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9歳③

レナスが出発する日私とミルは腕輪のかかった木の所まで来た。

無言で一心不乱に祈り続けるミルの口から毀れる祈りの言葉。


「どうかレナスの道を照らしてください」


自分じゃなくてただレナスの事だけを思うミルに掛ける言葉が見つからない。

きっと言葉は必要ない筈だ。

私はそう思い込む事にして一緒に祈る。

同じように目を瞑り両手を顔の前で組んでこの世界の神に祈りを捧げた。


「どうかミルとレナスが幸せになれますように」


この世界の神様が居るなら2人と幸せにしてあげて欲しいと思う。


どうか……どうか……


日が落ちかけた所で私達は顔を上げた。


「もう向こうに着いた頃よね」


ミルの言葉に頷く。

森から正面のルートを使えば城下町まで村が一つあるだけ。

馬車なら1日もかからないと思う。

落ちかけた日の光はまるで私達にさよならを告げるように一面を真っ赤に染める。


すでに旅立ってしまったレナスへ私達の出来る事と言えば祈ることしかない。

完全に日が落ちてしまう前に私はミルの腕を掴んで家路へと急いだ。


このまま放って置いたらミルは何時までもここに居そうな気がしたから。




レナスが旅立って1月。

雨の日も風の日も、毎日欠かさずこの森の誓いの場へやって来て祈るミルに私も付き添う。

私にはそれ以外彼女に対してしてあげれる事が無かったから……


そしてその行為が間違ってなかったと確信したのはレナスが旅立って三ヶ月目の事だった。

この日もいつものようにミルと連れ立って約束の場所へと向かう。


毎日のように通ったその道は獣道だった所が踏み固められてもはやただの道と言っても過言じゃないと思う。

2人で毎日踏み固めたのだからある意味仕方の無い事だろう。

少しだけ歩きやすくなったこの道を通うのも、もはや慣れたモノで目を瞑ってだって歩ける気がするね。


この踏み固めた道も今から思えば良かった所の一つだ。

これが無ければあの事態を乗り越える事は出来なかったと断言出来る。


まず私達がこの場所に着いて最初にする事は決まっている。


約束の木の周りの雑草を抜いてしまうこと。

これだけ言うと大変そうだけど毎日抜いているので今では3分とかからない作業だ。

その次に家から持ってきた水を約束の木の根元に掛ける。


そして目を瞑り目の前で手を組み祈りの言葉を捧げる。


この時の私はまだ「神」という存在をぼんやりと信じていた。

祈れば「神」さまが何でも叶えてくれるわけじゃなくても、この気持ちは届くはずだと。


だってミルの気持ちはこんなに強い。

だから神様だってこのささやかな願い位は叶えてくれる筈だって。


そう、御伽噺を信じる子供のようにただ純粋に信じていた。

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