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洞窟にて、“魔物使い”と遭遇する


 そんなわけで、湖に向かって歩く。

 この湖の端に止まっているボート、そのすぐ脇に細い道が有り、そこを歩いていくと街道に出るのだそうだ。

 実際に森の間にある細い道を歩いて行くと大きな街道があって、そこには馬車のようなものがいくつも行き交っていた。


 もっとも僕達がイメージする渋滞というほどではなかったけれど。

 また、旅装束を着て徒歩で移動している人達もいる。

 それもファンタジーっぽい服装だ。


 革の胸当てに剣。

 他には魔法使いのような杖を持っている。

 あれを使って魔法を使ったりするのかなと思いつつ、土の道を歩いて行く。


 途中、魔法のポシェットから飲み物を取り出した。

 爽やかな柑橘るの香りのする炭酸水。

 シュワシュワとする感触を味わいながら、僕は歩いて行く。


 空は青くて、歩いていると涼しい風が吹いてくる。

 途中で地図を呼び出して中身をよく見ると、


「後二時間位で着きそうかな? ……結構離れている気がするけれど、道が整備されているしこれくらいなら大丈夫かな。でも、あそこのお店で休憩しよう」


 そう思って僕はその小さな食べ物が売っている家で休憩を取ることに。

 ゼリーのような水菓子は、近くの井戸水で冷やしているらしい。

 つるりとした歯ごたえが寒天のようで、味は羊羹に似ている。


 それとお茶をいただきながら、気持ちが暖かくなるのを感じているとそこで、僕の目の前でフラフラと歩いていた女の子が倒れた。

 先ほどのニケと同じ獣耳の女の子で、この子は狐耳であるらしい。

 どうしたんだろうと近づくと、ぐうっと彼女のお腹がなる。


「お腹が空いているの?」

「はい」

「ちょっとまってて……このサンドイッチを一つと飲み物をください!」


 一応はまだポシェットから出すのは気が引けて、購入することに。

 お金を支払い、卵のサンドイッチを少女に見せると狐耳がぴくっと動き、


「た、食べ物おおお」


 即座に起き上がり僕が持っていたそのサンドイッチに、かぶりついたのだった。









 もっきゅもっきゅもっきゅ。

 嬉しそうに卵サンドを食べる狐耳の少女。

 ちなみにこれでサンドイッチは、5個目である。


 お店をやっていたお姉さんは、良い食べっぷりね、よほどお腹が空いていたのねと笑っていた。

 それは良いとしてこんなパンばかり食べていると飲み物も欲しくなるのかなと思って、瓶づめの飲み物を僕の分も合わせて購入して差し出すと、それも一気に飲んでいく。

 体は細めなのにこの食べたものはどこに消えていくんだろう、さすが異世界、等と僕が感心しているとそこで、


「ふう、ようやく生き返りました。もうだめかと」

「そうなんだ、良かったね」

「あ、行き倒れしていた所を助けていただきありがとうございました。本当に私、お腹が減っちゃって」

「どうしてこんな事に?」

「いえ、途中でお弁当を落としてしまいまして。しかも路銀ごと……」

「そうだったのですか」

「町に着けば何とかなるはずだったのですが、そのもう少し手前のここで行き倒れをしてしまって……あ、私、ミミと言います」


 狐耳少女はそう僕に言うが、ミミ……耳? といったことが気になって僕は、狐耳に目が行ってしまう。

 そこでミミが、


「このご恩は一生忘れません。いつか恩返しに来ますね!」

「あ、はい」

「それでお名前を窺ってもよろしいですか?」

「僕はアラタです」

「アラタ様ですね。食べ物のご恩は絶対にお返しします。そのうちどこかで出会いましたらその時お礼を……」

「いえ、別にかまいません」


 女神様にもらったお金だし、この世界の人に使うならそれでいいと思う。

 そう思って告げると、なんだかミミの狐耳が落ち込んだように垂れて、


「そんなに私、ダメな感じに見えますか? 恩返ししてほしくないくらいに」

「いえ、そんなことは……」

「分かりました、必ずやお礼をしにきます。ではその時まで、さようなら!」


 そう彼女はひとりでそう言って、砂煙を上げながら走っていったのだった。

 




