表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この恋と私。  作者: 杉原綾乃
3/6

私とタバコと貴方と距離感

目の前の男を注意深く観察する。推定170前半くらいであろう身長。あまり似合っていない先の尖った革靴。細い身体に、ダサい服…。色々話しかけてくれる彼は、ゲームで話す時同様に早口だ。

「歩くの、ごめんなさい、遅くて。」

「あ、ごめん。」

先を歩く彼に追い付こうとしても、出来ない。彼は少し立ち止まると私の歩幅に合わせる。

「とりあえずゆっくり話したいから、お茶にしようか。甘いもの食べたいんだよね。」

「私はタバコ、吸いたいです。」

「あぁ…。」

彼は少し苦笑した。こんな街中ではどこも規制されていてタバコを吸うスペースなど見つからない。私は彼に付いてビルの中に入った。

「飲食店のフロアに、確か喫煙所あるから。そこでカフェも探そうか?」

「はい。」

「敬語堅苦しい。緊張してる?」

「してます。めっちゃ。どうしたらいいですか?」

彼は短く笑うと、私の髪を触る。私は一歩引いて嫌悪を示す。

「隣に居るとすごくいい匂いがするね。香水?」

「は?いえ、香水は付けないのでシャンプーかヘアスプレーかと。」

「甘い匂いする。」

「シャンプーかな?」

私の記憶では、ケープから甘い匂いはしない。私は自分の髪を一房とって嗅ぐ。別段なんの香りもしない。タバコ臭いだけだ。

「タバコの臭いしかしない。」

「そんなことない、いい匂いだよ。」

「そう…ですか。」

「うん。」

喫煙所は狭かったが、人は疎らでゆっくりとタバコを吸うことが出来た。

「どうだったんですか、この間のオフ会。」

「凄かったよ。なにがって訳じゃないけど、カイトがさ。駅で踊ってたわ。」

「え?踊る?」

他愛ない会話を重ねながら、フロアマップで私たちはカフェも探す。

2本目のタバコを咥えると、彼が火を付けてくれた。

「ありがとう。」

「どういたしまして。」

見上げると彼は目を細めて私の頭を撫でた。

「同い年なんですけど…。」

「ん?うん、そうだね。」

子ども扱いしないでよ…そう思ったけど、口にはしなかった。


その夜は郷土料理屋で夕食を摂ると、私たちは解散した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