勝者と敗者〜Ver.細野〜
たまには敗者目線のストーリーも入れようかな、と思いまして。
今回は細野高吉です。
感想、アドバイスお待ちしてますm(_ _)m
さて、行くか。
高校最後の大会出場がかかっている。
西田には確実に勝てるだろうが、他の三人にはかなり手こずることとなるだろう。
あいつら三人の成長曲線は正直異常なほどだ。三年だ、と言われたら大方の人間は信じるだろう。
試合が始まった。
俺の得意技は左右自在に繰り出すロングフック。
相手を近づけさせずに一気に迎撃するスタイルだ。
このパンチを長年、専一に磨き続けてきたのだ。
このパンチを信じられずして何を信じろというのか。
さあ、覚悟しろよ、吉野翔。
俺はフットワークで吉野と距離を取りつつ吉野の攻撃をいなす。
よし、少しパンチが乱れてきたな。
ならば、ジャブをスウェーバックで逸らしてその反動でフックを放ち一本目を奪ってやるとしよう。
俺はやや前傾姿勢をとる。
すると来た!
おお、左ジャブどころか左フックを打ってきやがった。
これは望んだ以上の結果だ。
よし、もらった。
イメージ通りにスウェーバックでパンチを外させ、反動でロングフックを放った刹那。
態勢を崩しつつも果敢に切り返してきた吉野のパンチを喰らい、体から力が抜けた。
ああ……体が自分のものでないようだ。
全く、なんという馬鹿力だ、吉野翔。
態勢を崩した状態から切り返して見事KOパンチにして見せた。
奴の繰り出した強烈な一撃を顎にまともに喰らってしまい、今まさに自分はリングに崩れ落ちようとしている。
だめだ。恐らく、立ち上がれないだろう。
ダウンやKOに直結するパンチを受けてからリングへと崩れ落ちるまでの時間。
それは、一瞬の出来事であり、僅かな時間、
本当にごく僅かの時間で敗者の体はリングへと無様に崩れ落ちる。
しかし。今回のこれに関しては、自分でも初めての体験だ。
体がまるで他人のものであるかのようにふわふわとして、重力に抗うことができない。
ゆっくりと、しかし着実にリングの床が
迫り来る。
意識は徐々に薄れてゆく。
自分の目に映る吉野翔の勝利を確信して笑みをこぼす表情。
それもだんだんと遠ざかり、そして霧がかかったかのようにぼやけて薄れて行く。
ああ、これが敗北なのか。
これが、高校最後の戦いの果てか。
なんと情けないことよ。
まさか、県にさえもいけないとはな。
だけれど、けれども。
後悔などは一片たりとも、ない。
そして俺はリングに崩れ落ちた。
意識が、途切れた。
夢を、みている。
そうだ、これは間違いなく夢だ。
懐かしい映像が流れている。
ああ、これは。
始めた時のやつだ。懐かしいな。
兄に兄弟喧嘩で勝ちたい。
皆を見返してやりたい。
そんな一心で、ここの門を叩いたんだったっけか。
また、映像が切り替わる。
あ、これは……俺のデビュー戦だ。
たった6秒で二本取られて呆気なく敗北。
幼いなりに自分の弱さを噛み締めたよなー。
今となっては、いい思い出、だよな。
そして一つ、また一つ、と思い出が蘇り、
段々と最近のものになってきた。
ああ、これは。
この間の大会だ。泰彦が全国初出場を果たした時のやつ。
あの時、俺は全国ベスト4まで勝ち上がることが出来た。
三年生、高校の部としては最後となる学年、
何が何でも優勝してやるという思いがあっただけに、嬉しさと悔しさが入り混じっていた
記憶が鮮明に蘇る。
次が最後だ、次こそ優勝して終わってやる。
そう、思ってたんだよな。
まーさか道場内で負けるとは思ってもいなかった。
いや、決して見くびってたわけではない。
油断もなかった。と思う。
純粋に負けたんだ。
この間入ってきてメキメキと頭角を現した男
吉野翔に。
松永泰彦。あいつも強くなった。
今ならあいつも相当いいところまでいけるはずだ。
稲本純一。守りが本当に固い。
しかも最近カウンターまで破壊力を増して
やがる。攻め落とすのは他の奴らも苦労させられるだろう。
西田武。多分お前は道場内予選突破は叶わない。
だけど、悲観する必要は全くない。
俺はもう3年だから次がないが、お前はまだ1年。成長の余地、つまり伸びしろは相当ある。
頑張ってくれよ、みんな。
老兵は死なず、ただ立ち去るのみ、ってか。
だんだん視界が明るくなってくる。
痛み、体の気だるさも戻りつつある。
夢から、醒めようとしている。
ああ、最初に思った通りだ。
こりゃもう戦えないな。
悔しいが、棄権するとしよう。
吉野翔。この借りは必ず返してやる。
覚悟しろよ、ったく………
細野高吉、試合続行不可能により、棄権。
これで、細野の高校最後の戦いは、幕を閉じた。
速報 細野高吉、全国ベスト4!
それを沈めた翔の強さ!!
ここから大会が進めば進むほど熱く戦いがヒートアップします!
「試合の数だけ、敗者がいる」
今回は敗者の細野に視点を当てて見ました。
今後もやってみようかと考えております。
感想、アドバイスお待ちしてます