 元気のいい狐の女の子を見送った僕は、再び歩き出した。

 途中荷馬車のようなものに人が乗っているのを見かけた。


「ああいったものに乗って街を移動するっていうのもあるかな」


 どうやら僕達の世界にあるような自動車はここにはないらしい。

 もしかしたなら魔法的な不思議な乗り物もあったりしないかな、と思ってみたりする。

 きっと町に行けばもっと不思議なものが広がっているのだろう。


 そう思いながら僕は更に歩いていくと、森が無くなり、畑が広がる。

 いかにも都市近郊といった雰囲気だ。

 途中、とれたての野菜が売っているお店があって、あまりにも色つやの良いトマトが売っていたので購入してしまった。


 どんなものか買った後に見ると、“とめ~と”というらしい。

 名前が何となく変な感じがしたけれど、そのままかぶりついていると新鮮なみずみずしいトマトの味がする。

 この世界は美味しいものが沢山あるんだなと思いながらさらに進んでいくと、そこで建物が密集している、大きな“町”に僕は辿り着いたのだった。









 まずは宿屋を探そうと大通りを歩いていくが、値段が高くこの時間では満室になってしまっていた。

 仕方がないので路地裏に入り込むけれど、良さそうな場所は見つからない。

 困ってしまった僕は、そもそも町について僕は詳しくないので、


「確か女神さまが神殿の子に話を通しておいてくれるって聞いたから、その子によさそうな宿を聞こう。でも神殿てどこだろう?」


 それから道に迷い、人に道を聞いたりしてどうにか神殿に僕が辿り着いたのは、夜の星々が輝き始める、黄昏時の頃だったのだった。







 神殿にたどり着いた僕は、その門番の人に、


「あの、女神ニケ様にお願いをして、町を案内してもらえることになっているはずなのですが、言伝をお願いします」


 白い服を着た門番の人は怪訝そうに僕を見る。

 僕も、そうですよねとしか思わなかったので、それ以上は何も言わずにいる。

 すると、中に様子を聞きに行った人らしき方が慌てたように走ってきて、


「アラタ様、お話は聞いております。どうぞ中へ!」


 そう僕は言われたのだった。







 神殿の内部は、様々な彫刻や絵画が飾られた優美なものだった。

 ついつい案内されながら見入ってしまう僕に案内してくれていた人が、


「気になりますか?」

「あ、すみません。あまりにも綺麗だったので」

「そうですか! 私もここの神殿は特に芸術的にも素晴らしいと思うのです」

「ここの神殿、ですか?」

「ええ、私は他所からこちらに来たのですが、女神様の聖域が近いとあって、こういった芸術が優れていますね」


 嬉しそうに話すこの人の話を聞きながら僕は、この世界にも“文化”があるのだと当たり前のことに気付いた。

 こういった異世界が僕は見たかったんだ、と思って進んでいくとそこで、


「その方が、女神様がおっしゃっていた、方ですか?」

「サナ、そうですよ。あ、アラタ様、この子はサナ。我が神殿で神童と呼ばれる少女です。今回はアラタ様の案内をすることになっています」

「よろしくお願いします、アラタ様」


 ピンク色の長い髪に青い瞳の清楚な少女。

 初対面はそうだった。

 けれど客室に案内された僕は、その案内の人がいなくなって二人っきりになると、サナはじろじろと僕を見て、


「思ったよりも小さいわね」


 今までの大人しそうんば雰囲気から一転、何処か傲慢さの見える少女になってしまったのだった。







 小さいと言われた僕はむっとして彼女、サナを見る。


「これから大きくなるからいいんだ」

「でも今は私のほうが背が高いの。でも、こんな子が女神様のお気に入り、ね。どこからどう見ても“普通”ね」

「……さっきまで猫を被っていたのですか。でもどうして初対面なのにそんな攻撃的なのですか?」

「……別に。ただどうしてそんなに、気に入られているのかなと思っただけよ。努力もなしに、“偶然”幸運を手に入れた人間がどんなのかって」

「えっと、何か嫌なことでもあったのですか?」


 僕が問いかけると彼女は黙ってしまった。

 そっぽを向いてしまい、それ以上何も言わない。

 うん、変えてもらおうと思った僕は、


「女神様、ちょっといいですか」

「はーい」


 何処からともなく現れた女神さま。

 サナ口をあんぐりと開けている。


「アラタ、どうしたの?」

「何だかこの子、僕が気に入らないらしいので他の人にお願いできませんか?」

「そうなの? じゃあ同年代の男の子にする?」

「そうですね、そうして……「待って!」」


 僕がそれでお願いしますと言おうとした所彼女は止めに入る。

 そして、


「私、できます。私は……」


 悔しそうに言う彼女。

 でもそこまでしてもらわなくてもと僕は思っていると女神ニケが、


「うーん、アラタ、実はサナちゃん、今日貴族の神官候補の子には実力で勝ったんだけれど、出来レースだったらしくてサナちゃん負けたらしいの」

「そうなのですか?」

「そうそう。この世界に住む人たちのルールにはあまり私は干渉しないようにしているのだけれど、それもあって気晴らしにならないかなと思ってサナちゃんを指名したけれど……サナちゃんには迷惑だったみたいだね」


