9歳⑪
ミルに食事をさせ体力の減りを痛感させた後3日。
なんとか以前のとは言えない者のかなり元気になったミルを止める理由なんかどこにもない。
むしろ私が引きとめたって彼女は私に隠れてこっそり行ってしまうだけだ。
それは一番の悪手で何としてもそれだけは避けなくてはいけない。
だから私はミルに一つだけ条件を追加した。
「私も一緒に行く」
かなり渋られたものの途中で倒れたらどうするんだ。
火事の時だって私が一緒だから助かったんだからね!
なんて恩着せがましく食い下がると渋々了承してくれた。
「ウォズさまは凄い優しい方でね、強くて家族思いで……」
ウォズさまの事を話すミルは楽しそうだ。
どうやら口ぶりからは何度もお会いした事があるみたい。
「ミリアもきっと好きになるよ」
嬉々として話すミルに頷く。
ミルの話を聞く限りとても好感の持てる方だと思う。
「じゃあ行こう」
ミルが私の手を握って前を歩き出す。
もうかなり久しぶりのこの感じがなんだかムズムズするけど決して嫌な気分なんかじゃない。
「こっちだよ」
ミルが案内してくるのはいつもレナスを会っていた所とは反対側の森の奥へと続く道。
こちらはまだあんまり火の手が届いてなくて良かった。
…なんて私の気持ちは10分と持たなかった。
あちこちに焼け落ちた跡が残っていたからだ。
私は随分な思い違いをしていた事にこの時初めて気付いた。
火元は一つなのだと勝手に思い込んでいたけど村の周囲が無事でその奥が焼けている事が説明がつかない。
笑顔だったミルの顔が少しずつ険しくなっていくのが解る。
暫く進むとかなり荒れた場所にたどり着いた。
こげて茶色になった沢山の茎がそこら中に落ちている。
「……嘘……ねぇ!インヴァスト!ハーロー!ファイネスト!ひまわり!」
炭の中を何かの名前を叫びながらミルが必死に探す。
けれど探している物は見つからなかった様で肩で息をしながら瞳いっぱいに涙を浮かべて私を振り返った。
「ここ、前は花畑だったの」
変わってしまった風景はミルを更に追い詰めてしまった。
もしかしてこのまま進まない方が良いのかもしれないと頭に過ぎる。
けれどミルはそんな私の戸惑いを知ってか知らずか腕を掴んだままずんずんと進む。
更に小一時間程歩き続け着いたのは泉のほとりだった。
火事の前なら間違いなく緑に囲まれた良い景色だったと思う。
焼け焦げた木が沢山浮かび水面には黒い葉達が浮かぶ。
「マルナ!ねぇマルナ!いるよね?」
必死にマルナという名前を泉に向かって叫ぶミル。
返事は勿論ない。
私は終にミルの気が完全に振れてしまったのだと思った。
けれど私達の後ろからその声に答える低い声が響いてきたのだ。




