6歳⑩
家に帰ってからお爺ちゃんやお婆ちゃんを質問攻めにしてこの世界の勇者についてようやく理解できた。
どうやら勇者は『勇気ある者』の事で冒険者全体の呼び名らしい。
他にも命がけで村を救った自警団の人とかもそうなるみたい。
あの石碑に大量に刻まれていた名前はすべて過去の勇者の名前で人の為に尽くした人達。
そして勇者はいつ何時何処で死ぬか解らないからそれぞれの町に勇者の墓があって死んだ一番近くの町の石碑に名前を刻むんだって。
だからあの下に何かあるわけじゃなくて人々がその勇気を忘れない為にあるんだとか。
うーん…、思ったよりも勇者のハードルは低いみたい。
極論から言えば私は勇者だ!って主張しちゃえばもう勇者なのだ。
職業というよりは肩書きに近いので勇者と言っても戦士タイプもいれば魔法タイプもいると言う事だ。
少し前なら私も勇者になる事も考えたかもしれない。
魔法のある世界に産まれたらきっと憧れる人は多いと思う。
だって私も3歳までは凄い魔法使いになるって思ってたもの。
けれど今の私は素直に認めるしかないほど戦闘に向いてない。
魔法も使えないしさ。
剣を使って戦うのってゲームや漫画と違ってやっぱり怖いよ。
私痛いの嫌いだし。
それから今まで一度も見てなかったけど魔物もこの辺でも出るらしい。
平和だ平和だと思っていたけど私は色んな人に守られてたんだなぁって話を聞けば聞くほど思う。
王都にすら魔物が来た事もあったんだって!
町の中まで進入された事は無かったみたいだけど…
だから両親は私を家の外に出したがらなかったのかなぁ。
この町にも1年と少し前に大規模な襲撃があって沢山の人が亡くなったんだとか。
どうにも学校に毎日来れる子供が少ないのもこの影響があるんだと思う。
私とヤルベお兄ちゃんを含めて毎日来てるのは数えるほどしかいない。
ナソリとディファルの両親も多分2年前に…
流石に確認出来なかったけどそこは触れていい部分じゃないと思う。
私があの男について聞かれたくないのと同じようにきっと2人にとってもそうだ。
ただいつか2人が話したい時がくれば聞かせてくれたらいいなと思ってる。
ああ、この町のみんな優しいなあの男の話をしてこないなって思ってたけど皆私の父も死んだのだと。
だから触れずに居てくれるのかもしれない。
沢山の痛みを皆が知っているから優しくなれるんだ。
私ももう少し大人にならないと…
そう決意して私は布団に入り込んだ。
翌朝学校につくと私より先にディファルが来ていた。
珍しい。
ディファルも本読みたいのかな?
「昨日は兄が色々言ったみたいで…すみません」
私が入ってくるなりディファルに謝られた。
うーん…何か言われたっけ?
特に何も言われた記憶は無いんだけどなぁ。
「兄とヤルベさんは親友なんです、最近ミリアお姉ちゃんと遊んでばっかりで構って貰えなくてちょっと僻んでるみたいで…」
言い難そうに顔をしかめるディファルにああ、と少し納得する。
私がここに来てからずっとヤルベお兄ちゃん独占してるもんね。
「すぐムキになる所もありますが、ほんとは優しい人なので出来れば嫌わないで居てくれたら…」
ディファルはお兄ちゃんがホントに好きなんだろうなぁ。
ただ、まっすぐないい子なんだろうって事は解る。
私の事が気に入らなくても別に攻撃してきたわけじゃないし。
「ああ、うん大丈夫だよ」
私が笑って返すとディファルはホッと胸をなでおろす。
だからこれで一件落着だと思った私にまさか爆弾を投下してくるとは思わなかった。