 そこでサナがはっとしたように、


「そ、そんなことはありません!」

「そう? だったら……あまり無理して頑張らずに、たまにはアラタと遊んで息抜きしてみるよいいよ。じゃあね」


 そう言って、女神ニケはまたも消えてしまったのだった。








 そんなこんなで彼女、サナに案内してもらい異世界を楽しむことに。

 明日はちょうど“市”が開かれ、この世界の色々なものがこの町に集まるらしい。

 この世界の縮図のようなものだから、サナはそこを案内してくれるそうだ。


 その日は神殿内でお泊りした。

 ふかふかのベッドがとても気持ちがいい。

 よく眠れそうだなと僕は思ってゆっくり眠ったのだった。

 




 次の日神殿内で、健康に良さそうな食事を頂いて(お肉が僕は食べたかったのは内緒だ)、サナと合流した。

 今日は私服であるらしい。と、


「昨日はごめんなさいね。私としたことがいらいらしちゃって」

「出来レースだっけ? 頑張ったのに認められないのは辛いから仕方がないよ」


 そう僕が答えるとサナは、


「人がいいのね」

「? そうかな?」

「そうよ。うーん、ここまで素直な人は珍しいわね。まあ、私は周りがみんなライバルだったけれどね」


 そう笑ったサナは、何処か寂しそうだった。

 言わないだけで大変な思いをしているのかもしれない。

 そこでサナがぽつぽつと話し出す。


「これは私の経験則だけれど、どんな場合でも面白い事に“出来レース”って質が下がるのよ。そしてそれを繰り返していくと段々弱体化していくのよね。まあ、私も悔しい思いをしたし、ダメになったら笑うだけだけれどね」


 それくらい許されるでしょう? と彼女は笑う。

 神童と呼ばれるくらい優秀だと、色々気づいてしまうのかもしれない。

 そういえば歴史上の天才も、世捨て人みたいになっていたりしていたなと僕は思い出す。


 でも悔しいからそれを原動力にするわと笑った前向きなサナは、僕には今までで一番輝いて見えたのだった。








 そうして僕達は朝食を食べて、市を見に行くことに。

 その市が行われるのは街の外との境界であるらしい。

 だから、この神殿から少し歩くのだそうだ。


 途中、美味しそうな串焼きのお店を見かけてほんの少し買ってしまう。

 サナには、この串焼きを食べるか聞いたが、今朝の朝食で満足であるらしい。

 小食なのかなと思ってお肉を楽しむ僕。


 それから途中にゴミ箱があったので串を捨てて進むと、市と書かれた看板が見えてきた。

 まだ早い時間だったからか店はそこまで開いていない。

 それでもいくつかはすでに販売を始めていて、少ない人数ではあるけれどお客さんがやってきて、値引き交渉をしている。


 それを見ながらまず初めに僕達が辿り着いたのは本のお店だった。しかも、


「異世界転生ものや、異世界転移ものも結構あるんだね」

「女神様がお好きで、こうったものを異界から取り寄せているのだそうです」

「そうなんだ~」


 そう思いながら本を見ていく僕。

 そういえば異世界転生すると、神様がごめんないさいってチートをくれるけれど、現実に酷い事があった時は、〇〇には悪い事をしたな~で、終わりというか忘れられてしまう事が多い。

 それを考えると神様は神様なんだろうな、という気がしないでもない。


 しかも女神様は、僕にきちんとお礼までしてくれている。

 やはりちょっと頼りないように見えても、ニケは優しい女神様なのだろう。

 と、そこでそのうち一冊の本が気になるらしくじっと見ている。


「気になるの?」

「い、いえ、勉強の邪魔になるし……」

「……これください」


 僕はその本を購入して、サナに渡す。

 戸惑ったようなサナだけれど僕が、


「今日案内してもらうから、そのお礼」

「! ……はい!」 


 嬉しそうにサナはその淡いピンク色の表紙の本を、抱きしめたのだった。








 本を購入した後、その本について僕は聞いてみた。


「その本、何の本なのかな?」

「……冒険小説です」

「冒険小説! 未知の世界を探検したりとか」

「そうです! この都市近郊にもダンジョンがあって、そこも楽しかったな」

「ダンジョン、本物!」


 いかにも異世界のようなそれは、僕にも魅力的に見える。

 そしてぜひ行ってみたいと思う。


「あの、ダンジョンにはどうやって行くのですか?」

「興味があるのですか。うーん、武器などの装備が必要ですね。それに一緒にいってくれる人とか。あ、その前にギルドカードを作らないといけません」

「ギルドカード!」

「女神様のお願いがあるのですから身分証などはこちらで用意しましょう」

「アリガトウゴザイマス!」


 つい嬉しさのあまり声が裏がえってしまった。

 おかげでサナに笑われてしまう。

 僕は恥ずかしくなってしまったけれど、異世界というならそういったダンジョンに入ってみたいと思う。


 その前に魔法を試し打ちしたり武器関係を手に入れたいしないといけないかもしれないが。

 それともこの魔法のポシェットに全部入っているのだろうか?

