プロローグ 2 自由に
プロローグだけ連投します。
「アッハッハッハッハァ! ちょwwおまwww死神が死ぬとかwwぷっ……ぷっくっくっく……
ブァーハッハッハッハッハッh──ゴホッゴホッ」
……今、目の前で大笑いしているのは閻魔様。
見た目は人間で言う30代後半の男性で、燃えるような真っ赤な髪を後ろで雑に束ねている。
あとゴツい。
閻魔様はいくつかの世界の『死』をすべて管理している最上級の死神、閻魔の役職には全ての世界あわせてたったの6柱しか就けない。
とても凄い方……
「うっぷ……笑い過ぎて……吐きそう……」
……のはずだ。
「あー 笑った笑った。で? 死因は?」
「多分、過労……だと思います」
「ぶはっw──」
また大笑いが始まった。
そう、ここに来た理由は他でもない。
死んでしまったからだ。
「あの、閻魔様」
「あ、悪い悪い、一人で盛り上がっちまったな。
で、なんだ?」
「ぇと、僕は本当に……その、死んだのですか?」
「あぁ、死んだっぽいな。どうした?」
「いえ、神が過労で死ぬなんて、聞いた事がなかったので」
「んーまぁ、いねぇわけじゃねぇな。俺の管理してる世界でも2人いる、つまりお前が3人目だ。おめでとう」
おめでたくないです。
「僕はこれから、どうなるのですか?」
「そうだな、お前は大罪も犯してねぇから、天国に逝って魂を時間かけて初期化して、生まれ変わりを待つって感じだな」
まぁ、予想通りだな。
「だが……もう1つ選択肢があるぞ」
「?」
もう1つ?
……地獄ってことだろうか。
「お前は、地球の日本って国知ってるか?」
「? はい。僕の担当範囲もその国にありました」
「! おぉ! 日本の娯楽に興味はないか?」
……なんなのだろう?
娯楽、『ゲーム』という物なら知っている。
この前、若い青年の魂を案内をしている時、
『せめてド○クエ新作終わらせてから死にたかった……』
と、死んでいるのに死にそうな顔をしていたのが印象的だった。
神々の世界でも人間界の物はでまわっている。
いつかやってみたいと思って、色々……特にファンタジー系RPGの事を調べていたので、だいたいの知識はある。
……結局仕事が忙しくてできなかったが。
「『ゲーム』とかですか?」
「ん……まぁゲームも面白い、とても面白いが俺が好きなものはライトノベルってヤツだ」
「『らいとのべる』?」
「あぁ、えっとな────」
閻魔様は『ラノベ』を語った。
……三時間ほど。
▽▽▽
「────というわけだ。わかったか?」
「……よく、わかりました」
────なるほど。
要約すると『ラノベ』は小説の一種で、閻魔様は『異世界ファンタジー』というジャンルが好きらしい。
……三時間語る必要があっただろうか。
「それで、そのもう1つの選択肢とは?」
「? …………………………………………あ」
あ?
「あぁうん忘れてたわけじゃないぞ覚えてた覚えてたちゃんと今から言おうと思ってたからアハハ……」
「…………」
いや絶対忘れてt───
「ゴッホン!! そのもう1つの選択肢とは──」
あ、はい、もういいです。
「──ファンタジー異世界に転生することだ!!!」
「…………」
「?」
「?」
「……ファンタジー異世界に転生することだ!!!」
「あ、ちゃんと聞こえてます」
話の流れ的にそうだろうと思ってたし。
「どうだ? 悪い話じゃねぇだろ?」
まぁ、興味はある。
「それによ、お前だって仕事づけの生活だったんだろ? やりてぇ事の1つや2つあるんじゃねぇのか?」
「やりたいこと……ですか……」
「あぁ。」
僕のやりたい事……なんだろ。
生前は仕事ばっかりで、やりたい事なんて考える暇はなかった。
「それこそ、のんびり暮らしてぇだとか、強い魔物倒して英雄になりてぇだとか。何でもいいんだ。自分が本当にやりてぇ事ならよ」
僕が、本当にやりたい事……。
僕は……
「自由に──
──僕は、『自由』に、過ごしてみたいです」
『自由』
生きていた頃では、考えられないような言葉。
閻魔様はそれに ニカッっと笑い
「いいねぇ、ククク、お前は自由だ! この俺が許可する。職務に捕らわれず、自分の歩きたいように歩め!」
言葉が心に響く。
こんなに、感情が出るのはいつ以来だろう。
僕は、自由を望んでいたのだろう。
僕は、こんな言葉を、言って欲しかったのだろう。
────自然と、涙がこぼれた。