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ワンモアタイム  作者: アンソニー 計画
催花、16歳
3/18

「イジメてる奴ら全員撃退してあげるよ。」

長めです

今日も私の上履きは泥だらけだ。

こんなこともあろうかと持ってきていたスリッパに履き替える。

靴箱に靴があると(間違ったことじゃないのに)こういったイタズラをされるので靴は自分で持つ。


教室に入るとざわめきが一瞬止まりどこからか「朝から嫌なもん見ちゃったよ」という侮蔑混じりの声がどこからか聞こえてきた。


私の席を見ると、仏花が飾られていた。

それを窓辺に置いて、自分の荷物を置く。

机はマジックで死ねだの不細工だの書かれているが、水性ペンで書かれていたらしく雑巾で拭いたらすぐに落ちた。

席替えしたら次この机を使う人が可哀想、と気を遣ったのだろうか……。


席に座り、あと五分。先生が来るのを待つ。


「あれ〜?ブサイカちゃんまだ生きてたの?」


ノッポの茨島 桜とチビの長流川 夕がクスクスと笑いながら私の前に立った。


「てっきりもう死んだかと。で?いつ死ぬの?」


「さあ。」


相手にしたらいけない。

相手にしたら、その反応に喜んで更に行動がエスカレートする。


「さあ、じゃねえよ!」


茨島が私の机を蹴った。


「何済ましてんの?本当お前気色悪いわ。

とっとと死ねって言ってんだよ!」


「まあまあ桜、落ち着いて。

こんなゴミクズにそんな熱くなることないって。

ほら、先生来るからもう行こ?」


長流川は茨島の腕を掴んで自席に戻る。

その時、いつの間にか持っていた私の顔に濡れ雑巾を押し付けることを忘れない。

スマートに行われる嫌がらせに最近は驚くばかりだ。手慣れてきてしまっている。


ドブの臭いがする雑巾を床に投げ捨てた。

ハンカチで自分の顔を拭くが、鼻の奥に臭いが住み着いてしまった。


「……くっさ……。」


隣の席の愛宕 霧がその鋭い目で私を睨む。

彼女のポニーテールが揺れた。


「臭うんだけど。片付けてくんない?」


「なー、それってイカ臭いんじゃね?」


髪を茶髪に染め制服を着崩した春田 豪が、下卑た笑みを浮かべ愛宕の机に腰かける……が、愛宕が机を引いて春田を下ろそうとする。

彼はちょっと驚いた顔をした後にまだ誰もいない前の机に腰かけた。それから仕切り直しと言わんばかりに伸ばした足を私の机に乗せる。


「なんたって、色んな男とヤリまくってんだもんな。

全身に染み付いてんじゃねえの?せいえ……」


「ちょっと春田、気持ち悪いこと言わないでくれる!?」


「悪い悪い。

でも本当のことじゃん?」


「……本当気持ち悪い。」


2人の侮蔑した目が私を貫く。


こう言われているが、私は処女である。男の人と付き合うどころか手を繋いだこともない。いや、幼稚園のときはあるかもしれないけど……。

あのユニコーンだって私の膝に頭を乗せるだろう。

こんなピッカピカの処女もいないだろうに。


「なー、松川のとこも臭う?」


春田が斜め後ろの松川 五月に話を振る。

話を振られると思わなかったのだろう、彼女は細い肩をビクリと震わせてから小さな声で「今鼻が詰まってるから……」と言った。

黒いおかっぱに隠れているが、その小動物のような顔が怯え歪んでいることは想像出来た。


「鼻詰まってんの?詰まってても臭うだろ?」


「……え……」


彼女は泣きそうな顔で私を見た。

私は首を振る。

私に気を使うことはない。


「……う、ん。」


松川さんは苦しそうに頷いた。

それでいい。逆らったら彼女まで巻き込まれてしまう。


「だよなー!あーあ。こいつのせいで教室中が臭うわー。

早く出てってくんねえかなあ。」


春田が靴底を机に擦り付けて立ち上がる。