 そう悩んでいるとそこでサナが、綺麗な香水瓶のお店で立ち止まっている。


 赤や青、オレンジなどの色とりどりのガラス瓶。

 香水瓶が主ではあるけれど、小さな小瓶に砂や石を閉じ込めたものなど変わったものもたくさん置かれている。

 見ている分には綺麗だけれど、僕はあまり興味はないなと思ったけれど……サナは目を輝かせている。


 今日は彼女の休息でもあるし、可愛い子が嬉しそうにしているのも何となく僕も楽しくなってくるので、それから三つほど、サナ好みのお店を見て回ったのだった。









 サナとお店を見て回っていると、様々なものがある。

 変わった雑貨類だけでなく、果実も売られている。

 その中にはニケの聖域で食べた“ゼリーの実”の色違いバージョンも沢山売っている。


 けれど、どれも値段が高い様だ。

 そしてそのまま他の店を見て回っていると、果実を安く売っている店を見つける。

 その隣には果実だけでなく、料理もふるまっているらしい。


 食べ歩きが出来るようなものではないけれど、魚のから揚げに変わった香りのするソースをかけているようだった。

 気になってみてしまうとそこでサナが、


「ララザの料理ですね。あのお魚のから揚げも、果物を添えていただくとさっぱりとして美味しいんですよね」

「そうなんだ……」

「少し食べていきましょう。私も……のどが渇きましたし」


 との事で飲み物と僕は魚のフライを購入した。

 添えられたのは桃のような果実で、さっぱりとしていてそこまで甘くないので、一緒に食べると油のしつこさは気にならなかった。

 そこで、僕達の目の前を黒いものが走っていく。


 毛むくじゃらの犬のように見えたが、市場の人達は悲鳴を上げている。

 そして、サナがそれを見て、


「魔物がどうしてこんな町の近くに!」


 そう呟き慌てたようにサナが追いかけていく。

 僕はこの魚のフライを置いていくことが出来ず、紙の皿ごと料理をもって追いかける。

 食べながら追いかけた僕は、途中、ゴミ箱があったのでそれらをそこに捨てて更に走る。

 その魔物は市の店どころか人間に目もくれず、疾走している。


 何処に向かっているのだろう?

 そう思って僕達は更に追いかけると、市が開かれた場所から出てしまう。

 それでも魔物は走るのを止めない。


 やがて、その魔物は洞窟のような場所にやって来たのだった。







 追いかけて行った魔物が洞窟ダンジョンに入っていく。

 その洞窟ダンジョンの前でサナが一度、足を止めた。


「アラタ様、今日の所は、案内はこれで終了で構いませんでしょうか」

「それは良いけれど、どうしたの?」

「通常魔物は飢えて人に襲い掛かる、魔法の使える動物と同じなのです。ですが、先ほどの魔物は、人や物には目もくれずに走り去り洞窟の中に消えていきました」

「? 普通の魔物じゃないって事かな? 飼いならされているから、特定の命令だけを聞いて……洞窟に帰っていった?」

「ええ。最近目撃例のある“魔物使い”がいる可能性があります」


 そう告げたサナは深刻そうだった。

 でもその魔物という物も、女神様が作り上げたものではないのだろうか? と思いはしたけれど、生存競争がありそうなのでその辺りはよく分からない。

 ただその“魔物使い”とういうものは、


「でもそれは、使う人が善人か悪人かの違いが“魔物使い”にはあるんだよね?」

「はい、もちろんそんです。ですが賞金首になるような危険な“魔物使い”が最近こちらの方に来ていると聞いています。だから私がまず偵察を、と」

「だったら僕も力になれないかな? 一応は女神様に魔法の力を貰っているけれど」

「……戦闘になるのを考えると戦力はあった方がいいかな。……どんな魔法が使えるのか見せていただいてもよろしいですか?」


 そう言われたので僕は、洞窟内ではできるだけ氷の魔法などといったものがいいと言われて、その魔法を使う。

 選択画面を呼び出し触れる。


キンッ


 甲高い音がして、氷の柱が僕の前に現れて。

 それを見たサナが、


「す、凄い、こんな魔法は見たことがありません」


 そう、驚いたように告げたのだった。







 こうして僕達は洞窟に入っていくことに。

 今回はいるこの都市近郊の“メアの洞窟”は、洞窟内が薄く光る鉱石が多分に壁などに含まれていてそこかしこが白く輝いている。

 おかげで明かりは必要が無いらしい。


 普通の洞窟では、魔法で明かりを呼び出したり、ランプ自体を持ってきたりといった準備が必要だが、ここではそれがないようだった。

 そこでサナが歌うように何か“音”を発してから、


「“片鱗よ輝け”」


 厳かに呟いた。

 同時に地面には青い足跡が浮かび上がる。


「ごく最近ここを通った魔物の魔力を探知して光で色を付けました」

「確かに何処に行ったのかこれで分かるね」

「そうですね、ただ問題が一つあるのです。同じような魔物が大量に似た時期に移動して違う方向に行った場合、どちらに行くか分からなくなります。このような方法で行き先を撹乱するのもまた彼らの手口です」

