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9歳⑥

「やっぱり全部燃えちゃったのね」


気落ちした声を出すミルに私はそっと手を握る。

火事が起きて1週間。

あっという間だったような気さえする。


私達は火事から初めて約束の場所へ来ていた。

ほぼ焼け落ちてしまったそこにはもうあの頃の面影は何一つ残っていない。

真黒のすすにまみれた黒い塊が沢山あるだけ。


炭の塊を避けながら私達が探しているのは勿論……


「あった!」


見つけたのはミルだった。

両手で大事そうに救い上げるのは黒く変色して形も歪になってしまった、「約束の腕輪」だ。

金属で出来ていたおかげか燃え尽きてはいなかった。

良かったっと私は内心ホッとする、ミルには何か心の拠り所が必要だと思う。


想い出の場所が無くなった今、それはこの腕輪なんじゃないかなって……


形は変わっても想い出は変わらない。


私達は腕輪を回収した後、急いで村へ戻る。

あの出来事以来、お父さんもお母さんも心配性になって長く家を空けると探し回ってしまうのだ。

もう少しで娘が2人共命を落とす所だったのだからそれも仕方ない事だと思う。


見つかって良かったね、なんて二人で言いながら村へ戻ると見慣れない馬が木に繋がれている。


「誰が来たんだろう?」


そんな事言いながら家へ戻ると中にはゾラードが居た。

難しい顔をした両親と何か喋って居たけれど私が戻ってきたのに気がついて立ち上がる。


「ミリア!良かった、無事で!ヤルベが絶対大丈夫って言ってたけど俺ずっと不安で…」


私の顔を見るなり飛びかかるように抱きしめられた。

ちょ、あれ、私まだ告白とかもされてないのに気が早くない!? 

ヤルベお兄ちゃんの感は本当に凄い。

あの実が無ければ私達は間違いなく死んでたもん。


「今日はこの村の無事の確認とこれからの事への会議について伝えに来たんだ」


恥かしいのと力強くて苦しいのとでゾラードの肩を叩く。

ハッとした顔になったゾラードが私から一歩離れた。


それにしてもあれだけの山火事だったのだから無事の確認っていうのは解るけど、これからの事の会議ってなんのことだろう?  

復興についての支援とかかな。


「俺、ほんとは一秒だって早くここに来たかったんだ。でも3日は動くなって……」


3日という日付に首を傾げる。

だってもう1週間だよ、あとの4日はどうしてたのさって思うでしょ?


「まず先に、北と西を確認に行ったんだ」


暗い声のゾラードに嫌な予感が漂う。

この村のように殆ど無傷というわけには行かなかったんだろう。


この森を囲うように3つの村がある内の一つここが東の村だ。

火事の被害は思ってた以上に大きいみたい。

そう考えたらこの村が焼け落ちなかったのはもはや奇跡のようにすら感じるね。


私は両腕を組んで独り言ちる。


本当の恐怖はここから始まるのだと知りもしないで……

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