5歳⑫
さて今日も元気に登校してきましたよっと。
ふと教室の後ろにある本棚に目が行く。
本って心躍るよね。
別に前世では活字中毒って訳じゃなかったけどいざこっちに産まれてみて思う。
気楽に本を読めるって素敵な事だったんだなぁ。
計算の授業中ついつい本棚ばっかり目が行く私にラグリム君が寄って来た。
「本が好きなのかい?」
勿論隠す必要が無いので大きく頷く。
あの本何時なら読んでいいのかしら?
30冊位はあるかな…
「持ち帰るのは禁止だから授業の後に少し残らせてもらうか早めにくると良いよ」
なるほどと頷く。
本は高級品だそうホイホイと貸し出す訳には行かないだろう。
「心配しなくともその気になれば直ぐに読みきれるさ」
ラグリム君のよく解らないフォローを適当に流しながらもう一度百マス計算で勝負する。
今度は絶対に勝つつもりで本気で挑んだのにあっさり負けてしまった。
「もう要領が解ったからね」
余裕綽綽とばかりに笑うラグリム君に唇をかみ締める。
くそう、こっちは5年と20年生きてるのに。
まだ2回目の10歳に負けるとは…!
先生が6~9歳を教えている間一番上の2人が先生代わりに勉強を見てくれる。
っと言っても算数に関してはゾラードとヴィオラにはファナおねーさんが教えてあげていてラグリムくんは私と勝負したり雑談したり教えられている気がしない。
まぁいいや、ミリアやゾラードが一桁の足し算に指を使ってなお苦戦しているのを斜めで見ながら今更あれに混じれるとは思えないしね。
しかし負けっぱなしは悔しい。
「○×ゲームしようよ」
先生にばれないようにコソっとラグリム君に耳打ちをする。
私が真面目に勉強していないのがムカつくのかゾラードとヴィオラがこっちを凄く睨んでいるけど気にしない。
「なにそれ?」
ラグリム君が○×ゲームを知らなくて思わずにやけるのを抑えるのに必死だった。
これは勝てるね!
○×ゲームとは9マースの枠に○と×を交互に書いていき縦横ナナメに3つ揃えば勝ちという簡単なゲームだ。
転生前の世界ならみんな子供の頃に一度は遊んだ事があるんじゃないかな?
「ふーん面白そうだね」
乗ってきたラグリム君にやったと喜ぶ。
3戦して全部私が勝った。
このゲームには必勝法があるのだ!
先手ならまずは真ん中を押さえたい。
後手なら角のどこか、これで大体負けないのだ。
勿論教えてあげないけど。
「…なるほどね、なんとなく解ってきたよ」
ラグリム君がそういって不敵に笑った後一切勝てなくなった。
ま、負けてはないんだけどね…引き分けだよ。
たった3回でこれも勝てなくなるなんて…これが天才ってヤツなの?
いや、私には20年のチートがあるのだからきっとなんか勝てることがある筈だ。
うーん…
悩んでいる内に先生が来てしまった。
「今日の所は引き分けということにしておいてあげる、決着はまた今度つけるから」
私は負け犬の遠吠えみたいな言葉を吐いて今日の所はあきらめる事にした。