「色々と考えるんだね。とりあえず襲われても大丈夫なように選択画面は出しながら僕は移動するね」


 そう答えながら僕はサナとさらに奥に進んでいく。

 途中、それほど強くない(※サナがいうには、だが)魔物と遭遇して凍らせて僕が倒してみたりしながら、足跡を追っていく。

 またさらに進むと幾つもの道が別れていたけれどどれも他の足跡は混ざること無くまっすぐに進んでいる。


 それらを追いかけて更に進んでいくと、そこで人影が見える。

 この人が魔物使いだろうかと思いながら歩く速度をゆっくりとしていると、その人が振り返る。

 身なりは普通の冒険者に見えるが、その人物は僕達を見て、


「子供だけで洞窟に来たのか?」


 そう、眉を寄せたのだった。







 その冒険者さんは大人の女性だった。

 ナイフや短剣などの装備を中心とした装備に、小さめの弓なども持っている。

 後は回復薬のような液体などだ。


 そこそこ重装備の彼女は、瞳は赤く、肌が浅黒く水色の髪をポニーテールにしている。

 それでいて体の線にピタリと張り付くような服装なのは動きやすさ重視なのかもしれないが、筋肉質なのが見て取れる。

 そう思っていると彼女は僕達の目の前までやってきて仁王立ちした。


 何処か怒っているように見える。

 そういえばさっき何でこんな所に子供が、と言っていたような気がするが……そう思っているとそこで、彼女の手が僕達に伸びてきて、


「うぎゅ!」

「にゅぎゅ!」


 僕たちは襟首を捕まれ、そのままズルズルと彼女に引きずられながら洞窟の出口に向かって移動しようとするがそこでサナが、


「わ、私は神殿のもので魔法が使えるんです!」

「そうなのか。だがこんな子供一人でこんな場所にこさせるとは到底思えないな。大方、一人で勝手にここに来るのを決めたというところか。違った、二人だな」

「うぐっ」


 サナが悔しそうに呻く。

 図星であるのは確かだけれど、僕達は、と思った僕は、


「魔物がこの洞窟に入り込んでいったんです。“魔物使い”がいるかもしれないって」

「! “魔物使い”が! ……危険な相手だったらどうするんだ。全く、これだから子供は……何かあってからじゃ遅いんだよ!」


 反対に怒られてしまった。

 いいお姉さんだとは思うのだけれど、今は追いかけている最中で僕も魔法が使えるのだがそれをうまく説明できない。

 何かいい方法がないか、そう思った所で、僕は気づいた。


「サナ追跡の魔法はどれ位の間効果があるの?」

「せいぜい一時間でしょうか」

「だったら他の人達を待っていたら消えてしまうんです。追跡だけは駄目ですか?」


 それはお姉さんに問いかけたものだった。

 そこで、お姉さんの動きがピタリと止まったのだった。








 “魔物使い”の追跡。

 今回、サナの行った魔法だった。

 そしてそれには時間制限がある。


 場所の確認だけでも見逃してくれないかなと思っているとそこでお姉さんは、


「“魔物使い”は危険な相手もいるからな。だが私はこれから、この洞窟の奥にある“ヒエラ鉱石”という石が私にはどうしても必要だ。そして“魔物使い”の場所が分かる魔法をお前達は使えるわけか」

「は、はい」


 サナが頷くとお姉さんが、


「できればその“魔物使い”と遭遇するのは避けたい。その一方で君たちもその“魔物使い”の様子を見さえすればいいと。そうなると顔を合わせて戦闘をしないという意味で利害は一致するか。しかも“魔物使い”が何処にいるのかわかると」

「は、はい」


 僕とサナが頷く。

 さらにお姉さんが僕達に、


「魔法は二人共使えるんだな?」

「は、はい」

「分かった、それでどの程度使える? ギルドカードを見せてみろ」


 そう言われてサナが見せていたが僕は持っていない。

 そこでお姉さんがサナのギルドカードを見て、


「この都市でこんな優秀な魔法使いなのか。これなら足手まといにはならなそうだな。しかしこんな子供が魔法使いとしてここまで優秀とは……見かけで判断してはいけないな。見せてくれてありがとう」

