5歳②
私とお母さんは今城下町から田舎へと向かう馬車に揺られている。
2つの馬車を乗り継いでお母さんの生まれ育った町へと向かうんだって。
町と言っても城下町と比べたら随分田舎だからミリアびっくりするかもね。
なんて力なく笑う母に私は無言でもたれかかった。
大丈夫、私ね本当はただの5歳じゃないんだよ。
だからねお母さん私に出来ることは何でもやるよ。
元気出してね。
一つ目の馬車に半日は乗っていた。
着いた町は城下町に比べて賑わいは少し足りないけれどそこそこ大きな町じゃないかなぁ。
なんて思っていたら2つ目の馬車は翌朝しか出ないとの事でこの町で一晩過ごす事に…
「ミリアは宿なんて初めてでしょう?楽しみね」
そう言って笑う母に私は力いっぱい頷く。
空元気でも笑っているほうがいい。
私が笑っているほうがお母さんだって元気になれる筈だと思うから。
「ご飯美味しいね!」
宿で出された食事を大げさに褒めたり、お母さんに抱きついて甘えてみたり。
お母さんみたいな素敵な奥さん捕まえてあの鬼畜男の所業がおかしいんだよ。
そんなお母さんにべったりな私にフフフっと笑っている母。
私お母さんさえ居れば幸せだよ。
だからね、あんなクソ野郎の事なんてわすれちゃお!
そんな気持ちを込めてその夜もお母さんに引っ付いて眠った。
翌日に乗った馬車はこの町に来たときよりも一回り小さい上に荷物がぎっしり詰まっていた。
お母さんと私は無理を言ってその荷物の隙間に入れてもらった感じだ。
行商の人かな…
荷台で揺られながら母と2人流れる景色をぼんやりと眺める。
建物が無くなり道も街道と呼べるような整理された所が無くなった。
獣道よりは若干マシ程度の道を抜け途中一泊して、2日かけてたどり着いた町。
そこは町という村じゃないかな、って感想を抱く程には田舎だった。
馬車の人にお母さんと2人頭を下げて手を引かれ連れて来られた小さな家。
この家こそがお母さんの実家だった。
初めて会ったおじいちゃんとおばあちゃんは母に似て優しそうな人達だった。
「まぁピネ…急にどうしたの?」
おばあちゃんが母に声をかける。
ようやく少しだけ安心したのかお母さんの表情が少し緩んだ気がする。
「母さん、ココに暫く置いて欲しいの」
優しいおばあちゃんは何か察して母に詳しいことは何も尋ねなかった。
そう広い家ではなかったけれど元々お母さんが使っていた部屋が空いていて私とお母さんはココで生活することになった。
「ミリア、おじいちゃんとおばあちゃんに会うのは初めてね」
ここは子供らしく小さく頷いて、よろしくお願いしますって頭を下げた。
「そうそう、ミリアちゃんはいくつになったのかしら?」
手をパーにして5つと元気よく答えます。
このやり取りは2つ位から色んな人と繰り返してきました。
所謂ちびっこあるあるです。
「そうじゃあお隣のヤルベ君と同じくらいかしら…あとで挨拶に行きましょうね」
おお!これはついに友達フラグかも!
城下町では一人であんまり外に行かせてもらえなかったし、お友達と言えるほどの子が出来なかったんだよねぇ。
出来れば女の子とお友達になりたいけど…このさい贅沢は言ってられない。
友達はやっぱり欲しいもん。
ヤルベくんか~どんな子かなぁ。