8歳⑪
あれから私は思いついた!
私が持ってきた機織の練習機。
これでゾラードにマフラーを編んであげることにしたのだ。
きっかけはこの前断った時に村の唯一の商店に行って見た時に降って来た。
毛糸が売っていたのだ。
勿論そこそこ高いし、ゾラードだって何時来るか解らないけど…
それが逆に言い訳に使えた。
何時来るか解らないから早めに編みたいの。
こう言えばミルも納得してくれる。
今は5回に1回位しかついて行っていない。
ゾラードはあれからまだ一度も来てないけどそれは仕方ない事だと思う。
ブレイクの馬を借りたっていってたし近いうちに自分で買う為のお金も貯めてるって言ってた。
私が町に居たときから色々バイトのような事をしてたのは知ってるし体力があって愛想も悪くないゾラードは町ではそこそこ重宝されていた。
ブレイクは下には好かれるタイプだけど上には好き嫌いの分かれるタイプだ。
半々って感じかな~
私も前世だったら距離を置きたいタイプだと思うし……
何もかもが順調にいって「平和」ってこういう事なんだろうなぁと思う。
ミルとレナスも上手くいってるようで話を聞くと頬を少し赤くして話してくれるからこのまま応援したい。
そんないつもの日常。
午前中勉強がてら本を読みながらミルと色んな話をする。
机の上には木で出来たマグカップが二つ。
中に入っているのは今日はただの水だけど日によってミルクだったり紅茶だったりする。
まぁうちはヤギも羊も牛も飼ってないのでミルクは贅沢品だ。
月に1回もないミルの『仕事』で大金が入った時やお父さんやお母さんが一生懸命作ってる畑の作物が沢山取れた時なんかに交換してもらったりしてる。
ミルの仕事は結婚式とか村の行事とか誰かの誕生日とかそういう特別な時にしかない。
だからセット料金って前世の基準で考えてもかなり高いと思う。
じゃないと頻繁に仕事があるわけじゃないミルが暮らしていけないしね。
ミルに言わせれば王都や大きい町以外では専業じゃなくて副業としてやってる人が殆どなんだって。
なるほどねー。
この村じゃ言ってもそんなに頻繁に結婚式とかないもんね。
他愛無い会話をしながらミルにふと聞かれた。
「ミリアはゾラードがもし叶えたい夢があるって言ったら応援する?」
勿論と頷いてから考える。
ゾラードの夢は知ってる、強くなって村を守る自警団に入りたいのだと言っていた。
それはゾラードなら叶えられると思うし応援したいと思う。
でもそれってもしかして聞きたいのはレナスの事…?
レナスの夢ってなんだっけ…?
「やっぱりそうよねー……よし!アタシも決めたわ」
ありがとねと笑うミルに何を聞いてもそれ以上の事を教えてはくれなかった。
レナスの夢…聞いた事あったかな?
全く思い出せないけど……
この時の私の安易な返事を一生後悔することになるとはこの時の私は知る由もなかった。