「あ、はい」

「そしてそちらの坊やはギルドカードは?」

「ぼ、僕はまだ作っていなくて、これから作ろうと思っていたところなんです」

「そうなのか? まが悪かったな。だがこの魔法使いと一緒にいるのならそれなりの魔法は使えるだろう、と思っていいか?」

「は、はい」


 僕が頷くと、いい返事だとお姉さんは笑い、


「私はエリザ。君たちの名前を教えてくれ」


 そう彼女は名乗り、僕達の名前を問いかけたのだった。








 こうして僕達は、青く足跡が輝くのを追いかけていく。

 石の地面にを走っていくそれは、それ一匹の足跡が延々と続いている。

 途中僕たちは、コウモリのような魔物に襲われたけれど、そこでも僕の出番ではなく、サナが氷の粒を幾つも生み出して打ち込んでいく。


 サナの魔法は意外にも有用であるらしい。

 お姉さんエリザはサナを将来スカウトしたいくらいだと言っている。

 エリザは職業冒険者であるらしい。


 昔は妹の病気のためにどうしても大金が必要で、それ故に冒険者を目指したのだそうだ。

 今は妹の病気も治り、趣味も兼ねて冒険者をしているらしい。

 そこで突然現れたネズミのようなものをエルザは、ナイフを取り出し一閃で三匹ほど倒してしまう。

 その鮮やかな手際に僕が目を見開いて驚いているとそこで、


「ふう。驚いているようだがこれくらいの魔物に遅れを取るようでは、この洞窟に入るのは荷が重いぞ、少年」

「アラタです」

「けれど君の力は私はまだ認めていない。だが、無理をする必要はない。危険だと思うなら逃げる、その能力のない冒険者は早々に死ぬからな」

「……はい、心配していただきありがとうございます」

「素直だな。……だが使えそうな範囲で魔法を使ってもらえると助かる」

「! はい!」

「……なんだか故郷の弟を思い出すな。まあ二人の様子を見ていたら妹と弟の昔の様相を思い出したから、出口に戻そうと思ったのだけれどね」


 笑うエリザ。

 お姉さんらしい発想だなと思いながらも、そうして僕が一匹を魔物を倒さないままさらに進むとそこでエリザが立ち止まる。そして、


「誰かいるな」


 そう呟いたのだった。








 その場所は少し開けた場所だった。

 洞窟の奥の方の部屋で大きな広場担っているらしい。

 底に黒いローブを着た人物がいる。


 性別も顔もわからなが、その人物が“魔物使い”だろうか?

 警戒しながら僕は様子見するけれど、分からない。

 そこでエリザが、


「あそこにいるのが目的の“魔物使い”で間違いないか?」

「そうですね、足跡を見る限りはここで間違いない無いかと」

「……弱ったな」


 エリザがそう呟く。

 どうしたのだろうと僕が思っているとそこでエリザが、


「この領域が私の依頼の受けた鉱物を採取しやすい場所だったのだが、どうするか」

「他の場所では取れないのですか?」


 僕の問いかけにエリザは首を振り、


「採取は出来るが、不純物が多くて品質が悪かったり、そもそも圧倒的に数が少ない。だからここから取ってくるしか無いが……そもそもどうしてここに“魔物使い”はいるのだろう?」

「エリザさんの依頼の鉱物、“ヒエラ鉱石”が“魔物使い”に必要なものということでしょうか?」


 恐る恐る聞いてみると、エリザは少し黙ってから、


「そうだな、そうなる。確かに“ヒエラ鉱石”には魔力を増幅する効果がある。だからこの場所で魔物を呼び出し集めている?」

「……一回戻りましょう。危険な気がします。“ヒエラ鉱石”は、以前私がここに来た時に手に入れたものが少量ありましたので、ここまでの“護衛”の代金としてエリザに私のはどうでしょう?」


 そこでサナが提案した。

 エリザがそれに目を瞬かせて、次に微笑み、


「それなら助かる」


 そう答えたのだけれど、


「……そこにいるのは誰だ」


 そう、ローブの人物は告げたのだった。









 “魔物使い”に僕達がいるのを悟られてしまった。

 どうしよう、この場から今すぐ全力で逃げるべきだろうか?

 そう僕が考えている間に黒い影がそのローブを着た男の周囲で舞い上がる。


 真の黒とも言うべき、光の欠片である色も見えないその黒。

 それがすぐに形作り……それらは先ほど僕達を追ってきた魔物に似ていた。

 即座に僕は、選択画面を呼び出して、その魔法に触れる。


「それは?」

「僕の魔法です」


 エリザにそう僕は答え、氷の壁を作り出した。

 ドスドスと音を立てながら、魔物がその壁に体当たりをしている。

 それを見つつも僕はエリザとサナに、


「これで時間が稼げるはずです。逃げましょう」

 

