転生後の目覚め①
「――う、うぅ……。
いったいなんなんだよ……、うるさいなっ!」
気持ちよく寝ているときに、いきなり大声で呼び起こされたような気分だ。
もしかしたら、日常のなかでは決して大きい声ではないかもしれない。だが、気持ちよく寝ているときにいきなり起きてしまうような声を出されたら、誰だって気分が悪くなるだろう?
しかも、
「始祖龍、鼎様。私たちにお力をお貸しください」
と、何度も少女の声が叫んでいる。
鼎様っていったい誰なんだよ、と心の中で突っ込みをしながら、少女のほうを見る。
すると、なぜか自分のほうを見ている。しかも、ひざまずいて、神様に祈りをささげるような格好だ。
「……ん、んっ? いったいどうしたんだ?」
思わず疑問の声をあげてしまう。
「ああ、よかった。鼎様が目を覚ましてくれた」
少女はうれしそうな表情を浮かべる。
「鼎様って……」
不思議に思い、周りを眺めるが、誰もいない。
明らかに自分に対して少女は話しかけ来ているようだ。
なので疑問を解消するために、
「お、おい、鼎様って誰なんだ?」
と、少女に話しかける。
すると、少女は、一瞬、不思議そうな顔をしたが、なんと答えるか考えたあとどぎまぎしながら、
「え、えーと、あなた様のことを鼎様とおよびしていたのですが……、間違えていましたでしょうか……?」
「――えっ?」
予想外の内容が返ってきたので疑問形で返す。
そして、自分自身の名前を言おうとする。
「……、」
だが、自分自身の名前を言うことができない。
というよりも、自分自身の名前がわからない。
(これはいったい……?)
疑問に思いながら、自分自身についていろいろ考えようとするが、わからない。
ただ、心の中にあるものは『世界に対してとてつもなく暗い絶望』。
「あ、あのう……」
「……、」
困ったように話しかける少女に対して、無言で返す。
どうしてそんなに困った声を少女が出したのかは自分でもわかる。
おそらく、今の自分の表情はとても困惑しているのだろう。
そりゃそうだ。まったく記憶がなくなっていて、どうしたらいいのだかわからないのだから。
そうして、少女もどうしたらいいかわからない状況になり、気まずい時間が流れる。
すると、少女の隣で同様にひざまずいているもう一人の少女が、
「リエコ様、どうやら鼎様は目覚めたばかりで、混乱されているようです。
かしこまって神様に話しかけるようにするよりは、やさしく話しかけてみてはいかがでしょうか?」
「え、ええっ?」
「驚いている場合ではございません。早くしなければ、このチャンスを逃してしまうかもしれません」
「そ、そんなことを言ったって、そんな状況を想定してこなかったから、急にはできないわ。
それに……、」
再度、鼎を見て、言葉を詰まらせるリエコ。
なぜならば、リエコは最初に鼎を見たときに一目ぼれをしたのだった。
リエコは少人数の人間種をまとめている巫女になり、ここに来た理由は始祖龍である鼎を自分の村の守護神となってもらうためだった。
だから、この場所にくるまでは、『始祖龍』という点から人間とはかけ離れた姿をしているのだろう、と想像していた。
なので、人間の姿をした相手に話しかけるなんてまったく想像していなかったのだ。
しかも、最初に見た瞬間に崇拝すべき相手に対して一目ぼれしてしまったのだ。
そんな相手に対して、やさしく話しかけろなんてどうしたらいいのかわからない。
ずっと村をまとめる巫女として育てられてきた以上、異性に対する対応なんて……、と、リエコは考え込んだ末に、鼎のそばに行き――
「――えっ……?」
リエコはいきなりキスをしていた。




