5歳⑱
さてラグリム君とファナさんが今日で卒業の日を迎えました。
早いね。
凄くあっという間だったように思う。
ファナさんはまだ町にいるけどラグリム君は明日にはもう王都へ向かってしまう。
私がこの町にきて半年とちょっと、殆ど毎朝ラグリム君と色んな話をしたし沢山勝負もした。
ラグリム君がなんと言おうと私はもう友達だと思っている。
だから私は「友達として」ラグリム君の門出をお祝いしたい。
しかし、あまり高価すぎるものやかさ張る物もダメだ。
考えた末に私はあの布袋から金貨を1枚取り出しこの町で1番大きなお店に行った。
買う物は決まっている。
レターセットだ。
この世界での紙はそこそこ高価だけどレターセット位の少量なら私のお小遣いでも買えない金額でも無いし貰っても邪魔にならないだろう。
きっとラグリム君にもお母さんとかお手紙を出したくなる時が来るはずだ。
今回はプレゼントを思いついたのが遅かったからあのお金を使ってしまったけれど次回からは自分で稼ごうと思う。
私のような子供でも稼ぐ手段が無いわけじゃない。
多くを求めないならちょっとしたオヤツ代を稼ぐ位はみんなやっているのだ。
買ったレターセットはシンプルな茶色い紙。
けれど私が小遣いで買えるとしたらこれが限界だろうと思う。
あんまり高価すぎる物は渡されたら戸惑うだろうし…
そうやって自分に言い訳しつつ買ったレターセットを黒板の後ろに隠し学校へ持ち込んだ。
卒業当日もやっぱり朝一番に来たのはラグリム君だった。
この学校では卒業式はしない。
いつもの本を手に取るラグリム君に私はプレゼントを渡した。
「卒業おめでとう!」
色々伝えたい事は沢山あったけどもうこの本を読むのも最後になるだろうラグリム君の邪魔をするのは気が引けた。
ありがとうという返事が返ってきただけで満足だ。
プレゼントは基本的に上げたい側の自己満足なのだから多くを求めてはいけない。
そのまま何事も無く授業が終わり何事も無く皆帰っていく。
けれど私を含め今日は全員がラグリム君に声をかけていた。
「またね!」
次に会えるのはきっと5年後だろうけどラグリム君なら目標を成し遂げられると誰も疑っていなかった。
勿論私もだけどね。
別れもあれば出会いもある。
明後日からはついに私の後輩ができるのだ!
いやー転生してから年下と関わる機会が殆ど無かったからねぇ。
楽しみだ。
ミリアお姉ちゃんとか呼ばれちゃうのかな!?
前世でも今生でも兄弟居なかったからお姉ちゃんって呼ばれた事無いのよね。
まぁ今は中身的にはお姉ちゃんなんだけど言っても誰も信じないし多分お姉ちゃんとは呼んでくれないんだろうなぁ。
よーし今度の新入生の子達には絶対お姉ちゃんって呼んでもらおう!




