二発ノ死ニ神
誤字脱字が多いと思います。ご了承下さい。
-正世30年-6月13日6:56
ナーヴェスナからの攻撃で、第2防衛ラインまで後退した自衛軍は何とか持ちこたえ、攻撃が鎮静化し始めたところである。
柴田達、第6戦車小隊は駐屯地に戻ったあと、すぐに防衛戦に投入された。柴田は、「少し休ませてくれ」と思ったが、国家、国民を守る、これが仕事であり、自衛軍人としての義務である。
-6月13日2:42-4時間14分前
小隊は、まだ暗い街灯の光しか無い街中を進む。四方から砲声と銃声が響き、空にはヘリコプターと曳痕弾が飛び交う。
「隊長、嫌な予感します。」
真鍋が、そんなことを言ってくるが、こんな状況で嫌な予感のしない奴などいないと思う。
「嫌な予感ならさっきから俺もしてるよ、てか、この状況で何も感じない人とかいるか?」
「いえ、そう言うのではなく、表現できませんが・・・」
「でも、気をつけた方がいいかもしれません。伍長の勘はよく当たるので、この前の演習の時なんか戦車の小物入れの裏に隠してあったエロ本見つかってシバき回されましたよ。」
倉田が、笑いながらも結構真面目に言ってくる。
「知りたくもない。 まぁでも、気をつけた方がいいのは確かだな。」
交差点を進み、丁度真ん中へ来たとき、無線から怒鳴り声がきこえる。
『何か近ずいて来ます。3時方向!』
サイトをそちらにすけて見ると、ナーヴェスナの戦車4輌が、砲塔の両脇に付いている重機関銃を撃ちながら猛スピードで突っ込んでくる。重機関銃の弾はヒトマルに当たっているものの、全て弾き返しす。
それでも戦車は、構わず突っ込んでくる。
「ぶつかる。」そう思った瞬間、ナーヴェスナの戦車は、モニターから消えた。
「!?」
「左です!!」
ナーヴェスナの戦車は、2メートル以上も跳躍し、ヒトマルを飛び越えていった。
「追え!!2号、4号は、横から回り込め。」
『了解。』
無線から返事が聞こえると共に、ヒトマルは、アスファルトを、削る不快な音を立てながら、全速力。時速70キロメートルで追いかける。
追いかけるが、敵はこちらが追いつけそうで追いつけない距離を保って逃げる。
柴田は、ハッチを開け、砲塔にむき出しで装備されているM2重機関銃を効果は無いと思いつつも、怯ませるくらいにはなると思い、撃ち続ける。
12.7ミリの徹甲弾は、敵戦車に当たって火花を散らす。そして、弾を食らわせ続け1輌が、黒煙を上げながら建物に突っ込む。
機動力を上げるため装甲も兵装も最低限に止めているらしい。
「マズい」
柴田慌てて戦車の中へはいり、ハッチを閉める。
敵が砲塔だけを向けて機関銃を撃ってくる。「カコン」という弾の当たる音が、車内に連続して響く。
「隊長、これ絶対誘導されてますよ!!」
倉田が、敵の行動をやっと理解したようだ。
「知ってる、敢えて乗っているんだ。」
これは敵の誘導だ、C4Iシステム(指揮統制通信コンピュータ情報システム)を通じて得た情報によるとこの後三つ目の交差点を、9時方向に曲がると敵主力戦車が、3輌から5輌待ち伏せている。そこを、回り込ませた2号、4号が側面から撃つ。
一つ目の交差点、二つ目の交差点、・・・ 次・・・ 5,4,3,・・・柴田は、心の中で数える。
2,1,0
「止まれ!!」
「はい。」
真鍋がそう応えると同時に、戦車は、「ガリガリ・・・」と、かき氷を作るときの音を何百倍にも増幅したような音をたてながら、アスファルトを削り、火花を散らせながら止まる。
