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9歳⑨

へたり込んだまま暗い後悔の波に飲まれた私を引き上げたのはゾラードだった。


「ミリア」


声にハッとして視線を一瞬だけそちらへ向ける。

心配そうな顔で私を見つめる彼は、村長と話を終えた直ぐ、その足でここへ戻ってきてくれたらしい。

ラグリム君との手紙の件で顔色を変えた私に不安を覚えたんだと思う。

視線を私に合わせて座る彼に私は俯いた。


ゾラードは散らばった手紙を拾い集めて私の手へ握らせる。

中身を読まないのは彼の優しさなのか真面目さなのか、それとも見たくないだけ? 


「ミリアは悪くない」


ゾラードの言葉に私は顔を上げる。

真剣な表情で力強く頷くゾラードに私は何も言えなくなった。


私は悪くない。

確かにそう誰かに言って欲しかった。


……でも。

ゾラードはレナスの事を知らない。

きっと私が悔いているのはラグリム君の事だと思ってるだろう。

勿論ラグリム君だって無事で居て欲しいと思ってる。


「まだ皆、状況が飲み込めてないんだ、俺も他の所へ見に行った訳じゃない」


ゾラードの言葉に何度も頷く。

きっと大丈夫、私だってそう信じたい。


「俺も今は役割があるから長く居られないけど絶対また来るから」


私の両手を握って約束してくれたゾラード。

肯定の言葉以外を返せるわけない。


立ち上がってゾラードを見送る。

村の入り口まで行くと言う私を制してゾラードは帰って行った。


「ミル」


私とゾラードが喋っている間もミルはピクリとも動かなかった。

何度呼びかけても返事すら返ってこない。

私は彼女に何をしてあげられるだろう?


レナスは『生きてるかもしれない』のにそんなんじゃダメだって怒ってみる? 

大丈夫だからって励ます? 

ぎゅっと抱きしめてみる? 


結論から言うと全部無駄だった。

お父さんがミルを抱き上げてベッドへ連れて行くまで彼女は全くその場を動かなかったし、私へ何も反応を返してくれなかった。

いつも家族で一番賑やかなミルが静かだとそれだけで家の空気がどんよりと重くなる。


お父さんもお母さんもミルがどうしてこんなにショックを受けているのか本当の所は知らない。

知っているのは私だけ。


だからこそ私がなんとかしなきゃいけない。

いけないのに、その『なんとか』の手立てが何一つ思いつかなくて私は思わず唇を噛み締めた。


悔しい! 


何も出来ない自分が悔しい。

前世の20年を合わせてこの世界の人よりも色んな知識があっても良いのに私には何も……


悔しくて私は拳で床を何度も叩く。

そんな事をしても何一つ変わらない事など解っていたのに。

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