……アイツが来たのだ。


背の高いがっしりした男。高い鼻梁と分厚い唇。凛々しいのにどこか病んだ黒い目。


雪沢 半夏だ。

イジメの首謀者。


皆から尊敬され、そして畏れられている。次は自分か、と。


「うっわ、まだ生きてんの?」


雪沢はまっすぐこちらに来ると私の髪を掴んだ。


どうでもいいことだが、皆朝来ると律儀に私の席まで来る。

私をイジメるためにわざわざ次の時間の小テストを捨てるなんて、少し滑稽だ。

滑稽なのは少しだけで残りの感情は絶望でしかないが。


「よくそんな顔で生きてられるよなー。

俺なら恥ずかしくてとっとと自殺するわ。」


ググッと、前髪を掴む手に力が入る。

なんて力。頭皮が剥がれそうだ。


「は、なして……!」


「離して?なんでお前の言うこと聞かなきゃいけねんだよ。」


雪沢が私の顔面を机に叩きつけた。

痛い、なんてものではない。衝撃だ。

顔どころか、背中まで痛い。


顔を上げると、鼻から何か伝った。

血だ。


「うっわ、ますます汚くなったな。」


雪沢が嘲笑う。

目の端で松川さんが動こうとしたので、それより早く立ち上がってトイレに駆け込んだ。


—今までのがここ10日間、私に行われていることだ。



今日も今日とて学校に向かう。

行ったら酷い目にあうので行きたくないが、行かなければ進学どころか就職も出来ない。

仕方がないのだ。


電車に揺られボンヤリと車内を眺める。

今日はいつもより空いていて息がしやすい。

酷いと足が浮くほど混むので酸素不足なのだ。


……空いているというのにあの男、やたら隣の女子高生に密着している。

と、その時男の手が彼女のお尻に回った。


痴漢だ!


私は男の方に向かい、その手首を掴む……よりも早く別の手が男を捕まえていた。


「おじさん、ちょっと。」


その手の主は私と同じ高校の男の子だった。

癖毛のある黒髪に女の子のような整った美しい顔。

そして、どこか見覚えがある顔だ。どこで会っただろうか?

学校ですれ違ったことはあるかもしれないが、そうじゃなく……誰かに似ている……。


「な、なんだ!?」


「なんだ、じゃなくて。痴漢してたよね?」


「は、ハア?何言ってるんだ、そんなの、」


「写真撮ってあるんだよね。

ちょっと次の駅で降りよう。」


彼は颯爽と男の腕を掴み上げるとサッサと電車を降りた。そこに痴漢されていた女子高生が続く。


私も目撃したし、一応行くべきかな?何もしてないけど……


駅はほぼ無人の、各駅列車でしか見かけない駅だ。

早く駅員さんを呼ばないと。

私は女子高生に声をかける。彼女も同じ高校の制服を着ている。


「あの、大丈夫?」


「なに?

…………あれ?豊平さん?」


「……旭さん!」


なんと、同じクラスの旭 翠さんじゃないか!

彼女は季節外れのインフルエンザにかかって2週間学校を休んでいた。なんだか久しぶりだ。


「おはよう!大丈夫だった?駅員さん呼んで来るから、」


「え、余計なことしないで。

っていうか豊平さんなんでここに?早く学校行きなよ。」


「いや、私も痴漢見たから力になろうと思って……」


その時、「ふざけんじゃねえ!」という怒号が聞こえてきた。

驚いて声のした方を見ると、自販機の陰に隠れるようにして痴漢と先ほどの男子高校生が向かい合っ……いや、痴漢が男子高校生に土下座していた。


「……えっと?」


「ちょっと青!大声出さないで!」


旭さんはアオと呼んだ少年の方に肩を怒らせながら向かう。

……なんだ、これは?


「こいつが土下座で勘弁しろとか言うからさあ。」


「ハア?おじさん、そんなので許されると思ってんの?」


旭さんのスラリとした足が痴漢の顔面を蹴った。

……え?え?

なにが起こってるの?


