6歳⑤
あれから1週間。
まだファルちゃんは私に勝てないで居る。
そろそろ私に勝てても良い頃だと思うんだけどなぁ。
ついついラグリム君と比較しちゃうけどまだ5歳なわけだしあんまり厳しくするのもどうかと思わなくもないけど…
「ミリアさん僕が勝ったら一つお願いを聞いてくれますか?」
ほほー!この私にご褒美を強請るとはファルちゃん中々強かですなー。
なんて感心しつつ頷いて了解する。
勿論私が勝ったら私のお願いを聞いてもらう条件をつける事もわすれない。
だってこういうのは交換条件だから燃えるんでしょう?
「勿論です!」
っとあっさり条件を飲んだファルちゃんに私はにんまり笑って頷いた。
ふふふ…これは本気を出すしかない!
絶対負ける訳にはいかないもんね。
黒板に線と数字を書き込みスタンバイ。
勿論この数字は相手に書いてもらうのだ、でないとただの暗記ゲーになっちゃうからね。
「いざ勝負!」
黒板にカリカリと数字を書き込む音が響く。
音だけ聞いていても解るくらいの中々良いペースだ。
まぁ勿論私が勝った。
かなり本気で挑んだのに30秒位しか差が無く…
圧勝とは言えない。
次は勝てないかもしれないなぁ。
「…また負けました」
泣きそうなファルちゃんにトドメになるかも知れないけれど約束は約束。
しっかり守って貰わないとね!
お願いというのは勿論決まっている。
ミリアお姉ちゃんと呼んでもらうのだ!
「ミリアお姉ちゃん、これでいいですか?」
ぷいっと顔を反らしながらいうファルちゃんにちょっと不満はあるけど仕方ない。
そういえば…ファルちゃんは私に勝ったら何をいうつもりだったんだろう?
次は私が負けちゃうかもしれないから聞いておきたい。
「それは僕が勝った時に言います」
ふーん…。
なんかそう言われると怖いなぁと思いつつそれ以上は突っ込まなかった。
知らぬが仏って言うじゃない?
今日の授業はそれで終了した。
帰り道、ヤルベお兄ちゃんと今日は何して遊ぼうかって話をしてると家が見えてきた所でお婆ちゃんが駆け寄ってきた。
私が帰ってくるのを外でずっと待ってくれてたみたいだ。
どうしたんだろ?
「ああ、ミリアちゃん。ミリアちゃん宛てにお手紙が来てるのよ」
ばあちゃんが興奮気味に渡してきた手紙はラグリム君からだった。
紙がそこそこ高価である事に加え郵便事情もよくないこの世界ではお手紙が届く事がめずらしい。
だからこそおばあちゃんもビックリして私に早く渡さなくちゃと思ったんだと思う。
薄紅色の封筒にはミリアへと几帳面な文字が並ぶ。
私はお兄ちゃんに断って部屋の中へ戻ってから手紙を開けた。




