終焉〜鮮烈な幕切れ〜
試合も佳境に。
二人の攻防と駆け引きにご注目ください。
最終ラウンド開始の合図。
先ほどまでは開始の合図があるや否や泰彦は風を巻いて大野茂に襲いかかっていたが、
このラウンドは慎重な立ち上がりとなった。
多分、倒せない。
あれだけ最高の攻撃を叩き込んでも倒せないなら、倒すのは恐らくは不可能だろう。
倒せないのに猛攻をしかけても仕方ない。
ここは勝負に徹する。
迂闊に攻めてカウンターを食らったらそれこそ厄介なことになる。
アツくなったら負けだ。
この試合、冷静に、勝ち切って見せる。
泰彦は慎重に攻撃を繰り出し続けた。
ただそれは倒しに行くと言うよりは牽制の意味合いが大きかった。
大野茂は泰彦の変化をすぐさま嗅ぎ取った。
ふむ………。
この私を倒せないことを悟り、臆病風に吹かれたか。
今のところポイントとしてはおそらく30発ほど自分は確実に被弾している。
楽勝だな。
ポイントをこのラウンドの前半で取り返し、
相手が焦って前に来たところを潰す。
いや、通常ならそれでもいいが、幸太のヤツにこの私が松永泰彦ごときに苦戦したと思われるのはシャクにさわる。
やはり一撃必殺で仕留めることとしよう。
大野茂は相変わらず手を出すことなく泰彦の周りをサークリングする。
泰彦がそれを迎撃しようとパンチを幾つか放ってくるが、大野茂は上体を軽くそらせて
それらをかわす。
試合は先ほどまでと打って変わって膠着状態となった。
大盛り上がりを見せていた会場も静まり、
緊張感を孕んだ静寂が会場を支配している。
試合も残り30秒となっていた。
よし、残り30秒。
これなら勝てる。
30秒しかなければノックアウトはおろかダウン一つ取るのも難しい。
ここでまた攻勢をかけて倒せれば僥倖、
倒せなくともポイントで勝てる。
俺が正真正銘の勝者であることを見せつけねばならない。
行くぞ。
泰彦は全身に力を込め、最後の攻撃に出る。
む………?
急に気配が変わったな。
なるほど、残り30秒でこちらが巻き返すのは不可能だろう、と踏んで攻めに出るつもりか。
全くもって愚かしい。
随分と侮られたものだな。
よろしい、ならば……………
遠慮なく倒すとしよう。
大野茂は迎撃態勢を取り、
泰彦を迎え撃ちにかかった。
両者の視線が激突し、静かな焔を宿す。
仕掛けたのはやはり泰彦だった。
ところが。
「なっ…………」
思わず動揺の声が出てしまう。
攻撃が 全て 外された。
ワンツーからの左ストレート、上下に打ち分ける左足、ボディを抉る右足、
着地の反動から一気に飛び出し右ストレートで仕留めに行く。
全て、外された。
そして次の瞬間。
強烈な衝撃を顎に受け、
泰彦の意識はそこで途切れた。
最終ラウンド、残り10秒。
勝者、大野茂。
長かった戦いに遂に終止符が打たれた。
会場は尚も沈黙している。
しかしこの沈黙は大野茂の圧倒的な力量に対し驚愕しているためだ。
終盤まで猛攻を喰らいつつもギリギリで堪え
遂には泰彦を返り討ちにしてみせたーー。
もっとも、大野茂本人にしてみればギリギリどころか楽勝で受け止めていた訳だが。
こうして、大会は衝撃的な幕切れとともに、
終了した。
「…………とまあ、そんな感じだったんだ」
苦笑混じりに泰彦は話終えた。
「………………」
「………………」
「………………マジかぁ…………」
三人とも言葉がでない。
「向こうにはこっちの攻撃は何一つ通用しなかった……翔のパワーだったらもしかすると押し切れたかもしれないけど」
「ばっかやろ……お前で勝てないのにどーやって勝つっつーんだよ……」
「僕の守りも全く通用しなかったしね……」
「…………」
また重苦しい沈黙が彼らを覆う。
「とりあえず、大会は終わり、か」
「そんにしたってよ、あいつ何者だよ。
えーっと、大野茂、だっけか」
「わからないな……」
「それはそうとさ、翔」
意を決したかのような表情でジュンが翔を
見る。
泰彦、翔、酒田直美はなにごとかとジュンを見た。
「俺たちの……三位決定戦をしないか?!」
「…………!」
「おっしゃあ!やるか!!!」
真っ先に反応したのは翔だった。
「面白そうだな、それ」
泰彦がそれに続く。
「よっし、じゃあこの後にでもやろうぜ」
「審判は泰彦に頼んでいい、かな?」
「おっけー。任せろ」
そして、三人だけの、三位決定戦が始まった。
ジュンvs翔。
まさに盾と矛の激突。
大会では実現しなかった最高のカードの対決が今幕を開けた。
圧倒的なパワーで泰彦を粉砕した大野茂。
彼の正体とは?
そして大林幸太との関係は?
今後に注目です。
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