「はいこれ、証拠。おじさんが私に痴漢してるとこの。

バッチリ撮れてるねー。

ね、これおじさんの会社とか家族に見せてもいいの?」


旭さんは鼻血を垂らす痴漢にスマホを差し出した。

どうやら動画を撮っていたらしい。

……動画を撮る余裕があったということ……?


「やめ、やめてください!」


「なら10万円払って。」


「無理です!」


「あっそー。じゃあいいよ。

青。」


「結構良い会社に勤めてんのにねー。課長?凄いじゃん。

いやあ、残念だなあ。おじさんの将来奪うことになって。」


彼はスマホを弄りながらカードを見ている。

どうやら痴漢の財布から社員証を見つけたらしい。


「お願いします!やめてください!」


「いいよ。金払えたらね。」


「そんな……」


「そんな、じゃないよ。なに被害者ぶってんの?

あんたが痴漢しなきゃこんなことにならなかったんだよね?

自業自得、因果応報。わかったなら10万円持って来いよ。」


「逃げられると思うなよ。あんたの名前も会社もアドレスも家族も全部わかったから。」


2人は冷ややかな、侮蔑するような顔で痴漢を見下ろす。

その威圧に気圧され、痴漢は泣きながら走り出した。

銀行にお金を下ろしに行くようだ。


……これは何……?


「青。」


「翠……。その子は?」


2人の顔が私を見る。

黒い癖毛に猫目、長い下まつげとふっくらした唇……。

こうやって並ぶと2人とも瓜二つだ。

……そうだ、旭さんには双子の弟がいたはずだ。じゃあ彼が双子の弟?

とっつきにくいと聞いたことがあるが、そうは思えない。痴漢を蹴っていなければ。


「豊平さん。豊平 催花さん。私と同じクラスの人だよ。

青が大声出すから、気付いちゃった。」


「悪い悪い。

……豊平さんね。」


青と呼ばれた彼は私を見るとニマッと笑った。

嫌な予感がする……。

しかし私が逃げるよりも早く彼に腕を掴まれた。


「俺翠の双子の弟の青。よろしくね。

気軽に青って呼んで。旭って呼ばれてもどっちかわかんないからさ。

……それで、豊平さん。いや催花ちゃん。」


「ひゃい……」


「今のことって誰にも言わないよね?」


彼の黒い目がギラつく。

その恐ろしさに私は必死で首を縦に振った。


「誰にも言いません!むしろ何も見てないので何も言えません!」


「よろしい。」


青……くんは私の腕を離した。ああ恐ろしい。

これ以上いじめっ子を増やしてなるものか。


「ちょっと青。豊平さん脅さないでよ。」


「脅してないって、ただの確認。」


「全く……。ごめんね。嫌なやつで。」


旭さんがハーッとため息をついた。


彼女はまるで自分が正義の側にいるかのような振る舞いをしているが、痴漢を脅していたことは忘れていない。


「あー、ハハ……。」


「学校行くの久しぶりなのにもう遅刻だなあ。」


時間を見ると8時48分。朝礼は9時からだ。

もう間に合わないだろう。


「インフルエンザ大丈夫だった?」


「何度か死にかけたけど生きてるよ。」


「俺に伝染して治したんだろ。」


「勝手に伝染っただけでしょ?

それでさ、ノートとかプリントとか見せてもらってもいいかな?」


彼女の言葉にハッとなる。

そうか、彼女は私がイジメられていることを知らないのだ。

たった2週間で世界が変わってしまった。


「ごめん……ノート忘れてきちゃって。」


「……?

