかけてきた。
「どうしました?」
「えっと、身分証をなくしてしまいました」
「あぁ、ではこちらに」
勧められて椅子に座る。
「名前を聞かせてください」
「はい……フライハイトです」
「フライハイト君ね」
兵士は紙にメモをとる。
部屋には紙束もあるし、紙は高価なものではないのかもしれない。
「この街にきた理由は?」
「……旅の途中で食料を切らしてしまいまして、近かったこの街によりました」
「なくした経緯は?」
「旅の途中で落としたんだと思います。気付いたらなかったので」
どうだ……?
「はい、わかりました」
良かった、嘘だとばれてないっぽい。
「ではこちらに触れてください」
兵士は1枚の金属板を出してきた。
僕が言われた通り触れると、刻まれた魔法陣のようなものが青く光る。
「これは?」
「犯罪者称号を読み取る魔道具です。青く光ったので、犯罪者称号はない、ということになります」
「なるほど」
犯罪すると称号に出るのか?
それに魔道具か、マジックアイテムとは違うのかな。
「では入街を許可しますが、5日以内に何らかの形で、身分を証明できるものをここに持ってきてください。持ってこなかったり、その前に街を出ると【不審者】の称号が現れます。これも犯罪者称号になるので、あらかじめご了承下さい」
「わかりました」
「では、通行料をいただきます。身分証がないので、上乗せして小銀貨6枚です」
小銀貨、小さな銀貨のことだ。
ゴブリンさんから聞いた。
手持ちの小銀貨は13枚なので、足りる。
「6枚、確かに受け取りました。では──」
兵士が立ち上がり、(おそらく)街の中に続く扉をあける。
「──ようこそ、アンタートへ」
扉の先には、賑やかな街があった。
ブクマ、感想、評価、レビュー、ありがとうございました。
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