そこは、交差点の前のビルから、砲身が出るかでないか、ギリギリの所である。
その直後、目の前を、4つの光の塊が、通り過ぎる。このまま進み続けていたら、砲弾が直撃していただろう。
その直後少し離れた所からヘリコプターのローター音と、砲声、爆発音が聞こえてきた。
『敵主力多脚式戦車3輌、対戦車砲1門、軽多脚式戦車5輌を撃破。』
河口が無線で知らせて来る、
「被害は?」
『第6小隊被害は、ゼロです。』
「よくやった、一度合流する。」
柴田は合流地点を知らせて向かう。その間に敵の主力多脚戦車に遭遇したが、相手がこちらに気付なかったため、容易に撃破できた。敵だとしても、言葉の通じる知的生物を殺すというのは、やはりキツいものがある。
数十分後、別れていた2号、4号と合流し、先へ進む。
『こちら第32歩兵連隊、只今520地点にてナーヴェスナからの攻撃を受け身動きが取れません。近くに居る部隊は、至急援護に廻られたし』
無線から、若い兵士の声が聞こえた。520地点ここから直線距離で約1.5キロメートル先、然程遠くない。援護に向かう。
「了解、こちら第8機甲師団第6戦車小隊、援護に向かう。」
少し走ると、約120先に89式装甲戦闘車と軽装甲機動車、高機動車が合わせ6輌いた。89式2輌が楯になる形で後ろに兵士たちがいる。
89式は35ミリ機関砲を撃っているが、飛んでくる弾は、敵の方が圧倒的に多い。このままではそう長く持たない。
たった120メートルが異常に長く感じられる。
「急げ!!」
「わかってます。」
あと、100メートル、50、30、
あと、少しだった。だか、戦闘装甲車は被弾した。3トンは有るはずの砲塔が、爆発で7メートル先まで吹き飛ぶ。近くにはヘルメットを被ったままの首が転がっていた。若い隊員が「殺してやるッ!!」と、叫びながら小銃を乱射している。
「ああ、クソっ」
柴田は、悪態をつきながら指示を出す。
「ヒトマル各車、歩兵を援護しろ!!」
『了解』
ヒトマル各車輌から返事が返っくる。その時、戦車内に警報音が鳴り響き、車内のモニターには、『ALART』の文字が点滅している。
「下がれ!!」
柴田は、車内に響く大声で叫ぶ、それと同時に戦車は全速力でバックしながらフレアとチャフを空中へバラまく。赤外線誘導の対戦車ミサイルは、フレアへ引かれて明後日の方向に飛んでいく。
柴田は、ハッチから身を乗り出し、双眼鏡型のレーザー距離測定器を使って周りを見渡す。80メートル程離れたビルの屋上で何かが動いた。ズームアップして見ると、ナーヴェスナの兵士2人が細長い筒を向けてくる。
「倉田!!10時方,AMT、ビルの屋上だッ!!」
「チッあんな所に、」
倉田がそう言いながら標準を合わせる。そして、「ガウーン」という主砲が聞こえると同時に、ビルの屋上から二本の橙色のトレーサーと白煙を引きながら対戦車ミサイルが飛んでくる。
二発の死に神が第32歩兵連隊の高機動車と第6戦車小隊の3号車を捉えた。
-ビルの屋上は吹き飛んだ。-
-汚い言葉が飛び交う。-
-ヒトマルの砲塔のハッチからは、火だるまの隊員が滑り落ち、やがて動かなくなる-
-高機動車は炎上し、ビルの窓は衝撃波で割れている。-
-歩道には、身体は仰向けなのに、頭だけ俯けの死体が転がる。-
-まさに、地獄である。-
それと同時に、今更ながら実感する。
「ああ戦争なんだ。」と。
残酷なシーンが入りました。ですが、これのほうがオブラートに包むより、戦争の残酷さは伝わると思います。作者なりに、考えた結果です。