そうなの……?」


「うん、本当にごめんね。

じゃ、じゃあ私は学校行くから。

2人とも痴漢からお金貰ったらすぐ来なきゃダメだよー。」


私はそそくさと2人から離れた。


何も知らない旭さんをイジメに巻き込むことは出来ない。


私は今日も石を浴びせられに学校に向かう。



ドンと背中を押されよろける。


振り返ると、長流川が私を睨んでいた。

彼女に突き飛ばされたらしい。


私のバランス感覚が悪ければ階段に突っかかって転けていただろう。

小学生の時新体操をやっていてよかった。


長流川に文句を言おうとしたが言ったところで倍になって返ってくる。

今度は本当に殺されるかもしれない。

私は黙って体育館に向かった。


体育の時間は苦痛だ。

長流川と茨島は私にボールをぶつけてくるし、他の女子はその攻撃がぶつからないよう今以上に避ける。


長流川と茨島以外の女子は私に対して悪く言ったりはあまりしないが、それでも何人かはヒソヒソと陰口を叩いているのを知っていた。


「ブサイカちゃーん、ちゃんとボール避けてね?」


茨島が後ろから私にボールをぶつけてきた。

頭に直撃し、めまいがする。


「ちゃんと避けって言ったじゃんか!どんくせー!」


彼女は手を叩いて笑い出した。

文句が言いたくてもめまいがして立つことすらままならない。

私はその場にしゃがんで周りの風景が歪み吐き気がするのを堪えていた。


「……あ……茨島さん、」


「何?なんか言いたいことでもあるわけ?」


松川さんだ。

彼女がまた私を庇おうとしている。

余計なことはしなくていいのに。

彼女まで標的にされてしまう。


「その、や、やめなよ。」


「ハア?何が?」


「だ、だから、ボールぶつけたりとか、そういうの、」


「なんなの、お前。」


いけない、このままじゃ松川さんもボールをぶつけられる。

私はなんとか立ち上がって止めようとした。


その時、パァンという破裂音と共にボールが茨島の足元に飛んできた。

いや、本当にボールか?まるで弾丸だ。


茨島が驚きその細い肩が跳ねる。


「ちょっと!?何今の!」


彼女は投げられたボールを取って、飛んできた方向を見た。


そこにいたのは旭さんだった。

痴漢から金を受け取ったんだろうか。


「なに?文句あんの?」


「人にぶつかるとこだったんだけど!?」


自分のことを棚に上げ、茨島が怒鳴ると旭さんが馬鹿にしたように笑った。


「あんなのも避けられないの?どん臭いね。」


……すごくいい気味だ!

茨島がおし黙ると旭さんはボールを彼女から奪い取る。


「集合かかってるから行きなよ。」


「……クソ女。」


茨島が悔しそうに舞台の方に行く。

全くいい気味だ!私の手柄ではないが、大声で笑いだしたい!


「ありがとう。」


「ねえ、なにがあったの?おかしいよね。」


「え?」


「あんた、明らかにイジメられてるじゃん。」


そのことか。

2週間ぶりに学校に来たらイジメが始まっていた……なんてことになったら確かになんだなんだと気になるだろう。

しかしそれを直接私に聞くとは。中々のメンタルの持ち主だ。


「……そう、なんだよね。」


私が説明しようとしたとき、先生のホイッスルが鳴る。

私と旭さんは後で話すことにし、松川さんと3人で舞台に向かった。



「で?どういうわけ?」


旭さんは階段の踊り場で私を見つめる。

私を壁に押し付け、右手は私を塞ぐようにしている。

そう、壁ドンだ。やだ。ときめいちゃう。


「なんでイジメられてんのよ。

今までそんなの、全然なかったじゃん。」


「えっと……」


彼女の強い視線に口籠る。

なんと言えばいいものか。


「旭?何してんの?」


頭上から声が降って来た。

視線を向けると春田が訝しげな顔で旭さんを見ていた。そして私に気がつくと侮蔑した顔に切り替わる。


「旭気を付けなよ。そいつとんだクソビッチだぞ。」


「くそびっち?」


旭さんが驚いた顔で私を見た。


「そうだよ。なんと驚異の4股だっけ?関谷先輩、阿賀野先輩、日和先輩、笹津先輩とヤリまくってたんだってさ。」


私は彼の言葉に首を振る。


「え……ちょ、っと待って。4股?すご……」


「違うよ!!」


「なにが違うんだよ。

お前の家に先輩たちが行くところ見た奴が何人いると思ってんだ?」


違うのだ。それもこれも全て理由があるのだ。

私が必死で首を降って旭さんを見ると彼女は「わかった」と言った。


「春田がいると話になんない。どっか行ってくんない?」


「……は?

