8歳⑦
その日も午前中まではいつもと変わりない日だった。
この村に来てもう3ヶ月。
時が過ぎるのって早いよね。
そんな事をミルと話しながらのんびりとお茶を飲んでいた時だった。
「ミリアーお客さんだぞ~」
隣に住むグレッグおじさんが私を呼びに来た。
お客さん?私に?
思わず首を傾げながらも外へ出るとそこにはゾラードが立っていた。
「久しぶり」
そう言って笑うゾラードに私は目を丸くする。
だってだって町からここまで馬車で半日とまでは言わなくても5~6時間はかかる距離だ。
運賃だって安くない。
『また』と約束はしたけれど気軽来れない事はよく解っていた。
「え…ゾラード…?」
信じられないと固まる私の後ろでミルがキャーっと高い声をあげた。
「ミリアっちのオトモダチ?良く来てくれたじゃん~ほら上がって上がって」
そういって強引にゾラードを家の中に招きいれた。
私とゾラードの背中をグイグイ押しながら4人掛けのテーブルへ強引に座らせる。
そして私にそっと耳打ちをしてそのまま外へ飛び出していった。
「アタシもオウジサマん所行ってくるね~」
も、ってなにさ『も』って!
そう思ったけど言い返す前にさっさと行っちゃうんだもん。
酷いよねぇ?
「馬車で来たの?」
私がそう問いかければゾラードは首を横に振って答える。
え…?
まさか歩いて!?
馬車でもかなりかかったのに歩いてなんて来たら1日じゃ来れないと思う。
「ブレイクから馬を借りたんだ、馬車は整備された大きい道じゃないと通れないからちょっと遠回りするしさ」
私はポカンと口を開けて話を聞き流しそうになった。
ブレイクの…馬!?
自警団に入ってまだ2年目なのに馬を買えるだけ稼いでるのか…すごいなぁ。
「俺はまだ自分の馬を買えるだけ溜まってないけど、ブレイクは祭りで何度も優勝してるしそこそこ持ってるよ」
ああ、そういやあの祭り賞金でたなぁ。
去年は私と組んでもゾラードはペア格闘部門で優勝していた。
私はブレイクの時と同じ位役立たずだったけど…
まぁブレイクが居なければ10歳までずっとゾラードが連勝出来るんじゃないかな。
多分だけどね。
「みんな元気にしてる?」
町であった事、学校のみんなの話、今度の祭りの事…
話題は尽きなかったけどいつまでもここにいてもらう訳には行かなくてあっという間にゾラードが帰る時間になってしまった。
「俺の馬じゃないから頻繁には来れないけど、絶対またくるから!」
ゾラードはそう言って帰っていった。
私はその背中が見えなくなるまでずっと村の入り口で手を振り続ける。
「また」
その約束を信じて心待ちにしている自分が居るのに気付いて…私こんなに惚れっぽかったかななんて自嘲した。




