宝玉はあと二つ
本日の朝食は、“メリオリ魚”という川魚のフライをパンにはさんだものだった。
あっさりとした味の魚にはタルタルソースのようなものがよく合う。
とても美味しい、そう思いながら僕が食べているとそこで、ミミが、
「美味しそうですね、アラタ様」
「うん、ここの食堂のご飯は美味しいね」
「この辺りは豊かですからね。でも我々の里でも美味しいものはいっぱいあるので今度いかがですか?」
「ぜひ!」
といったような話をしてからそこでミミは真剣な表情になって、
「“魔物使い”達は、現在私の狐族の“宝玉”と“森の眠り人”の“宝玉”を手に入れています。残る“宝玉”はあと二つ」
「二つもあるんだ」
「ええ、一つは特別な場所に隠されていて、私たち獣人の一部しかその存在も場所も知らないものです。そういった意味で、“安全”だと思っていたのですが……。
そこで深刻そうにミミが沈黙した。
どう言おうか迷うように口をもごもごとさせ、狐耳をせわしなく動かしてから、
「先日、フィスと遭遇した“魔物使い”が獣人であったそうですね」
「はい“ステータス・オープン”で見た時に獣人と書かれていたので間違いないです」
「“ステータス・オープン”とは?」
「その人の“ステータス”が瞬時に表示される魔法だよ」
「女神様がくれたものの一つですか?」
「はい」
「だったら信用できそうですね……個人的には、間違っていてほしいという気持ちでいっぱいですが」
そう呟いてからミミは意を決したように、
「アンという犬耳族の獣人は……本当なら私と同じように、“宝玉”の行方を追っているはずなのです」
ミミがそう、苦々しそうにつぶやいたのだった。