 その提案に二人は頷き、その場から逃走した。

 後はあの氷の壁が砕かれる前に地上に出ればいい、はずだったのだけれど、


「何だこれは」


 エリザが焦燥感を覚えたように叫ぶ。

 道は間違えていなかった。

 あの魔物の足跡を再び辿っていったのだから。


 けれどその足跡を踏み潰すかのように巨大な岩の壁が僕達の前に立ちふさがっている。


「突然こんな岩が現れて塞ぐ、そんな話は聞いたことが無い……ここは天然の洞窟のはずだ」

「……事前に見つかったときのためにこのような罠を残していたということでしょうか」

「……近づきすぎたか。しかもこのような厚そうな壁を作り出すなんて」


 そう言ってエリザは壁をたたき、音の大きさで壁の様子を見て舌打ちする。

 僕の魔法で吹き飛ばせないか、そう考えて提案してみたけれどサナに、


「下手をすると天井ごと崩れてしまいます」

「そんな……じゃあどうすれば」


 僕が呟くとエリザが深く息を吐いてから、


「あの“魔物使い”を倒すしか無いな」


 そう答えたのだった。







 “魔物使い”のもとに戻ることになった僕達。

 ローブを着た人物を倒さないとという話になったけれど、


「できれば捕縛した方がいいだろう。目的も分かるし、殺してしまうと逆にここからの出方が分からなくなる可能性もあるからな」


 といったエリザの提案から、捕縛に決定された。

 それから僕達は、どう攻撃するか作戦を練る。

 もっとも簡単なものだが。


 僕の攻撃は強力なので、僕達の目の前に幾つもの氷の壁を作成するだけにして欲しいと言われた。

 それを使い隠れながら魔物などの魔法攻撃を避けつつ、“魔物使い”に近づこうという話だった。

 そして先頭がエリザでその後が魔法で援護するサナ、その次が僕であるらしい。


 魔法は使えるけれどなれていないというのが最大の理由だった。

 そして、言われたとおりに進み、途中で魔物との戦闘をしつつ元の場所に戻る。

 僕の作り上げた氷の壁はすでに溶かされて大きな穴が開けられている。


 そこを通して広場の様子を窺うと、先ほどの場所に“魔物使い”はいたままだ。

 あの場所から微動だにしない。

 動けない理由でもあるのだろうか?


 そこで僕にエリザが促す。


「まだこちらに気づかれていない。とりあえず壁を3つ作ってくれ」


 そう言われて、まずはこちらから“魔物使い”の目の前に一つ。

 ハッとしたように“魔物使い”がこちらを見る。

 けれど僕たちは走り出していて、そのさらに僕達側に二つほど僕は氷の壁を生み出す。

 

 これで後ろの方で待機していろと言われて、僕は立ち止まる。

 でもすぐに手助けできるように魔法の準備をしていたのだけれど、そこで、


「この程度の氷でどうにか出来ると思われたか」


 ローブの人物から声がしたのだった。








 ローブの人物の声。

 高いのか低いのか分からない、そんなどちらの性別かを感じさせない声だった。

 人間味のない無機質さを感じる、そう僕は思っていると、何かをボソボソとそのローブの人物はつぶやき、


「“壊れろ”」


 そう声を上げた。

 同時に僕の作り上げた氷の壁が砕けて、周りに散らばっていく。

 その中で特に大きな氷がエリザとさなに迫っていて、僕はとっさに選択画面の防御に触れる。


 対象は、エリザとサナ!

 強く願うように僕はその防御の魔法、“風の膜”を引き起こす。

 ぐるりとエリザとサナの二人の周りに風が走り半球状の薄い膜ができる。


 危ないと思った瞬間に発動できるのがこの選択画面のいいところだと思う。

 そして氷が落ちてきて僕の結界に当たる。

 カシャンと、硝子が割れるような甲高い音がして僕の風の膜に振れた氷が細かく砕け散り、その風の膜に沿って地面に落ちていく。

 

 風船を輪切りにしたようなそれのように、周りに降り積もる氷。

 そこで危険がなくなったと判断して魔法を解くように念じる。

 それこそ風船がはじけ飛ぶように、パチンと音がしてその風の膜は消える。


 これでエリザとサナは自由に動けるはずだけれど、二人は動けない。

 このローブの人物に下手に近づいて、反撃されるのを恐れているのかもしれない。

 まだこの黒ローブの人物がどんな魔法を使うのか、魔物をどのように呼び出すのかも分かっていない。


 分からない敵相手だけれど、かと言ってこちらから手出ししなければ状況は好転しない。

 そして僕は一番彼らから離れた場所にいる。

 だから、黒ローブの能力をみるのも兼ねて、僕はある魔法を選択画面から触れたのだった。







 僕が使った魔法は小さい炎の矢が幾つも出てくるものだった。

 対象は黒ローブの人周辺。

 本人に当てられない、戦ったことがないから……というわけではなく、この黒ローブの人の動きを止める事+この黒ローブの人の能力を見るためだった。


 どれくらいの量がいいだろうか?

