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最期の晩餐

私が人知れずこのを産み落として、はや一年になる。


いつも病弱で、幾度となく高熱をだしてその度に病院を訪れたものだ。


父親は前の会社の同僚で、私を捨て私の友人と一緒になった。彼は私に子供が出来ていたのを全く知らなかった。



「さよならだ・・・。」


その言葉一つで私から去り、私の友人と結婚したのであった。


何も言えなかった私は・・


・・・会社を辞めて、人知れず彼の子を生んだのであった。1週間前に彼と、私の友人だった女に一年ぶりに出会い彼らを夕食に誘った。


「かわいい子だね。」

彼は自分の子だとは夢にも知らず頭をなでながら言うのであった


今、私は忙しく料理をテーブルに並べている。もうすぐ、彼らがやってくる時間だ・・・。


「今晩は!」


”来た・・。” 私は心の中で叫ぶとアパートのドアを開けた。


「さぁ、中にはいって。」


「お邪魔します。」 


私は二人を居間に案内した。テーブルの上には豪勢な肉料理が並べられている。


「うわ〜・・美味しそう。」 女が言って男を見た。


「ご主人と、この前のお子さんは?」男は笑顔で私に聞いた。


「あっ、邪魔だから実家に行ってもらっているの・・・今日は昔の仲間で盛り上がりましょう。」


「そうなんだ。あの子に会いたかったのにな。」男は残念な顔をした。


”夫なんかいないわ・・・!” 私は心の中で毒づき、男に笑みを返した。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 「美味しいわネ、このモツの煮込み。」 女は男に同意を求めた。


 「ああ、今まで食べた事の無いモツだ・・・。」


「新鮮な臓物モツを手に入れたのよ。このレバ刺しもどうぞ・・。」


 私は必死で食べている二人を見て、ニヤリと笑った・・・。



三人は分厚いステーキを頬張りながら昔話に盛り上がっていた。


「今度はあなたの事を教えてよ、なぜ急に会社を辞めたの?」 ワイングラスを傾けながら女が言った。


「男に騙されたのよ・・。」


ステーキを切る男の手が、一瞬止まったのを私は見逃さなかった。


「婚約までして子供も身ごもったのに・・・捨てられたのよ。」


「・・そんな事があったの?!悪い男が居たものね。」 女は心から同情している見たいだった。


”この天然バカ女が・・” 私は心の中で毒づいた。 男はと見ると、眼を大きく見開いて私を凝視している。



「・・・私はもう疲れ切っていたの、あの子は生まれた時から病弱で、夜中に救急車を呼んだ事が幾度もあったわ・・・。」


私は二人を交互に見た、男は明らかに動揺している。


「この子を殺して私も死のう・・・私はそこまで追い詰められていたの、そんな時に貴方達に会ったのよ。幸せそうな二人を見て、私は考えを変えた・・・この子を父親にかえすべきだと・・・


・・貴男、自分の子は軟らかくて美味しかったでしょう・・・!?。」


短いようで、永〜い沈黙がその場を支配した。


最初に沈黙を破ったのは男であった。


「・・く・くっ・狂っている・・うげぇ・・げぇ〜・・おえぇ。」


男は吐きながら、全てを理解した。


「あなた・・?どうしたの、気分でも悪いの・・・?!」


女は、吐き続けている男の背中を、心配顔でさすり続けている。


「アハハハハ・・・貴方に捨てられた復讐よ!」私は大声を出して笑ってやった。


男はなおも吐きながら、女は怯えた顔で笑っている私を見た。


「逃げるんだ・・・。」男は口を抑えながら、女をつれてアパートを逃げ出した・・・・・。


私は悪魔の笑みを浮かべ、二人の慌てて出て行く姿を見ていた。


悪鬼の形相の私の瞳から、何故か涙が溢れて止まらなかった・・・。




「マンマァ・・ママァ・・・・・。」 

大きな物音に驚いたのか、よちよち歩きで奥の部屋から”我が子 ”が起きて来た

・・その顔はまるで天使の笑顔のようであった・・・・・。



     

                         おわり












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