Past Story 〜Ver.泰彦〜
ここで一旦過去編入ります
寝れねー。
参ったな、全く。
俺はベッドから起き上がり椅子に座る。
かといってやることもない。
退屈だな、全く。
こんな時に、過去の記憶が不意に流れ込んでくることが、よくある。
あれは、いつのことだったろうか。
記憶にあるのは、自分がとてつもなく弱かったこと。
倒れていた地面の生暖かさ。
頭上から降ってくる声。
確か、小学校に入るか入らないかくらいの頃
だった。
それくらいしか、覚えていることはない。
弱かったとて、あくまで精神的な話だ。
腕力では近所では負け無しだった。
それゆえに。
過信した。己の力を。
侮った。相手を。
怠った。考えるということを。
己の強さを信ずるが故に負けた。
完膚なきまでに。
「オレにかてるやつなんかいないんだ!
ウソだとおもったらかかってこいよ!」
「……………」
「こわいならかえれよ!」
「……………」
「なんかいえよ!」
「……………!」
誰かは覚えていない。
最後の自分の発言の後、自分は倒された。
今思えば、あまりに愚かで思慮の浅い行動だった。
相手の強さを嗅ぎ取ることをしなかった。
あれは、誰だったのだろうか。
もう一度会うことはもうないのだろうか。
別にリベンジしようとか、因縁をつけようとかそういうことは毛頭考えてはいない。
ただ、会ってみたい。
何故かは自分でも正直わからない。
しかし会えば何かが変わる、根拠はないけれど確信に近い、そんな気がしていた。
そう、何故かあの時だけしか会っていないのだ。
何しろあの年齢だ。
そんなに遠くに住んでいた筈がない。
負けた直後は負けを認められずに、リベンジしてやろうと同じ場所で待ち続けたこともあった。
負けたくない。
始めてそう思った時だった。
そして、あれは中学二年の頃。
クラスで友人がいじめられていて、その煽りで自分も被害を受けていた。
先生はその場限りの注意をするだけ。
いじめはエスカレートの一途を辿っていた。
そしてある日、自分はついにキレた。
キレている中でも、あの時頭は異様なまでに
冷静だった、と記憶している。
ここで負けたら人生終わりだな。
そう確信していた。
結果的には全員ボコボコに殴り倒して勝利。
勝利という言葉が相応しいかは正直怪しいが
とにかく倒した。
負けるわけにはいかない、とはっきり胸の中で叫んだのはあれが初めてだった。
そして、大林幸太。
それから、大野茂。
これからも、いろんな奴らが。
俺の前に現れるのだろう。
だから俺は。
負けるわけにはいかないんだ。




