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9歳②

今日はレナスと会える最後の日。

約束通り私も一緒について行く事にした。

本当なら2人でお別れをさせてあげた方が良いのかもしれないと少し悩んだけれど……

けれどミルが笑って見送るのに私が必要だと言ってくれたんだから、こういう時位は役に立ちたいよね。

ミルは私の大切な姉だもの。


「絶対泣かへんって決めたから」


目を真っ赤に晴らしたミルがそういうので私は頷いてミルの右手を両手で包み込むように握った。

大丈夫。

そう繰り返して伝えてる本人である私がいったい何が大丈夫なのかわからない。

大丈夫なわけが無い…だってもう今日でお別れなんだから。


でも、大丈夫だと思い込まなければ動けない時もある。

それがきっと今。


ここで泣いていても何も解決しない事は私だって解っている。

いつも私を引っ張ってくれるミルの手を今日は私が引っ張って森の奥へと進む。


いつもより歩くペースが遅いミル。

ああは言っても心の準備なんて簡単に出来るもんじゃない。


行くのが遅くなればなるほどレナスと居れる時間が短くなってしまう。

そんなのダメだ。

少しでも長く一緒に入れた方が良いに決まってる。


いつもの場所にくると先にもうレナスは来ていた。

そう言えばいっつもレナスの方が早かったなと思い出す。


「レナス!」


私は大きく手を振ってミルの手をぎゅっと握ったまま駆け出した。

レナスが見えた瞬間に固まってしまったミルも少し遅れて私と一緒に走る。


「やぁミリア久しぶりだね」


まるでなんでもないかの様な挨拶。

これで最後とはこれっぽっちも感じさせない。


「ミルからもう聞いてるかい?」


私が頷くとレナスはそれ以上何も語らなかった。


「レ、ナ…ス……」


震える声のミルの手をぎゅっと掴む。

途端にビクンっとはねた後少しだけ落ち着きを取り戻したのか震えが少し収まった。


「レナスなら出来るってアタシ信じてる」


淀みなく言い切った彼女の本音。


「ありがとう、地盤が出来たら必ず迎えに来るから……待っていてくれるかい?」


何度も頷くミル。

レナスは私とつないでない方の彼女の手を取った。

そして片膝をつける。

その姿はまるでお姫様と騎士のようですらある。


「必ずだ、この森と君に誓うよ」


そう言うとレナスは腕輪を外して手を伸ばしいつもの待ち合わせの場所、目印にしている木の枝へかけた。

私の身長では飛び上がっても届かない高さ。


「ありがとう、待ってるよ」


ミルがそう返事をした所で私は手を放した。

見計らったようにレナスがミルを抱きしめる。


ほら、私空気読める子ですから!

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