第2話 賢明な判断
目を覚ますといつも違う、白が基調の天井が広がっていた、
「…目を覚ましたか」
声をかけられて思わず振り向くとそこには長い黒髪にどこか無機質なオーラを放った美女が座っていた、
「ここは…」
僕がそう問うと彼女は
「ここは国防省本部だ、我々が保護した……目を覚ましたならもう、私はここにいる必要はないだろう」
そう言い放つと彼女は立ち上がった、
「貴方は?」
僕は反射で彼女に問いただすと
「あぁ、私か…私は国防省所属 第三特殊部隊 三等尉 仮咲 宵 だ、これからよろしく頼む」
彼女は一言でそう言い放つと、もうそこには居なかった、”これから”とはどういうことなのだろう、
ほうけていた気を引き締めて、寝ていたベッドから身体を起こそうとした、が、足に何か引っかかり、起き上がれない、足元を見ると足首には鎖がついていた、
彼女の言葉は歓迎していることを表しているようだが、どうやら歓迎はされていないようだ…
何もする事のない時、いや、何も出来ない時の時間の流れは何時もより長く感じるものだ、
目を覚ました時に見た彼女を見た時から幾ばくかの時が流れたはずだが、その時すら確認のしようがない、時計はもとより、窓すら存在しない部屋なのだから、
そんなことを考えていると、いきなりドアが開き、灰色の軍服を着た男が4人入ってきた、
一番身体の大きい男が目の前に来ると、
「君は、篠川 零君だね、」
と話しかけてきた、ただこの一言だけだが、そこから感じられる圧力はものすごく、頷くことしか出来ない、
「そうだな、自己紹介が遅れた、私は特務一佐 レオナルド=ボーガンだ、」
彼はそう言ってベッドの脇に置いてあった椅子に座るとまた話し続けた、
「さて、では本題に入ろうか、
君は昨日の夕方、第三技術開発本部前にいたね、そこで低級魔人と交戦した、そして君はその戦いに勝った……
これだけ聞くと君は勲章ものの働きをした、」
「ただ、しかし、君は通常兵器ではなく、このアルデバランを使った、」
彼はそういうとベッドの上に銃を置いた、
「実はこの武器、簡単に言うと一番初めに触ったもののみが使うことの出来る仕組みになっている、君が使えたと言うことは、君はこの武器の所有者だと設定された、ということだ、
この、設定が解除される条件はただ一つ…」
『所有者の死』
この男は何を言っているのかわからない、それでもこの身体の大きい男は話すことをやめない、
「もっと深い話をすると、実はたった今、上層部は君を殺す方向で議論が進んでいる、部外者で特殊な訓練も受けてない奴が使うより訓練を受けたものが使ったほうが良い、とな、」
「我々としてもそんなことはしたくない、低級とはいえ、憎き魔人を倒したのだからな、」
彼はどんどん話を続ける、つっこむ隙も余裕もないまま、ただ聞くことしか出来ない、
「そこでだ、一つ提案がある、我々のチームに入らないか?」
「ここで殺されるのを待つよりよっぽど賢明な判断だと思うが、チームに入ってくれれば上層部はなんとか説得しよう、」
最早選択肢はないようだ、受け入れるしかない、殺されるよりはマシだと