第4話 命の恩ゴブリン
すみません!
いつもより投稿が遅れました。
今日は土曜日だと思ってました。
「そのウサギ、捕まえてくれませんカ!」
「え、あ、はい!」
ゴブリンがしゃべった。
が、今はウサギを捕まえよう。
頼まれたんだから、やらなければ。
殺してもいいのかわからないから、武器は使えない。
使えるのは体だけ、ウサギは結構速いので、タイミングを逃したらチャンスはない。
………………今!
僕は思い切りウサギに飛びかかる。
タイミングはぴったり。
捕まえ──
「痛でッ!」
──られなかった。
タイミングはあっていたし、狙いもちゃんと定まっていた。
だが、あのウサギは僕の頭を踏み台にして跳んで行った。
そのせいで地面に顎を強打した。
ちくしょう。
「痛っててて……」
だが思ったより痛くないな。
ステータスの耐久力補正のおかげかな?
「大丈夫ですカ!?」
ゴブリンがしゃべった。
とりあえず答えなきゃ。
「は、はい。大丈夫です」
「あァ、ゴ、ごめんなさイ! 私が急にあんな事を頼むかラ……」
「いえ、こっちが失敗しただけですので、気にしないでください。……むしろ、捕まえられなくてすいませんでした」
「いえいエ! 勝手に頼んだこっちが悪いですよ。ごめんなさイ、今ポーションを持っていなくテ、これで止血を──」
そう言ってゴブリンは綺麗な布を渡してきた。
なんだこのいいゴブリンは。
ゴブリンってもっと邪悪なイメージだったんだけど。
「それより、ウサギはいいんですか?」
「ア……はイ、いいでス。もともとはウサギが目的じゃないですかラ」
なんか悲しそう。
悪いことしたな。
「あノ、何かお詫びヲ」
「いや、いいで……」
あ。
「あー、お言葉に甘えさせてもらっても?」
「もちろン! ……私に出来ることなラ、ですけド。なんでも言ってください」
優しい。
「ここらへんで食料が確保できる所を、教えて欲しいのですが」
今、食料を何も確保できていない。
あの小屋に食料を置いておいて欲しかったな……いや甘えちゃだめか。
「そんな事でいいのですカ?」
「まぁ、僕にとっては結構重要なんです」
過労死して転生したのに、今度はすぐに餓死して閻魔様こんにちは、なんてなったら笑えない。
……閻魔様なら笑うだろうか?
「わかりましタ。今すぐ必要ですカ?」
「できれば」
「でしたラ、街へ行きましょウ」
え?
「近くに街があるんですか?」
「はイ、この森を越えたあたりにありまス」
え??
「じゃ、じゃあ、この川の下流には何かありますか」
「えート……確か村があるはずでス。ここからだと徒歩で3日ほどかかりますシ、道中には狂暴な魔物の縄張りがありまガ……」
……マジかー。
てことは、この心優しきゴブリンさんに会わなかったら死亡ルートまっしぐらだったわけだ。
は、はは。
「本っ当に、ありがとうございました」
「エ? ド、どういたしましテ?
……ア、いヤ! 顔を上げてくださイ!」
冗談抜きで命の恩人だ。
いや、恩ゴブリン、か?
「ト、とりあえズ、街へ向かいましょウ」
「何から何まで、ありがとうございます」
「はァ……?」
ゴブリンさんに連れられて森を歩く。
……ゴブリンがしゃべってる。今更だけど。
この世界のゴブリンは皆こんななのかな?
それとも、このゴブリンさんが特別?
……鑑定してみるか?
いやいや勝手に個人情報を見るのは失礼だよな。
うーん、わからん。
そもそも街って人間の街なのかゴブリンの街なのか。
もしかして、罠?
街に連れて行って食べるつもりだったらどうしよう。
でもそれなら、今僕を殺せばいいんじゃ……。
いや、それだと運ぶのが面倒だな。
まぁ、このゴブリンさんはそんな事しないだろうけど。たぶん。
優しいし。
「……えーっト、私が気になりますカ?」
「へ?」
「いヤ、ゴブリンが話しているので気になるのかト。……少し視線を感じますシ」
「あ、ごめんなさい」
「いエ、いいですヨ。慣れてますかラ」
失礼な事をしてしまった。
命の恩ゴブリンになんて事を……。
「私は固有スキルを持っているんでス。【知能強化】と言っテ、名前通り知能を強化スキルでス。
これがあるから人の言葉を話せるんですヨ」
「知能強化……」
「はイ、と言っても元が知能の低いゴブリンですかラ、普通の人ぐらいの知能しかないですガ。
……ア! 決して人を馬鹿にしているわけでは無いでス!」
「え? あ、はい」
ゴブリンさんは慌てて振り返り、否定した。
僕が呆気にとられていると、ゴブリンさんは安心したように息をした。
「ト、とりあえズ、魔族認定もされていますし安心してくださイ」
「魔族?」
魔族って人類の敵みたいな?
でも口振りからすると違う気がする。
「エ、魔族を知らないんですカ……?」
「ぁ、はい」
「えェ……」
もしかして、この世界じゃ常識なのか?
「じゃア、魔物は知っていますカ?」
「えぇ、まぁ」
「えェ……??
なラ、何で私について来ているんですカ。魔物ですヨ?」
「……いい人そうだから、ですかね」
「騙しているかもしれないじゃないですカ」
「え、いや、悪意を感じなかったですし」
「あァ……【悪意感知】のスキル持ちだったんですカ。」
「えー、はい。そんな感じです」
違うけど。
本当は死神能力の霊感の効果だ。
魂から出るオーラを感じる能力だが、慣れてくると感情を読み取る事ができるようになる。
悪意は他の感情より感じやすい。
……精度が低く過ぎるが。
「それなラ……いヤ」
「?」
「それを信じすぎるのは駄目ですヨ。完全に感知できるわけではないですシ、【感情隠蔽】などのスキルで対抗できるらしいのデ」
「わかりました」
【悪意感知】スキルじゃないけど、たぶんこの能力にも言えることだろう。
ゴブリンさんは再び歩き出しながら、口を開く。