5歳
どうも、おそようございます。
昨日一睡も出来なかったミリアです。
5歳になりました。
本当なら明後日から通うことになる学校の準備をしている筈でした。
今は別の意味で母と荷物を纏めています。
ああ、思い起こせば今でも涙が止まらない。
それは昨日の出来事でした。
夜遅くに同僚と一緒に帰ってきた父は…いやもうクソ親父でいいか、そのクソ親父は母と離縁すると一方的に言い捨てたのです。
今までずっと誰もがうらやむおしどり夫婦でした。
ところがクソ親父はその同僚の騎士、ほんとに女かどうか疑う位髪の短いその騎士と結婚すると言い出しました。
私も母も寝耳に水でしたがその騎士とは既に深い関係にあり彼女の腹には子まで宿しているとか。
信じられない。
固まる私にもクソ親父はその女騎士との生活に私のようなコブは邪魔だから出て行けと…
「自慢の娘だった言ったのは嘘だったの?」
泣いて足にしがみ付き縋った私の指を一本一本外しながらいつもの優しい笑顔で私に告げる。
「魔法も碌に使えないような子は必要ないんだよ」
ショックだった。
嘘だと言って欲しかった。
私は愛されているのだと疑っていなかった。
「1日だけ時間をやる。明日までに荷物を纏めて直ぐにでていけ!」
母は私を抱きしめてクソ親父から離れるとすぐさま別の部屋へ押し込んだ。
そのまま外から鍵をかけられる。
悲痛な母の叫び声とつめたいクソ親父の声が交互に響く。
聞いてるのが辛くて私は両手で耳を押さえながら震えていた。
こんなの嘘だよね?
きっと嫌な夢でも見てるに違いないのに一向に目が覚めない。
母が真っ青な顔でこの部屋に戻ってきた。
私たち捨てられるんだ。
…優しい人だと思っていた私の父はもう居ない。
仕事で遅いと思っていたのも本当はあの女と会っていたんだ。
そう思っていたら今まで慕っていた分悔しくて涙が止まらなかった。
イケメンなんてクソ食らえだ。
もうあの男を父だなんて呼ばない。
母が纏めた荷物はそれほど多くは無かった。
私の荷物もあんまり無い。
私が背負えるちいさいリュックに入る分だけの衣服と母が読んでくれた絵本。
それ以外は全部捨てていく事にした。
「少しだけ休みましょう」
目を真っ赤に晴らした母に抱きかかえられて私もベッドへ潜り込む。
こんな風に寝るのはいつ以来だろうか。
「大丈夫、ミリアはお母さんが絶対守るからね」
震える声の母に私はそっと頬を寄せる。
私もお母さんを絶対に守るよ!
翌朝殆ど寝てない私たちをあのバカ共が叩き起こしにきた。
「約束の時間だ」
氷のように冷たい男の声に私たちは昨日纏めた荷物を持って生まれ育った家を後にする。
「まちな!」
出て行く私たちにあの女が餞別だと投げつけた皮袋には金貨が詰まっていた。
それを拾わずに立ち去った母に内緒で私はその袋を拾った。
これから母と二人で生活せねばならないのだからお金は多いほうがいい。
母のプライドを考えればアレを拾えないのは当たり前だ。
私が母でもきっと拾わなかったきがする。
けれど…あのクソ共いつか見返してやるからな!
キッと憎悪を込めて睨みつけてから私も母の後を追った。