いや俺はお前に忠告を……」


「余計なお世話だから。ほら早く教室戻りなよ。」


彼女が春田を睨むと、彼は渋々といった感じで教室に向かう。

私の横を通った時、彼は恐ろしい形相で私を見ていた。


「……それで、4股ってのは本当?」


「嘘に決まってるよ!」


私が慌てて否定すると、彼女は無表情のままだが確かにホッとしたように頬を緩めた。


「ああ、びっくりした。

でもなんでそんな噂が?先輩が家に行ってたって……」


「……それが……私のお父さんって大学の教授なんだよね……。」


「それがなに?」


「関谷先輩も阿賀野先輩も笹津先輩も、お父さんのいる大学に志望してて……。私のお父さんが大学教授ってのは、日和先輩が知ってたらしくて、それで、4人でうちに来たんだ……。」


今、先輩たちは勝負の夏にいるのだ。少し遅い気もするけど、でも私の父が大学教授と知った瞬間私の家に押しかけるのだから行動力はある。


「じゃあ……4人とも賄賂的な?」


「いや!さすがに賄賂はない!

でも熱意を訴えたり、あと大学での授業内容についてとかも聞いてたかな。

試験のこととかも少し聞いてたけど、父はそのことに関しては詳しくないみたいで。だから、受験のため……というよりはその大学で本当に良いのか、とか入るまでに何するかとか、そういうことのためみたい。」


「ふうん。図々しいね。」


「でも2回だけだったし、それに将来に関わることだからしょうがないかなって……。こんなことになるなら断ってたよ……。」


家に2回来ただけならこうはならなかったかもしれない。

ただ彼らと顔を合わせると、向こうが気を使って声をかけてくるようになったのだ。

私としても、年上相手に無下にできず適当に話を合わせていた……ら、こんなことになっていた。


「でもそれ、説明したら納得いくけど……なんでその……ビッチだなんて言われるようになっちゃったの?誤解は解けなかった?」


「……旭さんってツイッターやってる?」


「ううん。

……まさか?」


「そう、私が4人と同時に付き合ってるって噂がツイッターで流れちゃったみたいで……。学校内でだけだけどね。

見てみたら私が4人と一緒に歩いてるところとか、誰かと2人きりになってる写真がバンバン載ってて……」


どこで撮られたのやら。

いくら私でも4人と付き合えるような度胸はないというのに。


「確たる証拠みたいのは無いんだけど皆信じちゃってさ……。

更に悪いことに4人ともそれなりにモテるらしくて……。」


「女の嫉妬ね……。

でも春田には関係なく無い?」


「確かに。

でも、アレはノリで嫌がらせしてきてるんじゃないかなあ。」


というか、私をいじめてくる人の半数がノリだ。残りは嫉妬。

私が誰かと付き合えば噂は消えるのだろうか。その前に誰とも私と付き合ってくれないのだけど。


「……私が休んでる間に大変なことが起こってたなんて……。」


「うん……。」


「……でもこれ利用できそうだね。」


旭さんが虚ろな目でボソリと呟く。

利用?


「……え?」


「わかった。私に任せて。

私がいじめてきた奴返り討ちにしてあげるから。」


そんなまさか、と言おうとして朝の光景を思い出す。

そういえば、痴漢から金を巻き上げたりしてたな。

……ん?金を……?


「……まさかと思うけど、お金巻き上げようとしてないよね?」


「どうしてわかったの?

しょうがない。あなたにも3割は分けてあげるよ。」


旭さんはやれやれという風に首を振る。

どうしよう。こんな人だと思ってなかった。


「イジメてる奴ら全員撃退してあげるよ。」


「えっ……」


果たして極悪人旭さんにイジメの撃退を頼んでいいものか。

私は岐路に立たされていた。

かたやイジメられ続ける道、かたや犯罪に加担する道。

……どちらも中々。でも法は守らなくちゃ。


「旭さん、私は大丈夫だから……」


「お金いらなくても勝手にやるね。」


なるほど、岐路などなかったということか。


こうして私は……いや旭さんはイジメの撃退を行うこととなった。


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