第3話 歩きだす
休憩の後、部屋を物色する。
閻魔様から、この小屋の中の物は勝手に持っていっていい、と言われたので遠慮しないで持っていく。
隅々まで探し、持っていくことにしたのは
・古びた革の軽鎧&ブーツ
かなり古い物だがないよりはマシだろう。
・刃渡り20cmのナイフ
ナイフは色々使えて便利だからな。
・着替え×2
地味目なのが少なかった。
・銀貨×2 小さな銀貨×13 銅貨×27
貨幣価値がわからない……。
・小さな巾着袋
これが凄い。
〝鑑定〟
〔道具袋:マジックアイテム。非生物を体積、重量に問わず収納できる。容量は使用者の最大魔力値に依存する〕
マジックアイテムだ。
ためしに銅貨を入れてみたら入る直前、光の粒子になり吸い込まれて行った。
手を突っ込むと、銅貨が入っていることが感覚的にわかり、意識すると手元に銅貨が現れた。
凄く便利だ。
───よし。
道具袋の中に着替えと硬貨を入れ、ローブの下に革の軽鎧、腰にナイフと道具袋を装備。
革のブーツを履いて、小屋のドアを開ける。
その先には、
木。
木、木、見渡す限り木。
森だ。
とはいえ、小屋の窓からは木がたくさん見えていたため、それほど驚かない。
だが……
「それじゃ、自由な旅を初めよう」
─── 久しぶりだ。こんなにワクワクするのは。
僕は真っ直ぐ、歩き出す。
▽▽▽
「ここどこだろ」
真っ直ぐ歩き出したはいいものの、ここがどこだかわからない。
道にでも出られればいいんだけど……。
「ん?」
少し先にキラキラと光を反射させるものがある。
進んで見るとそこには川があった。
川、か、それなら下流のほうに進めば街か集落なんかがあるかもしれない。
行ってみるか。
「あ、そうだ」
せっかくだから、移動しながらスキルを検証をしてみようと思う。
【鑑定】では大まかなことしかわからないのでそこが少し残念だ。
でもまぁ、なければ不便だから文句を言っちゃだめだろう。
【鑑定】はさっきさんざん使った。
【神化】は大きなデメリットがある。
行動不能になってしまうので気軽には試せない。
ということで【心魂ノ大鎌】を試す。
どうすれば使えるんだろ。
ん? 使い方……わかるぞ?
「〝心魂ノ大鎌〟」
僕がそう唱えると、目の前に光の粒子が集まってきた。
何かがゴリッと削り取られる感覚と共に、柄の長さが約30cm、刀身が約20cmの柄が木でできている大鎌が、
大……鎌……が?
…………。
「草刈り鎌じゃん!!」
検証結果。鎌はよく飛ぶ。
力いっぱいブン投げてしまった。
はぁ、草刈り鎌って……。
いや、現役死神の時も支給されたのは草刈り鎌じゃないか、落ち込む必要ないだろう。
……でもなぁ、大鎌って言われたら期待しちゃうよな? 死神ならわかってくれるはず!
ふぅ、落ち着け僕、落ち着こう僕、落ち着いて再度検証しよう。
てことで、
検証結果。
鎌顕現
・〝心魂ノ大鎌〟と唱えると目の前に現れる。
・消費魔力はデフォルトで20。(ゴリッと削り取られる感覚は魔力消費の感覚だった)
・離れ過ぎると消える。(200mぐらい)
切れ味小上昇
・デフォルトだと普通の刃物よりは切れ味がいいぐらい。
・100込めてみたら太めの木の枝が普通に切れるくらい。
と、なっていた。
あんまり強くない……。
いや、でもこれから成長するんだから強いのかな?
比較するものがないからわからないや。
それとスキルを使おうとした時、使い方が何故かわかった。
そういえば【鑑定】の時も自然にわかって使えてたな……。
もしかして────やっぱり。
どうやらスキルと言うものは、そのスキルに意識を傾けると使い方や効果がなんとなくわかるっぽい。
【神化】を意識してみてわかった。
ただ、魔力、闘力を放出しながら〝神化〟と唱えると発動する気がする、 とても強くなる気がする、反動がすごい気がする、程度にしかわからない。
ので、スキルは【鑑定】や実際に検証する事も大事だろう。
とりあえずスキル検証は終わりかな。
て言うかまだ着かないのか。
今日は野宿かな、夜になると魔物が活性化するらしいから、できればしたくないんだけど。
……うん? なんだ?
今、先の草むらの方から音がしたような……。
──ガサガサッ
その音と共に、耳が異常に発達したウサギが勢い良く飛び出して来る。
そんなに近くじゃないから驚かなかったけど、やっと第一異世界生物を発見した。
耳でっかいなー。
体は普通サイズなのに、耳は体の1.5倍ぐらいあるぞ。
そんな事を考えていると、また草むらがガサガサと鳴り、何かが飛び出して来る。
緑色の肌、尖った耳、額から生えた小さな角、身長は70cmくらいかな?
間違いない、生前調べたゲームの知識で知っている。
「ゴブリンだ……!」
すごい、本物だ!
ゴブリンといえばゲームの定番。
ゲームですら会えなかったものに現実で会えたのは、何て言うか、こう……いいな!
僕の語彙力が家出しているうちに、ウサギとゴブリンがこっちに向かって来た。
あれ? これ、逃げなきゃまずいパターン?
逃げる前に初めて見るウサギとゴブリンを目に焼き付けよう、と考えていると、
「すいませン!」
声が聞こえた。
「そのウサギ、捕まえてくれませんカ!」
────ゴブリンから。
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