 30本?

 少し多めに用意しておこう。


 そう僕は考えて、僕は呼び出した。

 ローブを着た人が僕の浮かび上がった炎の魔法を見て、


「“無詠唱”だと!?」


 そう驚いている声が聞こえたけれど、そういえばサナ達は何か呪文を唱えていたなと思い出した。

 そう考えると何も言葉を発さずにこの選択画面使用の魔法は、使っているように見えるのかもしれない。

 などと考えつつも僕は、その生み出した炎を一斉に攻撃に回す。


 ローブの人が即座に黒い影のようなものを呼び出して、それが魔物を形づくり、その炎の矢に攻撃しようとする。

 一度に10匹程度呼び出したようだが、僕の攻撃をその魔物たちは一匹当たりに三発ずつ撃ち込まれ、砂のように消えていく。

 ローブの人が舌打ちするのが聞こえた。


「こんな魔法使いがいるなんて聞いていない」


 そう呟きが聞こえると共に……そのローブの人は、何かを投げてくる。

 灰色の煙が充満し、視界を覆う。

 その場で煙を焚いて逃走か? それなら安全だけれどと思いながらも先ほどの風の結界を僕も含めて三人分起動させる。


 煙に紛れての攻撃を警戒したのだけれど、それは杞憂に終わったようだ。

 その煙が晴れるころ、僕達の前からローブを着た人物は姿を消したのだった。







 ローブの人物は僕の力を見て逃げて行った。

 選択画面で呼び出した魔法を、“無読唱”だといって恐れおののいて逃げて行った気がしたけれど、この世界の法則ではそういう物なのだろうか?

 となるとあまりこの魔法は使わない方がいいのかな? 目立ちたくないし。


 そうしようと僕が決めた所で完全に煙が晴れた。

 この煙に独などがあっても嫌だったので、周囲の異常を浄化する魔法を使う。

 それからこの結界の魔法を解くけれど、解くとすぐにエリザが僕の所にやってきて、


「今、呪文を唱えずに魔法を使わなかったか!?」

「は、はい、そうですが……」

「そんな……よほど大量の魔力が無ければそんなことはできないはずだ」

「は、はあ」

「……そんな魔法使いがギルドカードも作らずにふらふらと、どうなっているんだ」

「え、えっと……」


 僕はどう答えていいのか分からずにいると、そこでサナが、


「アラタには事情がありまして、今までギルドカードを作っていなかっただけなのです」

「つまり、わけありか。……分かった、それには触れないでおく」


 エリザは納得したらしく頷いた。

 あまり根掘り葉掘り聞かれなくてよかった、そう僕が思っていると、


「さて、私はとりあえずは依頼のものを回収してくる。それからだが、道が元に戻った音が聞こえない。だから、代わりにあのローブの人物が逃げて行っていったであろうあの中に入ろうと思っている。サナとアラタもそれでいいかな?」


 そうエリザが確認してきたが、現状でそれ以上の案はなかったので、僕達は頷いたのだった。








 さて、ここの洞窟内での必要なものを僕達は採取した。

 手にいれたのは薄く青みがかった石だった。

 エリザが小さいトンカチのようなものを取り出して、その地面から生えた小さいそれを打ち、欠片にしていたのを見た。


 大きさは僕の小指ほどしかないのにそれでいいんだと僕は少し驚いてしまった。

 さて、それから僕達はこの洞窟を脱出することに。

 おそらくはローブの人物がここを通って行っているだろうと予想はつく。


 だから、待ち伏せも考えてエリザが先に歩くという。


「二人は人の気配に敏感か? その気配たどって先手を打つことは出来そう?」


 その問いかけに僕とサナは左右に首を振る。

 こうしてエリザが先頭、僕達がその後といった風に並んで歩いていく。

 その道は、一見地中深くに通じているように見えたけれど、途中から上に向かっているように坂道になっていた。


 やがて、魔物の足跡に色を付けたその場所にまでやってくる。


「ここ、私達が初めに通ってきた場所だわ。……この先も道が変わっていなければいいけれど」


 サナがそう呟き、僕も頷く。

 そして途中、蝙蝠のような魔物にも遭遇するけれど、それらはエリザが一人ですべて倒してしまった。


「私も少し自分の力に慢心してしまっていたようだ。また努力しないとな」


 との事らしい。

 エリザは謙虚で努力家のようだ。

 そして僕達はさらに進んでいくと、洞窟の外に出た。


 特に待ち伏せもなくここまで来れた僕達。

 そこでエリザが、


「今日は二人のおかげで助かった。礼を言う。子供扱いして悪かった」

「いえいえ、じゃあここでお別れで?」


 僕が聞くとエリザは頷き、もし雇いたくなったらギルドに来てくれ、まだしばらくいるからと、さりげなく僕達に宣伝していったのだった。



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