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6歳⑥

『ミリアへ


 まだ町を離れて1ヶ月しか経ってないんだっけ。

 既に町に帰りたくて溜まらん。


 そういやミリアのお父さんってほんとに嫌なヤツだな、だからこそミリアも戦え!

 こっちに来なくたってできる事も沢山ある筈だ、他人のお父さんにこんなこと言うのはどうかと思いつつ…

 この前学校の寮まで態々訪ねて来てさ。


 「お前じゃどうせ卒業できない帰れ!」


 そんな事言われたら絶対帰れないって。

 バカにされたのを絶対見返す位に頑張る。』




手紙を読み返してまたあの男への怒りが再燃した。

ラグリム君にまで何てこと言うんだ!

それにしてもラグリム君が町から離れてもう一月も経つのかぁ。


戦え!できる事がある…か。

ラグリム君はあの時私の話を何も言わずに聞いてくれたけどやっぱり心配をかけては居たんだろうなぁ。

落ち込んでいる私の気持ちも察してこんな手紙まで寄越すなんて彼はやっぱり天才なんだなぁ。


あと5年もしたらファルちゃんもラグリム君みたいになるのかなぁ。

あんまりというか全く想像できないけど…


手紙は大事に元通り4つ折にして封筒に収めた後大事なもの入れの奥へとしまい込んだ。

あの男の事はこの家でタブーだ。

母も何も言わないし祖父母も口にしない。


それは私に気を使ってるのか母に気を使ってるのか解らないけど…

私も話したいと思わないから丁度いいと思う。


それにしてもあの男、軍ではきっとそこそこの位置に居るはずなのにわざわざラグリム君に嫌味を言いに行くとはよっぽど暇なのか性格が悪いのか。

どっちにしろろくな男でない事は事実だ。

ラグリム君には父の非礼をお詫びする手紙を認めるしかない。


とりあえずは皆元気でやってる事、ファルちゃんが王都へ行くことになるかもしれない事を返事に書こうと思う。


「ミリア、ヤルベ君待ってるけどどうするの?」


部屋から出てこない私を心配しておばあちゃんが覗きにきた。

これ以上ヤルベお兄ちゃんを待たせる訳にも行かずとりあえず手紙の返事は後にする事にした。


「手紙なんて書いてあったの?」


私が玄関から出た途端ヤルベお兄ちゃんがちょっと喰い気味にきた。

割と落ち着いているお兄ちゃんにしては凄く珍しくて私は面食らってしまった。


いつもなら私が話し出すのを待ってくれるのによっぽど手紙の内容が気になったんだろか?

ヤルベお兄ちゃんとラグリム君が親しかった記憶はないけれど別に仲が悪かった訳でもなかったし優しいお兄ちゃんの事だからきっと向こうで上手くやれてるのかとか心配なんだろうな。

けれどそんなお兄ちゃんにもあの男の事は言いたくなかった。


だから元気でやってるけどちょっとこの町が恋しいんだってさって私の父の事を伏せて伝えた。


「そっか…うん」


お兄ちゃんはそれ以上何も言わなかったので私も聞かなかったし今日の遊びの話にシフトしていった。

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