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9歳⑩

あれから5日。

水しか口にしていないミルはやつれて火事以前とはまるで別人のようだった。

元々太っていたわけでもない。

どちらかと言えば細身の部類に入ると思う。

そもそもこの環境で太るって至難の業だもの。


ゾラードは2日置きにやってきている。

会議に向けての段取りを進めているようで途中途中で入ってくる情報は私に流れてくるのは一部だけだというのにあまり芳しいものではない。

風向きの影響か森を囲んだ他の2つの村はもう再建不可能な状況らしい。

生存者も殆ど居らず村は2つ共無くなるだろうとの事だ。

出来れば全部嘘であってほしいと願っているけど私にまで流れてくる情報がそんなだから実際にはもっと酷い有様なのかもしれない。


この村は折角無事だったのだから皆で力を合わせてこれからの事を考えねばならない。

もちろんうちの家族だってそう。

まるで皆が寝静まった深夜のようにどんよりと流れるこの空気を何とかしなくちゃ。

そう思っても皆入ってくる情報が嫌なものばかりでそんな気分になんてなれない。

特にミルは一番酷い状態だと思う。


色々話しかけては居るものの殆ど変化はない。

このまま衰弱死すらありえるのでは無いかと私の中の焦りは大きくなる一方だ。



「そう言えばレナスの育ての親って今どうしてるんだろうね」


ポツリと呟いた私の言葉にミルの瞳が揺れた。

糸口はココかもしれない。

私は更にこの話題を広げてみようと続ける。


「この森の主さんなんでしょ?」


私は会った事も無いし名前すら知らないけれど人間では無いとだけ聞いた。

やっぱり森の主って位だからドラゴンとか白い虎とかそういう感じなのかな。

あまりファンタジーな物をこの世界にきて見てないけどモンスターが居るらしいしきっとそういった生き物も存在すると思うんだ。


「そ……う、だウォズさまに会いに行かなきゃ」


まるで幽体離脱していた魂が戻ってきたかのようにミルがはっきりと喋った。

良かったと安心する間も無くミルがガバっと勢い良く立ち上がる。

そのまま靴も履かず寝巻きのままで森へ行こうとするミルの腕を掴む。

どう考えても今のフラフラのミルではそのウォズ様とやらの所までたどり着けるわけが無い。


私じゃなくても間違いなく今のミルを行かせる事はないだろう。


「とりあえずご飯を食べて、それから着替えて!」


私の着替えてって言葉に反応して自分の服装に気付いたみたいに視線を上下させた。

着替えよりも私は『食事』をしてほしいのだけれど。


「そうだね、こんな格好でウォズさまに会いにいけないね」


レナスに怒られちゃうや。

なんてまるで前に戻ったかのように笑うミルが痛々しい。


「ご飯食べよう」


ミルの返事は無視して腕を引っ張る。

無理やりにでも食べさせるんだから! 

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